序文
近年,医療技術の進歩とともに診療における臨床検査の果たす役割もきわめて大きくなってきている.しかし,歯科医療においては一般医科に比較して,臨床検査を実施する機会も少なく,歯科医療従事者が検査に関する知識にもうとくなりがちであることも事実である.
一方,最近の傾向として,歯科に来院する患者が他科の医院や健診センターなどで行った検査データを持参したり,また患者自身が糖尿病,高血圧あるいは肝疾患などの慢性の疾患を有している場合,それぞれの疾患に対する知識も豊富である.さらに以前では歯科治療もおぼつかなかったような体調の高齢者や慢性疾患を有している患者に対する歯科治療の機会が増えつつある.
したがってこれらの患者に最初に接する機会が多い歯科衛生士として,病態を理解し,検査データについてもそのデータの表す意味や正常値を理解し,患者の全身状態をよく把握するためにも,臨床検査の知識は不可欠なものである.本書では,歯科来院患者で比較的遭遇することの多い疾患とその検査法および検査データの意義,正常値を中心に記載した.
旧本にない新しい章として,最近,歯科医院に来院する人のなかに糖尿病患者が増えていることを考えて,糖尿病の検査の章を10章に設けた.さらに11章には病理検査の項目を記載した.この分野は歯科衛生士が直接関係する分野ではない.しかし,近年重要な検査項目の一つになっているため,病理検査の基礎的な内容を理解してもらうことを目的として,図・写真を入れて簡潔にまとめた.
なお,12章の口腔領域の臨床検査では,旧本にあった軟化象牙質検査,電気歯髄診査,電気的根管長測定,歯周ポケット測定,歯科補綴学関係の適合検査などは,臨床各科目と重複するため,・2903・291A活動性試験と根管内細菌培養検査の二項目について解説した.
各章の内容と実習項目とを結びつけて理解できるように,必要とする実習項目は章末に掲載した.
巻末には,“付1. 正常値一覧”,“付2. 臨床検査で使用される略語と解説一覧”を掲載した.患者と応対する歯科衛生士がどのような臨床検査があり,正常値と疾患などとの関係の基礎知識を理解するのにおおいに役立つであろう.以上のように本書は歯科衛生士学校の学生が臨床検査の概要を理解し,臨床で検査の準備,介助および補助,患者との応対の際に役立つように構成されている.また本書は,歯科関係者の臨床検査法の入門書としても,大変参考になると思われる.
なお,本書の執筆にあたっては,次のように分担した.1章は斎藤,2章は大竹,牧村,3章は才藤,4章,5章は山口,6章は牧村,7章は大竹,牧村,8章は牧村,9章は才藤,10章は牧村,11章は才藤,12章は牧村,付1,付2は牧村が担当した.また9章では千葉大学医学部附属病院臨床検査部の吉田俊彦氏の助力をいただいた.
最後になったが,本書の執筆にあたり種々ご協力をいただいた教室員に深く感謝したい.
1995年8月 著者一同
近年,医療技術の進歩とともに診療における臨床検査の果たす役割もきわめて大きくなってきている.しかし,歯科医療においては一般医科に比較して,臨床検査を実施する機会も少なく,歯科医療従事者が検査に関する知識にもうとくなりがちであることも事実である.
一方,最近の傾向として,歯科に来院する患者が他科の医院や健診センターなどで行った検査データを持参したり,また患者自身が糖尿病,高血圧あるいは肝疾患などの慢性の疾患を有している場合,それぞれの疾患に対する知識も豊富である.さらに以前では歯科治療もおぼつかなかったような体調の高齢者や慢性疾患を有している患者に対する歯科治療の機会が増えつつある.
したがってこれらの患者に最初に接する機会が多い歯科衛生士として,病態を理解し,検査データについてもそのデータの表す意味や正常値を理解し,患者の全身状態をよく把握するためにも,臨床検査の知識は不可欠なものである.本書では,歯科来院患者で比較的遭遇することの多い疾患とその検査法および検査データの意義,正常値を中心に記載した.
旧本にない新しい章として,最近,歯科医院に来院する人のなかに糖尿病患者が増えていることを考えて,糖尿病の検査の章を10章に設けた.さらに11章には病理検査の項目を記載した.この分野は歯科衛生士が直接関係する分野ではない.しかし,近年重要な検査項目の一つになっているため,病理検査の基礎的な内容を理解してもらうことを目的として,図・写真を入れて簡潔にまとめた.
なお,12章の口腔領域の臨床検査では,旧本にあった軟化象牙質検査,電気歯髄診査,電気的根管長測定,歯周ポケット測定,歯科補綴学関係の適合検査などは,臨床各科目と重複するため,・2903・291A活動性試験と根管内細菌培養検査の二項目について解説した.
各章の内容と実習項目とを結びつけて理解できるように,必要とする実習項目は章末に掲載した.
巻末には,“付1. 正常値一覧”,“付2. 臨床検査で使用される略語と解説一覧”を掲載した.患者と応対する歯科衛生士がどのような臨床検査があり,正常値と疾患などとの関係の基礎知識を理解するのにおおいに役立つであろう.以上のように本書は歯科衛生士学校の学生が臨床検査の概要を理解し,臨床で検査の準備,介助および補助,患者との応対の際に役立つように構成されている.また本書は,歯科関係者の臨床検査法の入門書としても,大変参考になると思われる.
なお,本書の執筆にあたっては,次のように分担した.1章は斎藤,2章は大竹,牧村,3章は才藤,4章,5章は山口,6章は牧村,7章は大竹,牧村,8章は牧村,9章は才藤,10章は牧村,11章は才藤,12章は牧村,付1,付2は牧村が担当した.また9章では千葉大学医学部附属病院臨床検査部の吉田俊彦氏の助力をいただいた.
最後になったが,本書の執筆にあたり種々ご協力をいただいた教室員に深く感謝したい.
1995年8月 著者一同
1章 序説/1
I 検査はなぜ必要か……1
II 臨床検査と歯科衛生士の役割……3
1.臨床検査の補助および介助……3
2.検査の準備と患者への説明……3
III どんな検査があるのか……4
1.生体検査……4
2.検体検査……4
3.画像診断法……10
IV 検査成績の読み方……10
1.検査成績の表し方……10
2.正常値とその変動要因……12
V 臨床検査成績で疑われる疾患……13
VI 検査の依頼と検体取り扱い上の注意事項……14
1.検査の依頼……14
2.検査にあたっての注意事項……14
VII 口腔領域の検査……18
2章 生理検査(生体検査)体温・脈拍・血圧/19
I 生理検査(生体検査)とは……19
II 体温……20
1.体温測定の意義……20
2.体温の測り方……20
3.体温の変動……22
III 脈拍……23
1.脈拍測定の意義……23
2.脈拍の測り方……24
3.脈拍測定のポイント……25
IV 血圧……26
1.血圧測定の意義……26
2.血圧の測り方……27
3.血圧測定のポイント……28
V 生理検査の実習……29
1.体温の測定……29
2.脈拍の測定……30
3.血圧の測定……30
3章 尿検査/34
I 尿とは……34
II 尿検査の必要性……36
III 尿の採取……38
IV 尿検査でなにがわかるか……38
1.尿の外観……38
2.尿の量……40
3.尿のpH……40
4.尿の比重……42
V 尿中に含まれる物質……43
1.タンパク尿……43
2.特殊なタンパク(Bence Jonesタンパク)……43
尿の検査法……44
1.定性・半定量検査(タンパク)……44
2.定量法……45
3.尿糖……46
4.ビリルビン・ウロビリノーゲン……46
5.尿ケトン体(アセトン体)……46
VI 尿沈汁■査(顕微鏡で観察する場合)……48
VII 尿による腎機能検査……50
4章 血液検査と採血法/51
I はじめに……51
II 血液の概要……52
1.血液とは……52
2.造血……56
III 血液を試料とする検査……58
IV 採血法……59
1.採血時期……59
2.採血……59
3.試料の取り扱い……62
4.留意点……62
5章 血液型検査/63
I 血液型とは……63
II ABO式血液型……64
III Rh式血液型……68
IV 不規則抗体……70
V 交差適合試験……70
6章 貧血の検査/71
I はじめに……71
II 貧血の一般症状……72
III 貧血の分類……72
IV 貧血の種類……72
1.鉄欠乏性貧血……72
2.再生不良性貧血……73
3.悪性貧血……73
4.溶血性貧血……73
V 貧血の検査……74
1.赤血球(RBC)数……74
2.ヘモグロビン(Hb)量……77
3.ヘマトクリット(Ht)値……77
4.その他の検査……79
7章 出血性素因の検査/80
I 出血性素因とは……80
1.止血の仕組み……80
2.出血性素因の分類……81
3.出血性素因と臨床症状……84
II 出血性素因のスクリーニング検査……84
1.出血時間……84
2.全血凝固時間……85
3.毛細血管抵抗性試験……86
4.その他の検査……87
III 出血性素因に関する検査の実習……88
1.出血時間(Duke法)の測定……88
2.毛細血管抵抗性試験(加藤-上林法)……89
8章 感染症の検査/91
I 感染症とは……91
1.感染症の種類……91
II 感染症の検査……92
1.血液検査--白血球(WBC)数と血液像……92
2.赤血球沈降速度(ESR)の測定……94
3.C反応性タンパク(CRP)……95
4.抗ストレプトリジン-O(ASO)……95
5.梅毒血清反応……95
6.ウイルス性肝炎の検査……96
7.エイズ(AIDS)の検査と症状……102
9章 肝機能検査/105
I 肝臓の構造と機能……105
1.構造……105
2.機能……106
II 肝機能検査……111
1.タンパクの代謝に関する検査……111
2.脂質の代謝……115
3.ビリルビンの代謝に関する検査……115
4.色素排泄機能に関する検査……115
5.血清酵素の検査……116
10章 糖尿病の検査/121
I 糖尿病とは……121
1.糖尿病の種類……121
2.糖尿病の症状……123
3.糖尿病と合併症……123
II 糖尿病の検査法……123
1.尿検査(糖尿病患者の尿には,どのような異常がみられるか)……123
2.血糖値……125
3.グリコヘモグロビンA1c(Hb-A1c)……127
4.フルクトサミン……128
5.その他の検査……128
11章 病理検査/129
I 病理検査とは……129
1.細胞診(cytology)……130
2.生検(biopsy)……132
3.術中組織診……133
4.手術切除標本の組織診……133
5.病理解剖(剖検)……133 II 口腔領域における病理検査……134
1.硬組織の病理検査……134
2.口腔粘膜の病理検査……134
III 病理検査の実際……135
1.病理検体の採取方法……135
2.病理組織標本の作製方法……137
3.染色方法……137
4.特殊検査……139
5.その他……139
IV 病理検査実習……140
12章 口腔領域の臨床検査/141
I 齲蝕活動性試験……141
1.齲蝕活動性試験の方法……142
II 根管内細菌培養検査……145
1.細菌培養検査の方法……146
付1.正常値一覧……149
付2.臨床検査で使用される略語と解説一覧……152
参考図書……156
用語解説……157
さくいん……159
I 検査はなぜ必要か……1
II 臨床検査と歯科衛生士の役割……3
1.臨床検査の補助および介助……3
2.検査の準備と患者への説明……3
III どんな検査があるのか……4
1.生体検査……4
2.検体検査……4
3.画像診断法……10
IV 検査成績の読み方……10
1.検査成績の表し方……10
2.正常値とその変動要因……12
V 臨床検査成績で疑われる疾患……13
VI 検査の依頼と検体取り扱い上の注意事項……14
1.検査の依頼……14
2.検査にあたっての注意事項……14
VII 口腔領域の検査……18
2章 生理検査(生体検査)体温・脈拍・血圧/19
I 生理検査(生体検査)とは……19
II 体温……20
1.体温測定の意義……20
2.体温の測り方……20
3.体温の変動……22
III 脈拍……23
1.脈拍測定の意義……23
2.脈拍の測り方……24
3.脈拍測定のポイント……25
IV 血圧……26
1.血圧測定の意義……26
2.血圧の測り方……27
3.血圧測定のポイント……28
V 生理検査の実習……29
1.体温の測定……29
2.脈拍の測定……30
3.血圧の測定……30
3章 尿検査/34
I 尿とは……34
II 尿検査の必要性……36
III 尿の採取……38
IV 尿検査でなにがわかるか……38
1.尿の外観……38
2.尿の量……40
3.尿のpH……40
4.尿の比重……42
V 尿中に含まれる物質……43
1.タンパク尿……43
2.特殊なタンパク(Bence Jonesタンパク)……43
尿の検査法……44
1.定性・半定量検査(タンパク)……44
2.定量法……45
3.尿糖……46
4.ビリルビン・ウロビリノーゲン……46
5.尿ケトン体(アセトン体)……46
VI 尿沈汁■査(顕微鏡で観察する場合)……48
VII 尿による腎機能検査……50
4章 血液検査と採血法/51
I はじめに……51
II 血液の概要……52
1.血液とは……52
2.造血……56
III 血液を試料とする検査……58
IV 採血法……59
1.採血時期……59
2.採血……59
3.試料の取り扱い……62
4.留意点……62
5章 血液型検査/63
I 血液型とは……63
II ABO式血液型……64
III Rh式血液型……68
IV 不規則抗体……70
V 交差適合試験……70
6章 貧血の検査/71
I はじめに……71
II 貧血の一般症状……72
III 貧血の分類……72
IV 貧血の種類……72
1.鉄欠乏性貧血……72
2.再生不良性貧血……73
3.悪性貧血……73
4.溶血性貧血……73
V 貧血の検査……74
1.赤血球(RBC)数……74
2.ヘモグロビン(Hb)量……77
3.ヘマトクリット(Ht)値……77
4.その他の検査……79
7章 出血性素因の検査/80
I 出血性素因とは……80
1.止血の仕組み……80
2.出血性素因の分類……81
3.出血性素因と臨床症状……84
II 出血性素因のスクリーニング検査……84
1.出血時間……84
2.全血凝固時間……85
3.毛細血管抵抗性試験……86
4.その他の検査……87
III 出血性素因に関する検査の実習……88
1.出血時間(Duke法)の測定……88
2.毛細血管抵抗性試験(加藤-上林法)……89
8章 感染症の検査/91
I 感染症とは……91
1.感染症の種類……91
II 感染症の検査……92
1.血液検査--白血球(WBC)数と血液像……92
2.赤血球沈降速度(ESR)の測定……94
3.C反応性タンパク(CRP)……95
4.抗ストレプトリジン-O(ASO)……95
5.梅毒血清反応……95
6.ウイルス性肝炎の検査……96
7.エイズ(AIDS)の検査と症状……102
9章 肝機能検査/105
I 肝臓の構造と機能……105
1.構造……105
2.機能……106
II 肝機能検査……111
1.タンパクの代謝に関する検査……111
2.脂質の代謝……115
3.ビリルビンの代謝に関する検査……115
4.色素排泄機能に関する検査……115
5.血清酵素の検査……116
10章 糖尿病の検査/121
I 糖尿病とは……121
1.糖尿病の種類……121
2.糖尿病の症状……123
3.糖尿病と合併症……123
II 糖尿病の検査法……123
1.尿検査(糖尿病患者の尿には,どのような異常がみられるか)……123
2.血糖値……125
3.グリコヘモグロビンA1c(Hb-A1c)……127
4.フルクトサミン……128
5.その他の検査……128
11章 病理検査/129
I 病理検査とは……129
1.細胞診(cytology)……130
2.生検(biopsy)……132
3.術中組織診……133
4.手術切除標本の組織診……133
5.病理解剖(剖検)……133 II 口腔領域における病理検査……134
1.硬組織の病理検査……134
2.口腔粘膜の病理検査……134
III 病理検査の実際……135
1.病理検体の採取方法……135
2.病理組織標本の作製方法……137
3.染色方法……137
4.特殊検査……139
5.その他……139
IV 病理検査実習……140
12章 口腔領域の臨床検査/141
I 齲蝕活動性試験……141
1.齲蝕活動性試験の方法……142
II 根管内細菌培養検査……145
1.細菌培養検査の方法……146
付1.正常値一覧……149
付2.臨床検査で使用される略語と解説一覧……152
参考図書……156
用語解説……157
さくいん……159