やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

序文
 1990年に『1週間でマスターするキャストパーシャル〈上・下〉』が発刊されてから20年以上が経過した.この間,多くの読者のなかからキャストパーシャルの製作者が誕生したことは,患者さんにとって喜ばしいことであろう.また,当時はメジャーではなかったキャストパーシャルが,この本をきっかけに一気にブレークスルーしたことは,筆者としても喜びである.
 さて,現在,総人口に占める65歳以上の老年人口は20%を超え,1990年の発刊時に予感したとおり,キャストパーシャルはますますボリュームセラーとなっている.前著で勉強され,当時の基本セオリーに共感された方にとっては,器材の進歩に対応した新技法が知りたいという思いがあるのは事実であろう.また,これからキャストパーシャルに取り組もうという人にとっても,実用に即した解説書が必要なはずである.
 そこで,最新の器材に対応し,さらに簡便化した「新」らくらく製作法を紹介するのが本書である.
 キャストパーシャルは現在,欠損補綴全体を視野に入れたものとして変化しつつある.キャストパーシャルはハイブリットデンチャーの根幹であり,補綴構造設計がそれを根底から支えている.「生命維持装置」の製作者として「匠」の世界に到達するためには,生命とリンクした「食べる」ことの重要性と,その崇高な「歯科技工」の意味合いを後世に伝達する責務が,私たちには課せられている.本書では,小細工的な安易な装置ではない,キャストパーシャルのさらなる進歩と実力,そしてその永続性を示している.
 それでは,私とつながる多くの人々に,本書を捧げる.
 2012年9月 川島 哲
 序文
オリエンテーション
 オリエンテーション1 キャストパーシャルをブレークスルーさせたい君へ
  ・鋳造床? キャストパーシャル?
  ・これからのキャストパーシャル
  ・ものごとの本質をとらえよう
 オリエンテーション2 人口動態からみた「超」高齢化社会
  ・デンチャーは必然的に欠損補綴のボリュームゾーンとなる!
 オリエンテーション3 これからの歯科技工士のあり方とは
  ・歯科技工士になってよかった!
  ・なぜ私は積極的に技術公開を行うのか?
  ・歯科技工士を教育する,その役割について
  ・バリュー(価値)あるものは自身を語らない
  ・ヤングテクニシャンはなぜリタイアするのか?
第1日目 基本設計の基礎知識をマスターしよう
 いま,求められているキャストパーシャルデザインの肩代わり能力
  ・デザイン(設計)するとは?
  ・臨床において歯科医師と歯科技工士が目指すべきデザイン
  ・基本設計の肩代わり能力を労働対価として
 キャストパーシャルはレストを学ぶことからはじめよう
  ・基本設計の実際
  ・キャストパーシャルのデザインはレストで決まる
  ・レストの設計の基本とは
  ・レストレーションはどのように行うか
  ・レストの臨床例
  ・レストの底面はなぜスプーン形態につくるのか
  ・トゥースプレパレーションとガイドプレーンの付与について
 レストの設定をレッスンしてみよう
 基本設計の手順をマスターしよう
 口腔内の条件や患者さんの背景をどのように考えるか
 EXERCISE キャストパーシャルの基本設計を行ってみよう
 「第1日目」のチェックポイント
第2日目 補綴構造設計の基礎知識をマスターしよう
 補綴構造設計に取り組む決意を
  ・近代的ないくつかのアイテムを取り揃えよう
  ・幅と厚みとたわみ量の関係についてこれだけは知っておこう
  ・君はわざわざ余分な研磨作業をしたいか
 なぜキャストクラスプの製作に「ラピッドフレックスパターン」を用いるのか
  ・君は現代歯科学,現代歯科技工学の子だ
  ・なぜキャストクラスプの製作に既製パターンを用いなければならないのか
  ・なぜラピッドフレックスシステムの既製パターンを用いるのか
 「ラピッドフレックスパターン」のカットの仕方をマスターしよう
 EXERCISE 「ラピッドフレックスパターン」のカット量を求めてみよう
 メタルはCo-Cr合金を使おう
  ・メタルが違っても同じ太さのクラスプにつくる不思議
  ・どんなメタルを用いればよいか
 キャストクラスプは6種類だけ覚えよう
  ・キャストクラスプは6種類覚えるだけでよい
  ・ローチクラスプを知っていると便利!
 キャストクラスプのアンダーカット量の基準を覚えよう
  ・ラピッドフレックスシステム以外はきれいさっぱり忘れてよい
  ・ 6つのクラスプについてアンダーカット量の基準を覚えておくと便利!
  エーカースクラスプは先端寄りをアンダーカットに入れよう
 I-barクラスプは小帯を避けて走行させよう
  ・ I-barクラスプは小帯を避けて走行させよう
  ・ラピッドフレックスシステムによるI-barクラスプの走行
 「第2日目」のチェックポイント
第3日目 維持力を数値化したキャストクラスプの製作法をマスターしよう
 らくらく精密計測のデンタルサベイヤーを知っているか
  ・そのまま口腔内にぴたりと入るキャストパーシャルをつくる
  ・船乗りのトレーニングは帆船で行っているけれども
  ・使ったらやめられない「TKサベイヤー」
  ・アンダーカット量の「らくらく精密計測」
  ・ブロックアウト部の「らくらくトリミング」
  ・テーパートゥールは教科書の世界だけのもの
  ・「Unit III」を使っている場合の対処法
 クラスプアームの長さを正確に測定できるか
  ・クラスプアームの長さの「らくらく測定」
 簡便CCM表を使いこなそう
  ・キャスト後のクラスプの研磨分をどう見込むか
  ・簡便CCM表をどう用いるか
 EXERCISE 簡便CCM表を使ってみよう
 維持力を設定したキャストクラスプをつくってみよう
 I-barクラスプの先端はどのように処理するか
 クラスプの研磨はどのように行うか
  ・なぜ一般的にわざわざ時間のかかる無駄な方法をとっているのか
  ・クラスプはラバー研磨のみとする
  ・クラスプの内面は研磨するのか研磨しないのか
 電解研磨は行ったほうがよい
  ・電解研磨は必要
  ・電解研磨の使用上の注意点は何か
 連続クラスプの維持力はどのように設定するか
  ・少しも難しくない連続クラスプの補綴構造設計と維持力の設定
 リングクラスプには補助アームを応用しよう
  ・リングクラスプの場合でアンダーカット量があまりとれないときはどうしたらよいか
 「第3日目」のチェックポイント
第4日目 各種コネクターの補綴構造設計をマスターしよう
 たわまないリンガルバーの標準寸法はどれくらいか
  ・メジャーコネクターはたわまないようにつくる!
  ・リンガルバーは形態的にたわみにくいけれども
  ・たわまないリンガルバーの標準寸法の数値は?
 リンガルプレートはどんな場合につくるのか
  ・リンガルプレートはできるだけつくらない
 パラタルバーとパラタルプレートはどう使い分けるか
  ・パラタルバーよりも圧倒的に多いパラタルプレートの適応
  ・パラタルバーは中と前後の2 つだけを覚えればよい
 たわまないパラタルプレートやパラタルバーをつくろう
  ・パラタルプレートは形態的にたわみやすい
  ・パラタルプレートやパラタルバーの補強は厚みの増加で考える
  ・たわまないパラタルプレートやパラタルバーの最大厚みの数値は?
 フィニッシュラインは補強線としても考えよう
 パラタルプレートやパラタルバーの厚みの補強をレッスンしてみよう
 EXERCISE パラタルプレートの厚みを補強してみよう
 各種ワックスでリンガルバーやパラタルプレートをつくってみよう
  ・各種ワックスでリンガルバーをつくってみよう
  ・各種ワックスでパラタルプレートをつくってみよう
 マイナーコネクターの厚みはどれくらいにするか
  ・折れないマイナーコネクターの標準寸法の数値は?
 デンチャーベースコネクターはどのようにつくるか
  ・上顎のデンチャーベースコネクターはどうつくるか
  ・下顎のデンチャーベースコネクターはどうつくるか
  ・総義歯に近い少数残存歯の場合のデンチャーベースコネクターはどうつくるか
 「第4日目」のチェックポイント
第5日目 耐火模型の「らくらく製作法」をマスターしよう
 耐火模型をつくるにあたって忘れてはならない準備作業
  ・もう君は耐火模型上でワックス作業ができる
  ・リリーフ箇所で忘れてならないところはどこか
  ・リリーフ量をどの程度とするか
  ・クラスプラインを耐火模型に簡単……正確に転写するにはどうしたらよいか
  ・ブロックアウト部で忘れてならないところはどこか
 寒天複印象法はできればやめよう
  ・寒天は食べるだけにしよう
 耐火模型の「らくらく製作法」
  ・超精密シリコーン複印象材の取り扱い
  ・耐火模型材の注入
 加圧埋没器を使って高精度の耐火模型をつくろう
 耐火模型材には何を選ぶか
  ・なぜ「Optivest」をすすめるか
  ・これだけは守ろう! 高い鋳造精度のための耐火模型材の取り扱い
 ああ! 面倒な寒天複印象法
  ・寒天複印象法は時間がかかる
  ・耐火模型材との相性は?
 「第5日目」のチェックポイント
第6日目 ワックスフィットテクニックとワックスジョイントテクニックをマスターしよう
 ワックス作業の旧世界から脱出しよう
  ・ここでちょっと一休みの「第6日目」
  ・建物を造った後で壁や柱を削ったり足したりするか
  ・キャストパーシャルのワックスは,盛り上げるのではなく貼り付ける
 各種ワックスを整理してみよう
  ・各種ワックスを整理してみよう
  ・各種ワックスを取り揃えてみよう
  ・既製リテンションを用いて立体的な維持装置をつくろう
  ・季節や地域によってワックスを使い分けよう
 ワックスフィットで失敗しないためには
  ・圧接目減りを生じないようにしよう
  ・らくらくワックスフィットのために
  ・瞬間接着剤の使用はやめよう
 ワックスジョイントで失敗しないためには
  ・ワックスフィットを行えばワックスジョイントが必ず必要
  ・ワックスジョイントで失敗しないためには
  ・これからは電気インスツルメントを使おう
 EXERCISE ワックスジョイントまでの工程を条件の厳しい応用編でチェックしてみよう
 「第6日目」のチェックポイント
第7日目 合理的なスプルーイングとキャスティングテクニックをマスターしよう
 クルーシブルフォーマーは上方に設定するか下方に設定するか
  ・クルーシブルフォーマー(円錐形部)の位置には2つのタイプがある
  ・クルーシブルフォーマーを耐火模型の下方に設定する場合
  ・クルーシブルフォーマーを耐火模型の上方に設定する場合
 スプルーイングの基本は何か
  ・キャストパーシャルの場合のスプルーイングとは
  ・後縁中央部でのスプルーイングは決して行うな!
  ・クルーシブルフォーマーを耐火模型の下方に設定する場合のスプルーイングの基本
  ・クルーシブルフォーマーを耐火模型の上方に設定する場合のスプルーイングの基本
  ・補助スプルーやエアベントは必要ない
 EXERCISE 各種ケースのスプルーイングを行ってみよう
 外埋没のプロテクニックをマスターしよう
  ・外埋没材は何を用いるか
  ・埋没用フラスコにスリットはナンセンス
  ・リキッドインベストメントでワックスパターンをコーティングしない
  ・焼き付き防止の効果などいらない
  ・加圧埋没で「らくらく埋没」を
  ・リン酸塩系埋没材に石鹸水を触れさせてはいけない
  ・計量後のメスシリンダーは必ず水洗いする
 ワックス焼却時のプロテクニックをマスターしよう
  ・加熱炉の温度表示を信用するな
  ・加熱炉内のどこに鋳型を置くか
 キャストのプロテクニックをマスターしよう
  ・るつぼは必ずコーティングしよう
  ・メタルの量は上下顎ともに21.28gを基準に考えよう
  ・鋳造機には何を選ぶべきか
  ・キャストで死んでも英雄にはならない
 割り出しのプロテクニックをマスターしよう
  ・キャスト後の鋳型は急冷してもよいか
  ・割り出し時の一番の失敗は鋳造体の変形である
  ・クラスプ変形防止のためのグッドアイデア
  ・粗い250μのアルミナサンドでサンドブラスティングしてはいけない
 研磨のプロテクニックをマスターしよう
  ・研磨の原則(1)は「大から小へ」である
  ・研磨の原則(2)は「数値化した形を変えないこと」である
  ・研磨の原則(3)は「変形させないこと」である
  ・スプルーカット部は厚みのあるカッティングディスクで調整する
  ・粗研磨を行う箇所は少ないほどよい
  ・粗研磨のあとはガラスビーズによるサンドブラスティングを行う
  ・クラスプやプロキシマルプレートは中研磨(ラバー研磨)のみとする
  ・仕上げ研磨(つや出し研磨)ではグリーンルージュは使わない
  ・超音波洗浄とスチームクリーナーでついに完成!
 「第7日目」のチェックポイント
  ・これだけは覚えてほしい臨床編
  ・すぐに役立つ器材編
  ・参考文献
  ・復刻版「Biosマニュアル」
  ・索引
  ・あとがき