「日本歯周病学会認定歯科衛生士スキルアップ」の刊行によせて
わが国では現在も成人の約6〜7割が歯周病に罹患していると言われ,未だに歯周病の予防と治療が広く国民に浸透しているとは言い難い状況です.日本歯周病学会は,1957年に歯周病を克服することにより自分の歯を1本でも多く保存することを目的に設立された学術団体であり,会員総数は2024年12月31日現在13,211名,その中で約3,600名が歯科衛生士会員で,それぞれの会員数は毎年増加傾向にあります.
歯周病予防・治療において歯科医師と歯科衛生士が連携してそれぞれの立場から患者に対して向き合うことにより,大きな治療効果を得ることができます.そのことからも,歯周病学・歯周治療学の研鑽に意欲的な,未来を担う歯科衛生士会員が増えていることを,本会はとても頼もしく感じています.
また本学会は,歯周治療における専門的知識と技能を有する歯科医師を育成するとともに,国民の口腔保健の増進にさらなる貢献をするために,認定医,歯周病専門医,指導医資格の制度を設けています.「歯周病専門医」に関しては,日本歯科専門医機構が認定する厚生労働省通知による広告可能な専門医として認められています.
それに加えて,歯周病への対応を的確かつ効率的に実施し,長期間にわたり国民の健康管理に貢献できる有能な歯科衛生士を認定して行くことも大切な使命とし,歯科衛生士の認定制度を本学会で設けています.この「認定歯科衛生士制度」は2005年に発足し,2024年12月31日までに1,484名の認定歯科衛生士が誕生しています.
本書は認定歯科衛生士の方々に対して,次のステージへのスキルアップを目指すことが可能なように,これまでの歯科衛生士向けのさまざまな教本とは異なる視点から各章が構成され,それぞれフルカラーのわかりやすい文章と図表で表現されています.手に取られて,歯科衛生士の仕事にはまだ新たな目標が数多く潜んでいることにお気づきになったのではないでしょうか.また新たに認定歯科衛生士を目指す方にとっても,これからの歯科衛生士業務の方向性を示す格好の指南書ともなるでしょう.ぜひ,多くの歯科衛生士の方々に本書をご活用いただきたいと思います.
結びに,この本の刊行は,本学会歯科衛生士関連委員会委員長の荒川真一先生(宝塚医療大学保健医療学部)を中心とした11名の執筆者による多大なご尽力と,多くの先生方のご協力があってこそ実現できたものです.ご多忙中にもかかわらず玉稿を御執筆いただき,度重なる校正にご協力いただいたことに,心より感謝申し上げます.また,本書の上梓にご理解とご助力をいただいた医歯薬出版株式会社編集部の皆様に感謝の意を表します.
2025年1月
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
理事長 沼部幸博
わが国では現在も成人の約6〜7割が歯周病に罹患していると言われ,未だに歯周病の予防と治療が広く国民に浸透しているとは言い難い状況です.日本歯周病学会は,1957年に歯周病を克服することにより自分の歯を1本でも多く保存することを目的に設立された学術団体であり,会員総数は2024年12月31日現在13,211名,その中で約3,600名が歯科衛生士会員で,それぞれの会員数は毎年増加傾向にあります.
歯周病予防・治療において歯科医師と歯科衛生士が連携してそれぞれの立場から患者に対して向き合うことにより,大きな治療効果を得ることができます.そのことからも,歯周病学・歯周治療学の研鑽に意欲的な,未来を担う歯科衛生士会員が増えていることを,本会はとても頼もしく感じています.
また本学会は,歯周治療における専門的知識と技能を有する歯科医師を育成するとともに,国民の口腔保健の増進にさらなる貢献をするために,認定医,歯周病専門医,指導医資格の制度を設けています.「歯周病専門医」に関しては,日本歯科専門医機構が認定する厚生労働省通知による広告可能な専門医として認められています.
それに加えて,歯周病への対応を的確かつ効率的に実施し,長期間にわたり国民の健康管理に貢献できる有能な歯科衛生士を認定して行くことも大切な使命とし,歯科衛生士の認定制度を本学会で設けています.この「認定歯科衛生士制度」は2005年に発足し,2024年12月31日までに1,484名の認定歯科衛生士が誕生しています.
本書は認定歯科衛生士の方々に対して,次のステージへのスキルアップを目指すことが可能なように,これまでの歯科衛生士向けのさまざまな教本とは異なる視点から各章が構成され,それぞれフルカラーのわかりやすい文章と図表で表現されています.手に取られて,歯科衛生士の仕事にはまだ新たな目標が数多く潜んでいることにお気づきになったのではないでしょうか.また新たに認定歯科衛生士を目指す方にとっても,これからの歯科衛生士業務の方向性を示す格好の指南書ともなるでしょう.ぜひ,多くの歯科衛生士の方々に本書をご活用いただきたいと思います.
結びに,この本の刊行は,本学会歯科衛生士関連委員会委員長の荒川真一先生(宝塚医療大学保健医療学部)を中心とした11名の執筆者による多大なご尽力と,多くの先生方のご協力があってこそ実現できたものです.ご多忙中にもかかわらず玉稿を御執筆いただき,度重なる校正にご協力いただいたことに,心より感謝申し上げます.また,本書の上梓にご理解とご助力をいただいた医歯薬出版株式会社編集部の皆様に感謝の意を表します.
2025年1月
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
理事長 沼部幸博
I編 基本事項について
CHAPTER 01 医療面接の勘所(杉原俊太郎)
1 医療面接
2 医療面接の技法
1)態度類型
2)質問形式
3 医療面接の実際
1)主訴
2)現病歴
3)現症
4)歯科的既往歴
5)全身的既往歴
6)家族歴
CHAPTER 02 プラークコントロールの確立とは(西田哲也)
1 プラークコントロールの重要性
2 O'Learyらのプラークコントロールレコード(PCR)
3 PCR検査の実際
1)前準備
2)歯面の染色
3)プラーク付着状態の検出
4)スコアの計算
4 良好なプラークコントロールの目安
CHAPTER 03 PMTCとは(野村正子)
1 歯面研磨,PTC,PMTCの違い
1)歯面研磨とは
2)PTCとは
3)PMTCとは
2 PMTCの手順
3 おわりに
II編 エキスパートを目指して
CHAPTER 01 歯周病の新分類を理解する(星 嵩)
1 歯周病の新分類の概説
2 「歯肉炎」の新分類
1)部位レベルの診断基準
2)一口腔単位の患者レベルの診断基準
3 「歯周炎」の新分類
1)歯周炎の診断基準
2)歯周炎のステージ分類
3)歯周炎のグレード分類
4 日本歯周病学会の新分類に対する対応
CHAPTER 02 化学的プラークコントロールとオーラルセルフメディケーション(五味一博)
1 はじめに
2 オーラルセルフメディケーションの考え方
1)洗口液の普及状態
3 洗口液による化学的プラークコントロール
1)洗口液の種類と特性
2)化学的プラークコントロールの効果
4 根面う蝕への対応
5 口腔粘膜の細菌コントロール
6 洗口液使用のクリニカルクエスチョン(CQ)
7 おわりに
CHAPTER 03 歯科衛生士が対応可能な覚醒時ブラキシズム(西山 暁)
1 覚醒時ブラキシズムとは ─TCHという概念
1)覚醒時ブラキシズム≠クレンチング
2)上下歯列接触癖(TCH)
2 覚醒時ブラキシズムと歯周病
3 覚醒時ブラキシズムの発生とリスクファクター
1)覚醒時ブラキシズム発生の生理学的機序
2)覚醒時ブラキシズム(TCH)のリスクファクター
4 TCHのコントロール
1)ステップ1:動機づけ
2)ステップ2:意識化訓練
3)ステップ3:競合反応訓練
4)ステップ4:強化
CHAPTER 04 禁煙支援の勘所(稲垣幸司・埴岡 隆)
1 喫煙を取り巻く現状
2 喫煙による影響
1)歯周組織への影響
2)免疫系への影響
3)プラーク形成への影響
3 歯周治療に対する禁煙の効果
4 日本歯周病学会の禁煙支援の実践手順
1)喫煙歴の把握
2)身体的ニコチン依存度(FTND)の判定
3)タバコの銘柄とニコチン量の把握
4)喫煙の蓄積量の把握
5)禁煙経験
6)身体的および心理的ニコチン依存度(TDS)の判定
7)禁煙への行動変容ステージの判定と同居する家族の喫煙状況
8)加濃式社会的ニコチン依存度調査票(KTSND)の判定
9)歯肉メラニン色素沈着の判定
5 禁煙支援のゴール
6 さまざまな禁煙支援法
7 おわりに
CHAPTER 05 インプラントに対する留意点(辰巳順一)
1 インプラント治療後のメインテナンスの目的
2 インプラント周囲組織の検査
3 臨床検査結果の評価と診断
4 インプラントメインテナンス間隔の決定
5 インプラント治療後のメインテナンス方法
1)インプラント周囲粘膜炎と診断された場合
2)インプラント周囲炎と診断された場合
3)インプラント周囲疾患治療後の管理
CHAPTER 06 配慮が必要な患者への対応(大八木孝昌)
1 歯科恐怖症
1)恐怖を感じる特定の状況,器具および処置
2)歯科医師への不信感
2 全身疾患への対応
1)循環器疾患を有する患者
2)抗血栓薬服用患者
3)糖尿病患者
4)腎疾患患者
3 妊婦への配慮
CHAPTER 07 「動機づけ」を再考する(野村正子)
1 動機づけ=モチベーション(motivation)とは
2 歯周治療におけるモチベーション
3 モチベーションの基本的な考え方
1)動因と誘因
2)外発的動機づけと内発的動機づけ
3)外発的動機づけと内発的動機づけの関係
4 “報酬“と“罰”――“褒める“と“叱る”についての古典的研究
5 健康行動としての歯磨き行動
1)健康行動とは
2)健康行動の行動変容ステージ
3)禁煙外来での禁煙治療と歯科外来での歯周治療の違い
6 おわりに
参考文献
索引
CHAPTER 01 医療面接の勘所(杉原俊太郎)
1 医療面接
2 医療面接の技法
1)態度類型
2)質問形式
3 医療面接の実際
1)主訴
2)現病歴
3)現症
4)歯科的既往歴
5)全身的既往歴
6)家族歴
CHAPTER 02 プラークコントロールの確立とは(西田哲也)
1 プラークコントロールの重要性
2 O'Learyらのプラークコントロールレコード(PCR)
3 PCR検査の実際
1)前準備
2)歯面の染色
3)プラーク付着状態の検出
4)スコアの計算
4 良好なプラークコントロールの目安
CHAPTER 03 PMTCとは(野村正子)
1 歯面研磨,PTC,PMTCの違い
1)歯面研磨とは
2)PTCとは
3)PMTCとは
2 PMTCの手順
3 おわりに
II編 エキスパートを目指して
CHAPTER 01 歯周病の新分類を理解する(星 嵩)
1 歯周病の新分類の概説
2 「歯肉炎」の新分類
1)部位レベルの診断基準
2)一口腔単位の患者レベルの診断基準
3 「歯周炎」の新分類
1)歯周炎の診断基準
2)歯周炎のステージ分類
3)歯周炎のグレード分類
4 日本歯周病学会の新分類に対する対応
CHAPTER 02 化学的プラークコントロールとオーラルセルフメディケーション(五味一博)
1 はじめに
2 オーラルセルフメディケーションの考え方
1)洗口液の普及状態
3 洗口液による化学的プラークコントロール
1)洗口液の種類と特性
2)化学的プラークコントロールの効果
4 根面う蝕への対応
5 口腔粘膜の細菌コントロール
6 洗口液使用のクリニカルクエスチョン(CQ)
7 おわりに
CHAPTER 03 歯科衛生士が対応可能な覚醒時ブラキシズム(西山 暁)
1 覚醒時ブラキシズムとは ─TCHという概念
1)覚醒時ブラキシズム≠クレンチング
2)上下歯列接触癖(TCH)
2 覚醒時ブラキシズムと歯周病
3 覚醒時ブラキシズムの発生とリスクファクター
1)覚醒時ブラキシズム発生の生理学的機序
2)覚醒時ブラキシズム(TCH)のリスクファクター
4 TCHのコントロール
1)ステップ1:動機づけ
2)ステップ2:意識化訓練
3)ステップ3:競合反応訓練
4)ステップ4:強化
CHAPTER 04 禁煙支援の勘所(稲垣幸司・埴岡 隆)
1 喫煙を取り巻く現状
2 喫煙による影響
1)歯周組織への影響
2)免疫系への影響
3)プラーク形成への影響
3 歯周治療に対する禁煙の効果
4 日本歯周病学会の禁煙支援の実践手順
1)喫煙歴の把握
2)身体的ニコチン依存度(FTND)の判定
3)タバコの銘柄とニコチン量の把握
4)喫煙の蓄積量の把握
5)禁煙経験
6)身体的および心理的ニコチン依存度(TDS)の判定
7)禁煙への行動変容ステージの判定と同居する家族の喫煙状況
8)加濃式社会的ニコチン依存度調査票(KTSND)の判定
9)歯肉メラニン色素沈着の判定
5 禁煙支援のゴール
6 さまざまな禁煙支援法
7 おわりに
CHAPTER 05 インプラントに対する留意点(辰巳順一)
1 インプラント治療後のメインテナンスの目的
2 インプラント周囲組織の検査
3 臨床検査結果の評価と診断
4 インプラントメインテナンス間隔の決定
5 インプラント治療後のメインテナンス方法
1)インプラント周囲粘膜炎と診断された場合
2)インプラント周囲炎と診断された場合
3)インプラント周囲疾患治療後の管理
CHAPTER 06 配慮が必要な患者への対応(大八木孝昌)
1 歯科恐怖症
1)恐怖を感じる特定の状況,器具および処置
2)歯科医師への不信感
2 全身疾患への対応
1)循環器疾患を有する患者
2)抗血栓薬服用患者
3)糖尿病患者
4)腎疾患患者
3 妊婦への配慮
CHAPTER 07 「動機づけ」を再考する(野村正子)
1 動機づけ=モチベーション(motivation)とは
2 歯周治療におけるモチベーション
3 モチベーションの基本的な考え方
1)動因と誘因
2)外発的動機づけと内発的動機づけ
3)外発的動機づけと内発的動機づけの関係
4 “報酬“と“罰”――“褒める“と“叱る”についての古典的研究
5 健康行動としての歯磨き行動
1)健康行動とは
2)健康行動の行動変容ステージ
3)禁煙外来での禁煙治療と歯科外来での歯周治療の違い
6 おわりに
参考文献
索引














