やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社


 近年のわが国の歯科保健医療を取り巻く環境は,歯科保健水準の向上や歯科医療技術の急速な進歩など,大きな変革の時を迎えている.このような状況のなか,医療・介護サービスを充実させるための制度改革の一環として,平成26年6月に歯科技工士法などが改正され,平成27年度から歯科技工士国家試験が全国統一化された.
 それまでの歯科技工士国家試験は,実地試験の実施を考慮して,歯科技工士学校養成所の所在地の都道府県知事が試験を行っていた.しかし,その試験内容は都道府県ごとに差が認められ,その難易度にも差が見受けられる状態にあった.このため,厚生労働大臣免許に相応しい統一試験の実施の必要性が高まっている状況を受け,前記のとおり,歯科技工士国家試験の全国統一化がなされるに至った.これからの急速な高齢化の進展を踏まえ,国民に対して質の高い補綴物などを提供していく観点からも,この改正は大きな意味をもつ.
 本問題集の構成は,歯科技工士国家試験実施要綱,歯科技工士国家試験出題基準,2015〜2019年度の国家試験問題(学説試験問題と実地試験問題),オリジナル問題,および各問題の解答・解説編の別冊となっている.
 とりわけ今回は,2020年度の国家試験に対応するため,「2019年版 歯科技工士国家試験出題基準」に新たに追加された内容のオリジナル問題を約60問追加した.また,その他の既存問題についても出題基準に従って並び替えを行った.
 学生の皆さまにとって本問題集の使い方は多様であると考えられるが,国家試験を受験するにあたり,まず出題基準を十分に確認していただき,基本的な知識は,授業と歯科技工士教本でしっかりと学び,自らの実力を試すため,さらに知識の整理として本問題集を活用されることが望ましい.
 一方,教員の方々は,本問題集のオリジナル問題を単純に利用するだけでなく,より質の高い問題を作成するための基礎として有効に本問題集を活用していただき,学生の教育に役立てていただきたい.
 昨今の新型コロナウイルス感染症の影響により,環境の変化の戸惑いや不安を感じていることは想像に難くない.しかし,この困難な状況のなか,強い意志を持ち,自信をもって次年度の歯科技工士国家試験に臨んでほしい.
 皆さまの健闘を心から祈念する!
 令和2年8月
 全国歯科技工士教育協議会会長 大島克郎
国家試験実施要綱と過去問題の出題傾向
   1.実施要綱
   2.過去問題の出題傾向(出題基準分類表)
国家試験問題
 平成27年度(2016年2月実施)
   1.学説
   2.実地
 平成28年度(2017年2月実施)
   1.学説
   2.実地
 平成29年度(2018年2月実施)
   1.学説
   2.実地
 平成30年度(2019年2月実施)
   1.学説
   2.実地
 令和元年度(2020年2月実施)
   1.学説
   2.実地
オリジナル問題
 歯科技工と歯科医療(歯科技工管理学)
   1.歯科技工
   2.衛生行政
   3.歯科技工士法
   4.歯科技工管理
   5.歯科医療関係法規
 歯・口腔の構造と機能(口腔・顎顔面解剖学,顎口腔機能学)
  【口腔・顎顔面解剖学】
   1.歯の概説
   2.永久歯の形態
   3.歯の発生
   4.歯と歯周組織
   5.歯の異常
   6.歯列と咬合
   7.頭蓋の骨
   8.口腔周囲の筋
   9.口腔
  【顎口腔機能学】
   10.顎口腔系の形態
   11.顎口腔系の機能
   12.下顎位
   13.下顎運動
   14.歯の接触様式
   15.咬合器
 歯科材料・歯科技工機器と加工技術(歯科理工学)
   1.歯科材料の性質
   2.印象材
   3.石膏
   4.ワックス
   5.レジン成形
   6.セラミック成形
   7.金属成形
   8.切削・研削・研磨
   9.新しい加工技術
 有床義歯技工学
   1.有床義歯技工に関する基礎知識
   2.全部床義歯の特性
   3.全部床義歯の印象採得に伴う技工操作
   4.全部床義歯の咬合採得に伴う技工操作
   5.全部床義歯の人工歯排列と歯肉形成
   6.全部床義歯の蝋義歯の埋没と重合
   7.全部床義歯の咬合器再装着および削合,研磨
   8.部分床義歯の特性
   9-1.支台装置(1)(支台装置の種類)
   9-2.支台装置(2)(クラスプの製作)
   10.連結子
   11.部分床義歯の印象採得に伴う技工操作
   12.部分床義歯の咬合採得に伴う技工操作
   13.部分床義歯の人工歯排列と歯肉形成
   14.部分床義歯の蝋義歯の埋没とレジン重合
   15.義歯装着後の変化と対応
   16.その他の義歯
 歯冠修復技工学
   1.歯冠修復技工学の概要
   2.クラウンの概要と種類
   3.ブリッジの概要と種類
   4.クラウンとブリッジの具備要件
   5.クラウンとブリッジの製作
   6.歯冠修復物と部分被覆冠
   7.全部被覆冠
   8.ブリッジ
   9.インプラント
   10.CAD/CAMシステム
 矯正歯科技工学
   1.矯正歯科治療の概説
   2.矯正歯科技工用器械・器具・材料
   3.矯正歯科技工の基本的実技
   4.矯正用模型の製作
   5.矯正装置の必要条件と分類
   6.矯正装置の種類と製作
   7.保定装置
 小児歯科技工学
   1.歯・顎・顔面の成長発育
   2.小児の歯冠修復
   3.保隙装置
   4.スペースリゲーナー
   5.口腔習癖除去装置
   6.咬合誘導装置に用いる維持装置