序
われわれ歯科医療従事者が臨床現場で行う術式は,学術的な「知識」,経験から得ることのできる「知恵」,そして「技術力」が総合されてはじめて高い次元で達成される.この中でも学術的な知識はすべての礎であり,絶対的に欠かせない要素であるが故に,学術と臨床は決して切り離すことができない重要なものである.歯科技工に関連する学術を大きな木に例えるとすれば,根や幹の部分となるのは「解剖学」と「材料学」であり,その他の学術や知識,知恵は枝葉と捉えることができるのではないだろうか.なぜならば,歯科医療・歯科技工の使命は口腔内28 本の歯牙形態を回復し,機能を定めることであり,これはつまり「解剖学的な形態を,多様な材料で構築する」ということにほかならないからである.歯科医師や歯科技工士が歯の形を作り出す材料に関する理解を深めることは最低限のスタートラインを意味するが,それは同時に,最大限のゴールを生み出す要素となることは明白である.
『歯科技工』別冊としてすでに発刊してきた『FUNDAMENTALS of Esthetic Dental TechnologyI〜III』では,補綴装置を製作する上で歯科医師や歯科技工士が知っておくべき形態,機能,色彩について主に言及してきた.これを踏まえ,IVとなる本書では,適正な補綴装置を製作するための根幹の一つである「材料学」に焦点を当て,臨床家たる歯科医師,歯科技工士の目から見た「歯科医療・歯科技工の臨床で活用できる材料学」を目指した.材料学や理工学というと得てして難解な化学式などが多用され,敬遠されがちなのが現実である.そのため本書では,それら難解な事項が臨床の現場で「何を意味しているのか」「つまり,どうすればよいのか」といった考え方を導き出すように努力した.また,大学や専門学校で学ぶ知識としての歯科理工学ではなく,「明日の臨床技工で活用できる材料学」をまとめ,「補綴装置を製作する上でなぜこの材料を選択するのか」「選択した材料の能力を最大限に引き出すためにはどうしたらよいのか」という答えを導き出すように心がけて,各ご執筆者にお骨折りをいただいた.もちろん,最近になって臨床応用されるに至った新材料にも言及している.
本書は材料学への造詣が深い大学の専門家の先生がたと,材料の研究開発に日々従事している歯科関連各社の担当者を中心とするご執筆者に対して,歯科材料に関する疑問を直接投げかける形式で論文内容を構築した.そのため歯科技工士のハテナ?に対しての明瞭な答えが示されていることと思う.現在の歯科臨床における歯科技工士の役割がきわめて重要であることは,社会一般にも認知されてきている.その職責を全うするためには,われわれ歯科技工士もさらなる知識と技術の研鑽に努めねばならない.本書がその一助になれば幸いである.
中込敏夫 JADE(東京都豊島区)
伴 清治 愛知学院大学歯学部歯科理工学講座
われわれ歯科医療従事者が臨床現場で行う術式は,学術的な「知識」,経験から得ることのできる「知恵」,そして「技術力」が総合されてはじめて高い次元で達成される.この中でも学術的な知識はすべての礎であり,絶対的に欠かせない要素であるが故に,学術と臨床は決して切り離すことができない重要なものである.歯科技工に関連する学術を大きな木に例えるとすれば,根や幹の部分となるのは「解剖学」と「材料学」であり,その他の学術や知識,知恵は枝葉と捉えることができるのではないだろうか.なぜならば,歯科医療・歯科技工の使命は口腔内28 本の歯牙形態を回復し,機能を定めることであり,これはつまり「解剖学的な形態を,多様な材料で構築する」ということにほかならないからである.歯科医師や歯科技工士が歯の形を作り出す材料に関する理解を深めることは最低限のスタートラインを意味するが,それは同時に,最大限のゴールを生み出す要素となることは明白である.
『歯科技工』別冊としてすでに発刊してきた『FUNDAMENTALS of Esthetic Dental TechnologyI〜III』では,補綴装置を製作する上で歯科医師や歯科技工士が知っておくべき形態,機能,色彩について主に言及してきた.これを踏まえ,IVとなる本書では,適正な補綴装置を製作するための根幹の一つである「材料学」に焦点を当て,臨床家たる歯科医師,歯科技工士の目から見た「歯科医療・歯科技工の臨床で活用できる材料学」を目指した.材料学や理工学というと得てして難解な化学式などが多用され,敬遠されがちなのが現実である.そのため本書では,それら難解な事項が臨床の現場で「何を意味しているのか」「つまり,どうすればよいのか」といった考え方を導き出すように努力した.また,大学や専門学校で学ぶ知識としての歯科理工学ではなく,「明日の臨床技工で活用できる材料学」をまとめ,「補綴装置を製作する上でなぜこの材料を選択するのか」「選択した材料の能力を最大限に引き出すためにはどうしたらよいのか」という答えを導き出すように心がけて,各ご執筆者にお骨折りをいただいた.もちろん,最近になって臨床応用されるに至った新材料にも言及している.
本書は材料学への造詣が深い大学の専門家の先生がたと,材料の研究開発に日々従事している歯科関連各社の担当者を中心とするご執筆者に対して,歯科材料に関する疑問を直接投げかける形式で論文内容を構築した.そのため歯科技工士のハテナ?に対しての明瞭な答えが示されていることと思う.現在の歯科臨床における歯科技工士の役割がきわめて重要であることは,社会一般にも認知されてきている.その職責を全うするためには,われわれ歯科技工士もさらなる知識と技術の研鑽に努めねばならない.本書がその一助になれば幸いである.
中込敏夫 JADE(東京都豊島区)
伴 清治 愛知学院大学歯学部歯科理工学講座
第1章 模型製作
模型材
Q 補綴様式別の作業用模型の選択基準とは?
第2章 原型製作
原型材料(鋳造用ワックス・レジン系材料)
Q 鋳造用の原型材料の選択基準とは?
第3章 レジン成形
(1) 義歯床用レジン
Q 義歯床用レジンの選択基準とは?
(2) 軟質裏装材
Q 軟質裏装材の選択基準とは?
(3) 人工歯
Q 長期の使用に耐える人工歯材料とは?
(4) 歯冠用硬質レジン
Q 長期の使用に耐える硬質レジンとは?
(5) 即時重合レジン(プロビジョナルレストレーション用)
Q 物性的に安定した即時重合レジンの操作法とは?
(6) マウスガード
Q マウスガード素材について知りたい!
第4章 セラミックス成形
(1) 歯科用セラミックスの基礎
Q セラミックス材料の基礎をおさらいしたい!
(2) P.F.M.(陶材焼付鋳造冠)
Q 材料面からみたメタルセラミックスの将来展望とは?
(3) オールセラミックス
Q 材料面からみたオールセラミックスの将来展望とは?
第5章 金属成形
(1) 貴金属と非貴金属
Q 貴金属と非貴金属の基本をおさらいしたい!
(2) 鋳造(埋没材・鋳造器)
Q 良好な鋳造体を得るための基礎知識を学びたい!
(3) 接合(レーザー溶接・鑞付け)
Q 最先端の接合の基礎知識と実際の手技を学びたい!
(4) デジタル造形
Q デジタル造形で何がどこまでできるのか?
第6章 接着
(1) 合着材
Q 合着材の基礎知識と表面処理の実際を学びたい!
(2) 接着材
Q 歯科技工における接着とは?
第7章 仕上げ
研磨材
Q 材料別の研磨テクニックとは?
模型材
Q 補綴様式別の作業用模型の選択基準とは?
第2章 原型製作
原型材料(鋳造用ワックス・レジン系材料)
Q 鋳造用の原型材料の選択基準とは?
第3章 レジン成形
(1) 義歯床用レジン
Q 義歯床用レジンの選択基準とは?
(2) 軟質裏装材
Q 軟質裏装材の選択基準とは?
(3) 人工歯
Q 長期の使用に耐える人工歯材料とは?
(4) 歯冠用硬質レジン
Q 長期の使用に耐える硬質レジンとは?
(5) 即時重合レジン(プロビジョナルレストレーション用)
Q 物性的に安定した即時重合レジンの操作法とは?
(6) マウスガード
Q マウスガード素材について知りたい!
第4章 セラミックス成形
(1) 歯科用セラミックスの基礎
Q セラミックス材料の基礎をおさらいしたい!
(2) P.F.M.(陶材焼付鋳造冠)
Q 材料面からみたメタルセラミックスの将来展望とは?
(3) オールセラミックス
Q 材料面からみたオールセラミックスの将来展望とは?
第5章 金属成形
(1) 貴金属と非貴金属
Q 貴金属と非貴金属の基本をおさらいしたい!
(2) 鋳造(埋没材・鋳造器)
Q 良好な鋳造体を得るための基礎知識を学びたい!
(3) 接合(レーザー溶接・鑞付け)
Q 最先端の接合の基礎知識と実際の手技を学びたい!
(4) デジタル造形
Q デジタル造形で何がどこまでできるのか?
第6章 接着
(1) 合着材
Q 合着材の基礎知識と表面処理の実際を学びたい!
(2) 接着材
Q 歯科技工における接着とは?
第7章 仕上げ
研磨材
Q 材料別の研磨テクニックとは?








