やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

序文
 「感動すれば,何かが変わる」
 これは自分へのキーワードとしている言葉ですが,序文としてお伝えしましょう.「感動すれば」の主語は記載していませんが,「自分」あるいは「他の人」です.
 まず,「自分」を挿入してみると,「自分で体験したこと」や「目の前で起きたこと」に感動を受け,そこからたくさんの「何か」を学びました.これは,筆者の長い臨床経験から言える事実です.次に「患者さん」を挿入してみると,「期待していた以上の治療が受けられたこと」から感謝の念が生まれ,さらに膨らむと「感動」となるはずです.そして,感動した患者さんは,安心して受診するようになります.
 さて,本書の主題「ホワイトニング」に的を絞っていきます.従来,ホワイトニングは存在していなかった治療法ですが,登場してから早30年以上経ちます.筆者自身の感覚では「新しくない」としても,何故か今でも新参者扱いされているようです.とはいうものの,ホワイトニングの登場により,明らかに歯科衛生士の業務範囲が広がりました.ホワイトニングと従前の業務との相違点は,歯科衛生士自らによる「手順の説明」「インフォームドコンセント」「さまざまなアドバイス」を行えば,ダイレクトに患者さんの反応が返ってくるという点です.歯科治療は通常は歯科医師が介在しますし,例えば,スケーリング等の作業を一生懸命にやればやるほど,患者さんから「辛かった,痛かった」といわれた経験がありませんか.ホワイトニングの良い点は,自分が関与することで,嬉しそうな患者さんの笑顔をダイレクトに感じることができることです.歯科衛生士としても感動から得られるものがあり,患者さん自身も感動したことにより,オーラルケアや定期的メインテナンスに関心を持ってくれます.実際に「感動が凄くて,人生まで好転した」という患者さんもいらっしゃいます.
 また提案として,ホワイトニングを自分で体験しましょう.オフィス・ホワイトニングでもホーム・ホワイトニングでも構いません.自分でも「歯が美しくなる感動」を実感できますし,もし不具合を体験すれば,患者さんの意見も素直に耳に入ります.そして対処法も体験できるので,患者さんの問いかけに対して「適切な指示」を説得力のある言葉で伝えられるはずです.一方で残念ながら,歯科衛生士だけでなく歯科医師にも,実体験していない方々がまだいらっしゃるようです.
 最後にもう一度,「まず自分で試すよう」お勧めします.そして「自分が感動すれば,何かが変わる」を歯科衛生士として体験してみませんか.
 2012年10月
 近藤 隆一
第1章 ホワイトニングとは
 (近藤隆一)
 1.ホワイトニングの概略
 2.なぜ歯が汚く見えるか?
  1)外因性着色
  2)内因性変色
  3)高齢化
  4)遺伝因子(DNA)による強い黄ばみ
 3.歯はどうして白くなるか
  1)ホワイトニングで白くなるか?
  2)理想的な漂白と歯の白濁化の違いを知る
 4.成功させるポイントは?
  1)診療する立場から選択肢を考える
  2)患者さんに向けた情報
  3)患者さんへの究極のアドバイス
 5.症例編
第2章 歯科衛生士のための基礎知識
 (近藤隆一)
 1.知識の整理
  1)歯科医師の役割
  2)ホワイトニング:生活歯の漂白とは
  3)ホワイトニング法の適応症と禁忌症
  4)ホワイトニングに使用される薬剤
  5)酸素のおかげで白くなる
  6)ホワイトニング剤は消毒薬
  7)治療後の改善状態を予測する
  8)効果の永続性
 2.コンサルテーション
  1)ホワイトニングへの関心度を観察する
  2)コンサルテーションの順序
  3)ホワイトニング前の暫間処置
  4)インフォームドコンセント
  5)起こりうる不快症状(+対策)
  6)歯のシェード確認と写真撮影
  7)スケーリングとポリッシング
第3章 ホーム・ホワイトニング
 (近藤隆一)
 1.ホーム・ホワイトニングの概要
  1)ホーム・ホワイトニングの有利な点
  2)ホーム・ホワイトニング不利な点
  3)ホーム・ホワイトニングのプロセス
 2.カスタムトレーの概要
  1)カスタムトレーの形状
  2)カスタムトレー製作のポイント
 3.カスタムトレーの製作
  1)素材の選択
  2)製作手順
 4.チェアーサイドでの確認事項
 5.最重要ポイント
  1)どの製品を選ぶか
  2)どのタイミングで装着させるか
  3)歯列のどの部分を対象とするか
  4)装着期間の設定
  5)その他
  6)嗜好品・食品の制限をどうするか
 6.再来院時のチェック
  1)効果の判定
  2)知覚過敏の確認
  3)カスタムトレーの確認
 7.完了時
  1)改善度の比較
  2)完了の判断を誰が決めるか
  3)後戻りの正体
  4)メインテナンスの必要性
  5)タッチアップ
第4章 オフィス・ホワイトニング
 (近藤隆一)
 1.オフィス・ホワイトニングの概要
  1)オフィス・ホワイトニングの有利な点
  2)オフィス・ホワイトニングの不利な点
 2.必要な器材
 3.オフィス・ホワイトニングのプロセス
 4.ティオン オフィスによる実際の手順
第5章 歯科衛生士が行うホワイトニング前後の処置
 (加藤久子)
 1.スケーリング
 2.超音波スケーリング
 3.歯面清掃
 4.ポリッシングとフロッシング
 5.ホワイトニング前処置としてのデブライドメント
 6.口腔衛生指導
 7.ホワイトニング後の指導
 8.リコール時の指導

 Column
  <近藤隆一>
   ・光照射について
   ・オーバー・ザ・カウンター・プロダクツ(OTC)
   ・歯の色調判定
   ・海外のホワイトニング剤
   ・冷熱等に対する過敏状態への対処
  <加藤久子>
   ・感染予防