やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

■序
 Minimal Intervention(MI)時代の歯科医療では,プラークコントロールおよびPMTCによる予防処置が口腔管理の第一選択となり,自己治癒が不可能となったエナメル質や象牙質に関しては可及的に切削せず,切削したエナメル質や象牙質は接着処理し,二次齲蝕や歯頸部辺縁の変色を防止することが可能になってきている.また,QOL(Quality of Life)の観点からは,80歳で20本以上の歯が健全に機能する健康な口腔管理に貢献することが歯科医療従事者の使命になっている.
 そんな時代背景のなか,審美修復に応用されるオールセラミックスレストレーションにおいては,インレー,アンレー,ラミネートベニア,クラウンから2歯欠損ブリッジまでの広範囲の臨床で用いられるとともに,インプラントの上部構造としてアルミナ,ジルコニアの高強度フレームにレイヤリングポーセレンを用いて審美性を回復するケースも増えてきた.いわば,これまでの“ポーセレンであれば何でもよい“時代から,デンタルセラミストの芸術的感性から生み出される高度に審美的な表現力に応えた“生体に調和した天然歯のような審美修復”と言うべき領域にまで達していると言えるだろう.
 一方,臨床現場における製作技法においては,耐火材上でポーセレンを築盛・焼成する方法,歯科精密鋳造に準じるガラスを融解して鋳造する方法,ガラスを溶融・軟化状態で加圧成型する方法,切削により機械加工する方法などが存在する.そして,歯科用CAD/CAMシステムにより切削加工される歯冠修復物は,製品の高品質化,製作工程の省力化やそれに伴う歯科医師,歯科技工士の臨床環境の改善など,多くの利点をもたらしている.たとえば,CADとCAMを分離し,歯科医院にスキャナと画像処理ソフトを設置し,処理されたCAD情報をインターネットでCAMセンターへ送信することができる歯科医院占有のネットワーク型CAD/CAMシステムが,その代表格である.
 歯科技工の現場では,このような最先端のシステムを早急に実用化することで,いつでも,誰でも,簡単に,低価格で,短時間に補綴物を完成させることができるという意味で,ラボワークの近代化を推進できる.また,さまざまな技法で製作されたセラミックス修復物を過酷な口腔内で長期間機能・維持させるには,臨床ではセラミックスや歯質に対する表面処理と接着材の上手な使用法が重要となる.
 本書では,現在応用されているオールセラミックスの臨床技法に関して,セラミックス材料の理工学的性質と接着理論,ラボサイドにおける材料別の製作技法,チェアサイドにおける臨床術式の順で詳説した.日々進化を遂げるオールセラミックスレストレーションに従事する歯科医療従事者各位の一助となれば幸いである.
 2005年7月吉日
 日本歯科大学歯学部歯科補綴学第2講座
 新谷明喜
 日本大学松戸歯学部歯科生体材料学講座
 西山典宏
 大阪府茨木市/(有)デンタル・クリエーション・アート
 西村好美
 ・序
 ・Graph “今日”を象徴する歯冠修復治療;オールセラミックスレストレーション
 ・目次

Part1 オールセラミックスレストレーションの臨床的評価
 オールセラミックスレストレーションの臨床的評価
Part2 オールセラミックスの歯科理工学
 1.オールセラミックスの歯科材料学
 2.オールセラミックスの接着理論
Part3 各種オールセラミックスシステム
 Introduction
 1.ガラス鋳造法
  (1)クリセラ
 2.加圧成型鋳造法
  (1)IPSエンプレス
  (2)セラエステ
 3.耐火模型法
  (1)ラミナポーセレン
  (2)インセラムアルミナ
  (3)インセラムジルコニア
 4.CAD/CAM
  (1)Procera
  (2)ピュアジルコニア
Part4 オールセラミックスの臨床術式
 1.インレー
 2.ラミネートベニア
 3.クラウン
 4.ブリッジ

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