序文
口腔は,全身の一部であり,どのような歯科疾患であっても全身,日常生活,精神状況などになんらかの関与をしていることは,明らかです.近年,歯周病が,全身の健康に影響することに関する研究が数多く報告されています.このことは,歯周病はその影響が口腔組織に限定されるという概念から,全身に影響を与えるという概念を包括し,歯周病に対する予防や治療の重要性がますます高まってきています.
ところで,再生医療の担い手としてあらゆる細胞や組織になることができるiPS細胞(人工多能性幹細胞)が話題になっていますが,歯科領域ではすでに患者自身が有している未分化間葉系細胞(歯根膜由来細胞)を用いたGTR法などが行われています.
このGTR法は,本年4月からの診療報酬の改正の大きな特徴として医療の高度化推進に対応すべく,新規医術の導入として先進医療から保険導入が行われました.そこで,今回のGTR法が保険へ導入されたことを機会に,はじめてGTR法を手掛けられる方や,さらなるステップアップを考えている方々に焦点をあてて本書を編集いたしました.
GTR法は,すべての歯周病に適した療法ではなく,あくまでも患者さん自身の局所に有する歯根膜由来細胞を用いた療法であり,“歯周病の診断と治療の指針”に基づいた歯周治療の流れに即して,適応症例に行う術式です.したがって,その適応症には,自ずと厳密な臨床症例の選別が必要であり,適応症に合った患者さんへの適切な診断が求められておりますので,本書の適応症に関する「GTR法の適応症」の章をまずは一読いただきたいと思います.また,GTR法で重要な役割である保護膜を理解するために「保護膜(メンブレン)素材の特性」の章を設けてあります.さらに「GTR法を成功させるための注意点」「GTR法の術式」「GTR法の基本となるフラップ手術」などの章において,各執筆者にはGTR法を成功に導くために臨床において忘れてはならない術式のキーポイントについても簡潔にまとめていただきました.
本書を通して,歯周治療の一つとしてGTR法を手掛けられる先生方にとってGTR法が失敗の少ない手術法として確立され,患者さんに喜ばれる歯周組織再生誘導法として広く流布していくことは,本書を編集した者としてなににも勝る喜びです.
最後になりましたが,ご多忙のなか,原稿を依頼してから短期間でのご執筆にもかかわらず,本書の編集にご協力を頂きました先生方には,こころから厚くお礼申しあげます.また,本書の出版のすべての過程で,ご尽力を賜りました医歯薬出版の編集部諸氏に厚くお礼申しあげます.
平成20年5月 山 田 了
口腔は,全身の一部であり,どのような歯科疾患であっても全身,日常生活,精神状況などになんらかの関与をしていることは,明らかです.近年,歯周病が,全身の健康に影響することに関する研究が数多く報告されています.このことは,歯周病はその影響が口腔組織に限定されるという概念から,全身に影響を与えるという概念を包括し,歯周病に対する予防や治療の重要性がますます高まってきています.
ところで,再生医療の担い手としてあらゆる細胞や組織になることができるiPS細胞(人工多能性幹細胞)が話題になっていますが,歯科領域ではすでに患者自身が有している未分化間葉系細胞(歯根膜由来細胞)を用いたGTR法などが行われています.
このGTR法は,本年4月からの診療報酬の改正の大きな特徴として医療の高度化推進に対応すべく,新規医術の導入として先進医療から保険導入が行われました.そこで,今回のGTR法が保険へ導入されたことを機会に,はじめてGTR法を手掛けられる方や,さらなるステップアップを考えている方々に焦点をあてて本書を編集いたしました.
GTR法は,すべての歯周病に適した療法ではなく,あくまでも患者さん自身の局所に有する歯根膜由来細胞を用いた療法であり,“歯周病の診断と治療の指針”に基づいた歯周治療の流れに即して,適応症例に行う術式です.したがって,その適応症には,自ずと厳密な臨床症例の選別が必要であり,適応症に合った患者さんへの適切な診断が求められておりますので,本書の適応症に関する「GTR法の適応症」の章をまずは一読いただきたいと思います.また,GTR法で重要な役割である保護膜を理解するために「保護膜(メンブレン)素材の特性」の章を設けてあります.さらに「GTR法を成功させるための注意点」「GTR法の術式」「GTR法の基本となるフラップ手術」などの章において,各執筆者にはGTR法を成功に導くために臨床において忘れてはならない術式のキーポイントについても簡潔にまとめていただきました.
本書を通して,歯周治療の一つとしてGTR法を手掛けられる先生方にとってGTR法が失敗の少ない手術法として確立され,患者さんに喜ばれる歯周組織再生誘導法として広く流布していくことは,本書を編集した者としてなににも勝る喜びです.
最後になりましたが,ご多忙のなか,原稿を依頼してから短期間でのご執筆にもかかわらず,本書の編集にご協力を頂きました先生方には,こころから厚くお礼申しあげます.また,本書の出版のすべての過程で,ご尽力を賜りました医歯薬出版の編集部諸氏に厚くお礼申しあげます.
平成20年5月 山 田 了
基礎編
PHASE 1 歯周組織再生誘導(GTR)法とは 田中昭男
01 新付着とは(再付着との違い)
02 セメント質再生
03 歯根膜再生
PHASE 2 GTR法の適応症 稲垣幸司,菊池 毅,三谷章雄,伊藤正満,吉成伸夫,野口俊英
01 根分岐部病変の診断
A─GTR法に必要な根分岐部の臨床解剖
B─GTR法の予知性を高めるための根分岐部病変の診断
02 垂直性の骨内欠損(骨縁下欠損,intrabony defect)の診断
03 歯肉退縮(辺縁組織の退縮,marginal tissue recession,MTR)の診断
A─歯肉退縮に対する治療指針
PHASE 3 保護膜(メンブレン)素材の特性─国内で流通している膜の種類と特徴 佐藤 聡
01 非吸収性膜(非吸収性メンブレン)
A─ゴアテックスRGTRメンブレン(ジャパンゴアテックス株式会社)
B─ゴアテックスRTRメンブレン(ジャパンゴアテックス株式会社)
02 吸収性膜(吸収性メンブレン)
A─合成高分子膜
(1)ジーシーメンブレン(株式会社ジーシー)
B─コラーゲン膜
(2)バイオメンドTM(株式会社 白鵬)
(3)コーケンティッシュガイドTM(株式会社 高研)
PHASE 4 GTR法を成功させるための注意点 澁川義宏
01 臨床において手術野に歯根膜由来細胞を誘導するスペースメーキングのポイント
A─スペースメーキングの基本
B─残存骨壁とスペースメーキングとの関連
02 骨欠損形態に適した保護膜(メンブレン)選択のポイント
A─保護膜(メンブレン)の種類と特徴
(1)非吸収性膜(非吸収性メンブレン)
(2)吸収性膜(吸収性メンブレン)
B─非吸収性膜(非吸収性メンブレン)と吸収性膜(吸収性メンブレン)の利点・欠点
(1)非吸収性膜(非吸収性メンブレン)
(2)吸収性膜(吸収性メンブレン)
C─保護膜(メンブレン)のトリミング(形態調整)
03 GTR法の症例においての吸収性膜(吸収性メンブレン)と非吸収性膜(非吸収性メンブレン)の使い分けのポイント
A─吸収性膜(吸収性メンブレン)症例
B─非吸収性膜(非吸収性メンブレン)応用症例
PHASE 5 GTR法の予後判定の検査法 島田靖子,奥田一博,吉江弘正
01 GTR法の予後判定の検査
A─プロービングによる検査
B─X線写真による検査
02 GTR法の予後に影響する因子
A─局所的要因
(1)縁上プラーク
(2)縁下プラーク:歯周病細菌検査
B─全身的要因
(1)喫煙の有無
(2)糖尿病
臨床編
PHASE 1 GTR法の術式 和泉雄一,小田 茂,秋月達也,高崎アリステオ敦志,須田智也
01 一次手術(切開,剥離,メンブレンの設置,縫合)
A─切開の位置
B─剥離・翻転
C─メンブレンのトリミング・設置
D─縫 合
E─術 後
02 二次手術(非吸収性メンブレンの除去)
03 参考症例
I 裂開型骨欠損症例
II 下顎2度根分岐部病変症例
III 骨内欠損症例(1)
IV 骨内欠損症例(2)
PHASE 2 基本となるフラップ手術 伊藤公一
01 フラップ手術計画の立案
02 フラップ手術の基本的事項
A─ポケット除去・深さの減少が想定されるケース
B─付着歯肉幅の拡大が想定されるケース
C─切開線の種類
D─フラップ(歯肉弁)の種類
E─フラップ(歯肉弁)の形態的分類
(1)ウェッジ(楔状)フラップ,(2)エンベロップフラップ,(3)トライアンギュラーフラップ,(4)フルフラップ,(5)歯槽骨に対する処置
03 適応症
04 手 順
A─口腔内清拭,消毒,麻酔
B─プロービング(ポケットデプスの測定,ボーンサウンディング)
C─切 開
D─フラップ(歯肉弁)の剥離翻転
E─切除歯肉片,不良肉芽の除去
F─スケーリング・ルートプレーニング
G─歯槽骨整形,歯槽骨切除(必要に応じて)
H─洗 浄
I─止 血
J─縫 合
K─結 紮
L─歯周パックの貼付
M─投 薬
PHASE 3 臨床例によるステップ 申 基
01 GTR法による歯周組織再生の実際
A─2度根分岐部病変の治療
B─垂直性骨欠損の治療
C─歯肉退縮の治療
PHASE 4 GTR法にかかわる諸問題への対応 山本茂樹,山田 了
01 メンブレンの露出に対する対応
02 GTR法における根面処理の有効性
03 GTR法を用いるのに問題を含んでいる症例
A─極端に深い垂直性骨欠損形態
B─歯周炎の罹患部位が広範に及んでいる症例
C─GTR法を行う以前に歯肉退縮を生じている症例
D─メンブレンを被覆する歯肉弁の厚さについて
E─根分岐部病変について
歯周治療の流れ
索 引
PHASE 1 歯周組織再生誘導(GTR)法とは 田中昭男
01 新付着とは(再付着との違い)
02 セメント質再生
03 歯根膜再生
PHASE 2 GTR法の適応症 稲垣幸司,菊池 毅,三谷章雄,伊藤正満,吉成伸夫,野口俊英
01 根分岐部病変の診断
A─GTR法に必要な根分岐部の臨床解剖
B─GTR法の予知性を高めるための根分岐部病変の診断
02 垂直性の骨内欠損(骨縁下欠損,intrabony defect)の診断
03 歯肉退縮(辺縁組織の退縮,marginal tissue recession,MTR)の診断
A─歯肉退縮に対する治療指針
PHASE 3 保護膜(メンブレン)素材の特性─国内で流通している膜の種類と特徴 佐藤 聡
01 非吸収性膜(非吸収性メンブレン)
A─ゴアテックスRGTRメンブレン(ジャパンゴアテックス株式会社)
B─ゴアテックスRTRメンブレン(ジャパンゴアテックス株式会社)
02 吸収性膜(吸収性メンブレン)
A─合成高分子膜
(1)ジーシーメンブレン(株式会社ジーシー)
B─コラーゲン膜
(2)バイオメンドTM(株式会社 白鵬)
(3)コーケンティッシュガイドTM(株式会社 高研)
PHASE 4 GTR法を成功させるための注意点 澁川義宏
01 臨床において手術野に歯根膜由来細胞を誘導するスペースメーキングのポイント
A─スペースメーキングの基本
B─残存骨壁とスペースメーキングとの関連
02 骨欠損形態に適した保護膜(メンブレン)選択のポイント
A─保護膜(メンブレン)の種類と特徴
(1)非吸収性膜(非吸収性メンブレン)
(2)吸収性膜(吸収性メンブレン)
B─非吸収性膜(非吸収性メンブレン)と吸収性膜(吸収性メンブレン)の利点・欠点
(1)非吸収性膜(非吸収性メンブレン)
(2)吸収性膜(吸収性メンブレン)
C─保護膜(メンブレン)のトリミング(形態調整)
03 GTR法の症例においての吸収性膜(吸収性メンブレン)と非吸収性膜(非吸収性メンブレン)の使い分けのポイント
A─吸収性膜(吸収性メンブレン)症例
B─非吸収性膜(非吸収性メンブレン)応用症例
PHASE 5 GTR法の予後判定の検査法 島田靖子,奥田一博,吉江弘正
01 GTR法の予後判定の検査
A─プロービングによる検査
B─X線写真による検査
02 GTR法の予後に影響する因子
A─局所的要因
(1)縁上プラーク
(2)縁下プラーク:歯周病細菌検査
B─全身的要因
(1)喫煙の有無
(2)糖尿病
臨床編
PHASE 1 GTR法の術式 和泉雄一,小田 茂,秋月達也,高崎アリステオ敦志,須田智也
01 一次手術(切開,剥離,メンブレンの設置,縫合)
A─切開の位置
B─剥離・翻転
C─メンブレンのトリミング・設置
D─縫 合
E─術 後
02 二次手術(非吸収性メンブレンの除去)
03 参考症例
I 裂開型骨欠損症例
II 下顎2度根分岐部病変症例
III 骨内欠損症例(1)
IV 骨内欠損症例(2)
PHASE 2 基本となるフラップ手術 伊藤公一
01 フラップ手術計画の立案
02 フラップ手術の基本的事項
A─ポケット除去・深さの減少が想定されるケース
B─付着歯肉幅の拡大が想定されるケース
C─切開線の種類
D─フラップ(歯肉弁)の種類
E─フラップ(歯肉弁)の形態的分類
(1)ウェッジ(楔状)フラップ,(2)エンベロップフラップ,(3)トライアンギュラーフラップ,(4)フルフラップ,(5)歯槽骨に対する処置
03 適応症
04 手 順
A─口腔内清拭,消毒,麻酔
B─プロービング(ポケットデプスの測定,ボーンサウンディング)
C─切 開
D─フラップ(歯肉弁)の剥離翻転
E─切除歯肉片,不良肉芽の除去
F─スケーリング・ルートプレーニング
G─歯槽骨整形,歯槽骨切除(必要に応じて)
H─洗 浄
I─止 血
J─縫 合
K─結 紮
L─歯周パックの貼付
M─投 薬
PHASE 3 臨床例によるステップ 申 基
01 GTR法による歯周組織再生の実際
A─2度根分岐部病変の治療
B─垂直性骨欠損の治療
C─歯肉退縮の治療
PHASE 4 GTR法にかかわる諸問題への対応 山本茂樹,山田 了
01 メンブレンの露出に対する対応
02 GTR法における根面処理の有効性
03 GTR法を用いるのに問題を含んでいる症例
A─極端に深い垂直性骨欠損形態
B─歯周炎の罹患部位が広範に及んでいる症例
C─GTR法を行う以前に歯肉退縮を生じている症例
D─メンブレンを被覆する歯肉弁の厚さについて
E─根分岐部病変について
歯周治療の流れ
索 引








