はじめに
櫻井晃洋
ゲノム医科学の進歩によって多くの疾患，病態における遺伝要因の関与やその機序の理解が進み，かつては研究的側面が強かった遺伝学的検査も保険収載されるものが徐々に増え，遺伝情報が一般臨床現場において取り扱われる機会が増えている．
わが国の保険診療においては，遺伝学的検査には施設要件が設定されており，基本的には遺伝カウンセリングを提供できる施設で行うことになっている．つまり生涯変わらない個人の遺伝情報を解析するにあたっては，遺伝カウンセリングという医療が必要であるということである．またこれにともない，遺伝カウンセラーという専門職の名前が取り上げられる機会も増えた．
ところで，遺伝カウンセリングは「遺伝性疾患の当事者や関係者が，遺伝性疾患の持つ医学的，心理的，家族的影響を理解し，それに適応できるように援助するプロセスである」と定義されているように，決して遺伝学的検査とセットになった医療ではないのだが，現在のわが国の保険医療のなかでは，検査に紐づいた「加算」として扱われており，遺伝カウンセリングは「遺伝学的検査前後の丁寧な説明」に近い理解をされているように感じられる場面が少なくない．
今回，遺伝カウンセリングをテーマとした編集企画の機会をいただいた．遺伝医療の一般診療への導入が進むなかで，非常にタイムリーな企画であると思う．前半は，遺伝カウンセリングの歴史や医療の理念，技法，そして制度と人材養成などを，後半で，さまざまな領域における遺伝カウンセリングの実際や研究，将来像をご紹介する．また，すべての項目の執筆は全国で活躍する認定遺伝カウンセラーの方々にお願いした．
本書が，医療における遺伝カウンセリングの意義と役割について知っていただく機会になれば幸いである．
櫻井晃洋
ゲノム医科学の進歩によって多くの疾患，病態における遺伝要因の関与やその機序の理解が進み，かつては研究的側面が強かった遺伝学的検査も保険収載されるものが徐々に増え，遺伝情報が一般臨床現場において取り扱われる機会が増えている．
わが国の保険診療においては，遺伝学的検査には施設要件が設定されており，基本的には遺伝カウンセリングを提供できる施設で行うことになっている．つまり生涯変わらない個人の遺伝情報を解析するにあたっては，遺伝カウンセリングという医療が必要であるということである．またこれにともない，遺伝カウンセラーという専門職の名前が取り上げられる機会も増えた．
ところで，遺伝カウンセリングは「遺伝性疾患の当事者や関係者が，遺伝性疾患の持つ医学的，心理的，家族的影響を理解し，それに適応できるように援助するプロセスである」と定義されているように，決して遺伝学的検査とセットになった医療ではないのだが，現在のわが国の保険医療のなかでは，検査に紐づいた「加算」として扱われており，遺伝カウンセリングは「遺伝学的検査前後の丁寧な説明」に近い理解をされているように感じられる場面が少なくない．
今回，遺伝カウンセリングをテーマとした編集企画の機会をいただいた．遺伝医療の一般診療への導入が進むなかで，非常にタイムリーな企画であると思う．前半は，遺伝カウンセリングの歴史や医療の理念，技法，そして制度と人材養成などを，後半で，さまざまな領域における遺伝カウンセリングの実際や研究，将来像をご紹介する．また，すべての項目の執筆は全国で活躍する認定遺伝カウンセラーの方々にお願いした．
本書が，医療における遺伝カウンセリングの意義と役割について知っていただく機会になれば幸いである．
はじめに（櫻井晃洋）
第1章 遺伝カウンセリング総論
遺伝カウンセリングの歴史（山本佳世乃）
Keywords 優生学への反省，進化論，臨床遺伝専門医，認定遺伝カウンセラー
遺伝カウンセリングモデル（有田美和）
Keywords 相互関与モデル（REM），クライエント中心のカウンセリング，傾聴，教育モデル，カウンセリングモデル
ゲノム情報の特性を考慮した遺伝カウンセリング（佐藤智佳）
Keywords ゲノミクス，次世代シークエンス，あいまい性，多様性，臨床的有用性
遺伝医療における倫理的課題（津幡真理）
Keywords 生命倫理，医療倫理，臨床倫理
第2章 遺伝カウンセリングの制度と人材
遺伝カウンセリングとわが国の医療制度（甲畑宏子）
Keywords 医療保険制度，医療費助成制度，自費診療，遺伝カウンセリング加算
遺伝カウンセリングを提供する人材とその養成（佐々木元子）
Keywords 臨床遺伝専門医，認定遺伝カウンセラー，日本産科婦人科遺伝診療学会認定医，遺伝性腫瘍専門医
海外の認定遺伝カウンセラー，認定遺伝カウンセラー制度（松川愛未）
Keywords 認定遺伝カウンセラー，認定遺伝カウンセラーの養成，認定遺伝カウンセラー制度
第3章 遺伝カウンセリングの領域別・対象別実践
非侵襲性出生前遺伝学的検査（NIPT）と遺伝カウンセリング（大江瑞恵）
Keywords 非侵襲性出生前遺伝学的検査（NIPT），遺伝カウンセリング，出生前検査，プレコンセプションケア，ノーマライゼーション
小児科領域における遺伝カウンセリング（小川真紀）
Keywords 保護者，患児，移行，診断，心理社会的支援
成人領域における遺伝カウンセリング（柴田有花・山田崇弘）
Keywords ライフイベント，血縁者間の情報共有，多診療科・多職種連携，発症前検査，予備的ガイダンス
がん診療における遺伝カウンセリング（田代真理）
Keywords 遺伝性腫瘍，遺伝学的検査，遺伝性乳癌卵巣癌（HBOC）
多因子疾患の遺伝カウンセリング（松﨑佐和子）
Keywords 多因子疾患，一塩基バリアント（SNVs），PRS（polygenic risk score）
地域医療連携と遺伝カウンセリング（柳沢佳子・山口博紀）
Keywords 地域医療構想，医療圏，地域医療支援病院，遺伝カウンセリング
第4章 遺伝カウンセリングの展望
遺伝カウンセリング研究の現状（吉田晶子）
Keywords 遺伝カウンセリング研究，研究手法，研究環境，倫理
遺伝カウンセリングの将来像（西垣昌和）
Keywords 遺伝カウンセリング，認定遺伝カウンセラー，専門職連携実践
サイドメモ
次世代シークエンス（NGS）
非発症保因者
病的バリアント
高額療養費制度
遺伝性腫瘍コーディネーター（HTC）
家族性腫瘍カウンセラー（FTC）
ゲノムメディカルリサーチコーディネーター（GMRC）
Assistant Genetic Counselor
遺伝情報をターゲットとした治療法の発展
疾患責任遺伝子と疾患感受性遺伝子
近親度
PRS（polygenic risk score）
第1章 遺伝カウンセリング総論
遺伝カウンセリングの歴史（山本佳世乃）
Keywords 優生学への反省，進化論，臨床遺伝専門医，認定遺伝カウンセラー
遺伝カウンセリングモデル（有田美和）
Keywords 相互関与モデル（REM），クライエント中心のカウンセリング，傾聴，教育モデル，カウンセリングモデル
ゲノム情報の特性を考慮した遺伝カウンセリング（佐藤智佳）
Keywords ゲノミクス，次世代シークエンス，あいまい性，多様性，臨床的有用性
遺伝医療における倫理的課題（津幡真理）
Keywords 生命倫理，医療倫理，臨床倫理
第2章 遺伝カウンセリングの制度と人材
遺伝カウンセリングとわが国の医療制度（甲畑宏子）
Keywords 医療保険制度，医療費助成制度，自費診療，遺伝カウンセリング加算
遺伝カウンセリングを提供する人材とその養成（佐々木元子）
Keywords 臨床遺伝専門医，認定遺伝カウンセラー，日本産科婦人科遺伝診療学会認定医，遺伝性腫瘍専門医
海外の認定遺伝カウンセラー，認定遺伝カウンセラー制度（松川愛未）
Keywords 認定遺伝カウンセラー，認定遺伝カウンセラーの養成，認定遺伝カウンセラー制度
第3章 遺伝カウンセリングの領域別・対象別実践
非侵襲性出生前遺伝学的検査（NIPT）と遺伝カウンセリング（大江瑞恵）
Keywords 非侵襲性出生前遺伝学的検査（NIPT），遺伝カウンセリング，出生前検査，プレコンセプションケア，ノーマライゼーション
小児科領域における遺伝カウンセリング（小川真紀）
Keywords 保護者，患児，移行，診断，心理社会的支援
成人領域における遺伝カウンセリング（柴田有花・山田崇弘）
Keywords ライフイベント，血縁者間の情報共有，多診療科・多職種連携，発症前検査，予備的ガイダンス
がん診療における遺伝カウンセリング（田代真理）
Keywords 遺伝性腫瘍，遺伝学的検査，遺伝性乳癌卵巣癌（HBOC）
多因子疾患の遺伝カウンセリング（松﨑佐和子）
Keywords 多因子疾患，一塩基バリアント（SNVs），PRS（polygenic risk score）
地域医療連携と遺伝カウンセリング（柳沢佳子・山口博紀）
Keywords 地域医療構想，医療圏，地域医療支援病院，遺伝カウンセリング
第4章 遺伝カウンセリングの展望
遺伝カウンセリング研究の現状（吉田晶子）
Keywords 遺伝カウンセリング研究，研究手法，研究環境，倫理
遺伝カウンセリングの将来像（西垣昌和）
Keywords 遺伝カウンセリング，認定遺伝カウンセラー，専門職連携実践
サイドメモ
次世代シークエンス（NGS）
非発症保因者
病的バリアント
高額療養費制度
遺伝性腫瘍コーディネーター（HTC）
家族性腫瘍カウンセラー（FTC）
ゲノムメディカルリサーチコーディネーター（GMRC）
Assistant Genetic Counselor
遺伝情報をターゲットとした治療法の発展
疾患責任遺伝子と疾患感受性遺伝子
近親度
PRS（polygenic risk score）
