はじめに
清水重臣
東京医科歯科大学難治疾患研究所病態細胞生物学
われわれの体が正常に発生し,恒常性を保って生きていくためには,細胞死が細胞増殖,分化と協調して機能することが必要不可欠である.一時代前には,細胞死は生存プロセスの崩壊によってもたらされる受動的な生命現象であると認識されていたが,現在は能動的な現象であり,生体の恒常性維持,ストレス応答などに必要な生命現象であると理解されている.
細胞死研究はネクローシスとアポトーシスに二極化して考えられていた時期があったが,現在はネクロプトーシスやオートファジー細胞死など,多様な細胞死が存在していることが明らかとなっている.これらの多様な細胞死は,生体の環境や細胞の種類,刺激の種類によって使い分けられている.また,このような細胞死様式の違いは死細胞周囲に存在する生細胞に異なった影響を与えるものと考えられており,このためにこそ,細胞死の多様性が必要であると思われる.このように,細胞死の基礎的研究は細胞死の多様性の発見によって新たなフェーズに入っているが,疾患研究においても,従来のアポトーシスからのアプローチが深化するとともに,多様な細胞死の概念が導入されつつある.さらに,神経変性疾患,血液疾患,がんなどの疾患では細胞死制御を薬理作用とする薬剤も開発されつつあり,細胞死研究は臨床面でも広がりをみせている.
本特集では,多様な細胞死などの基礎的な知見の概説からはじまり,さまざまな疾患や創薬を対象とした臨床的知見の概説まで,最新の細胞死研究の全体像が明らかになるように企画を行った.細胞死の専門家や細胞死の立場から疾患研究をされておられる第一線の研究者に執筆していただくことができたものと考えており,貴重な時間を割いて原稿を執筆していただいた先生方に深謝する次第である.本特集が,細胞死研究に関わっておられる専門家のほか,多くの研究者の一助となれば幸いである.
清水重臣
東京医科歯科大学難治疾患研究所病態細胞生物学
われわれの体が正常に発生し,恒常性を保って生きていくためには,細胞死が細胞増殖,分化と協調して機能することが必要不可欠である.一時代前には,細胞死は生存プロセスの崩壊によってもたらされる受動的な生命現象であると認識されていたが,現在は能動的な現象であり,生体の恒常性維持,ストレス応答などに必要な生命現象であると理解されている.
細胞死研究はネクローシスとアポトーシスに二極化して考えられていた時期があったが,現在はネクロプトーシスやオートファジー細胞死など,多様な細胞死が存在していることが明らかとなっている.これらの多様な細胞死は,生体の環境や細胞の種類,刺激の種類によって使い分けられている.また,このような細胞死様式の違いは死細胞周囲に存在する生細胞に異なった影響を与えるものと考えられており,このためにこそ,細胞死の多様性が必要であると思われる.このように,細胞死の基礎的研究は細胞死の多様性の発見によって新たなフェーズに入っているが,疾患研究においても,従来のアポトーシスからのアプローチが深化するとともに,多様な細胞死の概念が導入されつつある.さらに,神経変性疾患,血液疾患,がんなどの疾患では細胞死制御を薬理作用とする薬剤も開発されつつあり,細胞死研究は臨床面でも広がりをみせている.
本特集では,多様な細胞死などの基礎的な知見の概説からはじまり,さまざまな疾患や創薬を対象とした臨床的知見の概説まで,最新の細胞死研究の全体像が明らかになるように企画を行った.細胞死の専門家や細胞死の立場から疾患研究をされておられる第一線の研究者に執筆していただくことができたものと考えており,貴重な時間を割いて原稿を執筆していただいた先生方に深謝する次第である.本特集が,細胞死研究に関わっておられる専門家のほか,多くの研究者の一助となれば幸いである.
はじめに 清水重臣
アポトーシスと非アポトーシス細胞死
細胞死研究の歴史─いかにして細胞死がホットトピックになったか 猪原直弘
ミトコンドリアを経由するアポトーシス 小西昭充
デスレセプターを介したアポトーシス 米原 伸
カスパーゼによるアポトーシスの実行 瀬川勝盛・宮田佑吾
ネクロプトーシスの分子機構と意義 森脇健太
オートファジー細胞死 鳥居 暁
パイロトーシス─炎症をつかさどる“燃える”細胞死 榧垣伸彦
ネトーシスの誘導機構とその感染症における役割 四元聡志・田中正人
フェロトーシス(鉄依存性細胞死)─転写因子NRF2とBACH1による競合的制御とフェロトーシス伝播現象 西澤弘成・五十嵐和彦
ミトコンドリア膜透過性遷移を介したネクローシス 中川 崇
死細胞の行方
脂質スクランブルによる“eat me”シグナルの提示 圓岡真宏・鈴木 淳
ゴーシェ病における神経細胞死誘導の新たな分子機構 清水 隆・山ア 晶
マクロファージによる死細胞貪食とその意義 浅野謙一
さまざまな細胞機能と細胞死
小胞体ストレスと細胞死 今泉和則
核小体ストレスによる細胞死と病態 前濱朝彦・他
細胞競合を制御する分子機構 菅田浩司・井垣達吏
治療ターゲットとしての細胞老化とその機能 成田匡史
ASK1と細胞死 西田卓人・一條秀憲
生死を制御するJNKシグナル伝達経路 小藤智史・他
さまざまな生命現象と細胞死
発生と組織修復におけるカスパーゼの非細胞死性の機能 篠田夏樹・三浦正幸
成体脳におけるニューロンの細胞死と再生 豊田貴一・他
骨形成と細胞死 今川佑介
死細胞からのdanger-associated molecular patternsの放出機構 中野裕康
自己免疫と細胞死 鍔田武志
パイロトーシスによる自然炎症とその制御─オルガネラを標的とする新たな抗炎症薬の開発 武村直紀・齊藤達哉
疾患と細胞死
神経変性疾患における細胞死研究 星野友則・他
がんの細胞死回避戦略としてのワールブルグ効果とカルジオリピン代謝を制御するMieap液滴について 荒川博文
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)と細胞死 田中 稔
メタボリックシンドロームと細胞死 吉岡直輝・他
自己炎症性疾患と細胞死 有持秀喜・安友康二
皮膚疾患と細胞死─表皮角化細胞アポトーシスとリンパ球のダイナミクス 本田哲也・椛島健治
脳梗塞における神経細胞死の誘導機序 中村朱里・七田 崇
放射線による細胞死と組織障害 百海享洲・他
細胞死を応用した創薬
アポトーシス抵抗性BCL2ファミリー阻害薬BH3-mimetic drugsの基礎と臨床 黒田純也
IAPの医薬品開発─IAPアンタゴニストとSNIPER 内藤幹彦
TRAIL創薬 吉田達士・他
細胞死解析技術とその応用
ケミカルバイオロジーを用いた細胞死の解析 闐闐孝介・袖岡幹子
二分割発光タンパク質の再構成法を用いる細胞死イメージング 小澤岳昌
蛍光タンパク質レポーターを利用した細胞死イメージング 山口良文
次号の特集予告
サイドメモ
細胞の生死を決定するミトコンドリアの2枚の膜
ミトコンドリアを介したアポトーシス制御の進化的保存性
抗Fasモノクローナル抗体
カスパーゼの活性化とアポトーシスの誘導
アポトーシス細胞の検出
ネクロプトーシスの発見を後押しした細胞株―L929細胞
用語解説(BH-3-onlyタンパク質,Ulk1/2,LC3)
フェロトーシスとは
転写因子NRF2とBACH1
ミトコンドリアと細胞死
CD169-DTRマウス
小胞体ストレス研究の草分け
機能獲得過程としての細胞老化
カスパーゼ
細胞死と免疫
パターン認識受容体(PRR)
神経変性疾患とは
神経変性疾患における発症様式
膜のないオルガネラ(MLOs)
天然変性タンパク質(IDP)
CLS(crown-like structure)
ベルゴニー・トリボンドーの法則
IAP結合モチーフ
PROTAC
ラマン散乱とラマンイメージング
アポトーシスと非アポトーシス細胞死
細胞死研究の歴史─いかにして細胞死がホットトピックになったか 猪原直弘
ミトコンドリアを経由するアポトーシス 小西昭充
デスレセプターを介したアポトーシス 米原 伸
カスパーゼによるアポトーシスの実行 瀬川勝盛・宮田佑吾
ネクロプトーシスの分子機構と意義 森脇健太
オートファジー細胞死 鳥居 暁
パイロトーシス─炎症をつかさどる“燃える”細胞死 榧垣伸彦
ネトーシスの誘導機構とその感染症における役割 四元聡志・田中正人
フェロトーシス(鉄依存性細胞死)─転写因子NRF2とBACH1による競合的制御とフェロトーシス伝播現象 西澤弘成・五十嵐和彦
ミトコンドリア膜透過性遷移を介したネクローシス 中川 崇
死細胞の行方
脂質スクランブルによる“eat me”シグナルの提示 圓岡真宏・鈴木 淳
ゴーシェ病における神経細胞死誘導の新たな分子機構 清水 隆・山ア 晶
マクロファージによる死細胞貪食とその意義 浅野謙一
さまざまな細胞機能と細胞死
小胞体ストレスと細胞死 今泉和則
核小体ストレスによる細胞死と病態 前濱朝彦・他
細胞競合を制御する分子機構 菅田浩司・井垣達吏
治療ターゲットとしての細胞老化とその機能 成田匡史
ASK1と細胞死 西田卓人・一條秀憲
生死を制御するJNKシグナル伝達経路 小藤智史・他
さまざまな生命現象と細胞死
発生と組織修復におけるカスパーゼの非細胞死性の機能 篠田夏樹・三浦正幸
成体脳におけるニューロンの細胞死と再生 豊田貴一・他
骨形成と細胞死 今川佑介
死細胞からのdanger-associated molecular patternsの放出機構 中野裕康
自己免疫と細胞死 鍔田武志
パイロトーシスによる自然炎症とその制御─オルガネラを標的とする新たな抗炎症薬の開発 武村直紀・齊藤達哉
疾患と細胞死
神経変性疾患における細胞死研究 星野友則・他
がんの細胞死回避戦略としてのワールブルグ効果とカルジオリピン代謝を制御するMieap液滴について 荒川博文
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)と細胞死 田中 稔
メタボリックシンドロームと細胞死 吉岡直輝・他
自己炎症性疾患と細胞死 有持秀喜・安友康二
皮膚疾患と細胞死─表皮角化細胞アポトーシスとリンパ球のダイナミクス 本田哲也・椛島健治
脳梗塞における神経細胞死の誘導機序 中村朱里・七田 崇
放射線による細胞死と組織障害 百海享洲・他
細胞死を応用した創薬
アポトーシス抵抗性BCL2ファミリー阻害薬BH3-mimetic drugsの基礎と臨床 黒田純也
IAPの医薬品開発─IAPアンタゴニストとSNIPER 内藤幹彦
TRAIL創薬 吉田達士・他
細胞死解析技術とその応用
ケミカルバイオロジーを用いた細胞死の解析 闐闐孝介・袖岡幹子
二分割発光タンパク質の再構成法を用いる細胞死イメージング 小澤岳昌
蛍光タンパク質レポーターを利用した細胞死イメージング 山口良文
次号の特集予告
サイドメモ
細胞の生死を決定するミトコンドリアの2枚の膜
ミトコンドリアを介したアポトーシス制御の進化的保存性
抗Fasモノクローナル抗体
カスパーゼの活性化とアポトーシスの誘導
アポトーシス細胞の検出
ネクロプトーシスの発見を後押しした細胞株―L929細胞
用語解説(BH-3-onlyタンパク質,Ulk1/2,LC3)
フェロトーシスとは
転写因子NRF2とBACH1
ミトコンドリアと細胞死
CD169-DTRマウス
小胞体ストレス研究の草分け
機能獲得過程としての細胞老化
カスパーゼ
細胞死と免疫
パターン認識受容体(PRR)
神経変性疾患とは
神経変性疾患における発症様式
膜のないオルガネラ(MLOs)
天然変性タンパク質(IDP)
CLS(crown-like structure)
ベルゴニー・トリボンドーの法則
IAP結合モチーフ
PROTAC
ラマン散乱とラマンイメージング