すいせんの言葉 本書の誕生を祝福します
自閉症スペクトラム障害やその他の発達障害の人たちのために,また一冊素晴らしい本が出版されました.そのことへの大きな喜びと感動をもって,本書を推薦します.
1982年夏,私が10人の仲間たちとともに,ノースカロライナのチャペルヒルにある大学を訪問してから,25年の歳月が流れました.自分の半生のなかでも,数えるほどしかない「目から鱗が落ちる」体験でした.
当時私たちは,自閉症を情緒障害と考え,受容的な遊戯療法によって,子どもたちの一度閉ざされてしまった心の扉を開いていきたいと考えていました.あるいは,先天的な特異な学習障害と考え,学習理論に基づいたオペラント条件づけによる行動療法で,子どもたちの失われている脳神経回路に本来の学習過程の道筋を取り戻せるのではと考えていました.
いずれも目指した成果が得られなかったため,さらに統合教育によって,健常な子どもの力を借りることで,本来の心身の発達過程への回帰を期待したりもしました.しかしそれも失望に終わろうとしていました.そんな時にTEACCHに出会ったのです.遠路はるばるそれなりの渡航費用をかけて,未知のものを探し当てに行ったのですが,決して「高くなかった」と仲間で言い合ったことを,昨日のことのように覚えています.
しかしTEACCHモデルをわが国に紹介し,わが国の文化に合わせて応用・発展させることは,容易ではありませんでした.当初は周囲の理解を得ることが困難で,長い間こうした状況は続きました.しかし,多くの福祉,教育,医療の実践者が現れてくるにつれて,ここ10年くらいでTEACCHの提唱する視覚支援の意義や考え方は急速に普及してきたと思います.正面から異議を唱える人は例外的でごくわずかになりました.
そういう経緯を経たなかで本書の出現です.本書が生まれる背景には,どれほど確かな教育や臨床の実践が,豊富に蓄積されてきたことかと思わずにはいられません.もはや今日では,発達障害の人にとって,視覚情報のもつ意味の大きさを疑う人はいなくなったと思います.話し言葉の発達に不自由さがないように見えるアスペルガー症候群の人たちでさえ,その多くが文字という視覚情報による言語や文章に大きな親和性をもっているのです.
本書が活用されれば,発達障害の人たちへの視覚支援の意義が,さらに広く深く認識されるでしょう.それにも増して,発達障害の人や子どもたちが,医療を不安や混乱なく受けることが飛躍的に可能になるでしょう.歯科診療を超えてその他の多様な診療科の医療の場でも,活用される道がどんどん開かれることでしょう.そればかりでなく,本書のような書物が出版されることによって,発達障害の人への一般社会の人々の理解が,ますます大きく開かれていくことになるでしょう.私はそのことの付加的な意義が,想像を超えて大きなものに発展していくことへの希望に胸をふくらませる思いです.
一昔前,自閉症の子どもがわずかなむし歯でさえ,抑制具や全身麻酔による治療しか受けることができなかったことを,悲しみとともに思い出しています.
感謝と感動をもって,本書の誕生を祝福したいと思います.
2008年1月15日
佐々木正美(川崎医療福祉大学)
序 患者さんの心に寄り添う歯科診療
障害者福祉の領域では「支援」の概念が普及し,「指導」や「援助」といった考え方はなくなりつつあります.「支援」とは,その人が,人として自分らしく生活し,活動するために支え,寄り添うことです.寄り添うためにはその人への理解が必要で,障害や疾患だけをみていては寄り添うことはできません.
近年,障害者歯科診療の現場で,おもに自閉症スペクトラムの患者さんに対して絵カードや写真カードを用いて,患者さんにとってわかりやすい歯科診療を提供する方法が普及しつつあります.その効果は学術大会でも視覚支援として報告され,いまや,一つのトレンドとなっています.日本障害者歯科学会での自閉症スペクトラムの患者さんへの視覚支援を用いた報告は,編者らが行った1995年の第12回大会がはじめてでした.障害者歯科の領域ではまだTEACCHプログラムの概念がなかったころです.
この本を企画するきっかけとなったのは,視覚支援に対する考え方の混乱が方々で見受けられたためです.つまり,情報整理としての構造化のための視覚支援と,学習の手立てとしての視覚情報,そしてコミュニケーションツールとしての視覚支援などが整理されないまま混在し,そのために患者さんにとってわかりにくくなっているという現状と,さらに,そのことに視覚支援を行っている側が気づいていないという事実を知ったからです.
本書の編集にあたっては,視覚支援を実践している歯科医療機関の歯科医師と歯科衛生士に原稿を依頼しました.また,障害児教育の専門家と言語聴覚士にも著者として加わっていただきました.巻末の絵カードについては各著者の意見を聞きながら作成しましたが,これがなかなか困難でした.もともとの発想は,日本全国どこでも共通したカードを用いることで,多くの患者さんがよりわかりやすくなるようにというものでしたが,デザイン,場面ともカードを使う歯科医師や歯科衛生士によってさまざまなイメージがあり,それを一つにまとめるのは困難でした.そこで,本書に添付する絵カードは,最小限の基本的な視覚情報にとどめ,状況に合わせて各利用者がカードを追加できるよう工夫しました.実際には利用者がアレンジして幅広く利用していただきたいと思っています.
視覚支援のカードは,自閉症スペクトラムの歯科患者さんだけでなく,知的障害をもつ人にも利用できます.また,幼児や高齢者,聴覚障害の患者さんにも使うことができます.いずれも,“わかりやすい歯科診療の提供”が目的であり,歯科診療を行う者が意のままに患者さんを動かそうとするためのものではありません.患者さんの心に寄り添うことが視覚支援の目的であることを理解していただきたいと思います.視覚支援のカードは,患者さんの状態によっては必ずしもすべての患者さんに効果があるとは限らず,また,目的によって使い方が異なってきますが,本書ではこれらについてわかりやすく解説しています.
本書が,患者さんと歯科医師,歯科衛生士らにとって有益となることを念じ,寄り添い感とともに障害者の歯科医療が進められることを願っています.
2007年12月4日
緒方克也
著者一同
2006年に施行された障害者自立支援法を契機に,「障害者」を「障がい者」と表記する機運がありますが,固有名詞は法律を含めて従来のまま「障害者」です.障害者問題の解決には,表記よりも社会の認識を変えることが大切と考えていますので,本書では混乱を避けるため「障害者」を用いました.
自閉症スペクトラム障害やその他の発達障害の人たちのために,また一冊素晴らしい本が出版されました.そのことへの大きな喜びと感動をもって,本書を推薦します.
1982年夏,私が10人の仲間たちとともに,ノースカロライナのチャペルヒルにある大学を訪問してから,25年の歳月が流れました.自分の半生のなかでも,数えるほどしかない「目から鱗が落ちる」体験でした.
当時私たちは,自閉症を情緒障害と考え,受容的な遊戯療法によって,子どもたちの一度閉ざされてしまった心の扉を開いていきたいと考えていました.あるいは,先天的な特異な学習障害と考え,学習理論に基づいたオペラント条件づけによる行動療法で,子どもたちの失われている脳神経回路に本来の学習過程の道筋を取り戻せるのではと考えていました.
いずれも目指した成果が得られなかったため,さらに統合教育によって,健常な子どもの力を借りることで,本来の心身の発達過程への回帰を期待したりもしました.しかしそれも失望に終わろうとしていました.そんな時にTEACCHに出会ったのです.遠路はるばるそれなりの渡航費用をかけて,未知のものを探し当てに行ったのですが,決して「高くなかった」と仲間で言い合ったことを,昨日のことのように覚えています.
しかしTEACCHモデルをわが国に紹介し,わが国の文化に合わせて応用・発展させることは,容易ではありませんでした.当初は周囲の理解を得ることが困難で,長い間こうした状況は続きました.しかし,多くの福祉,教育,医療の実践者が現れてくるにつれて,ここ10年くらいでTEACCHの提唱する視覚支援の意義や考え方は急速に普及してきたと思います.正面から異議を唱える人は例外的でごくわずかになりました.
そういう経緯を経たなかで本書の出現です.本書が生まれる背景には,どれほど確かな教育や臨床の実践が,豊富に蓄積されてきたことかと思わずにはいられません.もはや今日では,発達障害の人にとって,視覚情報のもつ意味の大きさを疑う人はいなくなったと思います.話し言葉の発達に不自由さがないように見えるアスペルガー症候群の人たちでさえ,その多くが文字という視覚情報による言語や文章に大きな親和性をもっているのです.
本書が活用されれば,発達障害の人たちへの視覚支援の意義が,さらに広く深く認識されるでしょう.それにも増して,発達障害の人や子どもたちが,医療を不安や混乱なく受けることが飛躍的に可能になるでしょう.歯科診療を超えてその他の多様な診療科の医療の場でも,活用される道がどんどん開かれることでしょう.そればかりでなく,本書のような書物が出版されることによって,発達障害の人への一般社会の人々の理解が,ますます大きく開かれていくことになるでしょう.私はそのことの付加的な意義が,想像を超えて大きなものに発展していくことへの希望に胸をふくらませる思いです.
一昔前,自閉症の子どもがわずかなむし歯でさえ,抑制具や全身麻酔による治療しか受けることができなかったことを,悲しみとともに思い出しています.
感謝と感動をもって,本書の誕生を祝福したいと思います.
2008年1月15日
佐々木正美(川崎医療福祉大学)
序 患者さんの心に寄り添う歯科診療
障害者福祉の領域では「支援」の概念が普及し,「指導」や「援助」といった考え方はなくなりつつあります.「支援」とは,その人が,人として自分らしく生活し,活動するために支え,寄り添うことです.寄り添うためにはその人への理解が必要で,障害や疾患だけをみていては寄り添うことはできません.
近年,障害者歯科診療の現場で,おもに自閉症スペクトラムの患者さんに対して絵カードや写真カードを用いて,患者さんにとってわかりやすい歯科診療を提供する方法が普及しつつあります.その効果は学術大会でも視覚支援として報告され,いまや,一つのトレンドとなっています.日本障害者歯科学会での自閉症スペクトラムの患者さんへの視覚支援を用いた報告は,編者らが行った1995年の第12回大会がはじめてでした.障害者歯科の領域ではまだTEACCHプログラムの概念がなかったころです.
この本を企画するきっかけとなったのは,視覚支援に対する考え方の混乱が方々で見受けられたためです.つまり,情報整理としての構造化のための視覚支援と,学習の手立てとしての視覚情報,そしてコミュニケーションツールとしての視覚支援などが整理されないまま混在し,そのために患者さんにとってわかりにくくなっているという現状と,さらに,そのことに視覚支援を行っている側が気づいていないという事実を知ったからです.
本書の編集にあたっては,視覚支援を実践している歯科医療機関の歯科医師と歯科衛生士に原稿を依頼しました.また,障害児教育の専門家と言語聴覚士にも著者として加わっていただきました.巻末の絵カードについては各著者の意見を聞きながら作成しましたが,これがなかなか困難でした.もともとの発想は,日本全国どこでも共通したカードを用いることで,多くの患者さんがよりわかりやすくなるようにというものでしたが,デザイン,場面ともカードを使う歯科医師や歯科衛生士によってさまざまなイメージがあり,それを一つにまとめるのは困難でした.そこで,本書に添付する絵カードは,最小限の基本的な視覚情報にとどめ,状況に合わせて各利用者がカードを追加できるよう工夫しました.実際には利用者がアレンジして幅広く利用していただきたいと思っています.
視覚支援のカードは,自閉症スペクトラムの歯科患者さんだけでなく,知的障害をもつ人にも利用できます.また,幼児や高齢者,聴覚障害の患者さんにも使うことができます.いずれも,“わかりやすい歯科診療の提供”が目的であり,歯科診療を行う者が意のままに患者さんを動かそうとするためのものではありません.患者さんの心に寄り添うことが視覚支援の目的であることを理解していただきたいと思います.視覚支援のカードは,患者さんの状態によっては必ずしもすべての患者さんに効果があるとは限らず,また,目的によって使い方が異なってきますが,本書ではこれらについてわかりやすく解説しています.
本書が,患者さんと歯科医師,歯科衛生士らにとって有益となることを念じ,寄り添い感とともに障害者の歯科医療が進められることを願っています.
2007年12月4日
緒方克也
著者一同
2006年に施行された障害者自立支援法を契機に,「障害者」を「障がい者」と表記する機運がありますが,固有名詞は法律を含めて従来のまま「障害者」です.障害者問題の解決には,表記よりも社会の認識を変えることが大切と考えていますので,本書では混乱を避けるため「障害者」を用いました.
すいせんの言葉
序
I 障害者への視覚支援の考え方
1 なぜ視覚支援が必要なのか?(緒方克也)
1.情報の多くは視覚刺激から
2.刺激を整理・処理しながらヒトは成長・発達する
3.障害者歯科における視覚的な情報提供の目的
(1)構造化(刺激の整理)としての視覚支援
(2)学習理論によるスキル獲得のための視覚支援
(3)コミュニケーションのための視覚支援
コラム『ドレスの中には何がある?』
2 さまざまな視覚支援の方法(森崎市治郎)
1.絵カードによる情報の伝達
2.文字カードによる情報の伝達
3.実物提示による情報の伝達
4.コンピュータを用いた情報の伝達
3 TEACCHプログラムの考え方(納富恵子)
1.TEACCHプログラムの歴史と理念
(1)TEACCHプログラムの歴史
(2)TEACCHプログラムの理念
2.TEACCHプログラムの理論的基礎
(1)発達理論に基づく
(2)認知理論に基づく
(3)行動理論に基づく
3.TEACCHプログラムの有効性
(1)学校教育における構造化の有効性
(2)親トレーニングの有効性
(3)プログラムの長期的な効果
(4)より科学的実証的な研究
4 障害児療育にみられる視覚支援(西智子)
1.物理的構造化
2.スケジュールの構造化
3.ワークシステム
5 生活支援としての視覚支援(西智子)
1.日常生活における視覚支援
(1)街の中の視覚支援
(2)障害者の生活における視覚支援
2.視覚支援とコミュニケーションの関係
(1)コミュニケーションについて
(2)ことば以外のコミュニケーション手段
6 構造化の原則(高原 牧)
1.構造化の目的と考え方
2.構造化の種類
・視覚的構造化
(1)スケジュール (2)ワークシステム (3)ルーティン
・物理的構造化
(1)空間を整理する (2)感覚刺激を減らす
3.構造化のためのステップ
・情報を得る
(1)主観的視点からの情報(医療面接) (2)客観的視点からの情報
・計画を立てる(PLAN)
・実践(DO)
・評価(CHECK)
・再実践
・再評価
7 視覚支援から言語化へ(西智子)
1.ことばの理解と発達障害
2.視覚支援はことばに結びつかないという誤解
(1)視覚支援はことばの意味を「理解」へとつなげる
コラム『ことばが妨げになる?!』
(2)視覚支援はことばの「理解」から「表出」へとつなげる
3.文字言語は視覚的な情報
4.コミュニケーションとしての言語の発達と視覚支援
コラム『視覚支援を受け入れないケース』
8 視覚支援が困難な障害者(緒方克也)
1.視覚障害者
2.視覚情報を理解しきれない知的障害者
(1)「スケジュール」や「行動の切り替え」の理解がむずかしい重度知的障害者
コラム『「触れる」ことで理解する』
(2)重度知的障害者にも「情報」はある程度理解できる
II 診療室の構造化(高原 牧)
1 不必要な刺激を除去する
1.治療空間における情報の整理
(1)適切な行動のための視覚支援
(2)不必要な情報の除去
2.待合室の工夫
3.受付の工夫
4.診療室の工夫
(1)視覚刺激への工夫
(2)聴覚刺激への工夫
(3)嗅覚刺激への工夫
5.歯磨き指導コーナーの工夫
2 視覚的に理解しやすい環境をつくる
1.デンタルチェアの工夫
2.診察時の工夫
3.検査時の工夫
(1)検査器具を事前にみせる場合
(2)検査器具を事前にみせない場合
4.切削時の工夫
5.印象採得時の工夫
III 歯科診療のためのスケジュールの構造化(森崎市治郎)
1 スケジュールの構造化の原則
1.スケジュールの示し方
2.スケジュールの確認方法
コラム『絵カードによるスケジュール提示の原則』
2 来院までのスケジュール
3 治療のスケジュール
4 次回の来院のために
IV 強化子の与え方(中神正博)
1 強化と強化子の意味
1.正の強化・負の強化
2.正の弱化・負の弱化
2 強化子の種類
1.無条件性(一次性・非学習性)強化子
2.条件性(二次性・習得性)強化子
3 強化子の効果的な与え方
1.強化子の与え方の4要件
(1)即時性
(2)随伴性
(3)確立操作
(4)特性に合わせた強化子の選択
2.強化子のステップアップ(一次性強化子から二次性強化子へ)
V 歯科診療や保健指導のための視覚支援
1 初診時の視覚支援(矢崎史郎)
1.初診時の医療面接で視覚支援を説明する
(1)来院前の準備ー初診時に考えておくこと
(2)来院後の対応
2.口腔内診察時に行う視覚支援
(1)患者さんの行動の理由・立場を理解する
(2)診療の見通しをつけるための視覚支援
(3)「TellShowDo」で行う視覚支援
3.どんな視覚支援が効果的かを検討する
(1)具体物や写真,文字,線画などどんなもので示すと理解しやすいか
(2)味覚,触覚,聴覚,視覚,嗅覚などの感覚の偏りはあるか
(3)好きなことや「こだわり」を知る
4.再診時のために必要な説明と準備
2 歯磨き指導時に必要な視覚支援(志鎌みな子)
1.歯磨きに使用する道具の視覚支援
(1)歯磨き時の道具の絵カード
(2)ボードを使用した視覚支援
2.歯ブラシの持ち方の説明
3.歯ブラシの動かし方の説明
4.歯磨きの順序
5.プラーク除去の説明
3 検査時に必要な視覚支援(矢崎史郎)
1.X線写真撮影
2.歯周検査
VI 歯科におけるコミュニケーションと視覚支援(高原 牧・緒方克也)
1 歯科におけるコミュニケーションとは
1.患者さんの意志を汲み取るための視覚支援
2.コミュニケーションの意味
コラム『ダウン症候群』
2 患者さんが選択する歯科診療
1.患者さんの自己選択を取り入れた診療
2.自己選択の例-補綴物合着の手順
3 患者さんとの相互交渉
1.相互交渉のためのツール
2.相互交渉へのステップ
4 コミュニケーションのための絵カード
1.PECSを応用した絵カードの役割
2.さまざまな絵カードの種類
(1)基本コミュニケーションのための絵カード
(2)治療の進行について
(3)治療への希望について
(4)治療への感想について
文献
索引
視覚支援ツール「すぐに使える絵カード」
処置編
コミュニケーション編
序
I 障害者への視覚支援の考え方
1 なぜ視覚支援が必要なのか?(緒方克也)
1.情報の多くは視覚刺激から
2.刺激を整理・処理しながらヒトは成長・発達する
3.障害者歯科における視覚的な情報提供の目的
(1)構造化(刺激の整理)としての視覚支援
(2)学習理論によるスキル獲得のための視覚支援
(3)コミュニケーションのための視覚支援
コラム『ドレスの中には何がある?』
2 さまざまな視覚支援の方法(森崎市治郎)
1.絵カードによる情報の伝達
2.文字カードによる情報の伝達
3.実物提示による情報の伝達
4.コンピュータを用いた情報の伝達
3 TEACCHプログラムの考え方(納富恵子)
1.TEACCHプログラムの歴史と理念
(1)TEACCHプログラムの歴史
(2)TEACCHプログラムの理念
2.TEACCHプログラムの理論的基礎
(1)発達理論に基づく
(2)認知理論に基づく
(3)行動理論に基づく
3.TEACCHプログラムの有効性
(1)学校教育における構造化の有効性
(2)親トレーニングの有効性
(3)プログラムの長期的な効果
(4)より科学的実証的な研究
4 障害児療育にみられる視覚支援(西智子)
1.物理的構造化
2.スケジュールの構造化
3.ワークシステム
5 生活支援としての視覚支援(西智子)
1.日常生活における視覚支援
(1)街の中の視覚支援
(2)障害者の生活における視覚支援
2.視覚支援とコミュニケーションの関係
(1)コミュニケーションについて
(2)ことば以外のコミュニケーション手段
6 構造化の原則(高原 牧)
1.構造化の目的と考え方
2.構造化の種類
・視覚的構造化
(1)スケジュール (2)ワークシステム (3)ルーティン
・物理的構造化
(1)空間を整理する (2)感覚刺激を減らす
3.構造化のためのステップ
・情報を得る
(1)主観的視点からの情報(医療面接) (2)客観的視点からの情報
・計画を立てる(PLAN)
・実践(DO)
・評価(CHECK)
・再実践
・再評価
7 視覚支援から言語化へ(西智子)
1.ことばの理解と発達障害
2.視覚支援はことばに結びつかないという誤解
(1)視覚支援はことばの意味を「理解」へとつなげる
コラム『ことばが妨げになる?!』
(2)視覚支援はことばの「理解」から「表出」へとつなげる
3.文字言語は視覚的な情報
4.コミュニケーションとしての言語の発達と視覚支援
コラム『視覚支援を受け入れないケース』
8 視覚支援が困難な障害者(緒方克也)
1.視覚障害者
2.視覚情報を理解しきれない知的障害者
(1)「スケジュール」や「行動の切り替え」の理解がむずかしい重度知的障害者
コラム『「触れる」ことで理解する』
(2)重度知的障害者にも「情報」はある程度理解できる
II 診療室の構造化(高原 牧)
1 不必要な刺激を除去する
1.治療空間における情報の整理
(1)適切な行動のための視覚支援
(2)不必要な情報の除去
2.待合室の工夫
3.受付の工夫
4.診療室の工夫
(1)視覚刺激への工夫
(2)聴覚刺激への工夫
(3)嗅覚刺激への工夫
5.歯磨き指導コーナーの工夫
2 視覚的に理解しやすい環境をつくる
1.デンタルチェアの工夫
2.診察時の工夫
3.検査時の工夫
(1)検査器具を事前にみせる場合
(2)検査器具を事前にみせない場合
4.切削時の工夫
5.印象採得時の工夫
III 歯科診療のためのスケジュールの構造化(森崎市治郎)
1 スケジュールの構造化の原則
1.スケジュールの示し方
2.スケジュールの確認方法
コラム『絵カードによるスケジュール提示の原則』
2 来院までのスケジュール
3 治療のスケジュール
4 次回の来院のために
IV 強化子の与え方(中神正博)
1 強化と強化子の意味
1.正の強化・負の強化
2.正の弱化・負の弱化
2 強化子の種類
1.無条件性(一次性・非学習性)強化子
2.条件性(二次性・習得性)強化子
3 強化子の効果的な与え方
1.強化子の与え方の4要件
(1)即時性
(2)随伴性
(3)確立操作
(4)特性に合わせた強化子の選択
2.強化子のステップアップ(一次性強化子から二次性強化子へ)
V 歯科診療や保健指導のための視覚支援
1 初診時の視覚支援(矢崎史郎)
1.初診時の医療面接で視覚支援を説明する
(1)来院前の準備ー初診時に考えておくこと
(2)来院後の対応
2.口腔内診察時に行う視覚支援
(1)患者さんの行動の理由・立場を理解する
(2)診療の見通しをつけるための視覚支援
(3)「TellShowDo」で行う視覚支援
3.どんな視覚支援が効果的かを検討する
(1)具体物や写真,文字,線画などどんなもので示すと理解しやすいか
(2)味覚,触覚,聴覚,視覚,嗅覚などの感覚の偏りはあるか
(3)好きなことや「こだわり」を知る
4.再診時のために必要な説明と準備
2 歯磨き指導時に必要な視覚支援(志鎌みな子)
1.歯磨きに使用する道具の視覚支援
(1)歯磨き時の道具の絵カード
(2)ボードを使用した視覚支援
2.歯ブラシの持ち方の説明
3.歯ブラシの動かし方の説明
4.歯磨きの順序
5.プラーク除去の説明
3 検査時に必要な視覚支援(矢崎史郎)
1.X線写真撮影
2.歯周検査
VI 歯科におけるコミュニケーションと視覚支援(高原 牧・緒方克也)
1 歯科におけるコミュニケーションとは
1.患者さんの意志を汲み取るための視覚支援
2.コミュニケーションの意味
コラム『ダウン症候群』
2 患者さんが選択する歯科診療
1.患者さんの自己選択を取り入れた診療
2.自己選択の例-補綴物合着の手順
3 患者さんとの相互交渉
1.相互交渉のためのツール
2.相互交渉へのステップ
4 コミュニケーションのための絵カード
1.PECSを応用した絵カードの役割
2.さまざまな絵カードの種類
(1)基本コミュニケーションのための絵カード
(2)治療の進行について
(3)治療への希望について
(4)治療への感想について
文献
索引
視覚支援ツール「すぐに使える絵カード」
処置編
コミュニケーション編








