やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

発刊にあたって
 臨床検査医学や生物科学研究において,組織・細胞や化学成分に対する染色技術が広く応用されている.
 臨床検査技術の向上と教育を目的としている雑誌月刊Medical Technologyは,臨床検査領域における染色技術を網羅した「染色法のすべて」を1977年12月に臨時増刊号として発刊した.1980年にはカラー頁を増やし書籍の形態となった.カラー版「染色法のすべて」が発刊されたのは1988年であり,1999年にはさらに内容を充実した「新染色法のすべて」が世に出て広く利用されてきた.「新染色法のすべて」は,かなり完成された書という感があったが,時代の変遷とともに染色法の内容や執筆陣の見直し・変更が必要となった.
 そこで今回,「新染色法のすべて」から12年を経て,ここに新たな改訂版「最新染色法のすべて」を発刊することとなった.本書の基本的な方針としては,すべての染色法項目を見直し,現代に見合った染色技術や10年先を見越した内容を取り入れ,逆に古くて使用されることの少ない方法は削除した.これは,世の中の技術的進歩に歩調を合わせるために必要不可欠な措置であった.
 今回の変更点は以下のとおりである.(1)病理組織・細胞診分野では,14項目を追加した.なかでも免疫組織化学の分野を充実させ,術中迅速酵素抗体法,多重染色法などを加えた.(2)改訂にあたり執筆者の入れ替えも行ったが,執筆をお願いした方々には実際に染色の追試をしていただき,再現性の良い方法を記載していただいた.(3)血液検査,微生物検査,寄生虫検査,化学検査,染色体検査では,検査現場の実施状況を考慮したうえで項目を追加・削除した.
 以上の結果,本書に掲載した染色項目数は166,執筆者は180名を越えた.前回も好評であった巻頭の「染色法の選択」の表は同様に掲載し,利便性を残した.なお,今回もMedical Technologyの別冊として発刊したが,料金設定には苦慮した.しかし,本書を教科書として採用している教育施設もあることから,広く多くの読者の方々に手に取っていただけるよう努力した.
 本書は臨床検査領域で行われる染色項目を網羅しているだけでなく,執筆者もその分野でトップの人材である.このため,本書は他に追随を許さない内容となっている.本書が日常の臨床検査業務や臨床研究などの分野で広く利用され,臨床検査技術のレベルアップに役立つことを期待している.
 2011年3月
 帝京大学医学部附属溝口病院臨床病理科
 水口國雄
 染色法の選択
I 病理検査
  凡例
 A 一般染色
  1.ヘマトキシリン・エオジン染色
  2.術中迅速HE染色
 B 結合組織の染色
  3.アザン染色
  4.マッソン・トリクローム染色
  5.エラスチカ・マッソン染色(ゴールドナー変法)
  6.エラスチカ・ワンギーソン染色
  7.ビクトリア青染色,ビクトリア青・HE染色
  8.アルデヒド・フクシン染色
  9.鍍銀染色(渡辺の鍍銀法)
  10.チオセミカルバジド-過ヨウ素酸メセナミン銀(TSC-PAM)染色
   (付)電子顕微鏡超薄切切片用 TSC-PAM染色
  11.基底膜染色
 C アミロイド染色
  12.コンゴ赤染色
  13.ダイレクト・ファースト・スカーレット染色
  14.免疫染色
 D 核酸染色
  15.フォイルゲン反応
  16.メチル緑・ピロニン染色
 E 脂肪染色
  17.ズダンIII染色
  18.オイル赤O染色
  19.ズダン黒B染色
  20.ナイル青染色
 F 生体内色素の染色
  21.シュモール反応
  22.ホール法
  23.フォンタナ・マッソン染色
  24.漂白法―過マンガン酸カリウム・シュウ酸法
  25.ドーパ反応
 G 線維素染色
  26.リンタングステン酸ヘマトキシリン(PTAH)染色
  27.ワイゲルトの線維素染色
  28.フィブリンのためのMSB染色
  29.レンドラム・フレイザー染色
 H 組織内血液細胞の染色
  30.組織標本のギムザ染色
 I 組織内酵素の染色
  31.アルカリ性ホスファターゼ染色
  32.酸性ホスファターゼ染色
  33.ペルオキシダーゼ染色
  34.ナフトールAS-Dクロロアセテートエステラーゼ染色
   (付)ダイレクトファーストスカーレット(DFS)を用いた骨髄顆粒球系染色
  35.電顕酵素細胞化学
 J 筋肉の組織化学
  36.ミオシンATPase
  37.NADH-TR(tetrazolium reductase)染色
  38.チトクロームc酸化酵素(COX)染色
 K 神経の組織化学
  39.アセチルコリンエステラーゼ染色
 L 組織内病原体の染色
  40.レフレルのメチレン青染色
  41.グラム染色―Brown-Hopps法
  42.抗酸菌染色
  43.ヘリコバクターピロリの染色
  44.梅毒スピロヘータの免疫染色
  45.グロコット染色
  46.グリドリー染色
  47.クリプトコックスの染色―ムチカルミン染色
  48.肝炎ウイルスの染色
  49.HPVの染色
  50.グリドレイのアメーバ染色
 M 組織内無機物の染色
  51.コッサ反応
  52.ダールのカルシウム染色
  53.ベルリン青染色
 N 組織内微量金属の染色
  54.アルミニウム染色
  55.銅の染色
 O 類骨(オステオイド)の染色
  56.吉木法
  57.トリップ・マッケイ法
  58.ビラネバ・ゴールドナー法
 P 多糖類の染色
  59.PAS反応
  60.アルシアン青染色
  61.ムチカルミン染色
  62.コロイド鉄染色
  63.トルイジン青染色
  64.レクチン染色
 Q 中枢神経組織の染色
  65.クリューバー・バレラ染色(含ニッスル染色)
  66.ゴルジ染色(ゴルジの黒色反応)
  67.ボディアン染色―石川変法
  68.ホルツァー染色法(佐伯リンタングステン法)
  69.カハール染色
  70.ナウタ染色(Nauta-変性軸索線維染色)
  71.改良ガリアス・ブラーク法
  72.メセナミン銀を用いた神経原線維染色
 R 末梢神経線維の染色
  73.銀,オスミウム,ズダン黒B染色
  74.酵素抗体法
 S 内分泌細胞の鑑別染色法
  75.グリメリウス法(銀親和性反応)
  76.ヘルマン・ヘレルストローム法
  77.ゴモリのアルデヒド・フクシン染色(井上の変法)
  78.Pagetらのアルデヒド・チオニン染色
  79.五重染色法(井上の変法)
  80.酵素抗体法
  81.PAS-オレンジG染色
  82.グレンナー・リリー染色
 T 免疫組織化学
  83.酵素抗体法
  84.酵素抗体重染色法
  85.術中酵素抗体法
  86.腎生検免疫グロブリンの酵素抗体法
  87.蛍光抗体法
  88.蛍光抗体法多重染色
 U ISH
  89.光顕的ISH
  90.Fluorescence in situ hybridization(FISH)法
 V 細胞増殖因子の染色
  91.PCNA,MIB-1(ki-67),Topoisomerase IIα
  92.AgNORs染色
 W 細胞診染色
  93.パパニコロウ染色
  94.ギムザ染色
  95.ショール染色
  96.アルシアン青染色(渡部変法)
  97.マイヤーのムチカルミン染色
  98.PAS反応
  99.ベルリン青染色
  100.酵素抗体法―体腔液細胞診
  101.性クロマチン(Xクロマチン)染色
  102.マン染色
  103.ヤーヌス緑B―中性赤超生体染色
  104.セルブロックの染色法
  105.アスベスト小体の染色
 X 電顕染色
  106.電子顕微鏡法
  107.走査型電子顕微鏡染色
  108.免疫電子顕微鏡法
II 血液検査
 A 血球染色(普通染色)
  109.ギムザ染色
  110.ライト染色
  111.メイ・グリュンワルド・ギムザ(パッペンハイム)染色
  112.ライト・ギムザ染色
 B 酵素染色
  113.アルカリ性ホスファターゼ染色
  114.エステラーゼ染色
  115.ペルオキシダーゼ染色
  116.酸性ホスファターゼ染色
 C 脂肪染色
  117.ズダン黒B染色
 D 多糖類染色
  118.PAS反応
 E 超生体染色
  119.網赤血球染色
  120.ハインツ小体染色
 F ヘモグロビン染色
  121.赤血球内胎児型ヘモグロビン染色(胎児型ヘモグロビンの酸溶出試験)
 G 微量金属の染色
  122.鉄染色(ベルリン青法)
 H 血小板ペルオキシダーゼ染色
  123.血小板ペルオキシダーゼ染色
 I 免疫学的表面マーカーの染色
  124.免疫学的表面マーカーの染色
 J その他
  125.墨汁貪食試験
  126.NBT還元試験
III 微生物検査
 A 一般細菌染色
  127.単染色
  128.グラム染色
 B 異染小体染色
  129.ナイセルの異染小体染色
 C 芽胞染色
  130.メラー法
  131.ウィルツ法
 D 莢膜染色
  132.ヒスの莢膜染色
 E 抗酸菌染色
  133.チール・ネールゼン染色
  134.オーラミン染色
 F 鞭毛染色
  135.レイフソン法
  136.西沢・菅原変法
 G その他
  137.レジオネラの染色(ヒメネス染色)
  138.マイコプラズマの集落の染色
  139.クラミジアの染色
  140.墨汁法
  141.真菌の染色(ラクトフェノールコットン青染色)
IV 寄生虫検査
 A 血中寄生虫
  142.血液塗抹標本の染色
 B 虫卵
  143.セロファン染色による検査法(セロファン厚層塗抹法)
 C 原虫
  144.コーン染色法
  145.ヨード染色
  146.クリプトスポリジウムのオーシストの抗酸性染色
  147.蛍光染色
  148.色素試験
 D 虫体
  149.墨汁染色法(墨汁注入法)
  150.カルミン染色
V 尿沈渣検査
  151.ステルンハイマー・マルビン染色
  152.ルゴール染色
  153.ズダンIII染色
  154.プレスコット・ブロディ染色
  155.ベルリン青法
  156.ステルンハイマー染色
  157.好酸球染色(ハンセル染色)
  158.赤血球染色
VI 化学検査
  159.アイソザイム染色
  160.蛋白染色
  161.リポ蛋白染色
  162.酵素抗体染色(ウエスタンブロッティング法)
  163.アルシアン青・ポンソー3R二重染色
VII 染色体検査
  164.Gバンド染色法
  165.Qバンド分染法
  166.Cバンド分染法

 索引