やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

まえがき 第10版
 本書『歯科衛生士のための衛生行政・社会福祉・社会保険』は,初版を昭和の終わりである1987年に発行した.この時期は,歯科衛生士教育がすべての学校養成所で2年制となったときであり,「衛生行政・社会福祉」が専門科目の一つとして定められていた.この当時,歯科診療所では歯科診療報酬明細書(レセプト)を毎月末に手書きで書いており,このこともあり,本書では社会保険の制度と実務も含めて前記の表題とした.
 その後今日までの34年間,歯科衛生士の業務に歯科保健指導が加わり,教育年限も3年以上となった.この間に介護保険法,歯科口腔保健の推進に関する法律などが制定された.また,時代の要請により地域保健法,健康増進法などが内容を充実して法律の名称を改めた.
 本書の領域は,国の保健・医療・福祉の制度を解説するところが大きく,その時々の改版で時代の変遷と行政制度の改革にあわせて,本書の内容を改めてきた.1章から7章までの構成はこの間変更しないできたが,第8版では社会保障制度を本書の総論として1章に移行し,社会保障を本書の幹とした.
 今回の第10版では,多くの読者が平穏で大きな変化のない21世紀に生まれ生活されていることを想像し,第二次世界大戦後のわが国のさまざまな変動についても知っていただいたうえで,今日の社会保障を理解していただきたく,1章でわが国の社会情勢の変化にあわせた社会保障制度の沿革について加えた.
 本書は歯科衛生士教育の書でもある.が,本書の役割は必要な事項を覚えるためだけではない.保健・医療・福祉に関する制度がどのような時代を背景として生まれたか,そして国民の生活にどのように役立っているか,歯科衛生士の教育のなかで,さらに,実務を行うなかでも考える書として活用いただければ,本書を改訂した著者の喜びはさらに増すだろう.
 2021年3月
 末武彦


まえがき 第1版
 21世紀を間近にひかえた今日,疾病構造の変化や急速な人口の高齢化に伴い,医療需要も増大するだけでなく,多様化してきている.このため,今日そしてこれからの医療は,地域を主体とした,健康増進,疾病の予防からリハビリテーションにいたる包括的な保健医療体制,さらには福祉面をも含めた保健医療と,福祉との連係した体制が求められている.
 このような時期において,歯科衛生士も,歯科医師のもとで時代の要求に合致する歯科医療に貢献するためには,歯科医療に関する高度な専門知識・技術を修得することはもちろんのこと,衛生行政の仕組みや保健医療,さらに福祉関係の法規についても精通し,また,社会福祉や社会保険制度における医療保障の諸対策についても,理解を深めなければならない.
 本書はこれらのことを念頭におき,歯科医療の一翼を担う歯科衛生士のための,衛生行政,社会福祉,社会保険に関する入門解説書として,また,昭和63年度から全面的に移行される2年制での新しい歯科衛生士教育における教授要綱に合致した,衛生行政・社会福祉の学習書として活用されるよう執筆した.
 執筆にあたっては,著者のいささかの教育経験にもとづき,従来の衛生行政・社会福祉の学習書とはやや異なる構成を試みた.また,保険医療の実務をも記すことにより,医療保険制度に関する理論と,歯科医療における実際面とを結びつけるよう試みた.読者の忌憚のない,ご意見がいただければ幸いである.
 本書が,歯科衛生士の方々に,あるいは歯科衛生士学校の教育に活用され,今後の歯科医療の向上にいささかでも貢献できるならば,望外の喜びである.
 おわりに,本書の刊行にあたり,お世話いただいた医歯薬出版の編集部の方々に,心より感謝の意を表すものである.
 1987年3月
 末武彦
1章 社会保障制度
 I.わが国の社会保障とは
 II.わが国の社会情勢の変化と社会保障制度の沿革
  1.社会保障の制度以前(明治期〜第二次世界大戦)
  2.戦後の民主化,社会保障の基盤整備の時代(1945〜1954年ごろ)
  3.高度経済成長時代における社会保障制度の発展(1955〜1969年ごろ)
  4.安定成長への移行と社会保障制度の見直し(1970〜1989年ごろ)
  5.少子高齢社会に対応した社会保障制度の改革へ(1990年ごろ〜)
 III.わが国における社会保障のいま・これから
  1.今日の社会保障を取り巻く社会経済環境
  2.21世紀の社会保障改革
 IV.社会保障の役割と機能
  1.社会保障の役割
  2.社会保障の機能
 V.社会保障の分類
 VI.社会保障費の給付と国民の負担
  1.社会保障給付費
  2.国民医療費
  3.国民の負担
 VII.ライフステージ別の社会保障制度
  1.生涯を通じた社会保障
  2.妊娠・出産の時期
  3.0歳から小学校入学前の時期
  4.学校教育の時期
  5.成人・就労の時期
  6.高齢・定年後の時期
2章 衛生行政
 I.衛生行政とその目的
  1.行政とは
  2.衛生行政の目的
  3.衛生行政の特色
 II.衛生行政の沿革
  1.明治憲法下における衛生行政の沿革
  2.現憲法下における衛生行政の沿革
  3.医療提供体制・医療職種の沿革
  4.歯科衛生行政の沿革
 III.衛生行政のいま・これから
 IV.衛生行政の組織
  1.国際機関
  2.厚生労働省など国の機関
  3.都道府県など地方公共団体
  4.保健所
  5.市町村保健センター
  6.地域包括ケアシステムと地域包括支援センター
  7.地域での保健医療従事者
 法律に現れた数字
3章 衛生関係法
 I.法制概論
  1.法の意義
  2.形式からみた法の分類
  3.その他の法の分類
  4.法律が定められるまでの過程
 II.医師法,歯科医師法
  1.医師,歯科医師の任務
  2.医師,歯科医師の免許
  3.身分取得と臨床研修
  4.医師,歯科医師の業務
  5.医業と歯科医業
 III.歯科衛生士法
  1.歯科衛生士法の目的
  2.歯科衛生士の定義
  3.歯科衛生士の身分の取得
  4.歯科衛生士免許,歯科衛生士名簿
  5.歯科衛生士免許の申請,書換えなど
  6.歯科衛生士の身分の喪失
  7.歯科衛生士の業務
 IV.関連する医療関係者の身分に関する法律
  1.保健師助産師看護師法(保助看法)
  2.歯科技工士法
  3.診療放射線技師法
  4.臨床検査技師等に関する法律
  5.その他の医療関係者についての法律
 V.医療法
  1.医療施設の定義など
  2.医療提供の理念と医師等の責務
  3.病院,診療所の開設,廃止
  4.医療安全管理
  5.病院,診療所の広告
  6.医療計画
  7.在宅医療
 VI.薬事に関連する法律
  1.医薬品,医療器機等の品質,有効性及び安全性の確保に関する法律(医薬品医療器機等法)
  2.薬剤師法
  3.その他の法律
 VII.地域保健に関連する法律
  1.地域保健法
  2.健康増進法
  3.母子保健法
  4.学校保健安全法
  5.労働安全衛生法
  6.高齢者の医療の確保に関する法律(高齢者医療確保法)
  7.歯科口腔保健の推進に関する法律(歯科口腔保健法)
 VIII.感染症に関する法律
  1.感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)
  2.予防摂取法
 IX.食品安全,食育に関する法律
  1.食品衛生法
  2.食品表示法
  3.食育基本法
 歯科衛生士に関係する法律キーワードその1
 歯科衛生士に関係する法律キーワードその2
4章 保健医療の動向
 I.厚生関係統計調査
  1.統計制度
  2.行政機関統計の分類
  3.主な保健関係統計調査
  4.統計調査資料の利用法
 II.国民の健康状態と受療状況
  1.人口とその動態
  2.生活習慣と健康
  3.有訴者,通院者
  4.医療機関受療者
  5.口腔の状況
  6.児童・生徒の健康状況
 III.医療施設
  1.病院
  2.医科診療所
  3.歯科診療所
 IV.医療関係者
  1.医師
  2.歯科医師
  3.歯科衛生士
  4.歯科技工士
  5.看護師,保健師
  6.医療関係者の教育機関
 歯科口腔保健の推進に関する基本的事項〔目標値〕
5章 社会保険
 I.社会保険制度とその沿革
  1.社会保険制度とは
  2.社会保険の種類
  3.社会保険制度の沿革
 II.社会保険行政の組織
  1.厚生労働省など国の組織
  2.都道府県など地方組織
 III.医療保険制度と法律
  1.医療保険とは
  2.医療保険の種類と法律
  3.医療保険の給付
  4.医療保険の費用負担
 IV.年金制度と法律
  1.年金保険制度と法律
  2.国民年金〈1階部分〉
  3.厚生年金保険〈2階部分〉
  4.私的年金保険
 V.労働保険制度と法律
  1.労働保険と法律
  2.雇用保険
  3.労働者災害補償保険
  4.労働条件に関する法律
 VI.介護保険制度と法律
  1.介護保険制度と法律
  2.介護保険サービス事業者と介護支援専門員
  3.介護保険制度の概要
  4.介護サービスの利用
  5.介護の現状
 歯科衛生士に関係する法律キーワードその3
6章 社会福祉
 I.社会福祉制度とその沿革
  1.社会福祉とは
  2.社会福祉制度の沿革
 II.社会福祉行政の組織と従事者
  1.厚生労働省
  2.都道府県,市町村
  3.福祉事務所
  4.児童相談所
  5.地域包括支援センター
  6.社会福祉の従事者
 III.生活保護制度と法律
  1.生活保護制度と法律
  2.生活保護制度の基本原理
  3.生活保護の実施原則
  4.生活保護の種類と方法
 IV.生活困窮者自立支援法による自立支援
 V.児童と家庭の福祉制度と法律
  1.児童と家庭の福祉
  2.次世代育成支援
  3.要保護児童の保護
  4.ひとり親家庭などの福祉
 VI.障害者の福祉制度と法律
  1.障害者の福祉と法律
  2.障害者に対する総合支援
 VII.高齢者の福祉制度と法律
  1.老人福祉法と高齢者福祉
  2.認知症支援対策
  3.高齢者虐待防止
 歯科衛生士に関係する法律キーワードその4
7章 保険医療の実務
 I.医療保険の仕組み
  1.医療保険制度
  2.診療報酬の請求と支払
 II.保険医療機関での実務
  1.保険医療の対象
  2.保険診療の方針
  3.診療報酬の算定
  4.保険診療の実際
 III.介護保険での実務
  1.介護保険とのかかわり
  2.口腔関連サービス
  3.マネジメントの実際

 資料 関係法令集
  1.歯科衛生士法
  2.歯科衛生士法施行令
  3.歯科衛生士法施行規則
  4.歯科医師法
  5.歯科技工士法
  6.歯科口腔保健の推進に関する法律