やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
 インプラント治療が危険な治療といわれた時代は終焉を迎え,今や歯科医療の中核的な存在になりつつある.インプラント治療の台頭によって,分化していた歯科医療は収束傾向を示しており,文字通り「General Practitioner」の必須分野として確立することは疑いの余地がない.
 本書は,インプラント治療における海外のエビデンスばかりではなく,国内のインプラント臨床が歩んできた歴史の中から生まれたエビデンスというものも十分に考慮したインプラントの総合解説書である.
 歯科医療全般にいえることだが,欧米のエビデンスに支配された歯科学は,習慣や食文化,あるいは言語の異なる日本においては通用しない部分もあることは否めない.特に体質も体型も欧米人と異なっている日本人にとって,インプラント治療は不利な条件が多い.日本人の体質や体型,思想なども考慮した全人的な医療を実現するためには,日本の臨床で培ってきたエビデンスを上手く取り入れることも重要だと考える.
 インプラント治療というと,インプラントの埋入手術に焦点をあてることが多いが,それだけではインプラント治療の本質は理解できない.顎口腔系機能回復の一手段として,インプラント治療を見据えることで,インプラント治療は馴染みやすく,包括的な治療方法に変貌するのである.
 本書の執筆陣は,「患者を想うがゆえにインプラント治療に魅せられた」臨床の第一線で活躍する先生方である.
 本書が,氾濫するインプラントの情報を整理し,インプラント治療を行ううえでの一助になれば幸いである.
 2004年10月10日
 Director代表
 山崎長郎
Ultimate Guide IMPLANTS CONTENTS

・本書で使用した主な用語

第1章 インプラント治療のための基礎知識
 1.インプラントのための口腔解剖学(高橋常男)
  ・上顎骨の解剖
   上顎骨前面 上顎骨後面 上顎骨下面 上顎洞
  ・上顎洞底挙上術のための臨床解剖
  ・下顎骨の解剖
  ・口腔領域の神経
  ・口腔領域の動脈
  ・口腔領域の静脈
 2.代謝と治癒のメカニズム(井上 孝)
  ・骨生理学
  ・骨再生の活性化
  ・骨の修復を妨げる因子
  ・骨の病態
  ・創傷の治癒
  ・骨膜と粘膜の役割
  ・インプラントと骨界面(オッセオインテグレーションとバイオインテグレーション)
  ・インプラント周囲骨の代謝
  ・インプラントの種類と骨結合
  ・アパタイトインプラントとブラスティングされたチタンインプラントの比較
  ・歯周組織とインプラント周囲組織(アンキローシスを起こした歯と移植した歯の違い)
 3.インプラントの種類と特徴(編集委員会)
  ・臨床応用されてきたインプラントの経緯
  ・近代インプラントの種類と特徴
  ・オッセオ(バイオ)インテグレーテッドルートフォーム・インプラント

第2章 治療計画
 1.診査・診断(萩原芳幸)
  ・治療計画
  ・インプラントの治療計画
  ・インプラントに必要な診査・診断の概要
  ・トップダウントリートメントの概念
  ・診断用模型と診断用ワックスアップ
  ・インプラントにおける画像診断
 2.上部構造の種類とデザイン(土屋賢司)
  ・セメントリテイニング上部構造の利点と欠点
  ・スクリューリテイニング上部構造の利点と欠点
  ・オーバーデンチャーの利点と欠点
  ・上部構造の設計基準
  ・上部構造形態の基本
 3.インプラントの選択基準(編集委員会)
  ・骨質・骨量・骨形態に基づいたインプラントの選択
 4.オッセオインテグレーテッドインプラントの選択(小濱忠一)
  ・骨質に応じたインプラントの選択
  ・骨量に応じたインプラントの選択
  ・骨幅に応じたインプラントの選択
  ・骨形態に応じたインプラントの選択
 5.手術計画と患者への説明(萩原芳幸)

第3章 インプラントにおける初期治療(木村洋子)
 1.リスクファクターの管理
  ・口腔内病変の治療
  ・歯周病とインプラント
  ・インプラント初期治療における歯周治療の実際

第4章 インプラント埋入手術(一次手術)(河奈裕正,朝波惣一郎,中川種昭)
 1.スタッフの準備,手洗い
  ・スタッフの役割分担
  ・手洗い前
  ・手洗い
  ・水分の清拭
  ・術衣の着用
  ・滅菌グローブの着用
  ・患者への術前処置
  ・手術器材の準備
 2.局所麻酔とドレーピング
  ・麻酔薬剤と麻酔法の選択基準
  ・術中全身管理の実践
  ・ドレーピング
 3.インプラント埋入手術
  ・切開と剥離
  ・インプラント埋入
 4.縫合
  ・縫合糸と縫合針の選択
  ・フラップの復位と縫合の手順
第5章 オーグメンテーションを用いたインプラント埋入手術
 1.GBR法の概論(月岡庸之,新村昌弘,高橋恭久,勝山英明)
  ・GBR法の歴史的背景
  ・移植材の有無とその選択
  ・術式の分類
  ・メンブレンの選択基準
  ・診査・診断
  ・1回法インプラント埋入
  ・症例
  ・2回法インプラント埋入
  ・症例
 2.サイナスリフトを用いたインプラントの埋入(栗林伸之,高橋恭久,勝山英明)
  ・サイナスリフト(sinus lift)の定義
  ・サイナスリフトの分類
  ・サイナスリフトの利点・欠点
  ・サイナスリフトの診査と治療計画
  ・サイナスリフトの術式
  ・症例
 3.オステオトームテクニック(中島 康,月岡庸之,高橋恭久,勝山英明)
  ・オステオトームテクニックの適応症と限界
  ・ITIインプラントを用いたオステオトームテクニックの外科術式
  ・症例
  ・考察
 4.抜歯後即時埋入とディレイド埋入の利点と欠点(植松厚夫)
  ・抜歯後即時埋入とディレイド埋入の利点と欠点
  ・おわりに
 5.抜歯即時埋入インプラント(新村昌弘,月岡庸之,高橋恭久,勝山英明)
  ・一次閉鎖の手法
  ・分類
  ・症例
 6.抜歯即時インプラント―HAコーテッドインプラント(林 揚春)
  ・治療手順
  ・治療のポイント
  ・症例
  ・まとめ

第6章 粘膜貫通手術(2回法における二次手術)(茂野啓示)
 1.ヒーリングアバットメントの選択
  ・二次手術
  ・目的
  ・症例

第7章 印象採得と技工用(ガム)模型の製作(千葉豊和)
 1.印象採得
  ・印象材の種類と選択
  ・カスタムトレーの製作
  ・クローズドトレー法(トランスファー法)
  ・オープントレー法(ピックアップ法)
  ・症例
 2.技工用(ガム)模型の製作
  ・技工用(ガム)模型の製作方法
  ・アバットメントの選択

第8章 プロビジョナルレストレーション
 1.プロビジョナルレストレーションの概念(日高豊彦)
  ・インプラントのプロビジョナルレストレーション
  ・プロビジョナルレストレーションの装着方法
  ・各治療ステップにおけるプロビジョナルレストレーション
 2.プロビジョナルレストレーションに求められる物性(城戸寛史,榊 恭範,上田秀朗)
  ・プロビジョナルレストレーションに使用される材料
  ・機械的強度
  ・テンポラリーシリンダーとレジンの接着/嵌合
  ・軟組織(歯肉)との親和性
  ・形態修正
 3.プロビジョナルレストレーションの製作(城戸寛史,榊 恭範,上田秀朗)
  ・前歯部欠損症例におけるプロビジョナルレストレーション
  ・臼歯部遊離端欠損におけるプロビジョナルレストレーション
  ・無歯顎におけるプロビジョナルレストレーション
 4.インプラントの理想的な咬合とは(城戸寛史,榊 恭範,上田秀朗)
  ・咬合様式の基本
  ・臼歯部離開咬合のメカニズム
  ・インプラントの咬合力負担能力
  ・インプラントの咬合接触
  ・上部構造の種類による咬合の選択
  ・術式と咬合
  ・症例

第9章 即時負荷・早期負荷インプラント(小宮山彌太郎)
 1.即時負荷(イミディエート・ローディング)インプラント
  ・即時負荷インプラントの実際
  ・今後の展開
  ・おわりに

第10章 最終上部構造の製作と装着
 1.セメンティングによる上部構造の装着(皆川 仁)
  ・症例1 プロセラを用いた前歯部審美補綴
  ・症例2 メタルボンドを用いた臼歯部最終上部構造の製作
 2.仮着セメンティングによる術者可撤式上部構造(皆川 仁)
 3.スクリューリテンションの上部構造(皆川 仁)
 4.磁性アタッチメント(田中譲治)
  ・インプラントへの磁性アタッチメントの応用
  ・磁性アタッチメントの利点
  ・磁性アタッチメントの補綴設計指針
  ・全部床義歯および部分床義歯への具体的設計

第11章 予後管理
 1.セルフケア(土屋和子)
 2.プロフェッショナルケア(土屋和子)

第12章 その他のテクニック
 1.プロビジョナル・インプラントの応用(堀内克啓)
  ・症例
  ・まとめ
 2.自家骨移植における採取部位と採取方法(大畠 仁)
  ・診査と要点
  ・処置のための前準備
  ・採取部位と採取法
  ・自家骨採取および移植に役立つ器具・機材
 3.歯槽骨延長法―ディストラクション・オステオジェネシス(高橋 哲)
  ・ディストラクションの生物学的メカニズム
  ・歯槽骨延長術のインプラント治療への応用
  ・症例
  ・歯槽骨延長法の骨造成法における位置づけと今後の展望
  ・考察
 4.インプラントの撤去とその後の処置(下田恒久,向坊重広)
  ・撤去術に際しての術前検査
  ・撤去の実際
  ・症例
  ・まとめ
 5.多血小板血漿(PRP)の精製と臨床応用(渡辺孝夫)
  ・PRP精製のポイント
  ・症例
  ・PRPの適用意義
 6.下歯槽神経移動術に伴う神経損傷への対処法(渡辺孝夫)
  ・下歯槽神経移動術の術式
  ・下歯槽神経損傷と症状の評価
  ・症例
  ・下歯槽神経損傷のメカニズム
  ・下歯槽神経損傷に対する対処法
 7.チタン・ミニプレートを固定源とする新しい成人矯正治療―スケレタル・アンカレッジ・システム(SAS)について(菅原準二,梅森美嘉子,長坂 浩,川村 仁)
  ・インプラント矯正とは
  ・スケレタル・アンカレッジ・システム(SAS)とは
  ・SASによる歯の移動メカニクスとその適応症
  ・症例
  ・SAS治療の7つのポイント

第13章 Aim for IMPLANTS
 1.インプラントの未来(井上 孝)
  ・インプラントと再生医療
  ・歯科治療の問題点
  ・インプラントの限界への挑戦
  ・インプラントの限界を助ける(1)―生体組織の再生力の限界に挑戦
  ・Tissue engineering(組織工学)のインプラントへの応用
  ・インプラントの限界を助ける(2)―生体組織の強化
  ・インプラントの未来への幕開け
 2.インプラント補綴治療の展望(山崎長郎)
  ・症例解説
  ・症例
  ・症例解説
  ・症例
 索引