監訳者序
待望久しかった,R.G.Alexander先生(通称 “Wick(2))による歯科矯正臨床の著書が翻訳され,ここに出版されることになった.
彼のテクニックはVari-Simplex Discipline(VSD)と命名され,わが国でも日本矯正歯科学会総会における特別講演をはじめ,毎年の講演会などでつとに有名である.すでに,VSD研究会も発足し,国内において確実にその根を張りつつある.本年(1989年)アナハイムのアメリカ矯正歯科学会の特別講演も満席で好評であった.
このテクニックは,患者との人間的な交流に大事な時間を割くという,Wickの思想から開発された.その意味で,テクニックはできるだけsimpleにと心掛けられている.つまりwire bendingなどに時間を消費することを,極力排除しようというのである.確かに,患者・術者のいずれにとっても,chair timeは短いほうがいい.
私の経験からしても,やたらに面倒なwire bendingを必要とするテクニックは,どうもいろいろ支障を起こしやすい.特に,初心者が面倒なテクニックに飛びつく場合の共通して陥りやすい欠陥は,結局歯が思うように動かない,そのため歯に一層余計な負担をかけ,あるいは歯根吸収の原因になったりする,といったような点である.VSDは,患者に術者の心の暖かみが伝わってゆくようなところがある.こうした医療としての総合的な観点からしても,優れた考えに基礎をおいたテクニックであると,私は推奨してやまないのである.
なお,本書の訳出は,多くの大学の矯正学教室の中堅の諸先生のご協力とご努力によるものである.監訳は,私などより柴崎好伸教授ならびに加藤博重助教授のお二人が,実質的には・かに大変であった.お陰様で私には非常に楽な仕事になってしまい申し訳ないような気持である.
また,医歯薬出版の編集の皆さんには,ことのほかご面倒をおかけしてしまった.心から,お礼を申し上げたい.
平成元年5月
福 原 達 郎
待望久しかった,R.G.Alexander先生(通称 “Wick(2))による歯科矯正臨床の著書が翻訳され,ここに出版されることになった.
彼のテクニックはVari-Simplex Discipline(VSD)と命名され,わが国でも日本矯正歯科学会総会における特別講演をはじめ,毎年の講演会などでつとに有名である.すでに,VSD研究会も発足し,国内において確実にその根を張りつつある.本年(1989年)アナハイムのアメリカ矯正歯科学会の特別講演も満席で好評であった.
このテクニックは,患者との人間的な交流に大事な時間を割くという,Wickの思想から開発された.その意味で,テクニックはできるだけsimpleにと心掛けられている.つまりwire bendingなどに時間を消費することを,極力排除しようというのである.確かに,患者・術者のいずれにとっても,chair timeは短いほうがいい.
私の経験からしても,やたらに面倒なwire bendingを必要とするテクニックは,どうもいろいろ支障を起こしやすい.特に,初心者が面倒なテクニックに飛びつく場合の共通して陥りやすい欠陥は,結局歯が思うように動かない,そのため歯に一層余計な負担をかけ,あるいは歯根吸収の原因になったりする,といったような点である.VSDは,患者に術者の心の暖かみが伝わってゆくようなところがある.こうした医療としての総合的な観点からしても,優れた考えに基礎をおいたテクニックであると,私は推奨してやまないのである.
なお,本書の訳出は,多くの大学の矯正学教室の中堅の諸先生のご協力とご努力によるものである.監訳は,私などより柴崎好伸教授ならびに加藤博重助教授のお二人が,実質的には・かに大変であった.お陰様で私には非常に楽な仕事になってしまい申し訳ないような気持である.
また,医歯薬出版の編集の皆さんには,ことのほかご面倒をおかけしてしまった.心から,お礼を申し上げたい.
平成元年5月
福 原 達 郎
第1章 アレキサンダーの矯正臨床フィロソフィー
はじめに
Tweed法からVari-Simplex Disciplineへ――20年の道のり
Vari-Simplex Disciplineの基本的なフィロソフィー
現在のVari-Simplex Discipline
Vari-Simplex Disciplineによる治療の成果
診療管理に対するVari-Simplex Disciplineの影響
第2章 診断と治療計画
既往歴
パノラマX線写真
顔面写真
口腔内写真
診断用模型
初診時データ
側方セファロ
三平面分析
矢状面
水平面
垂直面
歯の相互関係
軟組織の相互関係
診断用チャートのセファロ項目
治療計画
症例
診断に関する最終的な考え
第3章 Vari-Simplexの装置設計
はじめに
Vari-Simplex brackets
Vari-Simplex Disciplineで用いられるbracketの型
その他のアタッチメント
Bracketの位置
Bracketのアンギュレーション(傾斜またはsecond order bend)
Bracketのトルク(third order bend)
Bracket in/out(first order bend)
まとめ
第4章 顎 外 力
はじめに
フェイスボウの力系
フェイスボウの牽引力と使用上の指示
フェイスボウ・システムの構成要素
フェイスボウの口外弧線
フェイスボウの口内弧線
Retractorシステムのパラメーター
Retractorの力
装着期間
矯正力対整形力
上顎大臼歯の遠心移動
上顎前歯の変化
SNAに対する効果
下顎骨の成長
成人に対する顎外療法
顎外固定装置と保定への移行処置
患者の協力
III級顎外力
むすび
第5章 Vari-Simplex DisciplineにおけるElasticsおよび他の顎内装置の使用法
はじめに
患者の協力
Elasticの仕様明細
II級ゴム
III級ゴム
咬合のオーバーコレクション
正中ゴム
四角ゴム
三角ゴム
交叉ゴム
Up-and-down仕上げゴム
顎外ゴム
スプリング
Vari-Simplexシステムと併用されるその他の装置
他の口腔内装置
むすび
第6章 固定式装置治療における矯正用ワイヤーの使用法
一般的ワイヤーの特性
有効なトルク
ワイヤーベンディング
弾性材と金属製材による結紮
矯正用ワイヤーのタイバック
固定装置の整形作用
Vari-Simplex Disciplineで用いられる矯正力の大きさ
初期のarchwire:丸型対角型
中間期と最終のarchwire
熱処理
アーチフォーム
プリフォームのarchwire対直線状のワイヤー
まとめ
第7章 非抜歯治療
はじめに
ボーダーライン症例
非抜歯治療
隣接面エナメル削除(Slenderizing)
II級1類(Class II division1)
II級2類(Class II division2)
過蓋咬合症例(Deep bite case)
III級症例(Class III case)
I級叢生症例(Class I crowded)
開咬症例(Open bite)
【症 例】
第8章 抜歯治療
小臼歯抜去の適応
抜歯症例の管理
口腔外科医への依頼
Driftodonticsの概念
典型的なII級1類症例におけるarchwireの順序
上顎歯列弓の拡大
標準的な治療手順に対する修正
変則的な抜歯
本章 のおわりに
【症 例】
第9章 早期治療
はじめに
早期治療の利点
早期治療の欠点
新患診査
資料採得の手順
早期治療におけるメカニクス
Face mask療法
中間期の処置
第二段階におけるメカニクス
連続抜去法
口蓋裂症例
習癖の管理
二段階治療における患者の動機づけ
【症 例】
第10章 成人矯正
背景
思春期における矯正治療との比較
複数の専門にまたがる治療
成人矯正治療の限界
ブリッジ
治療期間
抜歯あるいは非抜歯
妥協症例
エアタービンによるエナメル面の削除
矯正治療における歯周組織に関する考察
矯正治療前の歯周組織評価
歯周病専門医に委託する通常の処置
矯正治療中に起こりうる歯周組織障害
歯周組織障害の矯正治療による改善
治療後の管理
矯正治療と顎関節
治療前の考察
症例の診断
治療計画
スプリント療法
咬合調整
顎関節手術
矯正治療
バランスの問題
身体のバランス
栄養のバランス
運動
情緒のバランス
顎外科
治療前の記録
外科適応症
矯正歯科医と口腔外科医の連係
外科患者の治療計画
外科処置
手術後の固定
術後矯正
外科症例における顎関節治療
外科手術後の後戻り
外科に起因する心理学的問題
外科と非外科
非外科治療計画
成人保定
【症 例】
第11章 リンガル矯正
筆者の所感
反対者への異議申し立て
リンガル矯正の長所
リンガル矯正の短所
リンガルbracketのタイプ
鑑別診断
リンガル矯正における間接接着法の役割
診療の場での接着手順
リンガル療法のアーチフォーム
結紮
Archwireの進歩
上顎歯列弓のみのリンガル治療
TMJに対するリンガル法の影響
顎外装置
ポジショナー
保定
最新のリンガル法の発展
患者と経営の管理
まとめ
【症 例】
第12章 保 定
いつ保定を始めるのか?
保定への秒読み
バンド撤去のための診療
保定装置の設計と製作
特別な問題
治療後の評価
保定装置装着時の診療
下顎の保定装置
咬合平衡
保定期間中の診療
後戻り
後戻りを起こす要因
むすび
第13章 補 遺
本章 の取り扱いについて
マネージメントの原則(原本の第2章 )
患者管理(原本の第3章 )
診療所のコンピュータ化(原本の第15章 )
エピローグ:矯正歯科の未来
和文索引
欧文索引
人名索引
はじめに
Tweed法からVari-Simplex Disciplineへ――20年の道のり
Vari-Simplex Disciplineの基本的なフィロソフィー
現在のVari-Simplex Discipline
Vari-Simplex Disciplineによる治療の成果
診療管理に対するVari-Simplex Disciplineの影響
第2章 診断と治療計画
既往歴
パノラマX線写真
顔面写真
口腔内写真
診断用模型
初診時データ
側方セファロ
三平面分析
矢状面
水平面
垂直面
歯の相互関係
軟組織の相互関係
診断用チャートのセファロ項目
治療計画
症例
診断に関する最終的な考え
第3章 Vari-Simplexの装置設計
はじめに
Vari-Simplex brackets
Vari-Simplex Disciplineで用いられるbracketの型
その他のアタッチメント
Bracketの位置
Bracketのアンギュレーション(傾斜またはsecond order bend)
Bracketのトルク(third order bend)
Bracket in/out(first order bend)
まとめ
第4章 顎 外 力
はじめに
フェイスボウの力系
フェイスボウの牽引力と使用上の指示
フェイスボウ・システムの構成要素
フェイスボウの口外弧線
フェイスボウの口内弧線
Retractorシステムのパラメーター
Retractorの力
装着期間
矯正力対整形力
上顎大臼歯の遠心移動
上顎前歯の変化
SNAに対する効果
下顎骨の成長
成人に対する顎外療法
顎外固定装置と保定への移行処置
患者の協力
III級顎外力
むすび
第5章 Vari-Simplex DisciplineにおけるElasticsおよび他の顎内装置の使用法
はじめに
患者の協力
Elasticの仕様明細
II級ゴム
III級ゴム
咬合のオーバーコレクション
正中ゴム
四角ゴム
三角ゴム
交叉ゴム
Up-and-down仕上げゴム
顎外ゴム
スプリング
Vari-Simplexシステムと併用されるその他の装置
他の口腔内装置
むすび
第6章 固定式装置治療における矯正用ワイヤーの使用法
一般的ワイヤーの特性
有効なトルク
ワイヤーベンディング
弾性材と金属製材による結紮
矯正用ワイヤーのタイバック
固定装置の整形作用
Vari-Simplex Disciplineで用いられる矯正力の大きさ
初期のarchwire:丸型対角型
中間期と最終のarchwire
熱処理
アーチフォーム
プリフォームのarchwire対直線状のワイヤー
まとめ
第7章 非抜歯治療
はじめに
ボーダーライン症例
非抜歯治療
隣接面エナメル削除(Slenderizing)
II級1類(Class II division1)
II級2類(Class II division2)
過蓋咬合症例(Deep bite case)
III級症例(Class III case)
I級叢生症例(Class I crowded)
開咬症例(Open bite)
【症 例】
第8章 抜歯治療
小臼歯抜去の適応
抜歯症例の管理
口腔外科医への依頼
Driftodonticsの概念
典型的なII級1類症例におけるarchwireの順序
上顎歯列弓の拡大
標準的な治療手順に対する修正
変則的な抜歯
本章 のおわりに
【症 例】
第9章 早期治療
はじめに
早期治療の利点
早期治療の欠点
新患診査
資料採得の手順
早期治療におけるメカニクス
Face mask療法
中間期の処置
第二段階におけるメカニクス
連続抜去法
口蓋裂症例
習癖の管理
二段階治療における患者の動機づけ
【症 例】
第10章 成人矯正
背景
思春期における矯正治療との比較
複数の専門にまたがる治療
成人矯正治療の限界
ブリッジ
治療期間
抜歯あるいは非抜歯
妥協症例
エアタービンによるエナメル面の削除
矯正治療における歯周組織に関する考察
矯正治療前の歯周組織評価
歯周病専門医に委託する通常の処置
矯正治療中に起こりうる歯周組織障害
歯周組織障害の矯正治療による改善
治療後の管理
矯正治療と顎関節
治療前の考察
症例の診断
治療計画
スプリント療法
咬合調整
顎関節手術
矯正治療
バランスの問題
身体のバランス
栄養のバランス
運動
情緒のバランス
顎外科
治療前の記録
外科適応症
矯正歯科医と口腔外科医の連係
外科患者の治療計画
外科処置
手術後の固定
術後矯正
外科症例における顎関節治療
外科手術後の後戻り
外科に起因する心理学的問題
外科と非外科
非外科治療計画
成人保定
【症 例】
第11章 リンガル矯正
筆者の所感
反対者への異議申し立て
リンガル矯正の長所
リンガル矯正の短所
リンガルbracketのタイプ
鑑別診断
リンガル矯正における間接接着法の役割
診療の場での接着手順
リンガル療法のアーチフォーム
結紮
Archwireの進歩
上顎歯列弓のみのリンガル治療
TMJに対するリンガル法の影響
顎外装置
ポジショナー
保定
最新のリンガル法の発展
患者と経営の管理
まとめ
【症 例】
第12章 保 定
いつ保定を始めるのか?
保定への秒読み
バンド撤去のための診療
保定装置の設計と製作
特別な問題
治療後の評価
保定装置装着時の診療
下顎の保定装置
咬合平衡
保定期間中の診療
後戻り
後戻りを起こす要因
むすび
第13章 補 遺
本章 の取り扱いについて
マネージメントの原則(原本の第2章 )
患者管理(原本の第3章 )
診療所のコンピュータ化(原本の第15章 )
エピローグ:矯正歯科の未来
和文索引
欧文索引
人名索引