やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社


 歯の審美性に対する患者さんのニーズは多様化し,いまや前歯のみならず臼歯部にまで及んでいる.その臨床はインレー,ラミネートベニア,クラウンおよびブリッジにまで広範囲に展開している.
 これらの審美修復材料にはセラミックス材料とコンポジットレジンが用いられており,セラミックス材料による審美修復装置は,陶材築盛焼成法,ガラス鋳造法,機械による精密加工法と高靱性化された分散強化,ガラス浸透,高密度焼結による方法との組み合わせにより製作されている.
 従来からの審美修復材料の代表である陶材などのセラミックス材料は,高額な設備や費用だけでなく,技工サイドの技術差や製作の煩雑さなどの問題点を持っていた.
 一方で,1980年代に高強度の無機質フィラーを含有したワンペーストタイプの光重合型硬質レジンが登場して以来,技工操作の簡便性や良好な色調再現性によって歯科医療に貢献してきた.さらに現在では,マトリックスレジンに無機質フィラーを高密度に充2することにより,耐摩耗性や吸水性といったレジンの弱点を補った“ハイブリッド型コンポジットレジン”が多くの歯科材料メーカーから発売され,歯質や金属に対する接着技術の向上とも相まってさまざまな方法で臨床応用されている.これらの材料は金属と併用した前装鋳造冠やインプラントの上部構造としてのみならず,単体でインレーやクラウンにも用いることができ,さらにはグラスファイバーをフレームの補強材に用いるメタルフリーブリッジに至るまで,幅広い応用が可能となっている.
 また,支台築造体のポスト部にグラスファイバーとコア用レジンを用いたファイバーポストは,メタルコアが抱えていた歯根破折などのトラブルを回避できる可能性を持っており,今後その臨床応用はさらに発展すると考えられる.
 そこで本書では,まず歯科材料メーカー各社が開発・発売しているさまざまなタイプの歯冠修復用コンポジットレジンの概念を明瞭に整理し,レジン系材料の接着技法について解説した.また,歯冠修復用コンポジットレジンの適用症例を紹介し,チェアサイド・ラボサイドでの手技の“コツ”について解説するとともに,それを用いるうえでの技工テクニックを材料別に供覧した.さらに,ブリッジやポストに応用するグラスファイバー強化樹脂材についての材料学的特徴や技工操作,臨床術式についても詳説した.
 さまざまな利点を有するこれらの材料が,多くの臨床現場で正しい知識の元に用いられるために,本書がその手助けとなれるよう望む次第である.
 2006年7月吉日
 日本歯科大学生命歯学部歯科補綴学第2講座
 新谷明喜
 日本大学歯学部歯科補綴学III講座
 松村英雄
Part1 歯冠修復用コンポジットレジンとは?――歯冠修復用コンポジットレジンの歯科理工学
 (1)歯冠修復用コンポジットレジンの材料特性(齊藤仁弘・廣瀬英晴・西山 實)
 (2)歯冠修復用コンポジットレジンの接着技法(田中卓男・堀 沙也香)
 (3)歯質への接着(桃井保子・山本雄嗣・秋本尚武)
Part2 歯冠修復用コンポジットレジンの臨床例
 (1)コンポジットレジンインレーの適用と術後経過(中村光夫・内山則夫・坂本美穂子)
 (2)ファイバーブリッジへのコンポジットレジン適用症例(舞田健夫)
 (3)前装鋳造冠へのコンポジットレジン適用症例(齋藤勝吉・前田和孝)
 (4)インプラントへのコンポジットレジン適用症例(行田克則)
 (5)直接法によるコンポジットレジン修復例(田上順次)
Part3 歯冠修復用コンポジットレジンの技工
 (1)エステニアC&B(末瀬一彦)
 (2)セラマージュ(佐藤文裕)
 (3)グラディアフォルテ(小田中康裕・滝澤 崇・小見川 淳)
 (4)シンフォニー(石三晃一)
 (5)タルギス(絹田宗一郎・六人部慶彦・中村隆志・矢谷博文)
 (6)パールエステ(桂島弘昭)
 (7)ニューメタカラーインフィス(永野清司・今井秀行・田上直美)
Part4 各種ファイバー材の材料特性
 (1)クラウン・ブリッジ用ファイバー材(小田 豊)
 (2)ファイバーポスト(高橋英和・岩崎直彦)
Part5 グラスファイバー補強クラウン・ブリッジの技工・臨床
 (1)グラスファイバー補強クラウン・ブリッジ―構造力学的設計に基づく技工・臨床―(新谷明一)
 (2)グラスファイバー補強接着ブリッジ――構造力学的検討を基盤とした技工・臨床――(横山大一郎)
 (3)グラスファイバー補強インレーブリッジの技工・臨床(若林一道・脇 智典・中村隆志・矢谷博文)
Part6 ファイバーポストの技工・臨床
 (1)直接法ファイバーポストの技工・臨床(坪田有史・北村 茂・福島俊士)
 (2)間接法ファイバーポストの技工・臨床(海渡智義)