序文
2012 年4 月に本書の前身である『CAD/CAMデンタルテクノロジー』を発刊したが,当時はデジタルデンティストリーの黎明期として,CAD/CAMテクノロジーが歯科医療に取り込まれ,少しずつ普及し始めた頃であった.その後5 年が経過したが,その間には加速度的に進展し,現在では補綴治療および装置の製作プロセスには欠かせない存在となっている.
CAD/CAMテクノロジーは4 つの要素(スキャニング,CAD,CAM,加工)から構成されるが,最初のデータの取り込み作業であるスキャニング(計測)は,主として歯科技工士が用いる模型スキャナー,歯科医師が用いる口腔内スキャナーによって行われるが,いずれもスキャン精度が格段に向上し,従来から行われてきたアナログ的な精密印象とほぼ遜色のない状態まで革新した.また,作業時間,操作性もよくなり,口腔内スキャナーを用いれば,最終修復物まですべてデータの送受信のみで完結できるようになった.また,CADソフトの開発・改良によって,クラウン・ブリッジだけではなく,インプラントアバットメント,サージカルガイド,上部構造,部分床義歯,全部床義歯,矯正装置などほぼすべての修復物・補綴装置に対応できるようになってきた.さらにCAMソフトや加工装置は工業界からの流用で精度,製作時間,価格なども改善されて,歯科医院や歯科技工所においてコンパクトに活用できるようになった.とりわけ最近では付加造形加工装置としての3 Dプリンターが歯科用に改良され,個人トレーや咬合床などの製作から,作業用模型やレジンパターンなどのように精度や表面性状が要求されるものまで製作可能となってきた.
海外の歯科医療界においてはデジタル化が加速度的に進展し,国境を越えて補綴装置などの製作・流通が行われているが,日本においてはCAD/CAMシステムの普及はまだまだ先進諸国と同等とは言い難い.しかし,2014 年4 月に医療保険に「CAD/CAM冠」が導入されたことは,わが国のデジタルデンティストリーに大きな光明を見出すことになり,大きく前進しつつある.さらに,欠損補綴治療の1 つとして確実に治療オプションに加えられたインプラント治療では,規格製品を使用することからCAD/CAMテクノロジーの活用に適し,コーンビームCTとのコラボレーションによって検査,診断から埋入手術,上部構造の製作まで一貫してCAD/CAMシステムのソリューションが適用できるようになっている.
臨床においては,すでに実用化され,治療や技工サイドでは避けて通れないCAD/CAMシステムも,歯科医学教育・歯科技工士教育の現場では遅れているようである.早急に系統だった教育が必要と思う.CAD/CAMテクノロジーの進化した内容を数多く取り入れ,5 年ぶりにリニューアルした本書は,前回の執筆者である(一社)日本デジタル歯科学会のオーソリティーに,さらに強力なメンバーを加えて刷新した.臨床現場だけでなく,教育分野においても本書が積極的に活用されることを願っている.
2017 年7 月
(一社)日本デジタル歯科学会
理事長 末瀬一彦
2012 年4 月に本書の前身である『CAD/CAMデンタルテクノロジー』を発刊したが,当時はデジタルデンティストリーの黎明期として,CAD/CAMテクノロジーが歯科医療に取り込まれ,少しずつ普及し始めた頃であった.その後5 年が経過したが,その間には加速度的に進展し,現在では補綴治療および装置の製作プロセスには欠かせない存在となっている.
CAD/CAMテクノロジーは4 つの要素(スキャニング,CAD,CAM,加工)から構成されるが,最初のデータの取り込み作業であるスキャニング(計測)は,主として歯科技工士が用いる模型スキャナー,歯科医師が用いる口腔内スキャナーによって行われるが,いずれもスキャン精度が格段に向上し,従来から行われてきたアナログ的な精密印象とほぼ遜色のない状態まで革新した.また,作業時間,操作性もよくなり,口腔内スキャナーを用いれば,最終修復物まですべてデータの送受信のみで完結できるようになった.また,CADソフトの開発・改良によって,クラウン・ブリッジだけではなく,インプラントアバットメント,サージカルガイド,上部構造,部分床義歯,全部床義歯,矯正装置などほぼすべての修復物・補綴装置に対応できるようになってきた.さらにCAMソフトや加工装置は工業界からの流用で精度,製作時間,価格なども改善されて,歯科医院や歯科技工所においてコンパクトに活用できるようになった.とりわけ最近では付加造形加工装置としての3 Dプリンターが歯科用に改良され,個人トレーや咬合床などの製作から,作業用模型やレジンパターンなどのように精度や表面性状が要求されるものまで製作可能となってきた.
海外の歯科医療界においてはデジタル化が加速度的に進展し,国境を越えて補綴装置などの製作・流通が行われているが,日本においてはCAD/CAMシステムの普及はまだまだ先進諸国と同等とは言い難い.しかし,2014 年4 月に医療保険に「CAD/CAM冠」が導入されたことは,わが国のデジタルデンティストリーに大きな光明を見出すことになり,大きく前進しつつある.さらに,欠損補綴治療の1 つとして確実に治療オプションに加えられたインプラント治療では,規格製品を使用することからCAD/CAMテクノロジーの活用に適し,コーンビームCTとのコラボレーションによって検査,診断から埋入手術,上部構造の製作まで一貫してCAD/CAMシステムのソリューションが適用できるようになっている.
臨床においては,すでに実用化され,治療や技工サイドでは避けて通れないCAD/CAMシステムも,歯科医学教育・歯科技工士教育の現場では遅れているようである.早急に系統だった教育が必要と思う.CAD/CAMテクノロジーの進化した内容を数多く取り入れ,5 年ぶりにリニューアルした本書は,前回の執筆者である(一社)日本デジタル歯科学会のオーソリティーに,さらに強力なメンバーを加えて刷新した.臨床現場だけでなく,教育分野においても本書が積極的に活用されることを願っている.
2017 年7 月
(一社)日本デジタル歯科学会
理事長 末瀬一彦
第1章 歯科用CAD/CAMシステムの現状
(末瀬一彦)
第2章 CAD/CAMシステムの基礎的知識
(村山 長)
1 コンピュータと情報処理
2 CAD/CAMシステムとは
3 CAD/CAMシステムと関連システム
4 CAD/CAMシステムの歴史
5 さまざまな分野のCAD/CAMシステム
6 三次元形状計測
7 形状モデルの表現方法
8 CADにおける形状モデリング
9 CAMとNC工作機械
10 CAE
11 システム間のデータ交換
第3章 歯科用CAD/CAMシステムの構成
1 歯科用CAD/CAMシステムの歴史(堀田康弘,宮ア 隆)
2 歯科用CAD/CAMシステムの分類(堀田康弘,宮ア 隆)
3 スキャニング(模型スキャナー/瓜生博伺,口腔内スキャナー/末瀬一彦)
4 CAD(荘村泰治)
5 CAM(木村健二,浅野真吾,鈴木俊男,上鵜瀬美奈)
6 加工装置の種類(切削加工装置/井川知子,小川 匠,付加造形加工装置/小田 豊)
第4章 歯科用CAD/CAMシステムで使用する材料
(伴 清治)
第5章 歯科用CAD/CAMシステムの基礎的研究
1 適合精度(三浦宏之)
2 強度(新谷明一,黒田聡一,横山大一郎)
3 歯科用CAD/CAMシステムのISO規格作成の現状(橋英和)
第6章 歯科用CAD/CAMシステムの臨床応用
1 保険適用のCAD/CAM冠(末瀬一彦)
2 セラミック修復のポイント(中村隆志,宮前守寛)
3 フルジルコニアクラウンのポイント(三浦宏之)
4 有床義歯への応用 ―部分床義歯への応用―(田中晋平,西山弘崇,馬場一美)
5 有床義歯への応用 ―全部床義歯への応用―(大久保力廣)
6 インプラント診断・設計・手術支援への応用(水木信之)
7 インプラント上部構造への応用(前歯部への応用/佐藤琢也,臼歯部への応用/山下恒彦)
8 矯正歯科への応用(橋場千織)
9 顎運動装置との連携(近藤尚知,金村清孝)
10 3Dプリンターと生体情報の活用(木原琢也,二川浩樹)
第7章 歯科用CAD/CAMシステムのソリューション化
(今田智秀)
第8章 歯科用CAD/CAMシステムに関するエビデンス
(木本克彦,丸尾勝一郎,星 憲幸)
第9章 歯科用CAD/CAMシステムの将来展望
(堀田康弘,宮ア 隆)
参考文献
索引
(末瀬一彦)
第2章 CAD/CAMシステムの基礎的知識
(村山 長)
1 コンピュータと情報処理
2 CAD/CAMシステムとは
3 CAD/CAMシステムと関連システム
4 CAD/CAMシステムの歴史
5 さまざまな分野のCAD/CAMシステム
6 三次元形状計測
7 形状モデルの表現方法
8 CADにおける形状モデリング
9 CAMとNC工作機械
10 CAE
11 システム間のデータ交換
第3章 歯科用CAD/CAMシステムの構成
1 歯科用CAD/CAMシステムの歴史(堀田康弘,宮ア 隆)
2 歯科用CAD/CAMシステムの分類(堀田康弘,宮ア 隆)
3 スキャニング(模型スキャナー/瓜生博伺,口腔内スキャナー/末瀬一彦)
4 CAD(荘村泰治)
5 CAM(木村健二,浅野真吾,鈴木俊男,上鵜瀬美奈)
6 加工装置の種類(切削加工装置/井川知子,小川 匠,付加造形加工装置/小田 豊)
第4章 歯科用CAD/CAMシステムで使用する材料
(伴 清治)
第5章 歯科用CAD/CAMシステムの基礎的研究
1 適合精度(三浦宏之)
2 強度(新谷明一,黒田聡一,横山大一郎)
3 歯科用CAD/CAMシステムのISO規格作成の現状(橋英和)
第6章 歯科用CAD/CAMシステムの臨床応用
1 保険適用のCAD/CAM冠(末瀬一彦)
2 セラミック修復のポイント(中村隆志,宮前守寛)
3 フルジルコニアクラウンのポイント(三浦宏之)
4 有床義歯への応用 ―部分床義歯への応用―(田中晋平,西山弘崇,馬場一美)
5 有床義歯への応用 ―全部床義歯への応用―(大久保力廣)
6 インプラント診断・設計・手術支援への応用(水木信之)
7 インプラント上部構造への応用(前歯部への応用/佐藤琢也,臼歯部への応用/山下恒彦)
8 矯正歯科への応用(橋場千織)
9 顎運動装置との連携(近藤尚知,金村清孝)
10 3Dプリンターと生体情報の活用(木原琢也,二川浩樹)
第7章 歯科用CAD/CAMシステムのソリューション化
(今田智秀)
第8章 歯科用CAD/CAMシステムに関するエビデンス
(木本克彦,丸尾勝一郎,星 憲幸)
第9章 歯科用CAD/CAMシステムの将来展望
(堀田康弘,宮ア 隆)
参考文献
索引

















