はじめに
『PMTC 2』(2003)は,その後何度かの増刷を経て,発刊から早くも13年が経過しました.前著『PMTC』(1998)からの主旨である「より多くの人にプロケアの快適さを経験していただき,メインテナンスの来院意欲を高めるとともに,予防やケアの成果を実感していただく」という基本コンセプトは,多くの歯科医師,歯科衛生士の支持をいただき,このテーマに関する私の講演は日本全国ですでに400回を数え,共著者の波多野歯科衛生士を含めると,おそらく500回を超えると思われます.
この間のPMTC関連の器材の発展は目ざましく,現在でも各社から新製品が次々と市場に送り出されています.それにともない,積極的に器材を選択し,より質の高いPMTCを行っていこうという歯科医院も確実に増加しています.(「PMTCを行っている歯科医院」をgoogle検索すると約190,000件がヒットします-2016年2月現在)
このようにPMTCが広く日本の歯科医療に浸透し定着したのは,『PMTC 2』(2003)の序文でも記したように「歯科医療が治療行為だけで成り立つものではなく,その背景に常にケアの視点が伴ってこそ長期的に安定した経過が期待できる」という考え方が,多くの歯科関係者の共感を呼んだ結果に他なりません.
PMTCが単なるクリーニングテクニックを越えて,さらに大きな可能性を持つことに気づき,共感していただいた多くの方々に,誌上を借りて心からの感謝と敬意を表したいと思います.
さて,今は昔の話ですが,講演先でよくこんな言葉を聞きました.「先生のおかげで歯周病が簡単に“ 治る”ようになりました」.当時は目新しいテーマということで,歯肉縁上の「PMTC」のみをお話しすることが多く,それゆえに誤解を招いてしまったのだと思いますが,歯周病を治療・管理するには,本来はそれに続く「歯肉縁下のプロケア」が不可欠なのです.たしかに「SPT時においては,徹底した歯肉縁上プラークコントロールにより歯肉縁上のみならず歯肉縁下の菌数が減少し,歯周組織の健康が保たれることが,臨床的所見からも細菌学的所見からも示された」(本文p.35)という著名な論文もあり,TBIやPMTCで歯肉縁上の炎症が消退し,一見歯周病が治ったように見えることはありますが,歯周治療についてはそこからの歯肉縁下領域のプロケアについても深く理解しなくてはいけません.
そのような視点で,前著を読み返してみると,「歯周治療やSPTにおけるPMTCの位置づけ」の部分が足りないことに,あらためて気づかされます.本改訂版では,第2章でその部分を大幅に加筆しました.また,本文,コラムに関しても旧版を大幅に見直し,できるだけ最新の情報を盛り込むよう心がけました.最後のQ&Aについても,その後に読者からいただいたSPT関連の質問も含め大幅に加筆修正してあります.(*)なお,第3章,4章の「PMTCの具体的なテクニック」に関しては,過去の何度かの増刷により最新の情報が網羅されているため,旧版をほぼ無修正で掲載しました.
装丁,判型,デザインとも新しくなった本書をお読みいただき,PMTCが歯科臨床のスタンダードとして,さらに皆様のお役に立てることを願ってやみません.
2016年3月 内山 茂
*加筆修正部分に関しては,「SPTとその周辺における文献的考察」(「歯界展望」2014年7月号から2015年2月号まで8カ月連載)と「新“プロフェッショナルケア講座-ケア発想からSPTを再考する」(「デンタルハイジーン」2015年4月号から2015年12月号まで9カ月連載)から多くを引用しました.
『PMTC 2』(2003)は,その後何度かの増刷を経て,発刊から早くも13年が経過しました.前著『PMTC』(1998)からの主旨である「より多くの人にプロケアの快適さを経験していただき,メインテナンスの来院意欲を高めるとともに,予防やケアの成果を実感していただく」という基本コンセプトは,多くの歯科医師,歯科衛生士の支持をいただき,このテーマに関する私の講演は日本全国ですでに400回を数え,共著者の波多野歯科衛生士を含めると,おそらく500回を超えると思われます.
この間のPMTC関連の器材の発展は目ざましく,現在でも各社から新製品が次々と市場に送り出されています.それにともない,積極的に器材を選択し,より質の高いPMTCを行っていこうという歯科医院も確実に増加しています.(「PMTCを行っている歯科医院」をgoogle検索すると約190,000件がヒットします-2016年2月現在)
このようにPMTCが広く日本の歯科医療に浸透し定着したのは,『PMTC 2』(2003)の序文でも記したように「歯科医療が治療行為だけで成り立つものではなく,その背景に常にケアの視点が伴ってこそ長期的に安定した経過が期待できる」という考え方が,多くの歯科関係者の共感を呼んだ結果に他なりません.
PMTCが単なるクリーニングテクニックを越えて,さらに大きな可能性を持つことに気づき,共感していただいた多くの方々に,誌上を借りて心からの感謝と敬意を表したいと思います.
さて,今は昔の話ですが,講演先でよくこんな言葉を聞きました.「先生のおかげで歯周病が簡単に“ 治る”ようになりました」.当時は目新しいテーマということで,歯肉縁上の「PMTC」のみをお話しすることが多く,それゆえに誤解を招いてしまったのだと思いますが,歯周病を治療・管理するには,本来はそれに続く「歯肉縁下のプロケア」が不可欠なのです.たしかに「SPT時においては,徹底した歯肉縁上プラークコントロールにより歯肉縁上のみならず歯肉縁下の菌数が減少し,歯周組織の健康が保たれることが,臨床的所見からも細菌学的所見からも示された」(本文p.35)という著名な論文もあり,TBIやPMTCで歯肉縁上の炎症が消退し,一見歯周病が治ったように見えることはありますが,歯周治療についてはそこからの歯肉縁下領域のプロケアについても深く理解しなくてはいけません.
そのような視点で,前著を読み返してみると,「歯周治療やSPTにおけるPMTCの位置づけ」の部分が足りないことに,あらためて気づかされます.本改訂版では,第2章でその部分を大幅に加筆しました.また,本文,コラムに関しても旧版を大幅に見直し,できるだけ最新の情報を盛り込むよう心がけました.最後のQ&Aについても,その後に読者からいただいたSPT関連の質問も含め大幅に加筆修正してあります.(*)なお,第3章,4章の「PMTCの具体的なテクニック」に関しては,過去の何度かの増刷により最新の情報が網羅されているため,旧版をほぼ無修正で掲載しました.
装丁,判型,デザインとも新しくなった本書をお読みいただき,PMTCが歯科臨床のスタンダードとして,さらに皆様のお役に立てることを願ってやみません.
2016年3月 内山 茂
*加筆修正部分に関しては,「SPTとその周辺における文献的考察」(「歯界展望」2014年7月号から2015年2月号まで8カ月連載)と「新“プロフェッショナルケア講座-ケア発想からSPTを再考する」(「デンタルハイジーン」2015年4月号から2015年12月号まで9カ月連載)から多くを引用しました.
はじめに
1 プライマリケアとPMTC
1 プライマリケアとは
2 歯科疾患は生活習慣病
3 多くの歯科医師はプライマリケア医
4 プライマリケアはチームで行う
5 PMTCは口腔ケアの実践テクニック
6 口腔ケアから全身のプライマリケアへ
7 バイオフィルム
8 PMTCが必要な理由
2 SPTにおけるPMTCの位置づけ
1 歯周治療には継続したSPTが不可欠
2 SPTとケアとの深〜い関係
3 SPTでは何を行うのか?
4 SPTにおける炎症のコントロール
3 やってみようPMTC
1 PMTCを始める前に
2 PMTCの基本
3 プロフィーカップを使いこなす
4 プロフィンハンドピースとエバチップ
5 研磨剤を選ぶ
6 口腔内の洗浄(歯周ポケットの洗浄)
7 フッ化物塗布
8 ワンタフト系ブラシとその他の器材
4 PMTCの実際
1 初診時のPMTC
2 歯周治療にPMTCを活かす(1)
3 歯周治療にPMTCを活かす(2)
4 補綴物のメインテナンス
5 矯正治療中や幼若永久歯のPMTC
6 有病者・障害者の口腔ケア
5 PMTC Q&A
PMTCやSRPを効率よく行う秘訣とSPTの所要時間の目安
歯周病細菌の経路とSPTとの関連
メインテナンスレベルアップへの取り組み方
口腔乾燥を訴える義歯患者への対応は?
PMTCを採算面も含めてうまく臨床に取り入れるには?
来ない患者への対応は?
リコールシステムを定着させるための秘訣は?
PMTCについてのモチベートはどうするか?
歯周治療後の歯根露出と酸蝕との関係
スタッフと院長が共有すべき歯科医療の「本質」
6 Essay's-PMTCのかたわらで
「一生恨んでやる……」という話
手遅れの患者さん
ケアが必要とされるとき
父の遺言―患者様を大切に
PMTCの風景
好顔と厚顔
原子力発電と歯科治療―センター内診療の勧め
索引
参考文献
おわりに
Column
Point of view
歯科dentistryから口腔科oral medicineへ
Column
バイオフィルムと戦う
Opinion
MI ─すべての道はリスクに通ず
Point of view
根面はどこまできれいにするべきなのか?
Point of view
逆転の発想? いきいきと生きること
Suggestion
PMTCは過保護行為?
Column
口の中の景色が変わったみたい
Suggestion
人まねじゃつまらない
Column
北風と太陽 インフォームド・コンセントのための潤滑油
Point of view
PMTCの原点─ディプラーキング
Point of view
歯周治療の戦略─ディプラーキングで外堀を埋める
Column
削るばかりが能じゃない
Column
ナイチンゲールの心
Close up
包括医療とドベネックの要素樽
Column
「面倒くさい」を嫌がらない
1 プライマリケアとPMTC
1 プライマリケアとは
2 歯科疾患は生活習慣病
3 多くの歯科医師はプライマリケア医
4 プライマリケアはチームで行う
5 PMTCは口腔ケアの実践テクニック
6 口腔ケアから全身のプライマリケアへ
7 バイオフィルム
8 PMTCが必要な理由
2 SPTにおけるPMTCの位置づけ
1 歯周治療には継続したSPTが不可欠
2 SPTとケアとの深〜い関係
3 SPTでは何を行うのか?
4 SPTにおける炎症のコントロール
3 やってみようPMTC
1 PMTCを始める前に
2 PMTCの基本
3 プロフィーカップを使いこなす
4 プロフィンハンドピースとエバチップ
5 研磨剤を選ぶ
6 口腔内の洗浄(歯周ポケットの洗浄)
7 フッ化物塗布
8 ワンタフト系ブラシとその他の器材
4 PMTCの実際
1 初診時のPMTC
2 歯周治療にPMTCを活かす(1)
3 歯周治療にPMTCを活かす(2)
4 補綴物のメインテナンス
5 矯正治療中や幼若永久歯のPMTC
6 有病者・障害者の口腔ケア
5 PMTC Q&A
PMTCやSRPを効率よく行う秘訣とSPTの所要時間の目安
歯周病細菌の経路とSPTとの関連
メインテナンスレベルアップへの取り組み方
口腔乾燥を訴える義歯患者への対応は?
PMTCを採算面も含めてうまく臨床に取り入れるには?
来ない患者への対応は?
リコールシステムを定着させるための秘訣は?
PMTCについてのモチベートはどうするか?
歯周治療後の歯根露出と酸蝕との関係
スタッフと院長が共有すべき歯科医療の「本質」
6 Essay's-PMTCのかたわらで
「一生恨んでやる……」という話
手遅れの患者さん
ケアが必要とされるとき
父の遺言―患者様を大切に
PMTCの風景
好顔と厚顔
原子力発電と歯科治療―センター内診療の勧め
索引
参考文献
おわりに
Column
Point of view
歯科dentistryから口腔科oral medicineへ
Column
バイオフィルムと戦う
Opinion
MI ─すべての道はリスクに通ず
Point of view
根面はどこまできれいにするべきなのか?
Point of view
逆転の発想? いきいきと生きること
Suggestion
PMTCは過保護行為?
Column
口の中の景色が変わったみたい
Suggestion
人まねじゃつまらない
Column
北風と太陽 インフォームド・コンセントのための潤滑油
Point of view
PMTCの原点─ディプラーキング
Point of view
歯周治療の戦略─ディプラーキングで外堀を埋める
Column
削るばかりが能じゃない
Column
ナイチンゲールの心
Close up
包括医療とドベネックの要素樽
Column
「面倒くさい」を嫌がらない

















