序
　全国歯科技工士教育協議会の事業の一環として本書「歯科技工士試験問題・解答集」を刊行して，本年で33年目となりました．これまで本書を刊行するにあたり，問題の収集作業や解答の作成などに毎年ご協力を賜りました全国歯科技工士教育協議会加盟校の関係者に厚く御礼申し上げます．平成23年版も皆様方の絶大なるご支援によりまして，全国の都道府県の問題をすべて収載することができました．
　さて，昭和63年（1988年）7月20日に「歯科技工士試験出題基準」がはじめて発表されて以来，平成8年（1996年）7月3日付の改正を経て，これまで長年にわたり試験が実施されてきました．本書は，発行当初から学説試験については各都道府県で実施されているすべての出題問題を網羅してきましたが，各養成機関からの強い要望によりまして平成16年（2004年）からは実地試験の問題も収載されるようになりました．
　本書をご覧いただくと，残念ながら歯科技工士国家試験はいまだ全国統一化がなされていませんので，各都道府県の出題様式には大きなばらつきがあり，○×方式，多肢選択式，穴埋め記載式など千差万別であることがわかります．また既存の「出題基準」から逸脱したり，出題内容にも大きなばらつきがみられるようです．歯科技工士教育のスタンダード的存在である「新歯科技工士教本」（全12巻）が平成20年（2008年）に大幅改訂され，これまでほとんど見直しが行われてこなかった「歯科技工士国家試験出題基準」も厚生労働省のご尽力で改訂されるに至りました．平成24年実施の国家試験からは，いよいよ新しい出題基準で国家試験が行われます．「新歯科技工士教本」の編集と同様に，すでに歯科技工からは遠ざかっている材料や技術などは削除され，最近の歯科技工に必要な新しい内容が加えられています．そして何より，出題基準のなかに「これだけは守ってほしい試験問題の作成の留意点」が記載され，国家試験問題として常識的な出題がなされるように配慮された点は特記すべきことでしょう．全技協におきましても毎年の専任教員講習会で，「試験問題の作成方法」については各大学のスペシャリストから徹底的に研修を受けています．ぜひとも各校におかれましてもその成果を学生教育に反映していただきたいものです．一方，国家試験の全国統一化に関しても厚生労働省のご尽力に期待しているところですが，現在でも近隣の都道府県において共通の問題で国家試験を行ってもよいことが通知されています．したがいまして，国家試験の全国統一化の具現性を鑑みて，自校地域の過去問題の分析だけでなく，他地域の試験問題についても十分考察・検討され，学生の学力の正当な評価のためにも，良問作成への糧として十分ご活用いただきますようお願い申し上げます．
　本書発刊にあたりまして，ご協力を賜りました各地区国家試験問題世話役校ならびに全国歯科技工士教育協議会加盟校各位，また都道府県衛生部担当者，医歯薬出版株式会社関係各位に深甚なる感謝の意を表します．
　平成23年9月10日全国歯科技工士教育協議会
　会長　末瀬一彦