やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社


 『補綴臨床』2017年7月号(50巻4号)〜2019年5月号(52巻3号)の二年間にわたり,「もう失敗しない! 修復物 前処理・接着操作の秘訣」と題し,全12回の連載を執筆しました.歯科医師が日頃の臨床で抱いている接着操作や歯科材料に関するQuestionを毎回設定し,それについて文献的考察に基づくAnswerを提示するとともに,実際の臨床例も交えて解説した連載の最終号から約3年が経過し,その間,数多くの新製品が発売されただけでなく,接着に関する新知見も報告されています.そこで,補綴臨床別冊として本書を発刊するに至りました.
 本書においては,歯科臨床で頻繁に行っている「前処理・接着」に関する10のQuestionに対し,3択ないしは4択の選択肢を提示した上で,文献的考察に基づいた「正しいAnswer」を示しました.具体的には,仮着材の清掃,セルフアドヒーシブ型レジンセメントを使用する際の歯面処理材,ファイバーポストの装着,CAD/CAM冠と二ケイ酸リチウムガラスやジルコニアで製作されたオールセラミッククラウンの装着,唾液汚染の清掃方法,さらに材質が混在する歯面に対する適切な前処理について解説し,それぞれのQuestion & Answerの誌面の後には関連する臨床例も提示しました.
 筆者は1995年8月に発刊された本誌別冊「実力アップ 接着・合着」において,分担執筆しました.編集委員を担当されていた中尾勝彦先生,飯島国好先生がその序文において,「歯科医にとって,接着・合着は終わりであっても,患者さんや口腔内環境にとってははじまりである.この臨床における最終ステップを大切にしていきたい」と記されています.それから四半世紀以上過ぎた今でも,この一文は心に響きます.補綴装置の装着後,患者さんの口腔内で長期間にわたり維持できるかどうかは,前処理や接着操作が大きく関与します.本書を手に取っていただき,補綴装置と歯面の前処理・接着操作を日頃の臨床でルーティーンにしていただければ幸甚です.
 最後に,臨床例の写真撮影に協力していただいた,当時の補綴治療室の歯科衛生士,歯科研修医,臨床実習生の皆さんに,心より感謝を申し上げます.
 長崎大学病院 歯科系診療部門 保存・補綴歯科 冠補綴治療室
 吉田圭一
 序
Q01 レジンセメントを使用する際,歯面に残存した仮着用セメントの正しい除去方法はどれか?
 Clinical case レジン前装冠ブリッジの装着症例
Q02 セルフアドヒーシブ型レジンセメントを使用する際,歯面処理材の正しい使用方法はどれか?
Q03 ファイバーポストやファイバーポストレジンコアの正しい表面処理はどれか?
 Clinical case 間接法で製作されたファイバーポストレジンコアの技工手順
 Clinical case ファイバーポストを使用した直接法レジン支台築造の臨床例
Q04 CAD/CAM冠の正しい内面処理はどれか?
 Clinical case 大臼歯CAD/CAM冠の装着症例
 Clinical case 唾液で汚染された前歯CAD/CAM冠の装着症例
Q05 二ケイ酸リチウムガラスセラミッククラウンの正しい内面処理はどれか?
 Clinical case 二ケイ酸リチウムガラスブロックを使用したセラミッククラウンの装着症例
Q06 Y-TZPジルコニアクラウン内面のアルミナブラスティング後,使用する正しいプライマーとレジンセメントはどれか?
 Clinical case Y-TZPジルコニアブリッジの装着症例
Q07 高透光性PSZジルコニアクラウン内面の正しいアルミナブラスティング噴射圧はどれか?
 Clinical case 高透光性PSZジルコニアクラウンの装着症例
Q08 フッ酸処理した二ケイ酸リチウムガラスセラミッククラウンの唾液汚染後の正しい清掃方法はどれか?
 Clinical case 唾液で汚染されたガラスセラミッククラウンの装着症例
Q09 アルミナブラスティングしたジルコニアセラミッククラウンの唾液汚染後の正しい清掃方法はどれか?
 Clinical case 唾液で汚染された高透光性PSZジルコニアクラウンの装着症例
Q10 歯質だけでなくメタルやコンポジットレジンが混在する歯面の正しい前処理はどれか?
 Clinical case 歯質とメタル,コンポジットレジンが混在する支台歯にCAD/CAM冠を装着した症例

 付録 本書の理解をより深めよう! 補綴装置の材料別 内面処理と歯面処理,レジンセメントの一覧表