やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
 近年,口腔内の衛生環境が全身の健康に及ぼす影響について,さまざまな報告がなされてきています.口腔内の環境は,人の身体のなかでも特に多くの細菌が生息していることが知られており,その種類は700種類以上に及び,デンタルプラーク1mgあたり,1億〜10億といわれています.さらに口腔ケアの関連では,口腔ケアがいきとどいた人で約2,000億,口腔ケアが十分でない人ではその2〜3倍の細菌が生息しているといわれています.
 このような口腔の衛生環境を改善し,さらに継続的に維持することは,狭義的に口腔の二大疾患である齲蝕,歯周病を予防することにとどまらず,広義的に生活習慣病や誤嚥に伴った併発疾患の予防にもつながると考えられています.
 一般に口腔衛生を保つための清掃法では,大きく歯科医院で行われるプロフェッショナルケアと,各個人が日常行うセルフケアがあります.前者は,歯科医師もしくは歯科衛生士の管理のもと,平均的に十分な清掃効果が望めますが,一方,後者では各個人の意識,知識,さらに技量(テクニック)が大きく関与し,清掃効果についても差が生じることが考えられます.さらに,適切なセルフケアは,齲蝕予防や歯周治療においても特にその治療成果を左右するといっても過言ではない重要なステップであり,治療後の再発予防にとっても欠かすことはできません.
 本別冊では,まずセルフケアの重要性について,これまでの研究成果も含め解説しています.さらに実際の清掃法に関しては,各清掃用具,セルフケアに用いる製剤の目的や使用法,継続したセルフケアのためのモチベーションのポイント,国民のライフステージに応じた指導方法,さらにセルフケアによる歯肉の変化について,それぞれ高度な専門性を有する先生方に執筆いただいています.
 本別冊は,国民の口腔清掃に関する知識と技量の差を少なくする目的で,歯科医療のなかでも特にセルフケア指導の実践の場に多くかかわる歯科衛生士の方たちが,その目的,その威力を適切に伝え,指導を行うためのテキストとなることを確信しております.
 2018年6月
 佐藤 聡
 はじめに
Chapter 1 プラコンの力
 1 ここまでできる! セルフケアの威力(小牧令二)
 2 エビデンスから考えるセルフケアの威力(両角祐子・佐藤 聡)
Chapter 2 清掃用具の解体新書
 1 歯ブラシ(鴨井久博)
 2 歯間ブラシ(鴨井久博)
 3 デンタルフロス(鴨井久博)
 4 舌ブラシ(鴨井久博)
 5 電動歯ブラシ(深谷千絵・中川種昭)
  Column 口腔洗浄器は有効?!(両角祐子・佐藤 聡)
Chapter 3 セルフケアに用いる製剤のねらいと使い方
 1 歯磨剤(五味一博)
 2 洗口剤(五味一博)
 3 デンタルガム(五味一博)
 4 フッ化物製剤(五味一博)
Chapter 4 セルフケアのモチベーション
 1 プラークコントロールの傾向(小牧令二)
 2 セルフケア獲得の5つのStep(小牧令二)
 3 モチベーション(小牧令二)
 4 OHI(口腔衛生指導)(小牧令二)
Chapter 5 ライフステージに応じたセルフケア指導
 1 小児期・思春期(小牧令二)
 2 高齢期(小牧令二)
Chapter 6 症例をとおしてみる 害に対するセルフケア
 1 歯肉退縮・クレーター(小牧令二)
 2 擦過傷・フェストゥーン・クレフト(小牧令二)

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