Preface─序─
近年,歯科医療においてもデジタル化の影響を受けて,材料や術式などに大きな変化が生じてきています.私たち歯科医療人は,時代に応じた歯科治療を実践し,患者さんのニーズに応えるべく補綴装置を提供していかなければなりません.とりわけ大学や企業における研究成果を基盤にした材料開発において歯科材料(補綴装置用材料)の変化や進歩は目覚ましく,臨床を行うにあたっては常に新しい情報を得なければなりません.
そこで,日ごろの臨床を念頭に置き,「補綴装置用材料を着実な臨床につなげる」ために,これまで・現在そして将来への展望(温故知新)を鑑みて,各材料を基礎および臨床の両面から整理して,高品質で,安定的に機能する補綴装置を患者さんに提供すべく本別冊を企画しました.なお,2000年当初より導入された歯科用CAD/CAMテクノロジーの汎用化に応じて,CAD/CAMに特化した材料および加工法の開発,変化も著しいことから,日ごろ補綴装置を製作する歯科技工士や歯科診療においてそれを取り扱う歯科医師にとって,歯科材料および加工技術に関する知識を整理し,日常臨床に継続的にフィードバックさせ,アップデートすることはきわめて重要です.
本書では,「金属材料」「高分子材料(コンポジットレジン材料)」「無機材料(セラミックス材料)」の各材料について【基礎編】(Material Basics)と【臨床編】(Practical Technology)に区分した構成としていますが,常に「臨床ありき」の考え方を踏襲し,【臨床編】の比率をやや多めに設定しています.
【基礎編】では,臨床において必要な材料学的知識に特化し,「材料の特性」「使用用途」「材料の分類」「現在の位置付け」「これからの方向性」などを中心に整理しました.
【臨床編】では,【基礎編】の内容を受けて,補綴装置の製作,臨床応用を行ううえでの臨床的所要件として「材料の適用領域」「材料の扱い方・加工法」「使用上の留意点」「現在における適用状況」「将来の展望」などについて,適宜臨床例を交えながら整理しました.
いずれの項目においても,各材料とその臨床に造詣の深い著者に執筆をお願いし,わかりやすく解説いただいています.なお,歯科用CAD/CAMテクノロジーなどの新しい材料や加工法については,歯科領域における標準的な用語も定まっていない部分もあり,あえて統一していないところもあることをご理解ください.
『歯科技工』別冊としての発刊ですが,次世代の歯科医療を担う歯科技工士,歯科医師,さらには歯科衛生士の皆様に本書をフルに活用いただいて,日常臨床において,「歯科材料」の十分な理解のもと,患者さんに喜ばれる補綴装置の提供に役立てていただければ幸甚です.
本書が,読者の皆様方の日常臨床のさらなるステップアップにつながることを祈念いたします.
2021年12月
編集委員(執筆順)
末瀬一彦(大阪歯科大学客員教授)
宮ア 隆(昭和大学副学長)
木原琢也(鶴見大学歯学部クラウンブリッジ補綴学講座)
近年,歯科医療においてもデジタル化の影響を受けて,材料や術式などに大きな変化が生じてきています.私たち歯科医療人は,時代に応じた歯科治療を実践し,患者さんのニーズに応えるべく補綴装置を提供していかなければなりません.とりわけ大学や企業における研究成果を基盤にした材料開発において歯科材料(補綴装置用材料)の変化や進歩は目覚ましく,臨床を行うにあたっては常に新しい情報を得なければなりません.
そこで,日ごろの臨床を念頭に置き,「補綴装置用材料を着実な臨床につなげる」ために,これまで・現在そして将来への展望(温故知新)を鑑みて,各材料を基礎および臨床の両面から整理して,高品質で,安定的に機能する補綴装置を患者さんに提供すべく本別冊を企画しました.なお,2000年当初より導入された歯科用CAD/CAMテクノロジーの汎用化に応じて,CAD/CAMに特化した材料および加工法の開発,変化も著しいことから,日ごろ補綴装置を製作する歯科技工士や歯科診療においてそれを取り扱う歯科医師にとって,歯科材料および加工技術に関する知識を整理し,日常臨床に継続的にフィードバックさせ,アップデートすることはきわめて重要です.
本書では,「金属材料」「高分子材料(コンポジットレジン材料)」「無機材料(セラミックス材料)」の各材料について【基礎編】(Material Basics)と【臨床編】(Practical Technology)に区分した構成としていますが,常に「臨床ありき」の考え方を踏襲し,【臨床編】の比率をやや多めに設定しています.
【基礎編】では,臨床において必要な材料学的知識に特化し,「材料の特性」「使用用途」「材料の分類」「現在の位置付け」「これからの方向性」などを中心に整理しました.
【臨床編】では,【基礎編】の内容を受けて,補綴装置の製作,臨床応用を行ううえでの臨床的所要件として「材料の適用領域」「材料の扱い方・加工法」「使用上の留意点」「現在における適用状況」「将来の展望」などについて,適宜臨床例を交えながら整理しました.
いずれの項目においても,各材料とその臨床に造詣の深い著者に執筆をお願いし,わかりやすく解説いただいています.なお,歯科用CAD/CAMテクノロジーなどの新しい材料や加工法については,歯科領域における標準的な用語も定まっていない部分もあり,あえて統一していないところもあることをご理解ください.
『歯科技工』別冊としての発刊ですが,次世代の歯科医療を担う歯科技工士,歯科医師,さらには歯科衛生士の皆様に本書をフルに活用いただいて,日常臨床において,「歯科材料」の十分な理解のもと,患者さんに喜ばれる補綴装置の提供に役立てていただければ幸甚です.
本書が,読者の皆様方の日常臨床のさらなるステップアップにつながることを祈念いたします.
2021年12月
編集委員(執筆順)
末瀬一彦(大阪歯科大学客員教授)
宮ア 隆(昭和大学副学長)
木原琢也(鶴見大学歯学部クラウンブリッジ補綴学講座)
Preface(序)(末瀬一彦・宮ア 隆・木原琢也)
Introduction 補綴治療と歯科材料2022(末瀬一彦)
Part 1 金属系材料と臨床
1 鋳造用金属 【基礎編】(宮ア 隆)
(1)貴金属系合金
(2)非貴金属系合金
(3)国際規格と材料の選択
2 鋳造用金属を用いた補綴装置 【臨床編】(小泉寛恭)
(1)貴金属系金属冠
(2)非貴金属系金属冠
3 屈曲用金属 【基礎編】
(1)クラスプ用ワイヤー(黒岩昭弘)
(2)矯正用ワイヤー(米山隆之)
4 屈曲用金属を用いた装置 【臨床編】
(1)クラスプ用ワイヤー(黒岩昭弘)
(2)矯正用ワイヤー(竜 立雄)
5 CAD/CAM用金属 【基礎編】(菊地聖史)
(1)切削加工用金属
(2)付加加工用金属
6 CAD/CAM用金属を用いた補綴装置 【臨床編】(新保秀仁・大久保力廣)
(1)切削加工の補綴装置
(2)付加造形の補綴装置
(3)今後に期待されているCAD/CAM技術
Part 2 高分子系材料と臨床
I 従来型高分子系材料
1 アクリルレジン 【基礎編】(日比野 靖)
2 アクリルレジンを用いた補綴装置 【臨床編】(佐藤裕二・下平 修)
3 コンポジットレジン 【基礎編】(二瓶智太郎)
(1)コンポジットレジンの基本構成
(2)充填用コンポジットレジン
(3)クラウン用コンポジットレジン
(4)支台築造用コンポジットレジン
(5)ファイバー補強コンポジットレジン
(6)人工歯用コンポジットレジン
4 コンポジットレジンを用いた術式・補綴装置 【臨床編】
(1)保存修復(宮崎真至)
(2)クラウンブリッジ(平場晴斗)
(3)支台築造(平場晴斗)
(4)人工歯(平場晴斗・今井秀行)
(5)補綴装置の装着(平場晴斗・松村英雄)
5 生体用シリコーン材料 【基礎編】(木原琢也)
6 生体用シリコーン材料を用いた補綴装置 【臨床編】(森下裕司)
7 印象材・咬合採得材 【基礎編】(末瀬一彦)
8 印象採得・咬合採得 【臨床編】(末瀬一彦)
II CAD/CAM用高分子系材料
1 切削加工用高分子材料 【基礎編】
(1)アクリルレジン(橋英和・土田優美)
(2)コンポジットレジン(橋英和・土田優美)
(3)ガラス繊維強化型レジン(橋英和・土田優美)
(4)スーパーエンジニアリングプラスチック(岩畔将吾・下江宰司)
(5)ワックス(岩畔将吾・下江宰司)
2 切削加工用高分子材料を用いた(補綴)装置 【臨床編】
(1)アクリルレジン製の補綴装置(羽田多麻木・岩城麻衣子・金澤 学)
(2)コンポジットレジン製の補綴装置(坪田有史)
(3)ガラス繊維強化型レジン製の補綴装置(坪田有史)
(4)スーパーエンジニアリングプラスチック製の補綴装置(菅原克彦)
(5)パターン(瓜生博伺)
3 付加製造用高分子材料 【基礎編】(土田優美・岩城麻衣子・金澤 学)
4 付加製造用高分子材料を用いた(補綴)装置【臨床編】
(1)補綴装置(岩城麻衣子・金澤 学)
(2)中間装置(木原琢也)
Part 3 セラミックス系材料と臨床
I 従来型セラミックス系材料
1 長石系ガラスセラミックス 【基礎編】(宇尾基弘)
2 長石系ガラスセラミックスを用いた補綴装置 【臨床編】(高橋 健)
3 高強度ガラスセラミックス 【基礎編】(宇尾基弘)
4 高強度ガラスセラミックスを用いた補綴装置 【臨床編】(山ア 治)
II CAD/CAM用セラミックス系材料
1 切削加工用セラミックス 【基礎編】
(1)ガラスセラミックス(新谷明一・三浦大輔)
(2)高密度結晶体セラミックス(新谷明一・石田祥己)
2 切削加工用セラミックスを用いた補綴装置 【臨床編】(田中晋平・馬場一美)
(1)ガラスセラミッククラウン
(2)ジルコニアクラウン
3 付加造形用セラミックス 【基礎編】(三浦賞子・新谷明一)
4 付加造形用セラミックスを用いた補綴装置 【臨床編】(三浦賞子・新谷明一)
Postscript(あとがき)(本書編集委員会)
Introduction 補綴治療と歯科材料2022(末瀬一彦)
Part 1 金属系材料と臨床
1 鋳造用金属 【基礎編】(宮ア 隆)
(1)貴金属系合金
(2)非貴金属系合金
(3)国際規格と材料の選択
2 鋳造用金属を用いた補綴装置 【臨床編】(小泉寛恭)
(1)貴金属系金属冠
(2)非貴金属系金属冠
3 屈曲用金属 【基礎編】
(1)クラスプ用ワイヤー(黒岩昭弘)
(2)矯正用ワイヤー(米山隆之)
4 屈曲用金属を用いた装置 【臨床編】
(1)クラスプ用ワイヤー(黒岩昭弘)
(2)矯正用ワイヤー(竜 立雄)
5 CAD/CAM用金属 【基礎編】(菊地聖史)
(1)切削加工用金属
(2)付加加工用金属
6 CAD/CAM用金属を用いた補綴装置 【臨床編】(新保秀仁・大久保力廣)
(1)切削加工の補綴装置
(2)付加造形の補綴装置
(3)今後に期待されているCAD/CAM技術
Part 2 高分子系材料と臨床
I 従来型高分子系材料
1 アクリルレジン 【基礎編】(日比野 靖)
2 アクリルレジンを用いた補綴装置 【臨床編】(佐藤裕二・下平 修)
3 コンポジットレジン 【基礎編】(二瓶智太郎)
(1)コンポジットレジンの基本構成
(2)充填用コンポジットレジン
(3)クラウン用コンポジットレジン
(4)支台築造用コンポジットレジン
(5)ファイバー補強コンポジットレジン
(6)人工歯用コンポジットレジン
4 コンポジットレジンを用いた術式・補綴装置 【臨床編】
(1)保存修復(宮崎真至)
(2)クラウンブリッジ(平場晴斗)
(3)支台築造(平場晴斗)
(4)人工歯(平場晴斗・今井秀行)
(5)補綴装置の装着(平場晴斗・松村英雄)
5 生体用シリコーン材料 【基礎編】(木原琢也)
6 生体用シリコーン材料を用いた補綴装置 【臨床編】(森下裕司)
7 印象材・咬合採得材 【基礎編】(末瀬一彦)
8 印象採得・咬合採得 【臨床編】(末瀬一彦)
II CAD/CAM用高分子系材料
1 切削加工用高分子材料 【基礎編】
(1)アクリルレジン(橋英和・土田優美)
(2)コンポジットレジン(橋英和・土田優美)
(3)ガラス繊維強化型レジン(橋英和・土田優美)
(4)スーパーエンジニアリングプラスチック(岩畔将吾・下江宰司)
(5)ワックス(岩畔将吾・下江宰司)
2 切削加工用高分子材料を用いた(補綴)装置 【臨床編】
(1)アクリルレジン製の補綴装置(羽田多麻木・岩城麻衣子・金澤 学)
(2)コンポジットレジン製の補綴装置(坪田有史)
(3)ガラス繊維強化型レジン製の補綴装置(坪田有史)
(4)スーパーエンジニアリングプラスチック製の補綴装置(菅原克彦)
(5)パターン(瓜生博伺)
3 付加製造用高分子材料 【基礎編】(土田優美・岩城麻衣子・金澤 学)
4 付加製造用高分子材料を用いた(補綴)装置【臨床編】
(1)補綴装置(岩城麻衣子・金澤 学)
(2)中間装置(木原琢也)
Part 3 セラミックス系材料と臨床
I 従来型セラミックス系材料
1 長石系ガラスセラミックス 【基礎編】(宇尾基弘)
2 長石系ガラスセラミックスを用いた補綴装置 【臨床編】(高橋 健)
3 高強度ガラスセラミックス 【基礎編】(宇尾基弘)
4 高強度ガラスセラミックスを用いた補綴装置 【臨床編】(山ア 治)
II CAD/CAM用セラミックス系材料
1 切削加工用セラミックス 【基礎編】
(1)ガラスセラミックス(新谷明一・三浦大輔)
(2)高密度結晶体セラミックス(新谷明一・石田祥己)
2 切削加工用セラミックスを用いた補綴装置 【臨床編】(田中晋平・馬場一美)
(1)ガラスセラミッククラウン
(2)ジルコニアクラウン
3 付加造形用セラミックス 【基礎編】(三浦賞子・新谷明一)
4 付加造形用セラミックスを用いた補綴装置 【臨床編】(三浦賞子・新谷明一)
Postscript(あとがき)(本書編集委員会)














