序文
口腔インプラントは,歯を失った人に対して行う欠損補綴治療に欠かせない治療オプションとなり,いまや歯科医師が患者に提示しなくても,患者側からインプラント治療を求めるようになってきた.こうした流れを受け,今後は,たとえ自らはインプラント治療を行わない歯科医師であっても,臨床成績,適応症,検査,診断,治療などについてエビデンスに基づいて患者さんに説明できることが求められる.また,インプラント治療を実施する歯科医師は,国民の信頼を得られる確かな知識と臨床能力を備えていなくてはならない.このような背景を考えると,インプラント治療を実施するしないにかかわらず,今日の歯科医師は,口腔インプラントに関する幅広い内容について,偏りのない基本的な知識を備えておかなくてはならない.
しかし,近年まで大学では,口腔インプラントに関する体系的教育が行われてこなかった.このため,現在インプラント治療を行っている歯科医師のほとんどは,大学卒業後に個人的にスタディグループや研修会に参加して,インプラントに関する理論と技術を学び,経験を積んでこられたことと思う.しかし,そうした卒後研修の場では,インプラントを体系的に学ぶことは難しいようにも感じられる.
本書は,インプラントに関する幅広い領域のエッセンシャルな知識を卒前の学生に教育するために立案されたカリキュラムをベースとして,現時点での必須の知識を簡潔にまとめた書籍である.「患者さんに口腔インプラント治療について適切に説明するために,また,適切な口腔インプラント治療を実践するために必要な知識,態度および技能を修得する」ことを目的としている.
そして,具体的に学ぶべき内容を,「インプラント治療の基礎科学」「インプラント治療の特徴」「診察・検査・診断と治療計画の立案」「インプラント治療の実際」の4章,計26項目に整理した本書を通読することで,偏りのない基本的な知識を効率よく学べるようにした.
これからインプラントについて学ぼうとする歯科学生や初学者はもちろん,すでにインプラント治療を行っている臨床医の方々にも,ご自身の知識や診断が,原則に則っているかの確認に大いに活用していただけるものと自負している.
なお,本書の企画の基礎となった口腔インプラント学の教育カリキュラムは,2005年秋より,九州の5大学歯学部でインプラント診療および教育に携わっている7名(本書の著者)が集まって協議して作成したものであるが,その詳細および経緯については,巻末の資料とその解説を参照いただきたい.
2009年9月
編集代表 古谷野 潔 松浦正朗
口腔インプラントは,歯を失った人に対して行う欠損補綴治療に欠かせない治療オプションとなり,いまや歯科医師が患者に提示しなくても,患者側からインプラント治療を求めるようになってきた.こうした流れを受け,今後は,たとえ自らはインプラント治療を行わない歯科医師であっても,臨床成績,適応症,検査,診断,治療などについてエビデンスに基づいて患者さんに説明できることが求められる.また,インプラント治療を実施する歯科医師は,国民の信頼を得られる確かな知識と臨床能力を備えていなくてはならない.このような背景を考えると,インプラント治療を実施するしないにかかわらず,今日の歯科医師は,口腔インプラントに関する幅広い内容について,偏りのない基本的な知識を備えておかなくてはならない.
しかし,近年まで大学では,口腔インプラントに関する体系的教育が行われてこなかった.このため,現在インプラント治療を行っている歯科医師のほとんどは,大学卒業後に個人的にスタディグループや研修会に参加して,インプラントに関する理論と技術を学び,経験を積んでこられたことと思う.しかし,そうした卒後研修の場では,インプラントを体系的に学ぶことは難しいようにも感じられる.
本書は,インプラントに関する幅広い領域のエッセンシャルな知識を卒前の学生に教育するために立案されたカリキュラムをベースとして,現時点での必須の知識を簡潔にまとめた書籍である.「患者さんに口腔インプラント治療について適切に説明するために,また,適切な口腔インプラント治療を実践するために必要な知識,態度および技能を修得する」ことを目的としている.
そして,具体的に学ぶべき内容を,「インプラント治療の基礎科学」「インプラント治療の特徴」「診察・検査・診断と治療計画の立案」「インプラント治療の実際」の4章,計26項目に整理した本書を通読することで,偏りのない基本的な知識を効率よく学べるようにした.
これからインプラントについて学ぼうとする歯科学生や初学者はもちろん,すでにインプラント治療を行っている臨床医の方々にも,ご自身の知識や診断が,原則に則っているかの確認に大いに活用していただけるものと自負している.
なお,本書の企画の基礎となった口腔インプラント学の教育カリキュラムは,2005年秋より,九州の5大学歯学部でインプラント診療および教育に携わっている7名(本書の著者)が集まって協議して作成したものであるが,その詳細および経緯については,巻末の資料とその解説を参照いただきたい.
2009年9月
編集代表 古谷野 潔 松浦正朗
第1章 インプラント治療の基礎科学
1 インプラント治療の概要
インプラント治療の歴史
形態の変遷
材料の変遷
2 オッセオインテグレーション
オッセオインテグレーションとは?
チタン表面と骨組織の反応
オッセオインテグレーションとインプラント体の表面性状
オッセオインテグレーションの経時的変化
3 インプラント治療に用いられる材料の種類と特性
インプラント体の材料
インプラント基材とチタン製インプラントの表面処理
骨補填材
遮蔽膜
4 インプラント治療に必要な解剖学的知識
インプラント治療には解剖学的知識が必須
顎骨の基礎知識
歯周組織とインプラント周囲の組織構造
5 インプラントと骨および軟組織の界面の反応
インプラントに対する生体反応
創傷治癒を左右する因子
インプラントと組織界面
6 インプラントの生理学的特徴と咬合との関連
インプラントの生理学的特徴
インプラント咬合の特殊性
インプラントのバイオメカニクス
第2章 インプラント治療の特徴
1 基本構造
オッセオインテグレーティッドインプラントの構成要素
1回法インプラントと2回法インプラントの術式とデザイン
2 利点と欠点
インプラント治療の特徴
従来の補綴治療との比較
トップダウントリートメントとしての義歯の意義
インプラント治療の欠点
3 成功基準と治療成績
インプラントの成功基準
成功率と残存率
インプラントの治療成績
4 治療の手順
インプラント治療の流れを理解する
インプラント治療前の口腔衛生指導の目的
術前歯科治療
術前の診察と検査
インプラント体の埋入手術
骨増生手術
二次手術
暫間上部構造
メインテナンス治療
EBMとNBM
5 患者の選択基準/適応と禁忌
欠損の原因・全身疾患・局所的条件を考える
インプラント治療の適応症と禁忌症
全身状態の評価
局所状態の評価
6 リスクファクター
口腔衛生
歯周病およびその他の病変
喫煙の影響
代謝性疾患の影響
ブラキシズム
骨質・骨量
加齢と歯の喪失による解剖学的構造の変化
7 咬合負荷までの治癒期間の種類と選択基準
インプラントの治癒期間
咬合負荷の種類
インプラント体埋入時の初期固定値の測定
第3章 診察・検査・診断と治療計画の立案
1 治療計画立案の手順
補綴主導型インプラント治療
診断用歯列石膏模型
診断用ワックスアップ
診断用ガイドプレート
2 診察と検査
各種の検査
外科用ガイドプレートの作製
3 パノラマエックス線写真で見る解剖学的ランドマーク
パノラマエックス線像の特徴
上顎骨およびその周囲構造
下顎骨およびその周囲構造
4 上部構造の種類と特徴
インプラントの上部構造
可撤式上部構造の種類
非可撤式固定性上部構造の特徴
5 治療計画の決定基準
インプラントの長さと直径
決定基準
6 埋入シミュレーションとガイディッドサージェリー
診断用ソフト
外科用ガイドプレート
コンピュータガイディッドサージェリー
第4章 インプラント治療の実際
1 術前準備
インプラント治療のための術前準備
麻酔
2 インプラント治療の外科術式
モニター設置から局所麻酔まで
切開線の設定と粘膜剥離
インプラント床の形成,骨切削の侵襲
インプラント体の埋入
縫合法
1回法インプラントと2回法インプラント
インプラント治療の二次手術
3 インプラント治療の関連手術
インプラント治療で求められる機能の変化に伴う関連手術
骨移植・移植骨の採取
骨再生誘導法
上顎洞底挙上術(ラテラルウインドウ法,ソケットリフト)
スプリットクレスト
仮骨延長法
外科的矯正手術
軟組織のマネージメント(粘膜移植,結合組織移植)
4 インプラント治療の補綴術式
インプラントの補綴術式を説明する前に
インプラント上部構造の歴史をふまえた3種類の基本構造
治癒期間中の暫間補綴装置の考え方
アバットメントの選択
印象採得と作業用模型の作製
咬合採得
最終上部構造の作製
5 印象採得と作業用模型の作製
印象用トランスファーコーピングの装着と印象採得の準備
印象採得
作業用模型作製の前準備
ガムつき模型の作製
アバットメントの連結(既製の形態)
6 メインテナンス治療
メインテナンス治療の必要性
インプラント補綴装置の清掃法
リコール時の検査と評価
患者満足度
7 インプラント治療の合併症
インプラント治療で注意すべき合併症
資料:口腔インプラント学卒前教育カリキュラム
参考文献
用語解説
索引
執筆者・略歴
1 インプラント治療の概要
インプラント治療の歴史
形態の変遷
材料の変遷
2 オッセオインテグレーション
オッセオインテグレーションとは?
チタン表面と骨組織の反応
オッセオインテグレーションとインプラント体の表面性状
オッセオインテグレーションの経時的変化
3 インプラント治療に用いられる材料の種類と特性
インプラント体の材料
インプラント基材とチタン製インプラントの表面処理
骨補填材
遮蔽膜
4 インプラント治療に必要な解剖学的知識
インプラント治療には解剖学的知識が必須
顎骨の基礎知識
歯周組織とインプラント周囲の組織構造
5 インプラントと骨および軟組織の界面の反応
インプラントに対する生体反応
創傷治癒を左右する因子
インプラントと組織界面
6 インプラントの生理学的特徴と咬合との関連
インプラントの生理学的特徴
インプラント咬合の特殊性
インプラントのバイオメカニクス
第2章 インプラント治療の特徴
1 基本構造
オッセオインテグレーティッドインプラントの構成要素
1回法インプラントと2回法インプラントの術式とデザイン
2 利点と欠点
インプラント治療の特徴
従来の補綴治療との比較
トップダウントリートメントとしての義歯の意義
インプラント治療の欠点
3 成功基準と治療成績
インプラントの成功基準
成功率と残存率
インプラントの治療成績
4 治療の手順
インプラント治療の流れを理解する
インプラント治療前の口腔衛生指導の目的
術前歯科治療
術前の診察と検査
インプラント体の埋入手術
骨増生手術
二次手術
暫間上部構造
メインテナンス治療
EBMとNBM
5 患者の選択基準/適応と禁忌
欠損の原因・全身疾患・局所的条件を考える
インプラント治療の適応症と禁忌症
全身状態の評価
局所状態の評価
6 リスクファクター
口腔衛生
歯周病およびその他の病変
喫煙の影響
代謝性疾患の影響
ブラキシズム
骨質・骨量
加齢と歯の喪失による解剖学的構造の変化
7 咬合負荷までの治癒期間の種類と選択基準
インプラントの治癒期間
咬合負荷の種類
インプラント体埋入時の初期固定値の測定
第3章 診察・検査・診断と治療計画の立案
1 治療計画立案の手順
補綴主導型インプラント治療
診断用歯列石膏模型
診断用ワックスアップ
診断用ガイドプレート
2 診察と検査
各種の検査
外科用ガイドプレートの作製
3 パノラマエックス線写真で見る解剖学的ランドマーク
パノラマエックス線像の特徴
上顎骨およびその周囲構造
下顎骨およびその周囲構造
4 上部構造の種類と特徴
インプラントの上部構造
可撤式上部構造の種類
非可撤式固定性上部構造の特徴
5 治療計画の決定基準
インプラントの長さと直径
決定基準
6 埋入シミュレーションとガイディッドサージェリー
診断用ソフト
外科用ガイドプレート
コンピュータガイディッドサージェリー
第4章 インプラント治療の実際
1 術前準備
インプラント治療のための術前準備
麻酔
2 インプラント治療の外科術式
モニター設置から局所麻酔まで
切開線の設定と粘膜剥離
インプラント床の形成,骨切削の侵襲
インプラント体の埋入
縫合法
1回法インプラントと2回法インプラント
インプラント治療の二次手術
3 インプラント治療の関連手術
インプラント治療で求められる機能の変化に伴う関連手術
骨移植・移植骨の採取
骨再生誘導法
上顎洞底挙上術(ラテラルウインドウ法,ソケットリフト)
スプリットクレスト
仮骨延長法
外科的矯正手術
軟組織のマネージメント(粘膜移植,結合組織移植)
4 インプラント治療の補綴術式
インプラントの補綴術式を説明する前に
インプラント上部構造の歴史をふまえた3種類の基本構造
治癒期間中の暫間補綴装置の考え方
アバットメントの選択
印象採得と作業用模型の作製
咬合採得
最終上部構造の作製
5 印象採得と作業用模型の作製
印象用トランスファーコーピングの装着と印象採得の準備
印象採得
作業用模型作製の前準備
ガムつき模型の作製
アバットメントの連結(既製の形態)
6 メインテナンス治療
メインテナンス治療の必要性
インプラント補綴装置の清掃法
リコール時の検査と評価
患者満足度
7 インプラント治療の合併症
インプラント治療で注意すべき合併症
資料:口腔インプラント学卒前教育カリキュラム
参考文献
用語解説
索引
執筆者・略歴








