やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

監訳者序文
 本書は『Fundamental of Periodontal Instrumentation』第6版を翻訳して,日本語版として出版したものです.原書では,歯科衛生士がインスツルメンテーションのスキルを学び,確認するための手順ならびに,長く臨床に携わるための秘訣とが丁寧に紹介されています.歯科衛生スキルを学ぶ学生にとって,またスキルを教授する教員にとっても,大きな力となってくれる良書です.
 本書は,原書を.「ベーシック・スキル」,「「アセスメントとインスツルメンテーション」,」「デブライドメント」,「アドバンス・スキル」の4分冊にすることによって,読者が学びやすく持ち運びやすい本の厚さとし,さらに学びたい順番に1冊ずつ購入しやすいよう工夫しました.したがってこの4冊は,初めて歯科衛生スキルを学ぶ人から,長く臨床に携わった経験豊富な人まで,どのレベルにいる人でも十分に学習できる内容になっています.また,4冊すべてそろえることで,インスツルメンテーションの一通りの知識と技術を学ぶことができます.
 本書の大きな特徴は,技術を視覚的に確認できるポイントを明示し,写真とイラストでわかりやすく解説してあるところです.これは,授業や講演会あるいは臨床現場で学んだこと,習ったことを予習復習し,技術を確実に習得していけるという利点があります.頭の中でイメージできないと適切に手を動かすことはできませんが,写真やイラストで確認できるため,イメージしたり蓄積したりすることが容易にできるので,学びやすく教えやすいのです.
 本書の出版にあたっては,小森朋栄氏と出会うことなくしては,また多忙な中,翻訳を快諾してくださった村上恵子氏,野村正子氏,喜んで翻訳作業に参加してくれた後輩たちがいなければ,成し得なかったことです.歯科衛生士同士が繋がることによって,湧き上がってくる力はとても大きなもので,歯科衛生士には自ら大きく成長・発展させる力が十二分にあることを,今回の翻訳作業を通じて実感することができました.翻訳を担当したのはすべて歯科衛生士ですから,歯科衛生士による歯科衛生士のための翻訳本です.どのような言葉が伝わりやすいか,わかりやすいかをさまざまな世代の歯科衛生士が,自分たちの臨床経験・教育経験を通じて,あるいは振り返って,一つひとつの言葉を吟味し,紡いでいきました.それでも,もしかしたら私たちの力が至らない言葉が見つかるかもしれません.そのときは,より適切な表現へのご助言をいただけると幸いです.
 最後に,原書を熱心に紹介していただき,小森氏との出会いの機会をつくってくださった白水貿易の鈴木恵子歯科衛生士ならびに,翻訳にあたりご尽力をいただいた医歯薬出版の若林由紀子氏,編集担当者に深く感謝いたします.
 平成21年10月
 吉田直美

 プリミア社の歯科衛生士リリアンカぺリアさんに『Fundamental of Periodontal Instrumentation』を紹介されたのは,たまたま,日本歯科大学東京短期大学専攻科歯科衛生学専攻科の非常勤講師を引き受けたばかりのころでした.したがって,臨床に携わっている一人の歯科衛生士の視点だけでなく,講師や教官の立場からも本書に注目する結果となりました.さらに,原書はカラー印刷,しかもイラストやアイコンを使ったポジションが解りやすく,筋骨格系障害およびその予防となるニュートラルポジションを他の書籍より詳しく説明されている,グローバル・スタンダード(世界基準)のインスツルメンテーションを,基礎とアドバンスに分類して詳しく説明されている,これまでに出版された書籍では,あまり詳しく取り上げられていないユニバーサルキュレットの使い方や超音波スケーラーの単なる使い方だけではなく,臨床的に有用な心得が紹介されている,などの具体的な特徴が,日本語版の出版を提案するにいたった動機となりました.
 高齢社会を迎えた日本では,今後ますます多くの中高年の患者さんが歯科医院に来院されます.それらの多くの人たちの口腔内には,今まで以上の歯が残っており,多岐にわたるリスク部位を有する口腔内でもあります.ときには,基本の技術だけでは対応できないような状況や部位に遭遇しますが,歯科衛生士にはそれらに対応するスキルが今後ますます必要となります.しかし,基本の技術を習得しないで初めから自己流のテクニックが身についてしまうと,それ以上にスキルを上げることが容易ではなく,また,自己流の技術では新たな問題に対応することはできません.やはり,いつでも基本に戻れるということが重要であり,基本があって初めてアレンジやクリエイティブなスキルの応用が可能になります.
 さらにいえば,これからも歯科衛生士という職業を通して患者さんの健康を守り,かつできるだけ長く働くためには,人間工学に則ったスキルを習得することが何より大切です.したがって本書が,原書同様カラー印刷で日本語版となって出版されることにより,多くの日本の歯科衛生士学校の学生たちや,すでに臨床に携わっている歯科衛生士が,アメリカやカナダの歯科衛生士と同じ目線で,世界基準のインスツルメンテーションを基本から学ぶ機会の一役を担えれば幸いです,
 最後に,日本語版出版の提案に快く賛同いただき,まとめ役となってくださった吉田直美氏,多忙極まるスケジュールの中で,学ぶ姿勢と情熱を傾けて翻訳を行っていただいた堀江明子氏,富田裕子氏,松崎愛子氏,小原由紀氏,河野章江氏,村上恵子氏,野村正子氏には,言葉に尽くせぬほどの感謝の気持ちで一杯です.また出版にあたり,医歯薬出版の若林由紀子氏や編集担当者の協力がなければ,日の目を見ることはなかったであろうことを考えると,本書を読んで歯科衛生スキルを学ぼうとする若い歯科衛生士に代わり,感謝いたします.
 平成21年10月
 小森朋栄
I ベーシック スキル
 監訳者序文
 原著序文
 原著謝辞
第1章 数学的な法則と解剖学的な用語
 1節 数学的な法則
 2節 解剖学的な用語
 3節 スキル応用
第2章 ポジショニングの法則
 1節 エビデンスに基づいたポジショニングの知識
 2節 患者のポジション
 3節 術者と機器のポジション
 4節 右利きの術者のポジション
 5節 左利きの術者のポジション
 6節 スキル応用
第3章 インスツルメントの把持
 1節 インスツルメントと指の識別
 2節 歯周インスツルメントの把持
 3節 手の力を改善するエクササイズ
 4節 スキル応用
第4章 前歯部におけるミラーとフィンガーレスト
 1節 デンタルミラー
 2節 インスツルメンテーション時の手首の位置
 3節 固定
 4節 透光・集光の技術習得
 5節 右利きの術者のスキル
 6節 左利きの術者のスキル
 7節 スキル応用
第5章 下顎臼歯部におけるミラーとフィンガーレスト
 1節 ミラースキルの導入
 2節 右利きの術者のスキル
 3節 左利きの術者のスキル
 4節 スキル応用
第6章 上顎臼歯部におけるミラーとフィンガーレスト
 1節 右利きの術者のスキル
 2節 左利きの術者のスキル
 3節 スキル応用
第7章 インスツルメントのデザインと分類
 1節 すべての歯周インスツルメントに共通する特徴
 2節 シャンクのデザイン
 3節 作業部のデザイン
 4節 インスツルメントの分類の紹介
 5節 スキル応用

 索引