はじめに
近年,医学の進歩により,全身状態になんらかの問題をもちながらも歯科外来を訪れる患者さんが増えています.また超高齢社会に伴い,外来・在宅を問わず,高齢者に対し歯科医療を提供する機会が多くなっていますが,高齢者は全身疾患を有している割合が高いことから全身状態に配慮した対応が必要になります.
歯科衛生士も,歯や歯周組織だけでなく,全身状態や全身疾患について把握し,口腔の状態と全身の状態とを関連づけながら,それぞれの状態に合せた安全な口腔健康管理を進めていくことが求められているのです.
とはいえ,日々の臨床において口腔疾患への対応をおもな業務とする歯科衛生士にとって,全身状態の把握や有病者への対応など,いわゆる全身管理の知識を学ぶことは必ずしも容易なことではなく,むしろ苦手意識をもつ方もいるでしょう.しかし,患者さんの全身状態を知ることは,口腔疾患の予防や治療に有用であるばかりでなく,患者さんとのコミュニケーションや信頼関係を深め,さらに安全な歯科医療を行うためにもとても大切なことです.
全身状態を把握するために,はじめからバイタルサインや全身疾患について多くの知識を備えていることが必要なわけではありません.まず,患者さんの顔つきや話し方,歩き方を意識してみること,そして何か変わったことがないか気がつくことから始めていきます.そして,得られた情報をどう理解し,歯科衛生士業務にどのように活用するべきかについては,本書Part1を参考にしながら,日々の臨床のなかで繰り返し経験することで,しだいに理解を深められるでしょう.またPart2では全身的偶発症(全身トラブル)とその対応について記述しました.歯科治療時に起こりうる全身的偶発症はさまざまですが,それぞれの特徴的な症状や必要な処置を知っておくことで,迅速かつ適切な対応をとることが可能となります.
本書は,歯科診療における全身状態の観察・評価や全身的偶発症に対する緊急対応についてあらためて学び,“脱・口だけ歯科衛生士”を目指す方を対象とした入門書です.いわゆる教科書とは違い,できるだけ多くのイラストや図表を入れて,見やすく,わかりやすい“読み物”として作りました.全身的偶発症についても,解説に加え歯科衛生士として対応すべきポイントをまとめています.
本書が,いままで「口だけ」に主眼を向けていた歯科衛生士が,「全身状態」にも目を向けるきっかけとなり,さらに緊急偶発症にも迅速に対応できるようになるための一助となることを願っています.
2019年8月18日
山口秀紀
近年,医学の進歩により,全身状態になんらかの問題をもちながらも歯科外来を訪れる患者さんが増えています.また超高齢社会に伴い,外来・在宅を問わず,高齢者に対し歯科医療を提供する機会が多くなっていますが,高齢者は全身疾患を有している割合が高いことから全身状態に配慮した対応が必要になります.
歯科衛生士も,歯や歯周組織だけでなく,全身状態や全身疾患について把握し,口腔の状態と全身の状態とを関連づけながら,それぞれの状態に合せた安全な口腔健康管理を進めていくことが求められているのです.
とはいえ,日々の臨床において口腔疾患への対応をおもな業務とする歯科衛生士にとって,全身状態の把握や有病者への対応など,いわゆる全身管理の知識を学ぶことは必ずしも容易なことではなく,むしろ苦手意識をもつ方もいるでしょう.しかし,患者さんの全身状態を知ることは,口腔疾患の予防や治療に有用であるばかりでなく,患者さんとのコミュニケーションや信頼関係を深め,さらに安全な歯科医療を行うためにもとても大切なことです.
全身状態を把握するために,はじめからバイタルサインや全身疾患について多くの知識を備えていることが必要なわけではありません.まず,患者さんの顔つきや話し方,歩き方を意識してみること,そして何か変わったことがないか気がつくことから始めていきます.そして,得られた情報をどう理解し,歯科衛生士業務にどのように活用するべきかについては,本書Part1を参考にしながら,日々の臨床のなかで繰り返し経験することで,しだいに理解を深められるでしょう.またPart2では全身的偶発症(全身トラブル)とその対応について記述しました.歯科治療時に起こりうる全身的偶発症はさまざまですが,それぞれの特徴的な症状や必要な処置を知っておくことで,迅速かつ適切な対応をとることが可能となります.
本書は,歯科診療における全身状態の観察・評価や全身的偶発症に対する緊急対応についてあらためて学び,“脱・口だけ歯科衛生士”を目指す方を対象とした入門書です.いわゆる教科書とは違い,できるだけ多くのイラストや図表を入れて,見やすく,わかりやすい“読み物”として作りました.全身的偶発症についても,解説に加え歯科衛生士として対応すべきポイントをまとめています.
本書が,いままで「口だけ」に主眼を向けていた歯科衛生士が,「全身状態」にも目を向けるきっかけとなり,さらに緊急偶発症にも迅速に対応できるようになるための一助となることを願っています.
2019年8月18日
山口秀紀
はじめに
Introduction
歯科衛生士は全身状態把握のキーパーソン!
DHの出番です! 全身管理がわかる歯科衛生士になろう!
Part1 全身状態を把握するためのスキル
1.全身状態の観察
1 歩行・歩行速度・姿勢から考える
DHの出番です! 患者さんの“いつもと違う”に気づこう
2 体形から考える
これでスキルUP メタボリックシンドローム
DHの出番です! いろいろ考えたいフレイル対策
3 顔貌・顔色から考える
DHの出番です! 白髪に秘められた患者さんの日常
4 全身疾患が疑われる口腔・顔面周囲,その他の変化
Column 微笑みに隠された生活習慣病!
DHの出番です! 口腔粘膜に注目しよう!
2.全身状態を知るための医療面接
1 医療面接で歯科衛生士が担う役割とは?
DHの出番です! 私たち歯科衛生士に欠かせない情報とは?
2 医療面接はどこでもできる!
DHの出番です! 情報には2つの種類がある
Column 医療面接のテクニック「ドアノブ・クエスチョン」
3 医療面接での確認事項
DHの出番です! みんなでカクニン!医療面接もチーム医療で
これでスキルUP 出合う可能性の高い全身疾患をイメージしてみよう!
3.患者さんが持つ資料を活用する
1 患者資料を活用する!
これでスキルUP こんな全身疾患があったら要注意!
2 お薬手帳は必ず確認!
これでスキルUP 薬の調べ方の一例
これでスキルUP こんな薬があったら要注意!
3 検査結果の記録
DHの出番です! その情報はいつのもの?
4 自己管理記録
4.バイタルサインから全身をみる
1 歯科診療時のバイタルサインと生体モニタの見方
DHの出番です! 基準値を知らないと異常に気づけない!
2 血圧
DHの出番です! 正しい測定,できていますか?〜トレーニングと点検
3 呼吸(血液中の酸素レベル)と脈拍
これでスキルUP あれも,これもパルスオキシメータ!
これでスキルUP モニタリングを必要とする患者さん
4 体温
5 意識レベル
6 五感で察知するバイタルサイン
DHの出番です! モニタリングを行いながらの外科処置介助
Part2 緊急対応! 歯科医院での全身的偶発症(全身トラブル)
1.歯科診療室で起こる全身トラブルは?
1 全身的偶発症の種類
DHの出番です! 歯科医院ってどんなところ?
2 全身的偶発症に対する歯科衛生士の役割
DHの出番です! 雰囲気で鎮静法
2.基礎疾患がなくても起こりうる全身的偶発症
1 血管迷走神経反射(脳貧血様発作)
DHの出番です! 過去の経験が不安を増長させることも!
2 過換気症候群
DHの出番です! 魔法使いの歯科衛生士
3 局所麻酔薬中毒
これでスキルUP 金・銀・緑? 3種類の局所麻酔薬
4 アドレナリン過敏症
DHの出番です! 目を離してはダメなとき
5 アナフィラキシー
これでスキルUP アナフィラキシーにはチーム医療で対応しよう!
6 嘔吐
これでスキルUP 備えあれば憂いなし!吐物の処理
3.基礎疾患の急性増悪による全身的偶発症
1 血圧上昇
DHの出番です! モニタは正直者?
2 狭心症発作
これでスキルUP チェアサイドで心機能を評価しよう〜NYHA心機能分類
3 低血糖症状
DHの出番です! 簡単にできる血糖値測定
4 喘息発作
これでスキルUP 確実な吸引操作を!
5 てんかん発作
DHの出番です! 日ごろのトレーニングでよりよいチーム医療を
6 脳卒中
DHの出番です! 「お顔にタオル」に注意!
これでスキルUP 脳卒中の後遺症
4.緊急対応スキル
1 緊急事態に対応できる歯科衛生士になろう!
DHの出番です! BLSのスキルを学ぼう
2 酸素ボンベの使用法
DHの出番です! 酸素は点検していますか?
3 救急薬使用に関する歯科衛生士の役割
DHの出番です! 2つの救急薬
さくいん
編著者略歴
Introduction
歯科衛生士は全身状態把握のキーパーソン!
DHの出番です! 全身管理がわかる歯科衛生士になろう!
Part1 全身状態を把握するためのスキル
1.全身状態の観察
1 歩行・歩行速度・姿勢から考える
DHの出番です! 患者さんの“いつもと違う”に気づこう
2 体形から考える
これでスキルUP メタボリックシンドローム
DHの出番です! いろいろ考えたいフレイル対策
3 顔貌・顔色から考える
DHの出番です! 白髪に秘められた患者さんの日常
4 全身疾患が疑われる口腔・顔面周囲,その他の変化
Column 微笑みに隠された生活習慣病!
DHの出番です! 口腔粘膜に注目しよう!
2.全身状態を知るための医療面接
1 医療面接で歯科衛生士が担う役割とは?
DHの出番です! 私たち歯科衛生士に欠かせない情報とは?
2 医療面接はどこでもできる!
DHの出番です! 情報には2つの種類がある
Column 医療面接のテクニック「ドアノブ・クエスチョン」
3 医療面接での確認事項
DHの出番です! みんなでカクニン!医療面接もチーム医療で
これでスキルUP 出合う可能性の高い全身疾患をイメージしてみよう!
3.患者さんが持つ資料を活用する
1 患者資料を活用する!
これでスキルUP こんな全身疾患があったら要注意!
2 お薬手帳は必ず確認!
これでスキルUP 薬の調べ方の一例
これでスキルUP こんな薬があったら要注意!
3 検査結果の記録
DHの出番です! その情報はいつのもの?
4 自己管理記録
4.バイタルサインから全身をみる
1 歯科診療時のバイタルサインと生体モニタの見方
DHの出番です! 基準値を知らないと異常に気づけない!
2 血圧
DHの出番です! 正しい測定,できていますか?〜トレーニングと点検
3 呼吸(血液中の酸素レベル)と脈拍
これでスキルUP あれも,これもパルスオキシメータ!
これでスキルUP モニタリングを必要とする患者さん
4 体温
5 意識レベル
6 五感で察知するバイタルサイン
DHの出番です! モニタリングを行いながらの外科処置介助
Part2 緊急対応! 歯科医院での全身的偶発症(全身トラブル)
1.歯科診療室で起こる全身トラブルは?
1 全身的偶発症の種類
DHの出番です! 歯科医院ってどんなところ?
2 全身的偶発症に対する歯科衛生士の役割
DHの出番です! 雰囲気で鎮静法
2.基礎疾患がなくても起こりうる全身的偶発症
1 血管迷走神経反射(脳貧血様発作)
DHの出番です! 過去の経験が不安を増長させることも!
2 過換気症候群
DHの出番です! 魔法使いの歯科衛生士
3 局所麻酔薬中毒
これでスキルUP 金・銀・緑? 3種類の局所麻酔薬
4 アドレナリン過敏症
DHの出番です! 目を離してはダメなとき
5 アナフィラキシー
これでスキルUP アナフィラキシーにはチーム医療で対応しよう!
6 嘔吐
これでスキルUP 備えあれば憂いなし!吐物の処理
3.基礎疾患の急性増悪による全身的偶発症
1 血圧上昇
DHの出番です! モニタは正直者?
2 狭心症発作
これでスキルUP チェアサイドで心機能を評価しよう〜NYHA心機能分類
3 低血糖症状
DHの出番です! 簡単にできる血糖値測定
4 喘息発作
これでスキルUP 確実な吸引操作を!
5 てんかん発作
DHの出番です! 日ごろのトレーニングでよりよいチーム医療を
6 脳卒中
DHの出番です! 「お顔にタオル」に注意!
これでスキルUP 脳卒中の後遺症
4.緊急対応スキル
1 緊急事態に対応できる歯科衛生士になろう!
DHの出番です! BLSのスキルを学ぼう
2 酸素ボンベの使用法
DHの出番です! 酸素は点検していますか?
3 救急薬使用に関する歯科衛生士の役割
DHの出番です! 2つの救急薬
さくいん
編著者略歴