やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

序文
 私が最初にCAD/CAMシステムを導入したのは今から約15年前です.
 当時のスキャナーは接触式で,スキャンにはとても多くの時間が必要でした.CADソフトはシンプルでデザイン性は低かったため,形態が難しそうな症例の多くはダブルスキャンで対応していました.デザイン後のデータはワンクリックでミリングセンターに送信でき,早ければ翌日,もしくは数日後にミリングセンターから,ミリング加工されたジルコニアフレームや,ジルコニア製もしくはチタン製のインプラント関連技工物が届くという,いわゆる「センター方式」のCAD/CAMシステムでした.
 このシステム付属のCADソフトは,適合や精度に影響を及ぼす工程に関しては,初めから規定値が設定されていて,変更ができないものでした.そのためデザインのステップはシンプルでわかりやすい反面,細かな配慮を施した従来のアナログ法で製作した技工物とのギャップを感じてしまうことも少なくありませんでした.
 しかし,CAD/CAMシステムの主流が「センター方式」から「オープン方式」へと変わった今,スキャンの前準備(IOSデータの取り扱いも含む)から最終仕上げまでの全ての工程で術者の技量が,完成した技工物に集約されるように進化したと感じています.
 それは,言い換えるとCAD/CAMシステムは「良い技工物」を生み出すのではなく,「術者の思い描く最良の技工物」をより精巧で精密に,そしてより効率的に製作する手段として発展し,術者がデジタルに従うに留まらず,自己のクリエイティビティーを最大限に導き出してくれる「良き相棒」とも言えるのではないでしょうか.
 そんなデジタルの時代に必要なものは,優れたデジタルデバイスはもとより,それらの性能と機能を最大限に引き出すための「的確な情報」だと考えます.
 本書では,それぞれの著者が日々の臨床経験や研究から得た技術と知識を「情報」として集め,それらを一冊の本としてまとめました.この「情報」が読者の皆様の「実践」に少しでもお役に立てれば幸いです.
 2024年6月
 編集委員
 有限会社ラジカルスペース
 川端利明
 序文
Chapter 1 インレー,クラウン・ブリッジ
 CAD/CAMインレーの製作(川端利明)
 Supplement CAD/CAMインレー製作における3Dプリンターの有効性について(川端利明)
 4軸加工機によるCAD/CAMクラウン・ブリッジの製作―ミニマムなシステムとアイデア―(北御門正幸)
 Column ミリングバーについて(川端利明)
Chapter 2 デジタル機器
 臨床で活かすIOS(柴原清隆)
 ラボで使うIOS(川端利明)
 バーチャル咬合器(前川泰一)
 Supplement デジタルデータ上での間接法とIOSの咬合関係の違いと信頼性についての考察(川端利明)
 CAD/CAMの活用とコスト管理の重要性―インハウスかアウトソーシングか―(土肥 学)
Chapter 3 インプラント
 インプラントデジタル技工の基本(月岡哲英)
 インプラントデジタル技工のポイント(月岡哲英)
 フルマウスボーンアンカードブリッジ(川端利明)
 Supplement チタンアバットメントのスキャンと上部構造の適合について(川端利明)
Chapter 4 デンチャー
 キャストパーシャルフレームの製作(田中秀武)
 Supplement CAD/CAMシステムによるノンメタルクラスプデンチャーの製作(川端利明)
 フルデンチャーの製作(森 亮太)
 Supplement デジタルを応用したフルデンチャーの一例(川端利明)