やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
 現在,多くの口腔ケア用品が販売され,歯科に関する情報があふれるなかで,患者さんの口腔内に対する意識・関心は確実に高まっています.また,歯科医療においても,歯科予防処置やメインテナンス,サポーティブペリオドンタルセラピーなどの必要性が広く認知され,歯科衛生士の役割はさらに重要な位置を占めつつあります.
 歯科治療の長期予後を左右するメインテナンス・サポーティブペリオドンタルセラピーにおいてもっとも重要なことは,患者さん自身のセルフケアであり,セルフケア指導を的確に行うことは歯科衛生士の重要な役割の1つです.そのためにも,歯科衛生士は,患者さんそれぞれの口腔内の状態や齲蝕・歯周病のリスク,生活のスタイルなどを考慮したセルフケアの方法を,“根拠”に基づいて提案していくことが求められています.そこで本別冊では,患者さんに合わせたセルフケアの方法を提案するための知識を,文献のレビューや最新のセルフケアグッズの知識,豊富な臨床例を通してお伝えしたいと考えました.
 本別冊では,まず第1章縲恆・章で,「根拠を知れば,臨床に自信がもてる」をコンセプトに,これまで“臨床実感“に頼って行われることが多かった歯科衛生士によるセルフケア指導の科学的根拠をQ&A形式でやさしく解説したほか,数多くのセルフケア用品から患者さんに合わせた製品を“処方”するために必要な最新の口腔ケア用品の知識をまとめました.さらに,第4章では,妊産婦,高齢者,喫煙者などライフステージや生活背景,口腔内の状態などが異なるさまざまな症例への対応について5名の歯科衛生士による座談会で提示することで,“根拠“あるセルフケア指導の実際がわかるようにしました.また,巻末には「歯間ブラシの正しい使い方」「デンタルフロスの正しい使い方」「磨きにくい部位のブラッシング方法」について図解した患者さんへの説明用の付録もついており,セルフケア指導の“根拠”を臨床で活かすためのさまざまな工夫が盛り込まれています.
 セルフケアの科学的根拠を知ることは,歯科衛生士が氾濫する情報のなかから適切な情報を選択するための重要な手がかりになるだけではなく,患者さんに口腔保健に関する情報を正しく理解していただくことにも有用です.また,セルフケア指導の際の“言葉”を説得力のあるものとするためにも,曖昧になりがちな知識を可能なかぎり裏づけのあるものにすることはとても大切です.本別冊がその一助となれば幸いです.
 2009年10月吉日
 編者代表 中川種昭
 はじめに
第1章 5つのキーワードからみる セルフケア指導のこれまでとこれから
第2章 文献から読み解く! 根拠に基づいたセルフケア指導Q&A
 1.歯ブラシの適切な交換時期はいつですか?
 2.歯肉炎・歯周炎はブラッシングで治るのですか?
 3.歯磨剤を使用した場合としない場合では清掃効果に違いはありますか?
 4.ブラッシングはいつ,どれくらいするのが効果的ですか?
 5.フッ化物を使用するとなぜ齲蝕を予防できるのですか?
 6.フッ化物やさまざまな有効成分入りの歯磨剤はどれくらいつけるのが適当なのですか?
 7.ブラッシングによる歯肉のマッサージ効果はどの程度期待できるのですか?
 8.手用歯ブラシと電動歯ブラシではどちらが清掃効果が高いのですか?
 9.電動歯ブラシにもTBIって必要なのですか?
 10.舌のケアをすると口臭を予防できるのですか?
 11.デンタルフロスは本当に必要なのですか?
 12.デンタルフロスや歯間ブラシの使用で注意すべきことはありますか?
 ・Column
  (1)エビデンスの有効性 どう判断する? (2)これだけは知っておきたい 禁煙支援 (3)フッ化物配合歯磨剤の使用量 現在の潮流 (4)“医薬部外品”って何? (5)前歯部に補綴物が装着されている場合のセルフケア (6)どうする? 補綴物のセルフケア (7)フッ化物の種類とその特徴
第3章 製品の特徴からみる! セルフケアの処方箋
 1.歯ブラシ
 2.デンタルフロス
 3.歯間ブラシ
 4.洗口剤
 5.歯磨剤
 6.電動歯ブラシ
 7.タフトブラシ
 8.舌用クリーナー
 9.知っておきたい 義歯のケア
第4章 こんなときどうする? セルフケア指導・私たちの処方箋
 1.座談会 患者さんに合わせたセルフケア指導 ここがポイント!
 2.歯肉に擦過傷のある患者さんへのセルフケア指導
 3.喫煙者の患者さんへのセルフケア指導と禁煙支援
 4.思春期の患者さんへのアプローチ
 5.妊娠期の患者さんの不安にこたえよう!
 6.高齢者・有病者への対応
 7.さまざまな補綴物が装着された患者さんへのアプローチ
 8.適切なセルフケアが定着しない患者さんへの対応
 9.身体の不自由な患者さんが来院されたら?
 ・メーカー担当者のひとことコラム
  (1)口腔衛生商品開発の現状と課題 (2)口腔ケア用品の潮流,今後の展望 (3)コンクールブランド製品開発エピソード (4)患者さんの悩みに合わせた製品開発を目指して (5)知覚過敏予防と歯のトータルケアを考慮した歯磨剤「メルサージュ ヒスケア」の開発秘話 (6)患者さんの好みやライフスタイルに合わせた提案で広がるキシリトール習慣 (7)口臭ケアと歯周病 (8)患者さんへの“処方”を考慮した「ルシェロ」シリーズ (9)口腔内の狭い方にお勧めの「バトラーハブラシ#025」

 参考文献
 執筆者一覧
 索引
 付録
  患者さん説明用媒体
  「歯間ブラシの正しい使い方」
  「デンタルフロスの正しい使い方」
  「磨きにくい部位のブラッシング方法」