はじめに
歯科医業の経営理念の骨子は人々によりよい歯科医療を提供していくことである.よりよい歯科医療を長期に,しかも安定的に提供していくには,その経営体の財務構造や収支状況が当を得ていないと難しい.
とくに最近は,歯科医療機関の増加に伴う競争の激化や歯科医業収入の伸び悩み,人口の高齢化,さらには所得格差の広がりや歯科医療ニーズの多様化等々,とりまく経営環境の変化が目まぐるしい.
このような状況下になると,昨日の繁栄が明日の栄光を約束するとは限らない.変化を見越した大胆な経営戦略やきめ細かなマネジメントが必要になってくるが,この場合,明日の経営を展望するとともに脚下照顧がものをいう.
現状の認識と把握のための手段は幾多あるが,経営の羅針盤と称される経営指標の右に出るものはない.
経営指標とは,経営の「モノサシ」であり,価値判断基準のベースである.しかも経営指標は数値で示されるため,明瞭かつ具体性に富んでいる.それゆえ経営指標は経営管理上,必須のツールとして利用されているのだが,歯科医院経営に関する経営指標は今まであまり作られていなかったし,使用頻度も少なかった.
著者は経営コンサルタントという職業柄,経営指標なしで歯科医院経営のよしあしを論じ,問題点を指摘することはできないので,十数年前より得意先の歯科医院の貸借対照表・損益計算書を参照しながら経営指標づくりに努めてきた.
さいわい,近年に至り歯科医院の経営指標の必要性が云々され,公表を望む声も大きくなってきたのを契機に公開することとした.しかし経営指標だけでは片手落ちなので,歯科医業の円滑な発展と繁栄のため,望ましい経営指標値に経営を近づけるための経営セオリーや経営ノウハウも併せて紹介することとした.
ところで,本書執筆に際し,もっとも留意し,気配りしたことは,一般的に歯科医師やその家族は,経営専門用語に不馴れなうえ,日常経営数字を使う機会が少ないため,そんなめんどうなことは避けて通りたいという気持のほうが強いという点である.もっともなことである.そこで本書では,簿記や貸借対照表・損益計算書の基本から解き起こし,難解な箇所はできるだけ図表等を使って分かりやすく,かつ具体的に記述するよう努めた.
本書が,先生方の歯科医院の経営実態の判断に役立ち,また体質強化のための一方策として活用されれば,これに勝る喜びはない.
なお,本書刊行に際しては医歯薬出版株式会社の皆さんより格別なご支援を頂いたのでここに謝意を表する.
1990年5月 経営コンサルタント 大林茂夫
歯科医業の経営理念の骨子は人々によりよい歯科医療を提供していくことである.よりよい歯科医療を長期に,しかも安定的に提供していくには,その経営体の財務構造や収支状況が当を得ていないと難しい.
とくに最近は,歯科医療機関の増加に伴う競争の激化や歯科医業収入の伸び悩み,人口の高齢化,さらには所得格差の広がりや歯科医療ニーズの多様化等々,とりまく経営環境の変化が目まぐるしい.
このような状況下になると,昨日の繁栄が明日の栄光を約束するとは限らない.変化を見越した大胆な経営戦略やきめ細かなマネジメントが必要になってくるが,この場合,明日の経営を展望するとともに脚下照顧がものをいう.
現状の認識と把握のための手段は幾多あるが,経営の羅針盤と称される経営指標の右に出るものはない.
経営指標とは,経営の「モノサシ」であり,価値判断基準のベースである.しかも経営指標は数値で示されるため,明瞭かつ具体性に富んでいる.それゆえ経営指標は経営管理上,必須のツールとして利用されているのだが,歯科医院経営に関する経営指標は今まであまり作られていなかったし,使用頻度も少なかった.
著者は経営コンサルタントという職業柄,経営指標なしで歯科医院経営のよしあしを論じ,問題点を指摘することはできないので,十数年前より得意先の歯科医院の貸借対照表・損益計算書を参照しながら経営指標づくりに努めてきた.
さいわい,近年に至り歯科医院の経営指標の必要性が云々され,公表を望む声も大きくなってきたのを契機に公開することとした.しかし経営指標だけでは片手落ちなので,歯科医業の円滑な発展と繁栄のため,望ましい経営指標値に経営を近づけるための経営セオリーや経営ノウハウも併せて紹介することとした.
ところで,本書執筆に際し,もっとも留意し,気配りしたことは,一般的に歯科医師やその家族は,経営専門用語に不馴れなうえ,日常経営数字を使う機会が少ないため,そんなめんどうなことは避けて通りたいという気持のほうが強いという点である.もっともなことである.そこで本書では,簿記や貸借対照表・損益計算書の基本から解き起こし,難解な箇所はできるだけ図表等を使って分かりやすく,かつ具体的に記述するよう努めた.
本書が,先生方の歯科医院の経営実態の判断に役立ち,また体質強化のための一方策として活用されれば,これに勝る喜びはない.
なお,本書刊行に際しては医歯薬出版株式会社の皆さんより格別なご支援を頂いたのでここに謝意を表する.
1990年5月 経営コンサルタント 大林茂夫
Part1 決算書は経営の通信簿である…1
数字はビジネスマンの合{あい}ことば 2
簿記への招待 3
貸借対照表について 9
損益計算書のあらまし 14
Part2 歯科医院の生命線は資金繰り…21
倒産は資金調達不如意 22
資金調達のA・B・C 25
運転資本の効率管理 27
資金繰りのための経営指標 30
Part3 経営のベースは診療収入…33
保険診療と自由診療 34
価格戦略とその設定 36
売上を伸ばす知恵 40
診療収入に関する経営指標 48
Part4 成熟飽和時代の購買管理…51
上手な購買業務の進め方 52
歯科材料の仕入,棚卸 55
歯科技工管理のポイント 61
購買チェックのための経営指標 65
Part5 経費は第3の利潤である…67
経費とは何か 68
活きた金づかい 73
人件費管理の勘どころ 77
経費をめぐる経営指標 81
Part6 収益構造をはだかにする…85
収益力の有無が経営のカギ 86
収益力を判定する指標 87
損益分岐点と損益分岐点操業度 94
利益図表と打つべき手 98
Part7 健全な資本の構築を目指せ…107
歯科医院に手形は無用 108
長期借入金の考え方,借り方 110
自己資本強化の方策 115
健全性を判定するための経営指標 118
Part8 安定化のための資産管理…121
現金・預金の管理 122
設備投資をめぐって 126
財テクあれこれ 132
安定化のための経営指標 135
Part9 生産性重視が経営のトレンド…139
生産性の意味するところ 140
人の生産性アップの着眼点 141
設備生産性の追求 144
生産性を判定する指標 147
Part 10 適者生存の明日にそなえて…151
経営指標の読み方 152
経営指標に基づく処方せん 155
経営指標の算出と処方例 158
明日の歯科医業の展望と課題 164
付1 病院会計準則に基づいた財務諸表の様式…169
付2 ○○歯科医院経理規程…175
索引…183
数字はビジネスマンの合{あい}ことば 2
簿記への招待 3
貸借対照表について 9
損益計算書のあらまし 14
Part2 歯科医院の生命線は資金繰り…21
倒産は資金調達不如意 22
資金調達のA・B・C 25
運転資本の効率管理 27
資金繰りのための経営指標 30
Part3 経営のベースは診療収入…33
保険診療と自由診療 34
価格戦略とその設定 36
売上を伸ばす知恵 40
診療収入に関する経営指標 48
Part4 成熟飽和時代の購買管理…51
上手な購買業務の進め方 52
歯科材料の仕入,棚卸 55
歯科技工管理のポイント 61
購買チェックのための経営指標 65
Part5 経費は第3の利潤である…67
経費とは何か 68
活きた金づかい 73
人件費管理の勘どころ 77
経費をめぐる経営指標 81
Part6 収益構造をはだかにする…85
収益力の有無が経営のカギ 86
収益力を判定する指標 87
損益分岐点と損益分岐点操業度 94
利益図表と打つべき手 98
Part7 健全な資本の構築を目指せ…107
歯科医院に手形は無用 108
長期借入金の考え方,借り方 110
自己資本強化の方策 115
健全性を判定するための経営指標 118
Part8 安定化のための資産管理…121
現金・預金の管理 122
設備投資をめぐって 126
財テクあれこれ 132
安定化のための経営指標 135
Part9 生産性重視が経営のトレンド…139
生産性の意味するところ 140
人の生産性アップの着眼点 141
設備生産性の追求 144
生産性を判定する指標 147
Part 10 適者生存の明日にそなえて…151
経営指標の読み方 152
経営指標に基づく処方せん 155
経営指標の算出と処方例 158
明日の歯科医業の展望と課題 164
付1 病院会計準則に基づいた財務諸表の様式…169
付2 ○○歯科医院経理規程…175
索引…183