やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社


 口腔内スキャナーによるデジタル印象は,従来の歯科治療を変える革新的技術である.歯科医師の治療技術や技工プロセスの変革のみならず,歯科治療に対する患者の意識,スタッフの対応,物流方式などに大きな変化をもたらすことになる.2019年3月にドイツ・ケルンで開催された世界最大規模のデンタルショーIDS(International Dental Show)2019においても,多くのメーカーが最新の口腔内スキャナーと関連技術を大々的に発表し,3Dプリンター,CAD/CAM材料など,口腔内スキャナーにつながる周辺機材の国際的なマーケットが急速に拡大していることを示しており,近い将来,日本国内でも環境が整えば,診療室に普及する時代がやってくるだろう.
 ただし,口腔内スキャナーの技術は実際に経験しなければわからないことが非常に多く,導入にあたってはできるだけ多くの情報を集めて検討する必要がある.
 ・口腔内スキャナーをどのような目的で使用するのか
 ・必要なソフトウェアを使用できるのか
 ・ラボとの連携が可能であるか
 ・導入コストおよび運用コストは問題ないか
 などについて検討し,個々の診療室に最適な口腔内スキャナーを選択するためには,実用的かつ具体的な情報が必要である.
 ところが,口腔内スキャナーに関する情報は個々のメーカーからの情報に頼る部分が大きく,日本国内で販売されている全ての口腔内スキャナーの詳細をまとめた情報は十分とは言えない.そこで今回,『口腔内スキャナー入門』と題して,口腔内スキャナーの基礎的原理から実際の臨床応用まで,国内有数の研究者あるいは臨床家の先生方にわかりやすい内容でご執筆いただいた.また,国内で販売されている口腔内スキャナーのメーカー各社には,できる限りの情報をご提供いただいた.
 これから口腔内スキャナーを使ってみようとしている方から,さらに詳細な情報を求めている方まで,幅広くご一読いただき,理解を深めていただければ幸いである.
 北海道医療大学歯学部口腔機能修復・再建学系デジタル歯科医学分野 教授
 疋田一洋
 昭和大学歯学部歯科補綴学講座 教授
 馬場一美
 序 (疋田一洋 馬場一美)
Opening chapter
 歯科臨床における口腔内スキャナーのメリット(疋田一洋)
第1章 基礎編
 1.口腔内スキャナーの種類とその仕組み(堀田康弘)
 2.口腔内スキャナーによる印象採得の精度(近藤尚知・深澤翔太)
 3.口腔内スキャナーを用いる際の咬合採得(場雅之・馬場一美)
 4.口腔内スキャナーの応用に適する症例・適さない症例(木本克彦・星 憲幸・丸尾勝一郎・井上絵里香・中静利文)
 5.データ管理・拡張性および歯科技工所との連携(木村健二・田中譲治)
 6.医院導入と運用・保守にかかるコスト
  (1)セレックシステム(草間幸夫)
  (2)オープンシステム(神谷光男)
第2章 臨床編
 1.口腔内スキャナーのための支台歯形成と前準備(西山弘崇・馬場一美)
 2.口腔内スキャナーの具体的な使い方(上村江美・馬場一美)
 3.インプラント治療における口腔内スキャナーの有用性と使い方(田中晋平・馬場一美)
 4.矯正治療における口腔内スキャナーの有用性と使い方(有本博英)
 5.口腔内スキャナー使用における滅菌の重要性とその方法(疋田一洋)
第3章 機種情報編
 セレックACオムニカム/デンツプライシロナ
 3M TMトゥルー デフィニション スキャナー/スリーエムジャパン
 iTeroエレメント/アライン・テクノロジー・ジャパン
 トロフィー3DIプロα/ヨシダ,トロフィー・ラジオロジー・ジャパン
 Planmeca FIT(R)・Aadva IOS/ジーシー
 TRIOS 3 オーラルスキャナ/スリーシェイプジャパン,朝日レントゲン工業
総論
 口腔内スキャナーを用いる歯科治療の将来展望(末瀬一彦)