やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに―この本を利用される人のために

 保険審査委員や疑義解釈委員を永く経験して,保険診療は担当規則をはじめ,多くの通達や疑義解釈事項があって歯科医でもしばしば混乱を招くことがあるのを知った.
 それを歯科医ではない人が学ぶには,まず第一に歯科医療に関する知識を修得し,次いで保険を勉強することになるので,たいへんな努力が必要と思われる.しかも,これらに関する図書はほとんど専門書の形で示されており,一般の人には難解であろうと推察される.本書は,このような人のために書かれた歯科医療と保険に関する入門書である.
 本書は大きく“歯の基礎知識“と“保険の基礎知識”そして“症例”の3編に分かれている.歯の基礎知識では,歯と周囲組織についての構造,名称,解剖的なことを解説し,次に歯の処置については,治療の流れに沿って多くのカラー図版や写真を使用し理解しやすいよう説明がなされている.また,〔付〕,〔解説〕などの項目を設け,高度な内容の説明や本文の補足,あるいは保険に関する用語などを解説した.さらに,大切な事項についての復習と知識の再確認を目的として〔設問〕を設け,独習できるように工夫した.保険の基礎知識では,レセプトがすぐに書けるように,レセプト欄に沿って解説を行い,内容としては,各項目についていろいろな角度からの解説と同時に記載例を示し,知識のまとめとして問題形式を取り入れ,〔正解〕,〔解説〕もつけて,知識の補填と整理に役立つように構成した.症例では,総仕上げとして,実際のカルテからレセプトの記載要領がわかるようになっており,症例ごとに解説がなされ,保険上の留意点が実例にそってわかりやすく理解されるよう配慮されている.最後の略記号については原語を付記して勉学の助けとした.
 以上のようにできるだけ見やすく,また判りやすいものをと心掛けたが,広範な歯科医学を一定のページのなかに集約するための制限や,保険に関しても,ある程度の範囲で打ち切ったため専門的立場からするとそれぞれ不備があろうかと思われる.これらは今後検討を加え,内容を充実すべく努力したいと思っている.他方,この本でよく勉強され,歯科医療あるいは保険に関して,ものたりなさを感じたときは,初心者の知識を超えたことの証明であって,本書の目的は十分に達せられたものと解釈してほしい.同時に,得られた知識を大切にし,自信をもっておおいに活用されることを期待するものである.本書が歯と保険に関する基礎的知識の修得のための参考書として役立つことを期待してやまない.
 最後に出版に際し症例写真をお貸しいただいた腰原 好,斉藤文明,一色泰成,角田正健の諸先生に深甚なる謝意を表すると同時に,上梓にあたって種々ご協力いただいた医歯薬出版株式会社の方々に厚くお礼を申し上げる.
 平成14年4月15日
 高橋一祐
歯の基礎知識
第1章 歯の知識
 歯の構造
 歯の種類と名称
 歯と歯周組織
 歯根の数と根管の数
 歯の記号
 歯式
 歯の方向用語
 口腔の名称と構造
第2章 初期う蝕の治療
 う蝕
    う蝕とは
    う蝕の分類
    う蝕以外の硬組織疾患
    歯の変色
    初期う蝕治療の意義
 歯の切削
    切削
    歯を削る範囲
    窩洞と窩洞形成
    切削の刺激
 歯髄覆罩法
    歯髄覆罩法とは
    間接歯髄覆罩剤の種類
    直接歯髄覆罩剤の種類
 修復材料
    修復材料の選び方
    修復材料の種類と特徴
第3章 痛くなった歯の治療
 痛くなった歯の状態
 歯髄炎の処置法
    除痛法
    歯髄切断法
    抜髄法
    根管充填
第4章 感染根管治療
 感染根管とは  感染根管治療
    根管の拡大,清掃
    根管の消毒と根尖病巣の治療
    根管充填
 ラバーダム防湿
第5章 X線撮影(画像診断)47
 撮影のいろいろ
    単純撮影
    パノラマ撮影
 X線フィルムの読み方
    充填物の状況
    歯槽骨の吸収
    根管充填,金属ポスト,異物,その他
    乳歯と後継歯牙
第6章 麻 酔
 麻酔の種類
 局所麻酔
    浸潤麻酔
    伝達麻酔
    表面麻酔
 吸入鎮静法
第7章 歯周治療
 歯周疾患とは
 歯周疾患はどうして起こるか
 歯周疾患の一般的症状
 程度と病型
 歯周病の分類
 歯周治療の進め方
    歯周疾患の診査・治療計画
    歯周基本治療の進め方
    歯周外科手術の進め方
    メインテナンス計画の立案,実施
 歯周疾患の評価指数と検査
    プラークの付着
    プラークの染め出し
    歯周ポケット測定検査
    歯の動揺度検査
    歯間離開度検査
    歯肉の炎症の評価
 歯周基本治療
    モチベーション
    プラークコントロール
    スケーリング
    スケーリング・ルートプレーニング
    歯間ポケット掻爬
    咬合性外傷に対する処置
 歯周外科手術
    歯周ポケット掻爬術
    新付着手術
    歯肉切除手術
    歯肉剥離掻爬手術
第8章 抜歯と手術
 抜歯
 手術
    抜歯窩再掻爬手術
    口腔内消炎手術
    歯槽骨整形手術
    歯槽堤形成手術
    浮動歯肉切除術
    歯根端切除手術,歯根嚢胞摘出手術
 急性炎症
 外傷
 口腔粘膜疾患
    歯肉炎
    口内炎
 口角炎
 投薬・注射
第9章 歯冠修復と欠損補綴
 歯冠形成
 印象採得
 鋳造歯冠修復
    鋳造歯冠修復とは
    インレー
    3/4冠,4/5冠
    全部鋳造冠
 歯冠補綴
    歯冠継続歯
    ジャケット冠
    硬質レジン前装鋳造冠
    帯環金属冠
 支台築造
 スタディモデル
 合着・接着材料
 ブリッジ
    ブリッジとは
    ブリッジの構成
    ブリッジの支台装置の種類
    ブリッジの作り方
 ブリッジの適応と設計上の留意点
 ブリッジ適用の症例
 局部床義歯
    局部床義歯とは
    局部床義歯の構成
    維持装置の種類
    局部床義歯の連結装置
    局部床義歯の作り方
 総義歯
    総義歯とは
    総義歯の構成
    総義歯の印象
    総義歯のかみ合わせと高さ
    総義歯の作り方
第10章 顎運動の基礎知識と保険関連検査
 上下顎の歯と顎関節の状態
 動きの範囲と基本的位置
 下顎の基本的運動
    運動の軸と関節
    運動の種類
    顆路
    下顎位,下顎運動再現の範囲
 咬合器
 保険における補綴関連検査
    平行測定
    下顎運動路描記法
    チェックバイト検査
    ゴシックアーチ描記法
    パントグラフ描記法
    〔付〕唇顎口蓋裂の歯科矯正

保険の基礎知識
第11章 レセプトと保険診療の仕組み
 レセプトの基礎知識
    レセプトの使用
    1人の患者に対するレセプトの枚数
    レセプトの様式
    レセプトの記入
    レセプトの提出
    レセプトのゆくえ
 医療保険の位置づけ
    通常の保険とは
    一般的な保険の種類
    社会保障制度
    医療保険の種類
    保険診療を行うには
 用語解説
第12章 請求明細書の書き方
 平成 年 月分
 医療機関コード
 保険医療機関の所在地および名称
 公費負担者番号および公費負担医療の受給者番号
 保険者番号
 被保険者証・被保険者手帳の記号・番号
 氏名,性別,年生
 職務上の事由
 傷病名部位
 診療開始日
 診療実日数
 初診料
    時間外
    休日
    深夜
    乳
    障
    障導
    紹
 再診料
 指導管理等
    歯科口腔衛生指導料
    継続的歯科口腔衛生指導料
    歯周疾患指導管理料
    歯科衛生実地指導料
    フッ化物局所応用
    フッ素洗口法指導
    歯科特定疾患療養指導料
    歯周疾患継続総合診療料
    病院歯科共同治療管理料
 投薬・注射
    投薬
    処方せん
    注射
 画像診断(エックス線検査)
    診断料
    撮影料
    フィルム料
    一連の症状確認の場合
    全顎撮影の場合
    パノラマ撮影の場合
    パノラマと標準型の場合
    画像診断の端数整理
    画像診断管理加算
 検査関連
    模
    平測
    EMR
    S培
    口腔内カラー写真
    歯周疾患継続治療診断料
    歯周組織検査
    その他
 処置
    普処
    覆罩
    填塞
    除去
    知覚過敏
    ラバー
    咬調
    抜髄
    感染根処
    根管貼薬
    根充
    抜髄即充
    感染即充
    加圧根充
    生切・失切
    スケーリング
    SRP
    PCur
    P処
 手術
    切開
    抜歯
    掻爬・付着・GEct・FOp
    その他
    特定薬剤
 麻酔
    伝麻
    浸麻
    IS
    その他
 歯冠修復および欠損補綴
    補診
    維持管理
    印象
    咬合
    試適
    歯冠形成
    支台築造
    充填
    充填材料
    EE・研磨
    鋳造歯冠修復
    前装冠
    金属冠・乳
    継続歯
    ジ
    硬ジ
    仮
    リテイナー
    装着材料
    再装着
 ブリッジ
    ポンティック
    装着
    バー
    修理
    有床義歯
    床裏装
    床修理
    人工歯
    鋳造鉤・線鉤・フック・スパー
    義歯調整
    その他/197,198
 在宅医療
    歯科訪問診療料
    訪問歯科衛生指導料
    診療情報提供料
 摘要
 歯科衛生士の歯科衛生実地指導料に関する留意事項
    歯科衛生実地指導料について
    かかりつけ歯科医の加算について
    う蝕多発者に対する実地指導およびフッ化物局所応用の加算について
    フッ素洗口法指導加算について
 老人保健の歯科診療点数
    歯科口腔疾患指導管理料
    老人有床義歯調整指導料
    老人歯科慢性疾患生活指導料
    老人訪問口腔指導管理料
 唇顎口蓋裂の歯科矯正の点数

症例
 1.アマルガム充填,光 CR充填,1歯2窩洞
 2.メタルインレー
 3.CRインレー
 4.同一月内の再充填
 5.麻酔抜髄:失活抜髄
 6.生活歯髄切断・失活歯髄切断
 7.感染根管治療・消炎処置
 歯周治療
 8.歯周基本治療:単Gのスケーリング
 9.歯周基本治療:P↓1↓ のスケーリング
 10.歯周基本治療:スケーリング・ルートプレーニング(SRP)
 11.歯周基本治療:歯周ポケット掻爬(PCur)
 12-1.歯周外科:歯周ポケット掻爬術(その1)
 12-2.歯周外科:歯周ポケット掻爬術(その2)
 13-1.歯周外科:ルートプレーニングとフラップ手術(歯肉剥離掻爬手術・その1)
 13-2.歯周外科:ルートプレーニングとフラップ手術(歯肉剥離掻爬手術・その2)
 13-3.メインテナンス:P継診,P総診
 14.歯周外科:GEct(複雑性歯肉炎)
 15.歯周炎治療薬の応用
 16.歯科口腔衛生指導料:初期う蝕小窩裂溝填塞
 17.継続的歯科口腔衛生指導料:歯科衛生実地指導・フッ化物塗布・フッ化物洗口指導
 18.乳歯治療(5歳未満):サホライド,初期う蝕填塞処置,生切,IS応用,鋳造歯冠修復,乳歯金属冠
 19.号泣のため診療不能
 20.5歳未満・障害者加算
 21.FCK,4/5CK冠
 22.レジン(RJK)および硬質レジンジャケット冠(HJK),歯冠継続歯(SK),硬質レジン前装鋳造冠(前装CK)
 23.ブリッジ:前歯の3/4支台と前装鋳造冠支台
 24.ブリッジ:前歯の硬質レジン前装鋳造冠
 25.ブリッジ:臼歯のワンピース法とろう着法
 26.ブリッジ:延長ポンティック
 27.局部床義歯:屈曲バー,保持装置使用例
 28.総義歯:残根上の義歯,GoA,ChB,義歯による Dul
 29.義歯修理(抜歯→旧義歯への増歯)・床裏装
 30.脱離・再装着:FCK,ブリッジ(メタルコア)
 31.破損・修理:SKダツリ・修理,ブリッジ・ポンティック修理
 32.未装着:FCK,ブリッジ,義歯
 33.外科手術:切開,難抜歯,水平埋伏智歯抜歯
 34.在宅医療:歯科訪問診療,義歯修理と歯周治療
 35.老人保健:有床義歯(総義歯)作製
 36.老人保健:義歯不適合とP

 おもな略称
  傷病名
  処置・手術名ほか
  初診・再診・指導管理・検査・診断
  歯冠修復・欠損補綴
  麻酔・注射・薬剤
  歯科用医薬品
  エックス線
 解答
  歯の基礎知識
  保険の基礎知識

 参考文献
 さくいん