やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

推薦
 愛歯技工専門学校学校長
 クワタカレッジ校長
 ボストン大学歯学部客員教授
 桑田 正博
 『歯科臨床のエキスパートをめざして vol.IIボンディッドレストレーション』(山崎長郎監修)は,私が久しぶりに熟読した歯科の本であった.その中で特に心を引きつけられた1冊が「トゥースホワイトニング」である.序文には「なぜ,トゥースホワイトニングがボンディッドレストレーションのシリーズにあるのか――疑問に思われた方……」とあるが,疑問に思うその人が自分でもあった.しかしこの本を読んでいくうちに,そうした疑問も打ち消される.「……トゥースホワイトニングは,歯冠修復治療と同じように,診査,診断に基づく治療と再評価,メインテナンスという体系を確立し,そして,単なる「歯を白くする処置」から脱皮し,歯冠修復治療において必ず考慮すべき項目……」と,これまでに世界のどの学会でも示されてこなかったトゥースホワイトニングに対する見解を,前例にこだわることなく示していることに価値があり魅力を感じる.
 そして本書『クリニカルトゥースホワイトニング』では,全編にわたって“北原フィロソフィー”が展開され,「ホワイトニングのための診査・診断」がわかりやすく整理されている.そして驚くことに,診査・診断に基づく処置の難易度を8項目(歯の変色度合い,色の傾向,バンディングの程度,スポットの程度,顔の色,表面性状,1歯における修復の程度,処置部における修復の程度)に整理してあり,しかもレーダーチャートによって簡単にわかりやすく説明しようと試みている.まさしく臨床を熟知した者による臨床書となっている.この本はクックブック的技術書ではない,「WHY」を問いかけ,「HOW」を知ることができるように工夫されている.
 北原先生は私が敬愛する友人であり,このたびの出版を特別に嬉しく思っている.クワタカレッジで共に学んでいる学徒の中にあって,彼の純粋一途な姿が一際輝いて見えてきた.私が長年夢に見てきた「日本発の歯科」――.北原信也先生の書籍が,これからの「日本の歯科」を象徴しているようにさえ思えてきた.
 2006年11月

 アメリカ・ニューポートビーチ
 Sheets & Paquette Dental
 Cherilyn G.Sheets
 あのニューヨーク・ブロードウェイミュージカルの「アニー」の有名なせりふで,アニーがこういうところがあります.「あなたの可愛い笑顔が一緒じゃないと,ドレスアップしているとは言えないわよ!」――今日,世界中どこでも,笑顔が喜ばれるのは当然ですし,美しい笑顔,言い換えると若さもバイタリティもある笑顔が求められています.笑顔の奥に,長い人生遍歴を忍ばせる変色歯が見えたり,薬物や外傷の結果の暗い闇のような欠損が表れたりすると,せっかくの笑顔そのものにある若さとバイタリティは消え去り,個人としての自信も弱々しくなります.現在,われわれはかつてないほど広範囲な,地球規模での患者の審美達成願望の渦中にいることを実感します.
 最も人の関心を引きつけ,最も侵襲の少ない,最も説得力ある容姿を高める技術のなかにトゥースホワイトニングがあります.北原信也先生は,われわれ歯科界に世界規模で通用するトゥースホワイトニングに関する総合的なテキストブックを提供されました.
 本書『クリニカルトゥースホワイトニング』は,ユニークな概念理論をもった,有意義な書籍として歯科への文献的な貢献をしています.著者が本書で示したイラストレーション,テクニック,ヒントは,歯の漂白法から始まり,歯冠修復治療計画まで統合されており,これまでにない素晴らしい業績といえるでしょう.そして臨床書として,処置の難易度を区分するシステムが,経験の有無にかかわらず,すべての臨床家に極めて有効なガイドを提供しています.この書籍が,将来,トゥースホワイトニングの分野におけるゴールデンスタンダードとなることを私は確信しています.
 2006年11月


 トゥースホワイトニングの奥がこれほど深いとは……,本書製作の最終段階に至り,改めて中身を確認してみると,そのことがよくわかる.私も,つい5年前,いや3年前は,トゥースホワイトニングを「単純に歯を白くする手技」「底の浅い美容歯科」程度にしか認識していなかったのである.
 ――3年ほど前になるが,トゥースホワイトニングの講習会を行うので講師をやってほしいという依頼を受けた.当時,確かに3年間で2,000症例ほどの施術を経験しており,トゥースホワイトニングについては自信をもっていた.しかし,施術は単純で,テクニックも要せず,また術後の予測も,やってみなければわからないといったあいまいさもあり,何か教えるものがあるのか?と思い,一度は断ろうと考えた.それに当時は,修復治療や,修復治療と歯周組織との生物学的,審美的な関係に興味の主体があったことも理由としてある.そんな時,2,000症例も行っていながらやりっぱなしで,全く分析,整理していなかったことに気がつき,スタッフ総動員で整理を始めた.すると,今まであまり考えることなく行っていたトゥースホワイトニングだが,少なからず法則が存在することに気がついた.これだったらお話しすることができると思い,講師をお引き受けすることにした.
 そして,それから3年――.
 トゥースホワイトニングのセミナーの講師を続けながら,受講生からいただいた疑問点,そして私自身が感じていた疑問に少しでも答えるように,情報のアップデートを加えてきた.いわば,本書『クリニカルトゥースホワイトニング』は,著者が到達したトゥースホワイトニングの臨床のエッセンスを,読者の立場になって編纂し直したといえるものである.その中身を端的に言えば,「この書は単なる症例集や処置の方法を説明したものではなく,トゥースホワイトニングを修復治療の中に組み込んだうえで,そして診査,診断の必然性を示した初の試みの書」といえよう.
 トゥースホワイトニング専門医ではない一臨床医にすぎない著者であるがゆえに,当然,修復処置も多い.実際,これまでのトゥースホワイトニングの情報に接していて,著者が,修復処置との関連を最も知りたかったのである.したがって,修復処置がメインで,トゥースホワイトニングには興味がないといった審美修復治療を専門にしている先生方にこそ,本書を活用していただきたいと願う.もちろん,初めてトゥースホワイトニングに取り組もうと考えていらっしゃる読者の方々には,ぜひ本書で,今までとは違った,歯科医療として,歯冠修復治療のトゥースホワイトニングから,順番に学んでいただきたいと思うしだいである.
 最後に,本書を刊行するにあたり,超多忙のなか推薦の文を寄稿していただきました桑田正博先生,Cherilyn G.Sheets先生,京都で電子顕微鏡下の観察,実験を推進していただきました茂野啓示先生,いつも歯科治療全般にわたり教えをいただいている山崎長郎先生ならびにスタディグループSJCDの先生方,また今回の資料の整理を率先して行っていただいたトゥースホワイトニング担当の歯科衛生士・石川絵麻さんとノブデンタルオフィスのスタッフ一同,コンテンツづくりからサポートをしていただいた医歯薬出版株式会社 第二出版部・柳与志晴氏,そして,執筆,校正にわたり毎晩のようにつきあってくれた妻,数カ月も相手をしてあげることができなかった2歳の息子に心より感謝申し上げる.
 2006年11月
 北原 信也
 推薦 桑田正博・Sherilyn G.Sheets
 序
パターン別治療例
 1. 重症度別・難易度別治療例
  軽度着色・ローテクスチャー症例
  中度着色・ローテクスチャー症例
  重度着色・ローテクスチャー症例
  軽度着色・ミドルテクスチャー症例
  中度着色・ミドルテクスチャー症例
  重度着色・ミドルテクスチャー症例
  軽度着色・ハイテクスチャー症例
  中度着色・ハイテクスチャー症例
  重度着色・ハイテクスチャー症例
 2. 修復治療とのコンビネーション治療例
  ポーセレンラミネートベニア・軽度着色症例
  ポーセレンラミネートベニア・中度着色症例
  オールセラミックスクラウン・ポーセレンラミネートベニア・中度着色症例
 3. 顔色の違いによる症例
  白色系顔色・超重度着色・ハイテクスチャー症例
  赤色系顔色・テトラサイクリンによる重度着色・ローテクスチャー症例
  黒色系顔色・テトラサイクリンによる重度着色・ローテクスチャー症例
PART1 トゥースホワイトニング臨床の基本
 1-1 トゥースホワイトニングの臨床的位置づけの変化
 1-2 トゥースホワイトニングにおける着色と漂白,再着色のメカニズム
PART2 トゥースホワイトニングのための診査・診断
 2-1 トゥースホワイトニングにおける禁忌症と適応症
 2-2 トゥースホワイトニングにおける診査・診断
 2-3 修復治療にトゥースホワイトニングを組み込む際の診査・診断上の注意点
PART3 トゥースホワイトニングの臨床
 3-1 トゥースホワイトニングのためのカウンセリング
 3-2 トゥースホワイトニングのための器材選択
 3-3 トゥースホワイトニングの術式
 3-4 トゥースホワイトニングのメインテナンス
 3-5 修復治療とトゥースホワイトニングとのインターフェイス治療
トゥースホワイトニングQ&A
 Q1 トゥースホワイトニング用の薬剤は歯や身体に対して悪影響はありませんか
 Q2 トゥースホワイトニングを行っても効果が得られないのですが
 Q3 トゥースホワイトニングに年齢制限はありませんか
 Q4 事前あるいは当日に,患者にはどのようなことに注意してもらえばよいのでしょうか
 Q5 歯周疾患や齲蝕がある場合にトゥースホワイトニングはできるでしょうか
 Q6 どのようにしてトゥースホワイトニングのゴールを設定したらよいのでしょうか
 Q7 トゥースホワイトニング中に痛みが生じた場合にはどのようにしたらよいでしょうか
 Q8 ホームホワイトニング中に薬剤が漏れると言われたのですが
 Q9 再着色をさせないためにはどうしたらよいでしょうか
 Q10 診療所としてはトゥースホワイトニングをどのように位置づけたらよいでしょうか
 文献
 索引