やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社


 あれは2006年11月の仙台であった.第16回日本乳癌検診学会の会場で,われわれ3人は医歯薬出版編集部の方から症例集の出版の話を持ちかけられた.しかし,前作の『乳房超音波実践マニュアル』が刊行されてから,まだ1年とわずかしか経っていなかったので,正直なところ乗り気ではなかった.なによりも“症例集”という響きがどうもありきたりで,自分の書きたい内容とは異なっていた.
 しかし,お話を伺っているうちに気持ちはしだいに前向きになってきた.するとアイデアは次々と湧いてきた.症例集を作るのなら前例のないほど沢山の画像を載せてしまおう.本文のほとんどない完全なる写真集に徹することにした.1つのタイトルに当てはまる症例を12画像,見開きで一気に見てもらう.個々の画像に対する解説文もなく,その表題は絵画の題をつけるようにそのイメージをワンフレーズで表す.それ以外の細かな所見は言葉で説明しきれるものではない.読者の皆様には見開きの12枚の写真を見ていただき,それぞれの共通点や相違点を感じ取っていただく.画像のサイズは,画像上のスケールの1cmが誌面上もちょうど1cmになるように印刷し,本書に掲載されている病変は全て実物大になるようにする.という具合に,誌面のイメージは瞬時のうちに頭に思い描くことができた.
 さて問題は,その画像の収集である.3人がかりとはいえ600枚.稀な症例も含まれているので,そう簡単に集まるものではないという覚悟はあった.それから1年間は各自が日々の業務の中でコツコツと画像をストックしていった.そして実際に本の制作にかかったのは2007年の12月中旬であった.しかし,それからは早かった.3人はお互いに毎日のようにメールで連絡を取り合い,それぞれが持っている症例を確認しながら不足分を補い,ほぼ1ヵ月で的確に誌面を埋めていった.それらの画像に対する思い入れは筆者3人とも人一倍強い.校正の段階で写真の仕上がりに対しては妥協を許さず,出版社や印刷所には最後まで調整に手を煩わせることになったが,誠意を持って対応していただいたことに深く感謝する.
 その医歯薬出版編集部の桃井輝夫氏は本書を最後の仕事として定年を迎えられる.その1冊をわれわれの手で作り上げることができたことを光栄に思う.長い間お疲れ様でした.

 2008年4月
 佐久間 浩
 白井 秀明
 尾羽根範員
01−円形・楕円形の腫瘤
02−分葉形・多結節形の腫瘤
03−多角形の腫瘤
04−不整形の腫瘤
05−境界明瞭平滑な腫瘤
06−境界明瞭粗ぞう・不明瞭な腫瘤
07−Haloを伴う腫瘤
08−無・低エコー腫瘤
09−等・高エコー腫瘤
10−嚢胞内腫瘍
11−微細石灰化を伴う腫瘤
12−良性石灰化を伴う腫瘤
13−後方エコーが増強している腫瘤
14−後方エコーが不変の腫瘤
15−後方エコーが減弱・欠損している腫瘤
16−前方境界線が断裂している腫瘤
17−前方境界線が保たれている腫瘤
18−乳管内病変
19−不明瞭な低エコー像を呈する病変
20−小嚢胞集合像
21−正常乳房
22−妊娠・授乳期乳房
23−嚢胞1-典型像-
24−嚢胞2-さまざまな嚢胞-
25−線維腺腫1-典型像-
26−線維腺腫2-粗大石灰化を伴う-
27−線維腺腫3-乳癌と見間違えやすい-
28−葉状腫瘍
29−過誤腫
30−乳管内乳頭腫
31−乳腺線維症
32−乳腺炎
33−その他の良性疾患
34−豊胸術後
35−乳腺外の疾患
36−非浸潤性乳管癌1
37−非浸潤性乳管癌2
38−乳頭腺管癌
39−充実腺管癌
40−硬癌1
41−硬癌2
42−粘液癌
43−浸潤性小葉癌
44−稀な特殊型と悪性リンパ腫
45−乳管内進展
46−皮膚浸潤・胸筋浸潤
47−炎症性乳癌
48−男性の乳房疾患
49−所属リンパ節1
50−所属リンパ節2