監修の序
2006年に歯科医師臨床研修が必須化されました.目的として,将来専門とする分野にかかわらず基本的な診療能力を身につけることと並んで,医学的知識と問題解決能力の習得,歯科医療の質と安全の管理なども挙げられています.そのため多くの研修プログラムでは病棟研修を含む全身管理研修が含まれていますが,口腔外科を中心とする病院における研修を除くと,歯科医師臨床研修の中で十分な全身管理研修が行われているとはいえないのが現状です.
私は大学歯学部を卒業すると直ちに神戸大学医学部附属病院歯科口腔外科に入局しました.当時は研修プログラムというようなものは存在せず,卒後1年目からすぐに臨床の場に放り込まれ,先輩に教わりながら手術や術前術後の全身管理を見よう見まねで行うというような状況でした.そのため毎日仕事が終わった後に,血液検査の見方,心電図の読み方,輸液や輸血の知識,薬剤に関する知識など,医学書を読みながら必死に勉強したのを覚えています.
編著者の坂本由紀先生とは,神戸大学で2年,長崎大学で3年,その後共同研究者として3年と,8年間一緒に仕事をしてきましたが,研修医時代から現在に至るまで自分が教わったことや勉強したことを1冊のノートに書き留めているのを見せてもらったことがあります.その内容は的確でわかりやすく,歯科口腔外科医が知っておくべき全身管理に関する分野を網羅していることに驚きました.ぜひこれを1冊の書物としてまとめることはできないかと,医歯薬出版にお願いをしたところ,ご快諾をいただき,今回本書の出版に至りました.私も本書の作成に監修という立場でかかわらせていただいたことを,とても光栄に思っております.
本ポケットマニュアルは,口腔外科医を目指す若手歯科医師だけではなく,超高齢社会を迎えた日本で一般歯科医療に携わる歯科医師にとっても,非常に役立つものになることを確信しております.
2020年8月
監修 梅田正博
序文
口腔外科医だけではなく,最近では「医科歯科連携」,「全身と口腔との関係」,「周術期口腔機能管理」など,一般の歯科医も全身のことを理解した上で歯科医療を行うことが社会から求められています.私は歯学部卒業後ただちに神戸大学医学部附属病院歯科口腔外科に初期研修医として入局しましたが,そこで初めて点滴をしたり心電図を判断したり輸液や抗菌薬について悩み,ただ先輩の後ろをついて回る生活をしていたことを覚えています.医師が読む全身管理の本を読んでも基礎知識のない私にはほとんど理解できず,歯科研修医のための教科書が必要であると痛感していました.
神戸大学口腔外科で2年間研修をした後,東海大学医学部付属病院歯科口腔外科で口腔外科医としての基礎を学び,その後長崎大学歯学部口腔外科で学位と口腔外科専門医を取得,教員となり,後進を指導する立場となりました.そして,歯科医師が病棟管理をするときに最低限把握しておかなければならない知識を得ることができるポケットマニュアルのようなものの必要性をさらに感じるようになりました.そのような話を長崎大学口腔外科の梅田正博教授にしたところ,「いい教科書がないなら自分で作りなさい」と言われ,本書を編集することになりました.
本書は私が初期研修医の時から先輩たちに習い書き留めておいた1冊のノート(何度も読み直してもうボロボロになっています)をもとに新たに書き起こしたものです.自分が病棟で怖い思いをして,こんな知識がすぐにわかればいいなと考えたものをポケットサイズに集約しています.医学的な内容については,讃岐拓郎先生,坂本伸吾先生,吉田剛先生などの専門の先生方に執筆あるいは校正をしていただき,最終的な監修を梅田教授にお願いしました.もし本書を手にした先生が,それぞれの実臨床の場でさらに得た知識があれば,メモ欄に追記をして,自分だけの本にしてもらえるように工夫をしています.本書が,特に口腔外科病棟で全身管理を担当する若手歯科医師にとって少しでもお役に立てれば幸いです.
2020年8月
坂本由紀
2006年に歯科医師臨床研修が必須化されました.目的として,将来専門とする分野にかかわらず基本的な診療能力を身につけることと並んで,医学的知識と問題解決能力の習得,歯科医療の質と安全の管理なども挙げられています.そのため多くの研修プログラムでは病棟研修を含む全身管理研修が含まれていますが,口腔外科を中心とする病院における研修を除くと,歯科医師臨床研修の中で十分な全身管理研修が行われているとはいえないのが現状です.
私は大学歯学部を卒業すると直ちに神戸大学医学部附属病院歯科口腔外科に入局しました.当時は研修プログラムというようなものは存在せず,卒後1年目からすぐに臨床の場に放り込まれ,先輩に教わりながら手術や術前術後の全身管理を見よう見まねで行うというような状況でした.そのため毎日仕事が終わった後に,血液検査の見方,心電図の読み方,輸液や輸血の知識,薬剤に関する知識など,医学書を読みながら必死に勉強したのを覚えています.
編著者の坂本由紀先生とは,神戸大学で2年,長崎大学で3年,その後共同研究者として3年と,8年間一緒に仕事をしてきましたが,研修医時代から現在に至るまで自分が教わったことや勉強したことを1冊のノートに書き留めているのを見せてもらったことがあります.その内容は的確でわかりやすく,歯科口腔外科医が知っておくべき全身管理に関する分野を網羅していることに驚きました.ぜひこれを1冊の書物としてまとめることはできないかと,医歯薬出版にお願いをしたところ,ご快諾をいただき,今回本書の出版に至りました.私も本書の作成に監修という立場でかかわらせていただいたことを,とても光栄に思っております.
本ポケットマニュアルは,口腔外科医を目指す若手歯科医師だけではなく,超高齢社会を迎えた日本で一般歯科医療に携わる歯科医師にとっても,非常に役立つものになることを確信しております.
2020年8月
監修 梅田正博
序文
口腔外科医だけではなく,最近では「医科歯科連携」,「全身と口腔との関係」,「周術期口腔機能管理」など,一般の歯科医も全身のことを理解した上で歯科医療を行うことが社会から求められています.私は歯学部卒業後ただちに神戸大学医学部附属病院歯科口腔外科に初期研修医として入局しましたが,そこで初めて点滴をしたり心電図を判断したり輸液や抗菌薬について悩み,ただ先輩の後ろをついて回る生活をしていたことを覚えています.医師が読む全身管理の本を読んでも基礎知識のない私にはほとんど理解できず,歯科研修医のための教科書が必要であると痛感していました.
神戸大学口腔外科で2年間研修をした後,東海大学医学部付属病院歯科口腔外科で口腔外科医としての基礎を学び,その後長崎大学歯学部口腔外科で学位と口腔外科専門医を取得,教員となり,後進を指導する立場となりました.そして,歯科医師が病棟管理をするときに最低限把握しておかなければならない知識を得ることができるポケットマニュアルのようなものの必要性をさらに感じるようになりました.そのような話を長崎大学口腔外科の梅田正博教授にしたところ,「いい教科書がないなら自分で作りなさい」と言われ,本書を編集することになりました.
本書は私が初期研修医の時から先輩たちに習い書き留めておいた1冊のノート(何度も読み直してもうボロボロになっています)をもとに新たに書き起こしたものです.自分が病棟で怖い思いをして,こんな知識がすぐにわかればいいなと考えたものをポケットサイズに集約しています.医学的な内容については,讃岐拓郎先生,坂本伸吾先生,吉田剛先生などの専門の先生方に執筆あるいは校正をしていただき,最終的な監修を梅田教授にお願いしました.もし本書を手にした先生が,それぞれの実臨床の場でさらに得た知識があれば,メモ欄に追記をして,自分だけの本にしてもらえるように工夫をしています.本書が,特に口腔外科病棟で全身管理を担当する若手歯科医師にとって少しでもお役に立てれば幸いです.
2020年8月
坂本由紀
I バイタルサイン 生命の基本的な兆候
1─体温
2─血圧(診療室血圧)
3─呼吸
4─脈拍
5─意識
6─尿量
II 術前検査で必要な基礎知識
1─心電図
2─胸部レントゲン
3─血液検査
4─心エコー
5─肺機能検査(スパイロ)
6─動脈血液ガス分析
7─尿検査
III 周術期で必要な基礎知識
1─輸液管理
2─血糖管理
3─栄養管理(経管栄養,IVH)
4─輸血製剤
5─術後疼痛管理
6─ヘパリンブリッジング
7─ステロイドカバー
8─術中の抗菌薬の選択
9─電解質異常
10─酸素投与とFiO2
11─呼吸器設定
12─気管カニューレの種類と使用の注意点
13─鎮静
14─手術の際に休薬を考慮すべき内服薬
IV 病棟で必要な基礎知識
1─腹痛
2─胸痛
3─失神
4─便秘
5─下痢
6─嘔吐・悪心
7─不眠,せん妄
8─抗菌薬の選択
9─血圧上昇
10─ショック
11─心停止
12─窒息
13─転倒
14─アレルギー
15─肺炎
16─発熱性好中球減少症(FN)
17─ガン性疼痛
18─DIC(播種性血管内凝固症候群)
19─嚥下障害
20─頭痛
21─意識障害
22─貧血
23─悪性高熱症
24─しゃっくり(吃逆)
25─新興感染症への対策
V いろいろな計算式
1─輸液
2─電解質
3─腎臓
4─呼吸器
5─酸塩基平衡
6─栄養
VI 緊急治療薬剤の使用方法
VII 化学療法の知識
VIII 抗菌薬
1─抗菌薬と略称
2─腎障害のある成人への抗菌薬の投与量
欧文略語
院内用語
索引
1─体温
2─血圧(診療室血圧)
3─呼吸
4─脈拍
5─意識
6─尿量
II 術前検査で必要な基礎知識
1─心電図
2─胸部レントゲン
3─血液検査
4─心エコー
5─肺機能検査(スパイロ)
6─動脈血液ガス分析
7─尿検査
III 周術期で必要な基礎知識
1─輸液管理
2─血糖管理
3─栄養管理(経管栄養,IVH)
4─輸血製剤
5─術後疼痛管理
6─ヘパリンブリッジング
7─ステロイドカバー
8─術中の抗菌薬の選択
9─電解質異常
10─酸素投与とFiO2
11─呼吸器設定
12─気管カニューレの種類と使用の注意点
13─鎮静
14─手術の際に休薬を考慮すべき内服薬
IV 病棟で必要な基礎知識
1─腹痛
2─胸痛
3─失神
4─便秘
5─下痢
6─嘔吐・悪心
7─不眠,せん妄
8─抗菌薬の選択
9─血圧上昇
10─ショック
11─心停止
12─窒息
13─転倒
14─アレルギー
15─肺炎
16─発熱性好中球減少症(FN)
17─ガン性疼痛
18─DIC(播種性血管内凝固症候群)
19─嚥下障害
20─頭痛
21─意識障害
22─貧血
23─悪性高熱症
24─しゃっくり(吃逆)
25─新興感染症への対策
V いろいろな計算式
1─輸液
2─電解質
3─腎臓
4─呼吸器
5─酸塩基平衡
6─栄養
VI 緊急治療薬剤の使用方法
VII 化学療法の知識
VIII 抗菌薬
1─抗菌薬と略称
2─腎障害のある成人への抗菌薬の投与量
欧文略語
院内用語
索引