やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

発刊にあたって
 技術の進歩と医療安全への関心から,「より早く,より安全な」検査が求められている.とはいえ,検査を行うのも結果を活用するのも,所詮は人間である.いかに優秀な成績で卒業した医療者でも,最初の当直はとても緊張するのではないだろうか.本書はそうした初心者や久しぶりに現場へ復帰した臨床検査技師の皆さん,あるいは新分野に挑戦する臨床検査技師の方々を想定し,円滑な「現場デビュー」の役に立てるよう編集されている.
 制作に際しては基本的な事柄を,わかりやすく伝えられるよう,以下の工夫を施した.
 ・「POINT」として最初に要点を箇条書きで並べ,情報を整理できるようにした.
 ・図表を多用し,「次に何をしたらよいか」がわかるように努めた.
 ・パニック値,異常値が出た場合,臨床側へ報告する前に何を確認すべきか,具体的なcheck list にまとめた.
 本書の読者には中小病院で孤軍奮闘しておられる臨床検査技師の方も多く,その誇りと努力こそ日本の医療を支える基礎となっている.折しも新型コロナウイルス感染症の大流行で,日本の「感染者の死亡率」が世界的にみてもきわめて低いのは,エラーの少ない検査など,きめ細かい医療が提供されているからであろう.本書によって,いざトラブルやパニック値,異常値に遭遇しても,慌てることなく対処できる「優秀な臨床検査技師」が増えることを期待している.
 2021年12月
 月刊『Medical Technology』編集委員会
 昭和大学横浜市北部病院 臨床病理診断科/昭和大学富士吉田教育部
 木村 聡
 発刊にあたって(木村 聡)
CHAPTER 1 総論─緊急検査の目的と意義
 (諏訪部 章)
CHAPTER 2 一般検査
 (米山正芳)
 1 尿検査
 2 便検査
CHAPTER 3 生化学検査
 1 総蛋白(TP)(川崎健治)
 2 アルブミン(ALB)(川崎健治)
 3 尿素窒素(UN)(菅野光俊)
 4 クレアチニン(Cre)(菅野光俊)
 5 尿酸(UA)(菅野光俊)
 6 アンモニア(斎藤 篤)
 7 乳酸デヒドロゲナーゼ(LD)(山本裕之,下間雅夫,稲葉 亨)
 8 アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST),アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)(山本裕之,下間雅夫,稲葉 亨)
 9 アルカリホスファターゼ(ALP)(山本裕之,下間雅夫,稲葉 亨)
 10 コリンエステラーゼ(ChE)(山本裕之,下間雅夫,稲葉 亨)
 11 総ビリルビン(T-Bil),直接ビリルビン(D-Bil),間接ビリルビン(I-Bil)(斎藤 篤)
 12 アミラーゼ(AMY)(川崎健治)
 13 血糖(GLU)(菅野光俊)
 14 HbA1c(菅野光俊)
 15 総コレステロール(TC)(川崎健治)
 16 中性脂肪(TG)(川崎健治)
 17 ナトリウム(Na),カリウム(K),クロール(Cl)(中川央充)
 18 カルシウム(Ca)(中川央充)
 19 マグネシウム(Mg)(中川央充)
 20 無機リン(IP)(中川央充)
 21 血漿浸透圧(Posm)(高山亜美)
 22 動脈血液ガス分析(ABG)(高山亜美)
 23 C反応性蛋白(CRP)(阿部正樹)
 24 クレアチンキナーゼ(CK),CK-MB(斎藤 篤)
 25 心筋トロポニンT,I(cTnT,cTnI)(河野正臣)
 26 BNP,NT-proBNP(河野正臣)
 27 薬物・毒物(宮城博幸)
CHAPTER 4 血液検査
 1 血球数算定(荒井智子)
 2 血液像(久保田 浩)
 3 凝固・線溶検査(涌井昌俊)
CHAPTER 5 輸血検査
 (井手大輔)
CHAPTER 6 微生物検査
 (辻原佳人)
 1 塗抹検査
 2 抗原定性検査
CHAPTER 7 病理・細胞診検査
 (杉山宗平)
CHAPTER 8 生理機能検査
 1 腹部超音波検査(木下博之)
 2 心臓超音波検査(水上尚子)
 3 心電図検査(薮 圭介)
CHAPTER 9 外注検体の保管
 (梅森祥央)

 COLUMN
  技師間でのスキルの差を埋めるトレーニング・評価の方法<生化学検査編>(藤村善行)
  技師間でのスキルの差を埋めるトレーニング・評価の方法<血液検査編>(新保 敬)
  パニック値報告,医師は何を期待しているか?(江原佳史)