やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

Preface
 基本の反復=確実なスキルアップ=プロフェッショナルルーティン
 近年,歯周病治療や歯科治療後のメインテナンスを目的に歯科医院に来院する患者さんが増えてきています.それに伴い,臨床現場で求められる歯科衛生士の役割や意義もより大きくなっているといえます.なぜなら担当する歯科衛生士の考え方や手技によって患者さんの口腔内の状態は左右されるといっても過言ではないからです.
 しかし,どのようにすれば歯周疾患治療の手技を向上していくことができるのか?――長年臨床に携わっていると,歯科衛生士の皆さんからさまざまな質問を受ける立場にもなってきました.最も多いのは,「何を使用したらよいのか?」という質問です.つまり,器具が先で,治療の考え方や,手技・手法は二の次ということです.
 確かに,歯周治療や歯科疾患の予防には多くの器具・器材が開発されていますが,まず治療に対する考え方を固めたうえで,それらの器具・器材をどう使いこなし,どのように患者さんに提供すればよいのか?適正な器具の選択とその手技は?……ではないでしょうか.一番大切なのは,Back to the basics,「基本に立ち帰る」ということだと思います.
 根本を振り返り,基礎固めができてこそ,新しい知識や技術が身につきます.基礎固めができるとスキルアップのスピードは格段に上がります.自分が行った手技の結果,患者さんの生体の変化を検証することでさらに自分の観察力が,ひいてはスキルが向上するのです.
 歯科衛生士の仕事はとてもやりがいがあり,楽しいものです.基礎固めがしっかりできていることによって,長期にわたる歯科衛生士人生がより豊かに楽しくなるでしょう.基礎があることによって,操作を行う術者に与える身体的・精神的負担も軽減してくれるのです.
 本書では,実際の臨床現場の傍らにおいて使用できるように,写真とその解説をできるだけわかりやすくなるように努めたつもりです.また手技だけではなく,長期にわたって患者さんとどのようにかかわればよいかというエッセンスも,少しばかりですが解説しています.本書が,歯周病患者の減少と,臨床現場で悩んでいる皆さんのお役に少しでも立てれば著者冥利につきます.
 2016年9月
 Authors;
 著 者:金子真弓
     佐野明美
 編著者:茂野啓示
 (京都市北区・北山茂野歯科医院)
I編 SRP Complete Graph 目で見てわかる!できる!SRP徹底分析
 Part 1 総覧! 連続写真で見るSRPワーク
   Guidance for This Part−I編 Part 1の読み方
  上顎左側のSRP
   1 上顎左側中切歯
   2 上顎左側側切歯
   3 上顎左側犬歯
   4 上顎左側第一小臼歯
   5 上顎左側第二小臼歯
   6 上顎左側第一大臼歯
   7 上顎左側第二大臼歯
   上顎左側SRPのポイント
  下顎右側のSRP
   1 下顎右側中切歯
   2 下顎右側側切歯
   3 下顎右側犬歯
   4 下顎右側第一小臼歯
   5 下顎右側第二小臼歯
   6 下顎右側第一大臼歯
   7 下顎右側第二大臼歯
   下顎右側SRPのポイント
 Part 2 そこが知りたい! 難易度別SRP実践テクニック
   Guidance for This Part――I編 Part 2の読み方
  初級編:単根歯をマスターする上下顎前歯部のSRP
   1 下顎前歯部
    下顎前歯部SRPにおける器具の選択
    1.下顎前歯部唇側への施術詳細(1)
    2.下顎前歯部舌側への施術詳細(1)
    3.下顎前歯部唇側への施術詳細(2)
    4.下顎前歯部舌側への施術詳細(2)
    ADVANCE 下顎前歯部叢生歯列への施術時の使用キュレットの選択
    Clinical Case 下顎前歯部のSRP
    下顎6前歯部(3〜3)の効率的なSRPの進め方
    下顎前歯部SRP実践テクニックのポイント(左右側共通)
   2 上顎前歯部
    下顎前歯部SRPにおける使用器具による操作性の違い
    1.上顎前歯部唇側への施術詳細(1)
    2.上顎前歯部舌側への施術詳細(1)
    3.上顎前歯部唇側への施術詳細(2)
    4.上顎前歯部舌側への施術詳細(2)
    ADVANCE 上顎前歯部に認められる特徴的形態;斜切痕(舌側歯頸溝)
    Clinical Case 上顎前歯部のSRP
     上顎6前歯部(3〜3)の効率的なSRPの進め方
     上顎前歯部SRP実践テクニックのポイント(左右側共通)
  中級編:単根歯-複根歯をマスターする下顎臼歯部のSRP
   1.下顎右側小臼歯部頬側への施術詳細
    Column ルートトランク・エナメルパール・エナメル突起
   2.下顎右側大臼歯部頬側への施術詳細
   3.下顎右側小臼歯部舌側への施術詳細
   4.下顎右側大臼歯部舌側への施術詳細
    下顎右側臼歯部(7〜4)の効率的なSRPの進め方
   5.下顎左側小臼歯部頬側への施術詳細
   6.下顎左側大臼歯部頬側への施術詳細
   7.下顎左側小臼歯部舌側への施術詳細
   8.下顎左側大臼歯部舌側への施術詳細
   Clinical Case1 下顎右側臼歯部のSRP
   Clinical Case2 下顎左側臼歯部のSRP
   Advance Case 1 下顎臼歯部叢生部位のSRP
   Advance Case 2 下顎右側臼歯部楔状欠損部のSRP
    下顎左側臼歯部(4〜7)の効率的なSRPの進め方
    下顎臼歯部SRP実践テクニックのポイント(左右側共通)
  上級編:複根歯をマスターする上顎臼歯部のSRP
   1.上顎右側小臼歯部頬側への施術詳細
   2.上顎右側大臼歯部頬側への施術詳細
   3.上顎右側小臼歯部口蓋側への施術詳細
   4.上顎右側大臼歯部口蓋側への施術詳細
    上顎右側臼歯部(7〜4)の効率的なSRPの進め方
   5.上顎左側小臼歯部頬側への施術詳細
   6.上顎左側大臼歯部頬側への施術詳細
   7.上顎左側小臼歯部口蓋側への施術詳細
   8.上顎左側大臼歯部口蓋側への施術詳細
   Clinical Case 上顎左側臼歯部のSRP
    上顎左側臼歯部(4〜7)の効率的なSRPの進め方
    上顎臼歯部SRP実践テクニックのポイント(左右側共通)
II編 SRP Basics 復習!的確なSRP実践のための基本ノウハウ
 Part 1 SRPの基本テクニック―常に振り返りたい5大ポイント
   Guidance for This Part−II編 Part 1の読み方
  1 インスツルメントの正しい持ち方(把持法:執筆状変法)
  2 シャープニング(タッチアップ)
   1.「キュレットを知る」
   2.シャープニング(タッチアップ)の手技と手順
   3.シャープニング(タッチアップ)の評価法
  3 固定(フィンガーレスト)
  4 ストローク
   1.ストロークの動作
   2.SRP終了の目安とは
   3.歯肉縁下へのキュレットの挿入法
  5 ポジショニング
   1.ホームポジション
   2.処置時のポジション
  常に振り返りたい5大ポイントのまとめ
 Part 2 SRP実践のための基本知識
  1 SRPの目的
   1.歯肉の炎症は,すべての歯科治療の妨げとなる
   2.スケーリング・ルートプレーニング(SRP)の目的とは?
   3.炎症のコントロールと咬合のコントロールで正常な歯周組織へ
  2 歯周治療に必要な器材
   1.手用器具・手用スケーラー
   2.振動型器具(超音波スケーラー,エアスケーラー)
   3.その他
III編 Keys for Professional Maintenance 長期メインテナンスを実現するプロフェッショナルハイジニストワーク&フィロソフィー
 Part 1 症例に学ぶ! 長期継続来院患者育成のための7つのステップ
   Guidance for This Part−III編 Part 1の読み方
  1 歯周組織の診査・診断――治療の成否を分ける治療前準備(基礎資料の収集)
   1.プラークスコアの採得
   2.歯周ポケットの検査(プロービング)
   3.歯の動揺度の診査
   4.根分岐部病変の診査
   5.フレミタスの診査
   6.付着歯肉の幅の診査
   7.歯周組織診査チャートの作成
  2 治療計画立案
   Clinical Case
    Column 歯周治療を行う際のアポイントメントの回数は??
  3 モチベーション
  4 ブラッシング指導(TBI,オーラルフィジオセラピー)
   1.患者と術者によるプラーク付着部位の相互認識に基づく指導
   2.歯間部の清掃指導
   3.術者みがき(王様の歯ブラシ)
   Clinical Case
  5 SRP
   1.術野の確認
   Clinical Case
  6 歯周組織の再評価
   1.評価項目
   2.再評価の実施
  7 メインテナンス
   1.長期メインテナンス実践のための極意
   2.メインテナンス実施時の“3つ”の力
   3.メインテナンスの具体的手法
    Column インプラント周囲にプロービングは行う?行わない?
   Clinical Case
 Part 2 チーム医療とコミュニケーション
   Guidance for This Part−III編 Part 2の読み方
  1 長期経過症例にみる 歯科衛生士-歯科医師間のコミュニケーション
   Stage 1 診査・診断,治療計画立案
   Stage 2 歯周初期治療後の再評価
   Stage 3 歯周外科処置終了時
   Stage 4 歯周外科処置後の再評価時
   Stage 5 メインテナンス移行時
   Stage 6 メインテナンス期間
  2 長期経過症例にみる歯科衛生士-歯科衛生士間のコミュニケーション
   治療の流れ
   メインテナンスの経過
 Appendix 長期継続メインテナンス力アップのための臨床で活きるQ&A

 References
 Index