第2 版 監修にあたって
口から食べることは,人が生きるための力の「みなもと」であり,そしてまた「喜び」です.さらに口腔には,食べる機能をはじめ味覚,呼吸,構音など,まさに人が人として生きるために必要な多くの機能があり,傷病や障害,あるいは加齢による口腔機能の低下を予防することは極めて重要です.そうした観点から,口腔機能のリハビリテーションの重要性が高まっております.2008 年には,「安心と希望の医療確保ビジョン」が示され,これからの医療について「治す医療」から「治し支える医療」への方向性が提言されました.ビジョンの中で摂食嚥下機能等に関わる歯科医療は,人々の生活の基本を支える「生活の医療」と位置づけられ,歯科医師・歯科衛生士と医師・看護師等との連携によるチーム医療の必要性が強調されました.そこで,歯科衛生士においてもチーム医療の一員として摂食嚥下リハビリテーションに関わる専門性を一層高めることが必要であるとの認識から,基礎となる教育・研修が重要であり,そこで活用するための体系化された教本・テキスト「歯科衛生士のための摂食嚥下リハビリテーション」を2011 年に発刊いたしました.
その後,歯科衛生士を取り巻く環境はさらに変化し,またその役割は深化してきております.歯科衛生士の90% 以上は,歯科診療所に勤務しておりますが,その来院患者の45% 以上が65 歳以上の高齢者であり(2017 年患者調査),全身管理,医科歯科連携への対応が必要となってきています.さらに,地域包括ケアシステムの構築が急がれる中,「歯科医院完結型」から「地域完結型」へ大きくシフトしています.診療所の歯科衛生士も,地域に出向き多職種と連携しながら,その専門性を発揮することが求められています.今後ますます,在宅療養者や要介護高齢者の口から食べる機能を維持して,低栄養や誤嚥性肺炎を予防するなど,口腔衛生・口腔機能管理を担う役割に期待が高まっております.
このような歯科衛生士を取り巻く環境や背景の変化に対応して,この度7 年ぶりに「歯科衛生士のための摂食嚥下リハビリテーション-第2 版」としてリニューアルいたしました.本書では,地域包括ケアシステムの中での多職種連携や地域連携,フレイルへの対応,2018年に保険収載された小児の口腔機能発達不全症や,高齢者の口腔機能低下症について追加しました.また,病態別への対応や栄養管理についても強化いたしました.今後,歯科衛生士には,口腔領域の疾病対応のみならず,予防や健康増進,口腔機能の維持回復,ひいてはQOLの向上にも寄与できるような業務展開が期待されています.また,多職種との連携・協働においては,歯科衛生士の専門性を活かした問題解決能力が求められています.今後,社会や多職種からの要請に応えるためにも本書を活用いただけますことを願っております.
本書の企画に際し,植田耕一郎先生に編集委員長としてご指導を仰ぎ,また,第一線で活躍されている諸先生方に編集の労をおとりいただき,さらに,ご専門の多くの先生方にご執筆を賜ったことは,誠に感謝の念に堪えないところです.本書が,歯科衛生士教育において,また,診療所・病院,介護施設や在宅医療の場で活動する歯科衛生士の人材育成に活用され,摂食嚥下障害の改善・回復に寄与することができれば望外の喜びです.
2019 年8 月 公益社団法人日本歯科衛生士会 会長 武井典子
第2 版 はじめに
「歯科衛生士は歯科医師の指示のもと摂食機能療法を実施する」1994 年に摂食機能療法が医科と歯科で同時に保険診療に導入された時に記された文です.保険医療導入に至ったのは,本書第1版の編集代表をなさった金子芳洋氏,本書第2 版の編集および執筆をいただいた向井美惠氏等の功績によるものです.摂食機能療法において歯科衛生士は,診療補助のみならず,診療実施者になったのです.
対象とする患者は新生児から幼児,小児,成人,高齢者まで年齢を問いません.脳性麻痺,脳卒中やパーキンソン病などの疾患から派生する不都合や後遺症が「障害」です.疾患は治癒しても障害は残るということがあるために,どの疾患も行き着くところは摂食嚥下障害になります.
摂食機能療法のトレーニング技術の習得が大事であることは述べるまでもありません.しかし技術論に傾聴する中で,何時も忘れてならないのは「理念」です.摂食機能障害を引き起こす疾患が同じ病名であろうと,10 名と対峙すれば対応は10 通りです.なぜなら患者ごとに今日に至るまでの生活過程や置かれている環境が異なるからです.対応が多岐だからこそ,その時必要とされるのは,揺るぎのない理念であろうかと思います.
そこでリハビリテーションの理念が摂食機能障害への対応を体系立て,整理してくれます.近代西洋医学は臓器単位で発展していますが,リハビリテーションは“ 生活単位” で人を見ます.排泄,入浴,移動,食事などの日常生活活動を少しでも自立すべく務めていきます.例えば食事行為を自立するために,麻痺した上肢の機能訓練をし,麻痺の治癒が見込めない時には利き手交換の訓練をし,さらに人的・物的な環境を整えることで自立の支援をしていきます.
う蝕治療ならば「完治」がゴールになりますが,治癒が見込めない場合には,何をゴールにしたら良いのでしょうか? 治癒のない障害を持った者は二度と健康になれないのでしょうか?そもそも健康とは何なのでしょうか?
本書は,摂食嚥下機能の基礎的な知識から摂食嚥下リハビリテーションの実践的な手技まで体系立てられています.普段の学習の時,または臨床の場面で混乱や壁にあたった時に,明日から新しい一歩を踏み出す羅針盤の役割を果たしてくれることでしょう.
2019 年8 月 編集代表 植田耕一郎
第1版 序
“ ひと” は,食物と水分を取りこむことにとって生命活動を維持している.この食物や水分を摂り込み胃に送り込むための一連の経過が摂食・嚥下であり,そのために働く機能が摂食・嚥下機能と呼ばれる.
“ ひと” を含め哺乳動物は皆摂食・嚥下機能を有しているが,その解剖生理は全てが同じではない.もっとも特徴的なことは,喉頭の位置である.ひとの新生児と他の哺乳動物では喉頭の位置は咽頭の高い位置にある.しかし成人では,喉頭は咽頭のかなり低い位置にある.そうすると咽頭部における呼吸の通路と食物の通路が同じ場所を占める長さが長くなる.こうなると成人では元もと嚥下障害を起こすリスクが高くなる.
摂食・嚥下障害(Dysphagia)は次のように定義されている.「dysphagiaとは,嚥下の複数に段階の一つあるいは複数の段階に何らかの障害がある状態である.その障害は,口腔への食物の摂り込みに始まって,口腔内での食物を巧妙に処理する能力,食塊のコントロール,嚥下反応(反射)の発現,咽頭の収縮(蠕動運動),輪状咽頭筋の弛緩によるとそれによる食塊の食道への送り込みに至る広い範囲において発生するものである(M.E.Groher,1992).またアメリカの言語聴覚士協会(American Speech and Hearing Associasion:ASHA,)では次ぎのように定義している.「dysphagiaとは,嚥下するために必要な口腔内での食物処理がうまくいかないとか,食物を口腔から胃へ移送させることがうまくいかないというというような嚥下機能の障害のことである.この定義には,口腔内に食物を摂り込んだり,嚥下に先立って口腔内で食物を処理したりという機能に問題がある場合を含んでいるものであり,その機能には吸啜や吸引,咀嚼も含まれている.」
嚥下は食物を口から胃へ送るために顎や咽頭,食道の筋が高度に協調して行われる一連の複雑な運動経過であり,嚥下第1 相,第2 相,第三相から成り立っている.Leopoldら(1983)は,これら人の食べる過程である摂食・嚥下を5 段階に分けている.すなわち先行期,口腔期,嚥下口腔期,咽頭期,食道期,の5 段階である.前述した定義中の複数の段階とはこの5 段階を指している.
近年,摂食・嚥下機能にプロセスモデルという新しいモデルが提唱されるようになってきた.このモデルでは摂食・嚥下をoral phase,pharyngeal phase,esophageal phaseの3つの相に分けられている(詳細は後章で詳述).
わが国では人口の高齢化が急速に進み,高齢に関係する疾患の多発に対する医学的処理や管理が重要な課題となってきている.この中でとくにリハビリテーションは21 世紀の医療と呼ばれるほど需要が増しており,摂食・嚥下障害に対するリハビリテーションもその中の重要な位置を占めるようになってきている.このような状況を踏まえ,平成6 年4 月には国も社会保険診療に“ 摂食機能療法” を取り入れている.この摂食・嚥下リハビリテーションには歯科医師,歯科衛生士も携わることができる.しかし従来,歯科医師,歯科衛生士の教育には摂食嚥下・リハビリテーションは含まれておらず,その対応が著しく遅れている.近年,歯科衛生に教育は3 年制,4 年制に変わりつつあり,その中で摂食嚥下・リハビリテーションの卒然教育が一部で始まっている.
摂食・嚥下リハビリテーションのおおきな特徴は,その学際的な面である,この領域には医師,歯科医師,言語聴覚士,理学療法士,作業療法士,栄養士,看護師,歯科衛生士,保健婦など多くの専門分野の関与が是非必要である.しかもその各職種が別々に関与するにではなく,いわゆる“ 学際的なチームアプローチ” が必要である.
摂食・嚥下障害は摂食・嚥下機能に関係する神経系その他の関係する構造に傷害が生じたときにその合併症状として発生するものであり,これを引き起こす疾患や傷害は非常に多種多様である.大きく分けるといわゆる子ども(障害児)に起こる発達障害的なものと,成人以降に起こる中途傷害がある.そのためにこの領域の摂食・嚥下リハビリテーションを成功に導くためには,広く深い知識とリハビリテーション手技についての熟練が必要である.これは,卒前教育だけでは習得することが不可能である.そこで本著の内容は主に基本的な基礎的な知識の習得のために必要な事項だけに止め,さらに必要の部分は本著に引き続いて出版される卒後の教育,勉強用の書物に記載することとした.
摂食障害を抱えている人びとの口腔内は健常者(児)の口腔内とは比較にならないほど衛生状態が不良であり,衛生状態を管理するにはどうしても歯科衛生士が直接関与するか,あるは行き届いた指導をすることが不可欠である.また口腔内の不衛生度と摂食・嚥下障害の重症度はほぼ並行していると考えられる.従って歯科衛生士は摂食・嚥下リハビりテーションと口腔ケアが同時にできる専門家として貴重な存在であり,この面での活躍が期待されている職業である.
平成23 年3 月 金子芳洋
第1版 監修にあたって
口から食べることは,生きる力のみなもとであり喜びである.しかし,何らかの原因で口から食べる機能が失われたときの健康障害やQOL(Quolity of Life,生命の質,生活の質,人生の質)の低下ははかり知れないものがある.そのため,口腔は生命維持にとって重要な働きを持つ器官であり,また,人間としての尊厳を保ち,質の高い生活を送るうえでも重要な器官である.
一方,口腔は,温度,湿度,栄養等において微生物が繁殖しやすい環境にあり,う蝕や歯周病等,歯科疾患の発症や進行の原因となるばかりでなく,誤嚥性肺炎等,口腔に起因する感染症をはじめ,糖尿病や心臓病等の全身の健康状態を悪化させる要因ともなることが報告されている.
また,口腔には,食べる機能をはじめ味覚,呼吸,構音など,多くの機能があり,傷病や障害,あるいは加齢による口腔機能の低下を予防するうえで,口腔機能のリハビリテーションの重要性が高まっている.歯科衛生士はこれまで,口腔衛生の管理に関わる分野を中心として,う蝕や歯周病等,歯科疾患の予防やプライマリーケア等,器質的ケアにおいて大きな役割を果たしてきたが,機能的ケアへの対応は十分とはいえない状況にある.
医療法第1 条の2 に定める医療提供の理念には「医療は(略)単に治療のみならず,疾病の予防のための措置及びリハビリテーションを含む良質かつ適正なものでなければならない」とある.また「安心と希望の医療確保ビジョン」(厚生労働省,平成20 年6 月)では,これからの医療について「治す医療」から「治し支える医療」への方向性を提言し,その中で,摂食・嚥下機能等に関わる歯科医療を,人々の生活の基本を支える「生活の医療」と位置づけ,歯科医師・歯科衛生士と医師・看護師等との連携によるチーム医療の必要性を強調している.
これらのことから,摂食・嚥下リハビリテーションは,多職種協働によるチームアプローチにより,各職種の専門性に基づく質の高い業務を実践することが求められている.歯科衛生士においても,チーム医療の一員として目的と情報を共有するとともに,摂食・嚥下リハビリテーションにおける歯科衛生士の専門性を高めることが必要である.また,歯科医療の専門職として口腔内に直接関与できるという特性を活かし,歯科衛生士の役割を十分に発揮することが期待されている.そのためには,基礎となる教育研修が重要であり,体系化された教本・テキストの発行を急ぐこととなった.本書の企画にあたり,この分野における歯科衛生士の最初の教本・テキストであることを考慮し,学校教育や卒後研修における基礎編として編集することとした.
本書は,歯科衛生士と摂食・嚥下の関わりについて認識し,リハビリテーション及び摂食・嚥下リハビリテーションの概念やメカニズム,さらには発達,障害の状態を正しく理解したうえで,小児期,成人期,高齢期の摂食・嚥下障害の特徴や変化,歯科衛生士の実践についての考え方や方法及び訓練法の実際,チームアプローチや連携に必要な関係職種の理解など,摂食・嚥下リハビリテーションに関する基礎的知識・技術の修得に必要な学習過程を考慮した構成となっている.
歯科衛生士の実践については,摂食・嚥下障害のある対象者に対して,歯科衛生上の問題点を明確にし,最も望ましい支援とはどのようなことかを歯科衛生士の立場で考え,計画的,科学的に実践するための方法として,歯科衛生過程(歯科衛生ケアプロセス)の流れに沿って解説されている.
歯科衛生士の役割は,口腔領域の疾病対応のみならず,予防や健康増進,口腔機能の維持回復,ひいてはQOLの向上にも寄与できるよう,対象となる人のニーズに対して適切な支援を提供することであり,多職種との連携・協働においては,歯科衛生士の専門性を活かした問題解決能力が求められる.そのため,対象となる人のアセスメント(情報の収集・分析),問題の明確化,計画立案(目標の設定及び方法の決定),実施計画の立案,実施(介入),評価などのプロセスにより展開することが重要である.また,実施記録をシステム化することでスタッフ間の情報の共有が可能となる.このような考え方は,歯科衛生士の臨床では既に経験的に導入されており,また,教育・研修においても,専門職としての姿勢や態度を育成し,質の高い,根拠に基づいたケアを提供するための具体的なツールとして検討・試行されている.摂食・嚥下リハビリテーションが学際的チームアプローチとして実践されることを考慮し,歯科衛生過程による展開方法を取り入れ,紹介することとした.
本書の企画に際し,この分野の先駆者である金子芳洋先生に編集委員長としてご指導を仰ぎ,また,第一線で活躍されている先生方に編集の労をおとりいただき,さらに,ご専門の多くの先生方にご執筆を賜ったことは,誠に感謝の念に堪えないところである.
本書が,歯科衛生士教育において,また,診療所・病院,介護施設や在宅医療の場で活動する歯科衛生士の人材育成に活用され,摂食・嚥下障害の改善・回復に寄与することができれば望外の喜びである.
平成23 年3 月 社団法人日本歯科衛生士会 会長 金澤紀子
口から食べることは,人が生きるための力の「みなもと」であり,そしてまた「喜び」です.さらに口腔には,食べる機能をはじめ味覚,呼吸,構音など,まさに人が人として生きるために必要な多くの機能があり,傷病や障害,あるいは加齢による口腔機能の低下を予防することは極めて重要です.そうした観点から,口腔機能のリハビリテーションの重要性が高まっております.2008 年には,「安心と希望の医療確保ビジョン」が示され,これからの医療について「治す医療」から「治し支える医療」への方向性が提言されました.ビジョンの中で摂食嚥下機能等に関わる歯科医療は,人々の生活の基本を支える「生活の医療」と位置づけられ,歯科医師・歯科衛生士と医師・看護師等との連携によるチーム医療の必要性が強調されました.そこで,歯科衛生士においてもチーム医療の一員として摂食嚥下リハビリテーションに関わる専門性を一層高めることが必要であるとの認識から,基礎となる教育・研修が重要であり,そこで活用するための体系化された教本・テキスト「歯科衛生士のための摂食嚥下リハビリテーション」を2011 年に発刊いたしました.
その後,歯科衛生士を取り巻く環境はさらに変化し,またその役割は深化してきております.歯科衛生士の90% 以上は,歯科診療所に勤務しておりますが,その来院患者の45% 以上が65 歳以上の高齢者であり(2017 年患者調査),全身管理,医科歯科連携への対応が必要となってきています.さらに,地域包括ケアシステムの構築が急がれる中,「歯科医院完結型」から「地域完結型」へ大きくシフトしています.診療所の歯科衛生士も,地域に出向き多職種と連携しながら,その専門性を発揮することが求められています.今後ますます,在宅療養者や要介護高齢者の口から食べる機能を維持して,低栄養や誤嚥性肺炎を予防するなど,口腔衛生・口腔機能管理を担う役割に期待が高まっております.
このような歯科衛生士を取り巻く環境や背景の変化に対応して,この度7 年ぶりに「歯科衛生士のための摂食嚥下リハビリテーション-第2 版」としてリニューアルいたしました.本書では,地域包括ケアシステムの中での多職種連携や地域連携,フレイルへの対応,2018年に保険収載された小児の口腔機能発達不全症や,高齢者の口腔機能低下症について追加しました.また,病態別への対応や栄養管理についても強化いたしました.今後,歯科衛生士には,口腔領域の疾病対応のみならず,予防や健康増進,口腔機能の維持回復,ひいてはQOLの向上にも寄与できるような業務展開が期待されています.また,多職種との連携・協働においては,歯科衛生士の専門性を活かした問題解決能力が求められています.今後,社会や多職種からの要請に応えるためにも本書を活用いただけますことを願っております.
本書の企画に際し,植田耕一郎先生に編集委員長としてご指導を仰ぎ,また,第一線で活躍されている諸先生方に編集の労をおとりいただき,さらに,ご専門の多くの先生方にご執筆を賜ったことは,誠に感謝の念に堪えないところです.本書が,歯科衛生士教育において,また,診療所・病院,介護施設や在宅医療の場で活動する歯科衛生士の人材育成に活用され,摂食嚥下障害の改善・回復に寄与することができれば望外の喜びです.
2019 年8 月 公益社団法人日本歯科衛生士会 会長 武井典子
第2 版 はじめに
「歯科衛生士は歯科医師の指示のもと摂食機能療法を実施する」1994 年に摂食機能療法が医科と歯科で同時に保険診療に導入された時に記された文です.保険医療導入に至ったのは,本書第1版の編集代表をなさった金子芳洋氏,本書第2 版の編集および執筆をいただいた向井美惠氏等の功績によるものです.摂食機能療法において歯科衛生士は,診療補助のみならず,診療実施者になったのです.
対象とする患者は新生児から幼児,小児,成人,高齢者まで年齢を問いません.脳性麻痺,脳卒中やパーキンソン病などの疾患から派生する不都合や後遺症が「障害」です.疾患は治癒しても障害は残るということがあるために,どの疾患も行き着くところは摂食嚥下障害になります.
摂食機能療法のトレーニング技術の習得が大事であることは述べるまでもありません.しかし技術論に傾聴する中で,何時も忘れてならないのは「理念」です.摂食機能障害を引き起こす疾患が同じ病名であろうと,10 名と対峙すれば対応は10 通りです.なぜなら患者ごとに今日に至るまでの生活過程や置かれている環境が異なるからです.対応が多岐だからこそ,その時必要とされるのは,揺るぎのない理念であろうかと思います.
そこでリハビリテーションの理念が摂食機能障害への対応を体系立て,整理してくれます.近代西洋医学は臓器単位で発展していますが,リハビリテーションは“ 生活単位” で人を見ます.排泄,入浴,移動,食事などの日常生活活動を少しでも自立すべく務めていきます.例えば食事行為を自立するために,麻痺した上肢の機能訓練をし,麻痺の治癒が見込めない時には利き手交換の訓練をし,さらに人的・物的な環境を整えることで自立の支援をしていきます.
う蝕治療ならば「完治」がゴールになりますが,治癒が見込めない場合には,何をゴールにしたら良いのでしょうか? 治癒のない障害を持った者は二度と健康になれないのでしょうか?そもそも健康とは何なのでしょうか?
本書は,摂食嚥下機能の基礎的な知識から摂食嚥下リハビリテーションの実践的な手技まで体系立てられています.普段の学習の時,または臨床の場面で混乱や壁にあたった時に,明日から新しい一歩を踏み出す羅針盤の役割を果たしてくれることでしょう.
2019 年8 月 編集代表 植田耕一郎
第1版 序
“ ひと” は,食物と水分を取りこむことにとって生命活動を維持している.この食物や水分を摂り込み胃に送り込むための一連の経過が摂食・嚥下であり,そのために働く機能が摂食・嚥下機能と呼ばれる.
“ ひと” を含め哺乳動物は皆摂食・嚥下機能を有しているが,その解剖生理は全てが同じではない.もっとも特徴的なことは,喉頭の位置である.ひとの新生児と他の哺乳動物では喉頭の位置は咽頭の高い位置にある.しかし成人では,喉頭は咽頭のかなり低い位置にある.そうすると咽頭部における呼吸の通路と食物の通路が同じ場所を占める長さが長くなる.こうなると成人では元もと嚥下障害を起こすリスクが高くなる.
摂食・嚥下障害(Dysphagia)は次のように定義されている.「dysphagiaとは,嚥下の複数に段階の一つあるいは複数の段階に何らかの障害がある状態である.その障害は,口腔への食物の摂り込みに始まって,口腔内での食物を巧妙に処理する能力,食塊のコントロール,嚥下反応(反射)の発現,咽頭の収縮(蠕動運動),輪状咽頭筋の弛緩によるとそれによる食塊の食道への送り込みに至る広い範囲において発生するものである(M.E.Groher,1992).またアメリカの言語聴覚士協会(American Speech and Hearing Associasion:ASHA,)では次ぎのように定義している.「dysphagiaとは,嚥下するために必要な口腔内での食物処理がうまくいかないとか,食物を口腔から胃へ移送させることがうまくいかないというというような嚥下機能の障害のことである.この定義には,口腔内に食物を摂り込んだり,嚥下に先立って口腔内で食物を処理したりという機能に問題がある場合を含んでいるものであり,その機能には吸啜や吸引,咀嚼も含まれている.」
嚥下は食物を口から胃へ送るために顎や咽頭,食道の筋が高度に協調して行われる一連の複雑な運動経過であり,嚥下第1 相,第2 相,第三相から成り立っている.Leopoldら(1983)は,これら人の食べる過程である摂食・嚥下を5 段階に分けている.すなわち先行期,口腔期,嚥下口腔期,咽頭期,食道期,の5 段階である.前述した定義中の複数の段階とはこの5 段階を指している.
近年,摂食・嚥下機能にプロセスモデルという新しいモデルが提唱されるようになってきた.このモデルでは摂食・嚥下をoral phase,pharyngeal phase,esophageal phaseの3つの相に分けられている(詳細は後章で詳述).
わが国では人口の高齢化が急速に進み,高齢に関係する疾患の多発に対する医学的処理や管理が重要な課題となってきている.この中でとくにリハビリテーションは21 世紀の医療と呼ばれるほど需要が増しており,摂食・嚥下障害に対するリハビリテーションもその中の重要な位置を占めるようになってきている.このような状況を踏まえ,平成6 年4 月には国も社会保険診療に“ 摂食機能療法” を取り入れている.この摂食・嚥下リハビリテーションには歯科医師,歯科衛生士も携わることができる.しかし従来,歯科医師,歯科衛生士の教育には摂食嚥下・リハビリテーションは含まれておらず,その対応が著しく遅れている.近年,歯科衛生に教育は3 年制,4 年制に変わりつつあり,その中で摂食嚥下・リハビリテーションの卒然教育が一部で始まっている.
摂食・嚥下リハビリテーションのおおきな特徴は,その学際的な面である,この領域には医師,歯科医師,言語聴覚士,理学療法士,作業療法士,栄養士,看護師,歯科衛生士,保健婦など多くの専門分野の関与が是非必要である.しかもその各職種が別々に関与するにではなく,いわゆる“ 学際的なチームアプローチ” が必要である.
摂食・嚥下障害は摂食・嚥下機能に関係する神経系その他の関係する構造に傷害が生じたときにその合併症状として発生するものであり,これを引き起こす疾患や傷害は非常に多種多様である.大きく分けるといわゆる子ども(障害児)に起こる発達障害的なものと,成人以降に起こる中途傷害がある.そのためにこの領域の摂食・嚥下リハビリテーションを成功に導くためには,広く深い知識とリハビリテーション手技についての熟練が必要である.これは,卒前教育だけでは習得することが不可能である.そこで本著の内容は主に基本的な基礎的な知識の習得のために必要な事項だけに止め,さらに必要の部分は本著に引き続いて出版される卒後の教育,勉強用の書物に記載することとした.
摂食障害を抱えている人びとの口腔内は健常者(児)の口腔内とは比較にならないほど衛生状態が不良であり,衛生状態を管理するにはどうしても歯科衛生士が直接関与するか,あるは行き届いた指導をすることが不可欠である.また口腔内の不衛生度と摂食・嚥下障害の重症度はほぼ並行していると考えられる.従って歯科衛生士は摂食・嚥下リハビりテーションと口腔ケアが同時にできる専門家として貴重な存在であり,この面での活躍が期待されている職業である.
平成23 年3 月 金子芳洋
第1版 監修にあたって
口から食べることは,生きる力のみなもとであり喜びである.しかし,何らかの原因で口から食べる機能が失われたときの健康障害やQOL(Quolity of Life,生命の質,生活の質,人生の質)の低下ははかり知れないものがある.そのため,口腔は生命維持にとって重要な働きを持つ器官であり,また,人間としての尊厳を保ち,質の高い生活を送るうえでも重要な器官である.
一方,口腔は,温度,湿度,栄養等において微生物が繁殖しやすい環境にあり,う蝕や歯周病等,歯科疾患の発症や進行の原因となるばかりでなく,誤嚥性肺炎等,口腔に起因する感染症をはじめ,糖尿病や心臓病等の全身の健康状態を悪化させる要因ともなることが報告されている.
また,口腔には,食べる機能をはじめ味覚,呼吸,構音など,多くの機能があり,傷病や障害,あるいは加齢による口腔機能の低下を予防するうえで,口腔機能のリハビリテーションの重要性が高まっている.歯科衛生士はこれまで,口腔衛生の管理に関わる分野を中心として,う蝕や歯周病等,歯科疾患の予防やプライマリーケア等,器質的ケアにおいて大きな役割を果たしてきたが,機能的ケアへの対応は十分とはいえない状況にある.
医療法第1 条の2 に定める医療提供の理念には「医療は(略)単に治療のみならず,疾病の予防のための措置及びリハビリテーションを含む良質かつ適正なものでなければならない」とある.また「安心と希望の医療確保ビジョン」(厚生労働省,平成20 年6 月)では,これからの医療について「治す医療」から「治し支える医療」への方向性を提言し,その中で,摂食・嚥下機能等に関わる歯科医療を,人々の生活の基本を支える「生活の医療」と位置づけ,歯科医師・歯科衛生士と医師・看護師等との連携によるチーム医療の必要性を強調している.
これらのことから,摂食・嚥下リハビリテーションは,多職種協働によるチームアプローチにより,各職種の専門性に基づく質の高い業務を実践することが求められている.歯科衛生士においても,チーム医療の一員として目的と情報を共有するとともに,摂食・嚥下リハビリテーションにおける歯科衛生士の専門性を高めることが必要である.また,歯科医療の専門職として口腔内に直接関与できるという特性を活かし,歯科衛生士の役割を十分に発揮することが期待されている.そのためには,基礎となる教育研修が重要であり,体系化された教本・テキストの発行を急ぐこととなった.本書の企画にあたり,この分野における歯科衛生士の最初の教本・テキストであることを考慮し,学校教育や卒後研修における基礎編として編集することとした.
本書は,歯科衛生士と摂食・嚥下の関わりについて認識し,リハビリテーション及び摂食・嚥下リハビリテーションの概念やメカニズム,さらには発達,障害の状態を正しく理解したうえで,小児期,成人期,高齢期の摂食・嚥下障害の特徴や変化,歯科衛生士の実践についての考え方や方法及び訓練法の実際,チームアプローチや連携に必要な関係職種の理解など,摂食・嚥下リハビリテーションに関する基礎的知識・技術の修得に必要な学習過程を考慮した構成となっている.
歯科衛生士の実践については,摂食・嚥下障害のある対象者に対して,歯科衛生上の問題点を明確にし,最も望ましい支援とはどのようなことかを歯科衛生士の立場で考え,計画的,科学的に実践するための方法として,歯科衛生過程(歯科衛生ケアプロセス)の流れに沿って解説されている.
歯科衛生士の役割は,口腔領域の疾病対応のみならず,予防や健康増進,口腔機能の維持回復,ひいてはQOLの向上にも寄与できるよう,対象となる人のニーズに対して適切な支援を提供することであり,多職種との連携・協働においては,歯科衛生士の専門性を活かした問題解決能力が求められる.そのため,対象となる人のアセスメント(情報の収集・分析),問題の明確化,計画立案(目標の設定及び方法の決定),実施計画の立案,実施(介入),評価などのプロセスにより展開することが重要である.また,実施記録をシステム化することでスタッフ間の情報の共有が可能となる.このような考え方は,歯科衛生士の臨床では既に経験的に導入されており,また,教育・研修においても,専門職としての姿勢や態度を育成し,質の高い,根拠に基づいたケアを提供するための具体的なツールとして検討・試行されている.摂食・嚥下リハビリテーションが学際的チームアプローチとして実践されることを考慮し,歯科衛生過程による展開方法を取り入れ,紹介することとした.
本書の企画に際し,この分野の先駆者である金子芳洋先生に編集委員長としてご指導を仰ぎ,また,第一線で活躍されている先生方に編集の労をおとりいただき,さらに,ご専門の多くの先生方にご執筆を賜ったことは,誠に感謝の念に堪えないところである.
本書が,歯科衛生士教育において,また,診療所・病院,介護施設や在宅医療の場で活動する歯科衛生士の人材育成に活用され,摂食・嚥下障害の改善・回復に寄与することができれば望外の喜びである.
平成23 年3 月 社団法人日本歯科衛生士会 会長 金澤紀子
CHAPTER 1 歯科衛生士と摂食嚥下リハビリテーション
1 歯科衛生士は摂食機能療法を実施する
2 生活をみる
3 第三の医学
4 生涯を通じて
CHAPTER 2 リハビリテーションと摂食嚥下リハビリテーション
I リハビリテーション医学・医療総論
1 リハビリテーション医学とは
2 運動学とは
3 障害の分類
4 リハビリテーション治療のプランニング
II 摂食嚥下リハビリテーションの実際と歯科衛生士の役割
1 摂食嚥下とは
2 摂食嚥下機能のプロセス
3 摂食嚥下障害の特徴に基づいた対応領域
4 摂食嚥下障害の原因
5 摂食嚥下障害の重症度分類
6 摂食嚥下リハビリテーションの進め方
7 摂食嚥下リハビリテーションの取り組みと課題
III 摂食嚥下リハビリテーションにおける口腔健康管理
1 口腔ケアとは
2 口腔健康管理とは
3 歯科口腔保健の推進に関する法律
CHAPTER 3 摂食嚥下障害者への口腔管理と制度の理解
I 摂食嚥下障害者に関する制度
1 地域包括ケアシステム
2 地域連携
1 在宅医療/2 地域包括支援センター/3 地域ケア会議
3 チーム医療(多職種連携)
1 チームアプローチの種類/2 地域医療における多職種連携/3 地域包括ケアシステムにおける歯科衛生士の在り方/4 歯科衛生にによる口腔衛生管理
4 医療保険,介護保険制度と口腔健康管理
1 医療保険における口腔健康管理/2 介護保険制度における口腔健康管理/3 施設における口腔衛生管理のための取り組み/4 経口維持のための取り組み(経口維持加算)
CHAPTER 4 摂食嚥下機能のメカニズム
I 摂食嚥下に関わる構造(解剖)
1 口腔の構造
1 口腔粘膜/2 口唇/3 口蓋/4 口峡/5 頬/6 舌/7 歯/8 唾液腺
2 咽頭の構造
3 喉頭の構造
4 鼻腔の構造
5 摂食嚥下に関与する筋
1 口裂周囲の表情筋群/2 咀嚼筋群/3 舌骨上筋群・舌骨下筋群/4 舌筋群/5 軟口蓋の筋群/6 咽頭の筋群/7 喉頭の筋群
II 摂食嚥下に関わる機能(生理)
1 摂食運動
2 咀嚼から嚥下への過程
3 嚥下運動の過程
4 嚥下運動の誘発
5 嚥下運動と呼吸のかかわり
6 嚥下運動の関連する器官における種々の反射
III 発達期の摂食嚥下機能
1 発達期の口腔形態,口腔機能の定型発達
2 乳児期における形態変化と機能発達
1 経口摂取準備期
3 離乳期から幼児期における機能発達
1 嚥下機能の発達/2 捕食機能の発達/3 押しつぶし機能の発達/4 すりつぶし機能の発達/5 水分摂取機能の獲得/6 自食準備期/7 手づかみ食べ機能の発達/8 食具食べ機能の発達
4 幼児期における機能発達
CHAPTER 5 咬合および咀嚼機能の管理と評価
I 咬合と咀嚼機能
1 下顎運動と咬合様式
1 下顎運動/2 咬合様式
2 歯の欠損による口腔の変化と口腔機能の低下
1 歯の欠損による短期的変化/2 歯の欠損による長期的変化/3 欠損様式の分類
3 摂食嚥下と義歯・咬合の役割
1 歯の欠損と摂食嚥下/2 義歯と摂食嚥下/3 義歯とPAP,PLP
II 咀嚼の評価と管理
1 咀嚼機能の評価法(歯科補綴学的な咀嚼の評価法)
1 摂食嚥下における咀嚼の位置づけ/2 臨床における咀嚼の評価法
2 嚥下からみた咀嚼の評価
1 摂食嚥下障害患者における咀嚼機能評価の重要性/2 嚥下造影検査(VF)を用いた咀嚼機能評価/3 嚥下内視鏡検査(VE)を用いた咀嚼機能評価/4 食品を用いた簡便な咀嚼機能評価
3 咀嚼・咬合の管理に必要な口腔機能の評価と管理
1 歯,咬合/2 義歯/3 口腔衛生/4 唾液/5 舌/6 口唇,頬/7 軟口蓋/8 疼痛
III 咬合・咀嚼と全身
1 オーラルフレイルとフレイル
1 オーラルフレイルとは/2 オーラルフレイルからみたフレイル予防
2 口腔機能低下症
3 咀嚼と栄養
4 咀嚼と全身
1 咀嚼と全身機能/2 咀嚼と認知機能
CHAPTER 6 栄養管理
I 栄養スクリーニングと栄養アセスメント
1 栄養スクリーニング
1 主観的包括的評価/2 MNA-SF/3 CONUT/4 GNRI/5 予後栄養指数/6 GLIM基準
2 栄養アセスメント
II 栄養ケア
1 栄養必要量
1 エネルギー/2 たんぱく質,アミノ酸/3 水分
2 栄養補給方法
1 栄養補給方法の種類と特徴/2 栄養補給方法の選択
3 食形態(嚥下調整食を含む)
1 嚥下調整食/2 水分
III 栄養サポートチーム(NST)の概念
CHAPTER 7 リスクマネジメント
I 全身管理の把握と対応
1 バイタルサイン
1 意識/2 血圧/3 脈拍/4 呼吸/5 体温
2 バイタルサインのチェック,モニタリング,アセスメント
II 緊急時の対応
1 誤嚥
2 窒息
III 気管切開
1 適応
2 解剖
3 気管カニューレの構造と種類
1 基本構造/2 種類
4 気管切開と摂食嚥下リハビリテーション
1 目的/2 内容/3 気管切開患者にリハビリテーションを実施する際の注意点
IV 吸 引
1 喀痰吸引
2 吸引の適応条件
3 禁忌と注意を要する状態
4 吸引時の注意点
5 吸引手順
CHAPTER 8 病態別摂食嚥下障害
I 発達期の摂食嚥下障害と原因疾患
1 小児の摂食嚥下障害の原因
1 母体側の要因/2 小児側の要因
2 口腔機能発達不全症
1 口腔機能発達不全症の特徴/2 診断基準/3 口腔機能発達不全症の評価/4 指導訓練の概要
II 成人期・老年期の疾患に伴い多くみられる摂食嚥下障害
1 脳卒中
1 球麻痺と偽性球麻痺/2 高次脳機能障害/3 脳卒中に伴う二次的障害
2 神経筋疾患
1 パーキンソン病ならびにパーキンソン症候群(パーキンソニズム)/2 筋萎縮性側索硬化症/3 神経筋疾患への対応
3 サルコペニア
4 認知症
1 認知症にみられる摂食困難/2 その他,認知症にみられる摂食場面での問題/3 認知症患者に対する食環境の調整
5 口腔癌関連
1 口腔癌治療に伴う摂食嚥下障害の特徴
CHAPTER 9 摂食嚥下の評価
I 歯科衛生士が行うスクリーニングテストと観察評価
1 発達期の摂食嚥下機能の評価
1 医療情報の聴取/2 食事時の外部観察における摂食嚥下機能の評価基準/3 発達期における精密検査
2 成人期(中途障害患者)および老年期( 高齢期)に対する評価
1 フィジカルアセスメント/2 スクリーニング検査
3 精密検査
1 嚥下造影検査(VF)/2 嚥下内視鏡検査(VE)
CHAPTER 10 摂食嚥下リハビリテーションと口腔衛生管理
I 口腔衛生管理の実際
1 口腔衛生管理実施前の評価
1 口腔以外の評価(全身・環境の評価)/2 口腔内の評価
2 姿勢調整
1 座位が取れる場合/2 座位が困難な場合
3 口腔衛生管理の方法
4 口腔衛生管理中のリスク管理
1 開口保持困難な場合/2 出血が多い場合/3 口腔粘膜炎がある場合/4 口腔がん患者の場合
CHAPTER 11 摂食嚥下訓練
I 摂食嚥下障害に対する訓練計画立案
1 摂食嚥下障害に対する訓練の考え方
2 摂食嚥下障害に対する訓練計画の立案
II 摂食嚥下障害に対する食事指導
1 摂食嚥下障害児・者に用いられている食形態の分類
2 食指導のポイント
III 各病態に対する訓練法とその選択
1 摂食嚥下障害に対する訓練
2 基礎訓練(間接訓練)の選択と実施
1 嚥下体操/2 過敏除去(脱感作)/3 ガムラビング(歯肉マッサージ)/4 バンゲード法(筋刺激訓練法)/5 冷圧刺激/6 喉のアイスマッサージ/7 氷なめ訓練/8 ハフィング/9 息こらえ嚥下法( 声門閉鎖嚥下法,声門越え嚥下法)/10 強い息こらえ嚥下法/11 頭部挙上訓練(シャキアエクササイズ)/12 声帯内転運動(プッシング・プリング訓練)/13 メンデルソン手技/14 前舌保持嚥下訓練
3 摂食訓練(直接訓練)の選択と実施
1 適切な評価とリスク管理/2 訓練の選択/3 小児,発達障害児の摂食訓練(直接訓練)の目的と意義/4 成人(中途障害),老年期の摂食訓練(直接訓練)の目的と意義/5 摂食訓練(直接訓練)に必要な因子/6 摂食訓練(直接訓練)の実際
CHAPTER 12 歯科衛生士が行う摂食嚥下リハビリテーションの基本
I 摂食嚥下障害者の症例展開
1 アセスメント
2 計画立案
3 実施
4 評価
文献
索引
1 歯科衛生士は摂食機能療法を実施する
2 生活をみる
3 第三の医学
4 生涯を通じて
CHAPTER 2 リハビリテーションと摂食嚥下リハビリテーション
I リハビリテーション医学・医療総論
1 リハビリテーション医学とは
2 運動学とは
3 障害の分類
4 リハビリテーション治療のプランニング
II 摂食嚥下リハビリテーションの実際と歯科衛生士の役割
1 摂食嚥下とは
2 摂食嚥下機能のプロセス
3 摂食嚥下障害の特徴に基づいた対応領域
4 摂食嚥下障害の原因
5 摂食嚥下障害の重症度分類
6 摂食嚥下リハビリテーションの進め方
7 摂食嚥下リハビリテーションの取り組みと課題
III 摂食嚥下リハビリテーションにおける口腔健康管理
1 口腔ケアとは
2 口腔健康管理とは
3 歯科口腔保健の推進に関する法律
CHAPTER 3 摂食嚥下障害者への口腔管理と制度の理解
I 摂食嚥下障害者に関する制度
1 地域包括ケアシステム
2 地域連携
1 在宅医療/2 地域包括支援センター/3 地域ケア会議
3 チーム医療(多職種連携)
1 チームアプローチの種類/2 地域医療における多職種連携/3 地域包括ケアシステムにおける歯科衛生士の在り方/4 歯科衛生にによる口腔衛生管理
4 医療保険,介護保険制度と口腔健康管理
1 医療保険における口腔健康管理/2 介護保険制度における口腔健康管理/3 施設における口腔衛生管理のための取り組み/4 経口維持のための取り組み(経口維持加算)
CHAPTER 4 摂食嚥下機能のメカニズム
I 摂食嚥下に関わる構造(解剖)
1 口腔の構造
1 口腔粘膜/2 口唇/3 口蓋/4 口峡/5 頬/6 舌/7 歯/8 唾液腺
2 咽頭の構造
3 喉頭の構造
4 鼻腔の構造
5 摂食嚥下に関与する筋
1 口裂周囲の表情筋群/2 咀嚼筋群/3 舌骨上筋群・舌骨下筋群/4 舌筋群/5 軟口蓋の筋群/6 咽頭の筋群/7 喉頭の筋群
II 摂食嚥下に関わる機能(生理)
1 摂食運動
2 咀嚼から嚥下への過程
3 嚥下運動の過程
4 嚥下運動の誘発
5 嚥下運動と呼吸のかかわり
6 嚥下運動の関連する器官における種々の反射
III 発達期の摂食嚥下機能
1 発達期の口腔形態,口腔機能の定型発達
2 乳児期における形態変化と機能発達
1 経口摂取準備期
3 離乳期から幼児期における機能発達
1 嚥下機能の発達/2 捕食機能の発達/3 押しつぶし機能の発達/4 すりつぶし機能の発達/5 水分摂取機能の獲得/6 自食準備期/7 手づかみ食べ機能の発達/8 食具食べ機能の発達
4 幼児期における機能発達
CHAPTER 5 咬合および咀嚼機能の管理と評価
I 咬合と咀嚼機能
1 下顎運動と咬合様式
1 下顎運動/2 咬合様式
2 歯の欠損による口腔の変化と口腔機能の低下
1 歯の欠損による短期的変化/2 歯の欠損による長期的変化/3 欠損様式の分類
3 摂食嚥下と義歯・咬合の役割
1 歯の欠損と摂食嚥下/2 義歯と摂食嚥下/3 義歯とPAP,PLP
II 咀嚼の評価と管理
1 咀嚼機能の評価法(歯科補綴学的な咀嚼の評価法)
1 摂食嚥下における咀嚼の位置づけ/2 臨床における咀嚼の評価法
2 嚥下からみた咀嚼の評価
1 摂食嚥下障害患者における咀嚼機能評価の重要性/2 嚥下造影検査(VF)を用いた咀嚼機能評価/3 嚥下内視鏡検査(VE)を用いた咀嚼機能評価/4 食品を用いた簡便な咀嚼機能評価
3 咀嚼・咬合の管理に必要な口腔機能の評価と管理
1 歯,咬合/2 義歯/3 口腔衛生/4 唾液/5 舌/6 口唇,頬/7 軟口蓋/8 疼痛
III 咬合・咀嚼と全身
1 オーラルフレイルとフレイル
1 オーラルフレイルとは/2 オーラルフレイルからみたフレイル予防
2 口腔機能低下症
3 咀嚼と栄養
4 咀嚼と全身
1 咀嚼と全身機能/2 咀嚼と認知機能
CHAPTER 6 栄養管理
I 栄養スクリーニングと栄養アセスメント
1 栄養スクリーニング
1 主観的包括的評価/2 MNA-SF/3 CONUT/4 GNRI/5 予後栄養指数/6 GLIM基準
2 栄養アセスメント
II 栄養ケア
1 栄養必要量
1 エネルギー/2 たんぱく質,アミノ酸/3 水分
2 栄養補給方法
1 栄養補給方法の種類と特徴/2 栄養補給方法の選択
3 食形態(嚥下調整食を含む)
1 嚥下調整食/2 水分
III 栄養サポートチーム(NST)の概念
CHAPTER 7 リスクマネジメント
I 全身管理の把握と対応
1 バイタルサイン
1 意識/2 血圧/3 脈拍/4 呼吸/5 体温
2 バイタルサインのチェック,モニタリング,アセスメント
II 緊急時の対応
1 誤嚥
2 窒息
III 気管切開
1 適応
2 解剖
3 気管カニューレの構造と種類
1 基本構造/2 種類
4 気管切開と摂食嚥下リハビリテーション
1 目的/2 内容/3 気管切開患者にリハビリテーションを実施する際の注意点
IV 吸 引
1 喀痰吸引
2 吸引の適応条件
3 禁忌と注意を要する状態
4 吸引時の注意点
5 吸引手順
CHAPTER 8 病態別摂食嚥下障害
I 発達期の摂食嚥下障害と原因疾患
1 小児の摂食嚥下障害の原因
1 母体側の要因/2 小児側の要因
2 口腔機能発達不全症
1 口腔機能発達不全症の特徴/2 診断基準/3 口腔機能発達不全症の評価/4 指導訓練の概要
II 成人期・老年期の疾患に伴い多くみられる摂食嚥下障害
1 脳卒中
1 球麻痺と偽性球麻痺/2 高次脳機能障害/3 脳卒中に伴う二次的障害
2 神経筋疾患
1 パーキンソン病ならびにパーキンソン症候群(パーキンソニズム)/2 筋萎縮性側索硬化症/3 神経筋疾患への対応
3 サルコペニア
4 認知症
1 認知症にみられる摂食困難/2 その他,認知症にみられる摂食場面での問題/3 認知症患者に対する食環境の調整
5 口腔癌関連
1 口腔癌治療に伴う摂食嚥下障害の特徴
CHAPTER 9 摂食嚥下の評価
I 歯科衛生士が行うスクリーニングテストと観察評価
1 発達期の摂食嚥下機能の評価
1 医療情報の聴取/2 食事時の外部観察における摂食嚥下機能の評価基準/3 発達期における精密検査
2 成人期(中途障害患者)および老年期( 高齢期)に対する評価
1 フィジカルアセスメント/2 スクリーニング検査
3 精密検査
1 嚥下造影検査(VF)/2 嚥下内視鏡検査(VE)
CHAPTER 10 摂食嚥下リハビリテーションと口腔衛生管理
I 口腔衛生管理の実際
1 口腔衛生管理実施前の評価
1 口腔以外の評価(全身・環境の評価)/2 口腔内の評価
2 姿勢調整
1 座位が取れる場合/2 座位が困難な場合
3 口腔衛生管理の方法
4 口腔衛生管理中のリスク管理
1 開口保持困難な場合/2 出血が多い場合/3 口腔粘膜炎がある場合/4 口腔がん患者の場合
CHAPTER 11 摂食嚥下訓練
I 摂食嚥下障害に対する訓練計画立案
1 摂食嚥下障害に対する訓練の考え方
2 摂食嚥下障害に対する訓練計画の立案
II 摂食嚥下障害に対する食事指導
1 摂食嚥下障害児・者に用いられている食形態の分類
2 食指導のポイント
III 各病態に対する訓練法とその選択
1 摂食嚥下障害に対する訓練
2 基礎訓練(間接訓練)の選択と実施
1 嚥下体操/2 過敏除去(脱感作)/3 ガムラビング(歯肉マッサージ)/4 バンゲード法(筋刺激訓練法)/5 冷圧刺激/6 喉のアイスマッサージ/7 氷なめ訓練/8 ハフィング/9 息こらえ嚥下法( 声門閉鎖嚥下法,声門越え嚥下法)/10 強い息こらえ嚥下法/11 頭部挙上訓練(シャキアエクササイズ)/12 声帯内転運動(プッシング・プリング訓練)/13 メンデルソン手技/14 前舌保持嚥下訓練
3 摂食訓練(直接訓練)の選択と実施
1 適切な評価とリスク管理/2 訓練の選択/3 小児,発達障害児の摂食訓練(直接訓練)の目的と意義/4 成人(中途障害),老年期の摂食訓練(直接訓練)の目的と意義/5 摂食訓練(直接訓練)に必要な因子/6 摂食訓練(直接訓練)の実際
CHAPTER 12 歯科衛生士が行う摂食嚥下リハビリテーションの基本
I 摂食嚥下障害者の症例展開
1 アセスメント
2 計画立案
3 実施
4 評価
文献
索引