やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
 「ギネスブック」に歯周病の罹患率の高さが記録されることからもわかるように,日本だけではなく世界中の人々が,歯周病によって快適な生活を脅かされている事実があります.一方で,患者さんとともにしっかりと歯周基本治療に取り組むことで,約8割の歯周病は治癒や寛解するともいわれています.私たちも臨床において,歯周基本治療の結果や再評価を目の当たりにし,まさにそのとおりであると日々実感しています.
 本別冊を手に取った方は,まだ経験の浅い卒業間もない歯科衛生士・歯科医師の方から,経験を積んだベテランの方までさまざまであると思います.歯周基本治療における盲目下で行う“スケーリング・ルートプレーニング(以下,SRP)“に対して,「自信がもてない」「歯周ポケットが改善しない」などの声をよく耳にします.歯周病を治癒へ導くための歯周基本治療は“セルフケアの定着”と“SRP“が要であり,その後,“再評価”へと進んでいきますが,なかでも術者の技術が結果に大きく影響するのがSRPであるといえます.奥が深く悩むことの多い手技の1つであり,SRPを施術している方であれば,誰もが何かしらの疑問や課題を抱え,悩みは尽きません.
 本別冊では上下顎を前歯・小臼歯・大臼歯と分け,各項目で歯の解剖学的特徴やスケーラーの選択,ポジショニング,レストの位置などについて,経験の浅い初学者から経験者まで,多くの方が“視覚的“かつ“直感的”に理解できるよう,図や写真などを豊富に使ってまとめました.すべての部位において,各筆者が臨床例とともに改善のポイントや施術の解説を示しており,臨床に即した内容となっています.また,超音波スケーラーや再評価についても取り上げており,手用スケーラーでは対応が難しい部位について,効果的に超音波スケーラーを使用するポイントもご理解いただけると思います.
 「歯周基本治療」を成功へ導くためには,SRPなどの“技術“だけではなく,解剖学や病理・組織学などの正しい“知識”も身につけ,臨床経験を積むことがとても重要です.本別冊を手に取っていただいて,皆さんがこの両輪を磨き,さらなるスキルアップをするための一助となることを願っています.
 2021年秋
 編著者代表 熊谷靖司
 はじめに(熊谷)
 執筆者一覧
LESSON 1 SRPを始める前に
 (小森)
 1.やってみようSRP!
 2.SRPを始める前に
 3.シャープニングされたスケーラーを準備しよう
LESSON 2 歯/上顎小臼歯
 (小森)
 深掘り! 「歯」
 解剖学的特徴 「上顎小臼歯(45)」
 アプローチ
  「上顎右側小臼歯(54)」
  「上顎左側小臼歯(45)」(症例:塩浦)
LESSON 3 探知/下顎大臼歯
 (塩浦)
 深掘り! 「探知」
 解剖学的特徴 「下顎大臼歯(67)」
 アプローチ
  「下顎右側大臼歯(76)」
  「下顎左側大臼歯(67)」
LESSON 4 スケーラー/上顎前歯
 (筋野)
 深掘り! 「スケーラー」
 解剖学的特徴 「上顎前歯(123)」
 アプローチ
  「上顎右側前歯(321)」
  「上顎左側前歯(123)」
LESSON 5 ポジション/下顎小臼歯
 (遠山)
 深掘り! 「ポジション」
 解剖学的特徴 「下顎小臼歯(45)」
 アプローチ
  「下顎右側小臼歯(54)」
  「下顎左側小臼歯(45)」
LESSON 6 口腔内でのアクセス/上顎大臼歯
 (筋野)
 深掘り! 「口腔内でのアクセス」(筋野・小森)
 解剖学的特徴 「上顎大臼歯(67)」
 アプローチ
  「上顎右側大臼歯(76)」
  「上顎左側大臼歯(67)」
LESSON 7 ストローク/下顎前歯
 (塩浦)
 深掘り! 「ストローク」
 解剖学的特徴 「下顎前歯(123)」
 アプローチ
  「下顎右側前歯(321)」
  「下顎左側前歯(123)」(症例:小森)
LESSON 8 超音波スケーラーを上手に取り入れよう
 (小森)
 1.手用スケーラーと超音波スケーラーを使い分けよう
 2.超音波スケーラーの特徴と操作方法(ピエゾ式)
LESSON 9 SRP後の再評価
 (塩浦)
 1.再評価で何をみる?
 2.再評価のタイミングは?
 3.再評価の結果を予測しよう