やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社


 近年,CAD/CAMの登場と歯科材料の発展にともない,オールセラミック修復は急速に進化,発展と遂げてきた.とりわけジルコニアはこれまでのフレームワークとしての使用から,透光性を向上させたディスク,グラデーションを付与したディスク等が登場し,モノリシックジルコニアの審美性も向上している.このようにセラミックシステムが多様化したことは喜ばしいことだが,反面,マテリアルセレクションを複雑化する要因ともなっている.
 マテリアルセレクションは製作者の意見を反映してコンサルテーションの前に歯科医師と歯科技工士が情報を共有して事前に相談し,患者の要望も含めて総合的に判断して決定することが理想的である.しかし,忙しい日常臨床では,すべてのケースで事前に歯科医師・歯科技工士がディスカッションすることは困難であることも事実である.そこで本書では,これまで客観的に評価することが困難であった「症例」および「マテリアル」の評価を可及的に数値化し,歯科医師・歯科技工士が共通認識のもとマテリアルセレクションを行える指針作りを目指した.
 まず巻頭の座談会ではわれわれ編集委員3名で臨床に即したマテリアル分析および症例分析を行い,「症例の評価」「マテリアルの評価」の基準作りを行った.この両者を比較すれば,そのマテリアルが症例に適しているか否かを可視化することができる.
 Chapter1では各種マテリアルの理工学的特徴について,歯科用ジルコニアやCAD/CAM材料研究の第一人者である伴 清治先生にご執筆いただいた.さらにChapter2では,各種ジルコニア,リチウムダイシリケートの製作に熟知した日本を代表する歯科技工士の方々にマテリアルの特徴を最大限に活かす製作法について解説していただいた.Chapter3では,歯科医師と歯科技工士のコラボレーションとして,実際の症例を通して,症例分析およびマテリアルの選択について解説していただいた.
 本書の内容を歯科技工士のみならず,歯科医師,デンタルスタッフにも理解していただき,チェアサイド・ラボサイドが一体となって患者へアプローチするための一助となることを祈念している.
 2020年5月
 山ア 治
 高橋 健
 都築優治
 Prologue
座談会 マテリアルセレクションを考察する
 (山ア 治・高橋 健・都築優治)
 Part1.マテリアルの臨床的評価
 Part2.マテリアルの評価と症例分析
Photograph
 IPS e.max Press,Ceram and IPS Ivocolor(片岡繁夫)
 Porcelain Laminate Veneer(青嶋 仁)
Preface
 歯科医師サイドから見るオールセラミックスの選択のポイント(山ア 治)
 修復条件に応じたマテリアルセレクションと審美再現の実際(都築優治)
Chapter 1 マテリアルの物性
 各種オールセラミックスの理工学的特徴(伴 清治)
Chapter 2 前歯・臼歯部における各種製作法
 現在のPFZフレームワークの考え方と臨床における使い分けの考察(高橋 健)
 ジルコニア/インレー(鈴木篤志)
 透光性,強度から考えるマテリアルセレクション(伊藤竜馬)
 モノリシックジルコニア/ステイン法(チェムンシク)
 ジルコニア/インフィルトレーション(浸透ステイニング)(廣末将士)
 ジルコニア/ライトレイヤリング(枝川智之)
 ジルコニア/レイヤリング(湯浅直人)
 IPS e.max Press〜ステイニングで「色を操る」(黒田貴代江)
 Initial LiSi Pressを使用したアドヒージョンブリッジ(鬼頭寛之)
Chapter 3 チェアサイド&ラボサイド症例
 臨床におけるマテリアルセレクションの実際(中村茂人・高橋 健)
 MIを考慮した支台歯形成とマテリアルセレクション(内山徹哉・間中道郎)
Supplement