序文
本書は都の城南地区の診療所から数々のエキサイティングな難症例,珍症例をお受けする都立荏原病院歯科口腔外科の歯科臨床最前線報告です.お気の向くまま開いたページから,飲み物片手にリラックスした気分で読み始めて下さい.開業の先生や歯科衛生士さんがお読みになれば,「いたいたっ!こんな患者さん」とか「こんな急患が飛び込んできたらどうしよう?」などと共感を覚えて下さると思います.ところにより目を丸くしたり,クスッと微笑んでいただけたら最高に幸せです.歯科を志す学生さんは歯科医の日々にどんなことが待ち受けているのか垣間見られるでしょう.きっと元気も湧いてきます.一般の方々には嫌われがちな歯科医への認識が新たになるかもしれません.
皆さんは「逆紹介」,「病院歯科共同治療管理料」という言葉をご存じでしょうか.前者は紹介状なしで病院を受診した患者さんで,診療所でも充分に対応可能な場合,住居近くの診療所へ逆に紹介すること.後者はかかりつけ歯科医が患者さんとともに病院歯科を訪れて協同で治療した場合に,紹介元,紹介先双方が診療報酬を算定できるものです.いずれも社会保険に取り入れられていますが,これらはもともと都立荏原病院のオリジナルです.診療の現場に院外の医師の見学すら許さない病院も少なくないなか,当院は平成6年に,当時画期的な「病診連携」を最重点課題として新装再開院しました.地域医療機関との共存共栄をはかる開かれた病院として,診療所・病院の双方が機能分担すべき患者さんを診ることを目指したのです.
病院は開院と同時に機関紙「連携便り」を発刊しました.総合病院では小さな存在である歯科を外に向けて宣伝しようと,平成8年2月から「歯科のコラム」の連載を始めました.掲載される原稿は事前に病院上層部のチェックを受けます.コラムは当科の院内に向けてのアピールをも兼ねていました.
当科のスタッフはお互いを思いやり,非常に仲がいいのが自慢です.本書でも随所に登場する,親父ギャグ連発,同僚や患者さんを苦笑,苦悶させる市川医長.障害者歯科と補綴が“命”.霞を食べながら昼飯返上で,時間外まで診療に技工に没頭する長谷川医長.そして,複数方向から同時に発せられたオーダーにも,瞬時に優先順位をつけて,てきぱきと対応する美人の歯科衛生士3人.多彩な非常勤歯科医たち.スタッフ内の人間関係がよくなければ,患者さんに対して心の余裕をもって応対できません.この余裕を背景に,大学病院よりはるかに敷居の低い存在となって,地域の歯科連携医のお役に立てればといつも願っています.開院2年足らずで歯科連携医数は900人に達し,医科連携医数をはるかに上回りました.皆さんが難症例,珍症例を続々と送って下さるため,話題に事欠きません.当初は2年も連載できればと考えていた「歯科のコラム」は現在も続き,医科連携医にまでも愛読されています.継続は力です.(本文中に当院ホームページ上の「歯科のコラム」へのアクセス方法が載っています)
今では「荏原病院の歯科はわれわれ開業医の駆け込み寺だよ.」と言われるまでになりました.本書をお読み下されば城南7歯科医師会連携医と当科の間に,「お互いの顔が見える緊密な連携関係」ができたわけをご理解いただけると思います.
病院歯科は不採算部門とされ,全国的に苦戦しています.本書を通じて,地元の絶大な支援のもと,城南地区に忙しく楽しく,元気印で働く病院歯科があることを知っていただければ幸いです.
2004年10月1日 佐野晴男
本書は都の城南地区の診療所から数々のエキサイティングな難症例,珍症例をお受けする都立荏原病院歯科口腔外科の歯科臨床最前線報告です.お気の向くまま開いたページから,飲み物片手にリラックスした気分で読み始めて下さい.開業の先生や歯科衛生士さんがお読みになれば,「いたいたっ!こんな患者さん」とか「こんな急患が飛び込んできたらどうしよう?」などと共感を覚えて下さると思います.ところにより目を丸くしたり,クスッと微笑んでいただけたら最高に幸せです.歯科を志す学生さんは歯科医の日々にどんなことが待ち受けているのか垣間見られるでしょう.きっと元気も湧いてきます.一般の方々には嫌われがちな歯科医への認識が新たになるかもしれません.
皆さんは「逆紹介」,「病院歯科共同治療管理料」という言葉をご存じでしょうか.前者は紹介状なしで病院を受診した患者さんで,診療所でも充分に対応可能な場合,住居近くの診療所へ逆に紹介すること.後者はかかりつけ歯科医が患者さんとともに病院歯科を訪れて協同で治療した場合に,紹介元,紹介先双方が診療報酬を算定できるものです.いずれも社会保険に取り入れられていますが,これらはもともと都立荏原病院のオリジナルです.診療の現場に院外の医師の見学すら許さない病院も少なくないなか,当院は平成6年に,当時画期的な「病診連携」を最重点課題として新装再開院しました.地域医療機関との共存共栄をはかる開かれた病院として,診療所・病院の双方が機能分担すべき患者さんを診ることを目指したのです.
病院は開院と同時に機関紙「連携便り」を発刊しました.総合病院では小さな存在である歯科を外に向けて宣伝しようと,平成8年2月から「歯科のコラム」の連載を始めました.掲載される原稿は事前に病院上層部のチェックを受けます.コラムは当科の院内に向けてのアピールをも兼ねていました.
当科のスタッフはお互いを思いやり,非常に仲がいいのが自慢です.本書でも随所に登場する,親父ギャグ連発,同僚や患者さんを苦笑,苦悶させる市川医長.障害者歯科と補綴が“命”.霞を食べながら昼飯返上で,時間外まで診療に技工に没頭する長谷川医長.そして,複数方向から同時に発せられたオーダーにも,瞬時に優先順位をつけて,てきぱきと対応する美人の歯科衛生士3人.多彩な非常勤歯科医たち.スタッフ内の人間関係がよくなければ,患者さんに対して心の余裕をもって応対できません.この余裕を背景に,大学病院よりはるかに敷居の低い存在となって,地域の歯科連携医のお役に立てればといつも願っています.開院2年足らずで歯科連携医数は900人に達し,医科連携医数をはるかに上回りました.皆さんが難症例,珍症例を続々と送って下さるため,話題に事欠きません.当初は2年も連載できればと考えていた「歯科のコラム」は現在も続き,医科連携医にまでも愛読されています.継続は力です.(本文中に当院ホームページ上の「歯科のコラム」へのアクセス方法が載っています)
今では「荏原病院の歯科はわれわれ開業医の駆け込み寺だよ.」と言われるまでになりました.本書をお読み下されば城南7歯科医師会連携医と当科の間に,「お互いの顔が見える緊密な連携関係」ができたわけをご理解いただけると思います.
病院歯科は不採算部門とされ,全国的に苦戦しています.本書を通じて,地元の絶大な支援のもと,城南地区に忙しく楽しく,元気印で働く病院歯科があることを知っていただければ幸いです.
2004年10月1日 佐野晴男
都立荏原病院 佐野晴男の病診連携まっしぐら―地域歯科医療連携の最前線― もくじ
●1996
・白血球10万!連携医からの遷延性出血患者
・総入れ歯!!食欲は人間に最後まで残る?
・国民健康保険の審査員
・数万人に1人の確率 先天性無痛覚症患者さん
・無痛覚症患者さん
●1997
・口腔内治療装置が無呼吸症候群に効く!
・皮下気腫がエアタービンで生じた!
・ノートから拾った来訪者の声
・歯科の人物紹介シリーズ1 佐野晴男
・歯科の人物紹介シリーズ2・3 塚越完子・市川雄二
・亜鉛不足で味覚がなくなった!
・抜髄しても激痛が消失しなかった急患
・原因不明で厄介な三叉神経痛
・局所麻酔剤アレルギーの誤認症例
●1998
・授乳婦の智歯周囲炎に対する投薬は?
・医師・歯科医師も見落としがちな歯周病の危険性
・視線・挨拶は人間関係の潤滑油!
・局所麻酔剤アレルギーと誤解されている過換気症候群
・過換気症候群(2)
・過換気症候群(3)
・誤嚥の話(1)
・誤嚥の話(2)―金属を食べる男
・誤嚥の話(3)―そんときゃあ,切るよ!(1)
・誤嚥の話(4)―そんときゃあ,切るよ!(2)
・「チュラ大」からの見学団
●1999
・研修医,ビシビシしごいてます!
・痛みさえ感じない状態は幸せか?
・「むかつく患者さん」への対処法は?
・「火曜日の男」参上!
・耳の不自由な人は文字をどうイメージするか?
・耳の不自由な人はどう目覚ましをかけるのか?
・塚越先生,ありがとう!身体に気をつけて!
・市川先生・長谷川先生の自己紹介
・もう大丈夫!下歯槽管からの出血
・ついに市川先生に勝ちました!
・ゴルフでは,打者の前には立たないで!
●2000
・秘伝「山の神操縦法」とは?
・告白します!私はヤクをやりました
・小野田さんに「発見された」人
・あばら骨1本で拾った「小さな幸せ」
・不整な噛み合わせの先に待っているものは?
・埋伏智歯抜歯後に緊急入院となった症例
・流れ流れて,都立荏原病院歯科口腔外科 (1)
・流れ流れて,都立荏原病院歯科口腔外科 (2)
●2001
・流れ流れて,都立荏原病院歯科口腔外科 (3)
・歯根が口腔底に迷入してしまった!
・最近の3つのエピソード「これって筋弛緩剤?」
・歯科における「事故に至る方程式」とは?
・「歯科界のクロサワ」ついに登場!?
・どのようにして歯科医療事故は起きるのか?
・連携医の皆さんのおかげです!
・対応の難しい患者さんを初対面で見分けるコツ
・憂鬱な季節
・外来で名刺交換するお医者さん
・忘れがたい顔面・頸部腫脹の症例
●2002
・「入れ歯って,外れるんですね!」
・忘れがたい逆紹介の患者さん(1)
・忘れがたい逆紹介の患者さん(2)
・忘れがたい逆紹介の患者さん(3)
・1人ではないのは,心強いこと
●2003
・知っておくと何かと便利な失活抜髄法
・簡単な抜歯後の出血が止まらない!
・下歯槽管損傷による下口唇の知覚麻痺
・初めての外国出張の思い出
●1996
・白血球10万!連携医からの遷延性出血患者
・総入れ歯!!食欲は人間に最後まで残る?
・国民健康保険の審査員
・数万人に1人の確率 先天性無痛覚症患者さん
・無痛覚症患者さん
●1997
・口腔内治療装置が無呼吸症候群に効く!
・皮下気腫がエアタービンで生じた!
・ノートから拾った来訪者の声
・歯科の人物紹介シリーズ1 佐野晴男
・歯科の人物紹介シリーズ2・3 塚越完子・市川雄二
・亜鉛不足で味覚がなくなった!
・抜髄しても激痛が消失しなかった急患
・原因不明で厄介な三叉神経痛
・局所麻酔剤アレルギーの誤認症例
●1998
・授乳婦の智歯周囲炎に対する投薬は?
・医師・歯科医師も見落としがちな歯周病の危険性
・視線・挨拶は人間関係の潤滑油!
・局所麻酔剤アレルギーと誤解されている過換気症候群
・過換気症候群(2)
・過換気症候群(3)
・誤嚥の話(1)
・誤嚥の話(2)―金属を食べる男
・誤嚥の話(3)―そんときゃあ,切るよ!(1)
・誤嚥の話(4)―そんときゃあ,切るよ!(2)
・「チュラ大」からの見学団
●1999
・研修医,ビシビシしごいてます!
・痛みさえ感じない状態は幸せか?
・「むかつく患者さん」への対処法は?
・「火曜日の男」参上!
・耳の不自由な人は文字をどうイメージするか?
・耳の不自由な人はどう目覚ましをかけるのか?
・塚越先生,ありがとう!身体に気をつけて!
・市川先生・長谷川先生の自己紹介
・もう大丈夫!下歯槽管からの出血
・ついに市川先生に勝ちました!
・ゴルフでは,打者の前には立たないで!
●2000
・秘伝「山の神操縦法」とは?
・告白します!私はヤクをやりました
・小野田さんに「発見された」人
・あばら骨1本で拾った「小さな幸せ」
・不整な噛み合わせの先に待っているものは?
・埋伏智歯抜歯後に緊急入院となった症例
・流れ流れて,都立荏原病院歯科口腔外科 (1)
・流れ流れて,都立荏原病院歯科口腔外科 (2)
●2001
・流れ流れて,都立荏原病院歯科口腔外科 (3)
・歯根が口腔底に迷入してしまった!
・最近の3つのエピソード「これって筋弛緩剤?」
・歯科における「事故に至る方程式」とは?
・「歯科界のクロサワ」ついに登場!?
・どのようにして歯科医療事故は起きるのか?
・連携医の皆さんのおかげです!
・対応の難しい患者さんを初対面で見分けるコツ
・憂鬱な季節
・外来で名刺交換するお医者さん
・忘れがたい顔面・頸部腫脹の症例
●2002
・「入れ歯って,外れるんですね!」
・忘れがたい逆紹介の患者さん(1)
・忘れがたい逆紹介の患者さん(2)
・忘れがたい逆紹介の患者さん(3)
・1人ではないのは,心強いこと
●2003
・知っておくと何かと便利な失活抜髄法
・簡単な抜歯後の出血が止まらない!
・下歯槽管損傷による下口唇の知覚麻痺
・初めての外国出張の思い出





