やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社


 歯科医療の進歩発展に伴う手術適応の拡大や治療の高度化,そして薬剤使用の増加や適応範囲の拡大による予期しない歯科治療中の合併症の増加が予測されています.また,基礎疾患を多く有する高齢者の受診の増加に伴い,歯科治療中の患者状態の急変などに対する救急処置の対応が求められています.
 このような歯科治療救急の場で即座に対応するために,疾患の原因,症状,処置法などをなるだけ簡潔に記載し,シェーマなどを入れ分かりやすいようにするとともに,予防,予後についても記載したのがこのポケットマニュアルです.
 本書の内容は急な歯痛や外傷による歯,骨,軟組織の損傷などの救急疾患に対応するための処置法,そして歯科治療中に偶発的に発現する局所麻酔や外科的処置,歯内療法,補綴処置での合併症に対する救急の対応処置を,臨床の場で実践できるように具体的に記載してあります.
 また,歯科治療中の患者状態の急変に対する初期対応としての救急処置法を,2005年11月に国際蘇生連絡協議会から発表された「心肺蘇生に関わる科学的根拠と治療勧告コンセンサス(CoSTR)」に基づいて記載してあります.更に巻末には,医科との連携医療に必須となる血液検査の基準値を,そして日常の歯科臨床で使用する頻度の高い歯科適応のある抗菌薬と救急薬品の用法と用量を記載しました.
 本書が歯科医師臨床研修医をはじめ,多くの歯科臨床医,そしてスタッフの方々の歯科医療救急処置に役立つことになれば幸いです.
 菅原利夫
1. 歯科における救急疾患
 1)急性歯髄炎(河野隆幸)
 2)急性壊死性潰瘍性歯肉炎・歯周炎
 3)膿瘍・蜂窩織炎(山田朋弘)
 4)外傷(森 悦秀)
  (1)硬組織の損傷
   (1)歯の脱臼
   (2)歯の破折
   (3)骨折
    歯の固定法,顎内・顎間固定法
  (2)軟組織の損傷
   止血法
   縫合法
 5)顎関節脱臼
2. 歯科治療中の救急処置
 1)局所麻酔時の偶発症および合併症(三島克章)
  (1)全身的反応
   (1)アレルギー反応
   (2)中毒反応
  (2)局所的反応
   (1)神経損傷
   (2)キューンの貧血帯
   (3)注射針の破折
   (4)血腫
   (5)粘膜壊死
   (6)感染
 2)抜歯時の偶発症および合併症
   (1)軟組織損傷(山田朋弘)
   (2)他歯の損傷
   (3)顎関節脱臼
   (4)抜歯中の歯根の破折
   (5)上顎洞穿孔
    口腔上顎洞瘻閉鎖術
   (6)下顎管損傷
   (7)周囲組織への歯根や異物の迷入
   (8)誤抜歯(上山d哉)
   (9)顎骨の損傷
   (10)患歯,充填物・義歯の誤飲・気管内吸引
   (11)抜歯後疼痛
   (12)後出血
 3)根管穿孔,髄床底穿孔(河野隆幸)
 4)皮下気腫(鳥井康弘)
 5)補綴物などの誤嚥
 6)器具による軟組織損傷
 7)薬品による軟組織損傷
3. 一次救命処置,二次救命処置
 1)BLS(樋口 仁)
 2)ALS
 3)ショック
 4)誤嚥,窒息
 5)アナフィラキシー(宮脇卓也)
 6)喘息発作
 7)高血圧緊急症および切迫症
 8)脳卒中
4. 局所麻酔薬(前田 茂)
 1)局所麻酔薬と血管収縮薬
 2)局所麻酔薬のアレルギー
 3)局所麻酔薬の毒性
 4)局所麻酔薬の循環への影響
 5)併用注意
5. 感染に対する処置(南 克浩)
 1)病院感染と感染経路
 2)標準予防策
 3)血液媒介病原体由来感染

 付録(松村達志)
 1 血液検査基準値
 2 救急薬品・抗菌薬

 参考文献
 索引