はじめに
村谷匡史
筑波大学医学医療系ゲノム生物学研究室,同トランスボーダー医学研究センター
人類がふたたび月を目指すアルテミス計画や,民間企業による本格的な宇宙輸送の時代のはじまり,プロ宇宙飛行士が搭乗しないはじめての民間人による宇宙旅行など,今,宇宙開発と利用は新たなフェーズに入りつつある.さまざまなメディアでも紹介されるロケットなどハードウェアの開発とともに,地球の低軌道を離れた有人探査や宇宙産業の基礎となる,医学的な視点からの安全・快適の重要性も一般に認識されつつある.スペースシャトル時代から行われてきた宇宙医学研究は,宇宙で人体に起こるさまざまな変化に関して重要な知見をもたらしてきた.
近年,国際宇宙ステーション(International Space Station:ISS)での宇宙飛行士の長期滞在と実験機器の充実とともに,宇宙医学・生命科学研究は,宇宙飛行士やモデル生物を対象として宇宙環境応答の分子メカニズムを探る,より系統的な研究へと発展している.本特集では,人類の宇宙進出と,宇宙の環境要因としての重力と放射線,さらに日本の実験モジュール「きぼう」における宇宙実験の総論に続き,現在進められている各分野の研究について,プロジェクトを実施している研究者に紹介していただいた.とくに,地球の生命が進化上はじめて経験する微小重力環境でみせる振る舞いは,環境応答の生物学としても非常に興味深い.
「医学応用と今後の展望」の章では,宇宙研究成果を地上社会へ還元する取り組みと,超長期宇宙滞在の実現に向けた今後の課題について解説されている.ISSの運用に象徴される国際的な協力体制のなかで,これまでに築かれた科学的成果をもとに,今後,日本がどのように研究開発に取り組んでいくのかについても考える機会になればと思う.
最後に筆者一同を代表して,宇宙研究の運用に関わる宇宙航空研究開発機構(Japan Aerospace Exploration Agency:JAXA)と各国宇宙機関,研究や書類作成でご支援をいただいているプロジェクトマネージャーの皆様に深く感謝して,巻頭の言葉としたい.
村谷匡史
筑波大学医学医療系ゲノム生物学研究室,同トランスボーダー医学研究センター
人類がふたたび月を目指すアルテミス計画や,民間企業による本格的な宇宙輸送の時代のはじまり,プロ宇宙飛行士が搭乗しないはじめての民間人による宇宙旅行など,今,宇宙開発と利用は新たなフェーズに入りつつある.さまざまなメディアでも紹介されるロケットなどハードウェアの開発とともに,地球の低軌道を離れた有人探査や宇宙産業の基礎となる,医学的な視点からの安全・快適の重要性も一般に認識されつつある.スペースシャトル時代から行われてきた宇宙医学研究は,宇宙で人体に起こるさまざまな変化に関して重要な知見をもたらしてきた.
近年,国際宇宙ステーション(International Space Station:ISS)での宇宙飛行士の長期滞在と実験機器の充実とともに,宇宙医学・生命科学研究は,宇宙飛行士やモデル生物を対象として宇宙環境応答の分子メカニズムを探る,より系統的な研究へと発展している.本特集では,人類の宇宙進出と,宇宙の環境要因としての重力と放射線,さらに日本の実験モジュール「きぼう」における宇宙実験の総論に続き,現在進められている各分野の研究について,プロジェクトを実施している研究者に紹介していただいた.とくに,地球の生命が進化上はじめて経験する微小重力環境でみせる振る舞いは,環境応答の生物学としても非常に興味深い.
「医学応用と今後の展望」の章では,宇宙研究成果を地上社会へ還元する取り組みと,超長期宇宙滞在の実現に向けた今後の課題について解説されている.ISSの運用に象徴される国際的な協力体制のなかで,これまでに築かれた科学的成果をもとに,今後,日本がどのように研究開発に取り組んでいくのかについても考える機会になればと思う.
最後に筆者一同を代表して,宇宙研究の運用に関わる宇宙航空研究開発機構(Japan Aerospace Exploration Agency:JAXA)と各国宇宙機関,研究や書類作成でご支援をいただいているプロジェクトマネージャーの皆様に深く感謝して,巻頭の言葉としたい.
はじめに(村谷匡史)
総論
1.人類の宇宙進出と生命科学の重要性─地球低軌道・月・火星有人飛行計画(古川 聡)
KeyWord 国際宇宙ステーション(ISS),月・火星有人飛行計画,民間主導での宇宙飛行,宇宙医学,宇宙生命科学
2.重力環境と生理機能(森田啓之)
KeyWord 微小重力,体液シフト,耳石前庭系,宇宙適応症候群,宇宙飛行関連神経眼症候群(SANS),前庭-交感神経反射
3.深宇宙での宇宙放射線リスク管理のための研究(橋昭久)
KeyWord 宇宙放射線,重力環境変化,複合影響,リスク管理
4.国際宇宙ステーションにおける生物を対象とした研究と実験環境(白川正輝)
KeyWord 国際宇宙ステーション(ISS),「きぼう」日本実験棟,宇宙実験,微小重力,人工重力
宇宙環境に関連した各研究対象と最新の知見
5.宇宙滞在によるマウス骨格筋の可塑的変化に着目した新規遺伝子の発見(林 卓杜・他)
KeyWord 微小重力,Nrf2,ヒラメ筋,筋萎縮,筋線維タイプ
6.重力ゲートウェイ反射をもとにした宇宙実験の実施(石井明日香・他)
KeyWord ゲートウェイ反射,IL-6アンプ,ヒラメ筋,MHU-4,微小重力
7.宇宙環境による免疫システムの擾乱(秋山泰身・他)
KeyWord 無重力,リンパ組織,免疫応答
8.感染防御のための宇宙生命科学研究:次世代の有人宇宙飛行に向けて(暮地本宙己)
KeyWord 有人宇宙飛行,微小重力,感染防御,日和見病原体,“One World,One Health”
9.有人宇宙探査と人工冬眠(櫻井 武)
KeyWord 人工冬眠,有人宇宙探査,QIH
10.宇宙居住環境における環境微生物(一條知昭)
KeyWord 宇宙居住環境,環境微生物,微生物モニタリング,ハイスループットシーケンス
11.宇宙におけるヒト臓器創出研究の最新動向(田所友美・谷口英樹)
KeyWord オルガノイド,ヒト人工多能性幹細胞(hiPSC),微小重力環境,宇宙実験,三次元培養,国際宇宙ステーション(ISS)
12.宇宙環境における生物リスク評価のためのDNA損傷検出デバイス(中村麻子・橋健太)
KeyWord DNA損傷,ヒストンH2AX,マイクロ流体デバイス,生物学的影響
13.宇宙に耐える極限生物から切り拓く新たな放射線ストレス防衛機構の解明(國枝武和)
KeyWord 放射線耐性,DNA防護,DNA修復,極限環境生物,クマムシ
14.宇宙生命科学研究におけるオミックス解析の標準化・自動化と国際連携(Lindsay Rutter・村谷匡史)
KeyWord サンプルシェア,微量検体解析,研究自動化・遠隔化,国際コンソーシアム
医学応用と今後の展望
15.宇宙マウス実験からヒト健康・長寿研究への還元を目指して(鈴木隆史・山本雅之)
KeyWord 宇宙ストレス,加齢,遺伝子改変マウス,NRF2
16.月・火星探査に向けた閉鎖空間に長期に滞在する宇宙飛行士のストレスマネジメント(道喜将太郎・松崎一葉)
KeyWord 宇宙飛行士,閉鎖環境,長期滞在,ストレスマネジメント
17.リキッドバイオプシー解析を介したモデル生物研究成果のヒトへの投射(村谷匡史)
KeyWord 細胞外小胞(EV),エクソソーム,細胞外DNA・RNA,ヒトゲノム解析
18.宇宙医学と地上医療のリンク─遠隔医療,ロボット支援腹腔鏡下手術,遠心人工重力(岩ア賢一)
KeyWord Spaceflight-associated neuro-ocular syndrome(SANS),遠隔医療,ロボット支援手術,高二酸化炭素,遠心人工重力
19.国際宇宙ステーションにおける日本人宇宙飛行士の健康管理と今後の課題(三丸敦洋)
KeyWord 国際宇宙ステーション(ISS),日本人宇宙飛行士,健康管理,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)
20.日本の有人宇宙開発と宇宙生物科学研究(二川 健)
KeyWord 国際宇宙ステーション計画(ISS計画),月軌道プラットフォームゲートウェイ,アルテミス計画
サイドメモ
国際宇宙ステーション(ISS)での長期滞在生活
微小重力
地上で重力を変える方法
国際宇宙ステーション(ISS)
微小重力
筋線維のタイプ
Gene ontology(GO)エンリッチメント解析
One World,One Health
リン酸化ヒストンH2AX(γ-H2AX)
乾眠(anhydrobiosis)
オミックス解析
生命科学の“共通言語”としての遺伝子名とオントロジー
リキッドバイオプシー解析
細胞外小胞(EV),エクソソーム
宇宙飛行士のSNSの活用
名称の表記方法
通信遅延時間
宇宙空間の特性
アームストロング・ライン(Armstrong Line)
総論
1.人類の宇宙進出と生命科学の重要性─地球低軌道・月・火星有人飛行計画(古川 聡)
KeyWord 国際宇宙ステーション(ISS),月・火星有人飛行計画,民間主導での宇宙飛行,宇宙医学,宇宙生命科学
2.重力環境と生理機能(森田啓之)
KeyWord 微小重力,体液シフト,耳石前庭系,宇宙適応症候群,宇宙飛行関連神経眼症候群(SANS),前庭-交感神経反射
3.深宇宙での宇宙放射線リスク管理のための研究(橋昭久)
KeyWord 宇宙放射線,重力環境変化,複合影響,リスク管理
4.国際宇宙ステーションにおける生物を対象とした研究と実験環境(白川正輝)
KeyWord 国際宇宙ステーション(ISS),「きぼう」日本実験棟,宇宙実験,微小重力,人工重力
宇宙環境に関連した各研究対象と最新の知見
5.宇宙滞在によるマウス骨格筋の可塑的変化に着目した新規遺伝子の発見(林 卓杜・他)
KeyWord 微小重力,Nrf2,ヒラメ筋,筋萎縮,筋線維タイプ
6.重力ゲートウェイ反射をもとにした宇宙実験の実施(石井明日香・他)
KeyWord ゲートウェイ反射,IL-6アンプ,ヒラメ筋,MHU-4,微小重力
7.宇宙環境による免疫システムの擾乱(秋山泰身・他)
KeyWord 無重力,リンパ組織,免疫応答
8.感染防御のための宇宙生命科学研究:次世代の有人宇宙飛行に向けて(暮地本宙己)
KeyWord 有人宇宙飛行,微小重力,感染防御,日和見病原体,“One World,One Health”
9.有人宇宙探査と人工冬眠(櫻井 武)
KeyWord 人工冬眠,有人宇宙探査,QIH
10.宇宙居住環境における環境微生物(一條知昭)
KeyWord 宇宙居住環境,環境微生物,微生物モニタリング,ハイスループットシーケンス
11.宇宙におけるヒト臓器創出研究の最新動向(田所友美・谷口英樹)
KeyWord オルガノイド,ヒト人工多能性幹細胞(hiPSC),微小重力環境,宇宙実験,三次元培養,国際宇宙ステーション(ISS)
12.宇宙環境における生物リスク評価のためのDNA損傷検出デバイス(中村麻子・橋健太)
KeyWord DNA損傷,ヒストンH2AX,マイクロ流体デバイス,生物学的影響
13.宇宙に耐える極限生物から切り拓く新たな放射線ストレス防衛機構の解明(國枝武和)
KeyWord 放射線耐性,DNA防護,DNA修復,極限環境生物,クマムシ
14.宇宙生命科学研究におけるオミックス解析の標準化・自動化と国際連携(Lindsay Rutter・村谷匡史)
KeyWord サンプルシェア,微量検体解析,研究自動化・遠隔化,国際コンソーシアム
医学応用と今後の展望
15.宇宙マウス実験からヒト健康・長寿研究への還元を目指して(鈴木隆史・山本雅之)
KeyWord 宇宙ストレス,加齢,遺伝子改変マウス,NRF2
16.月・火星探査に向けた閉鎖空間に長期に滞在する宇宙飛行士のストレスマネジメント(道喜将太郎・松崎一葉)
KeyWord 宇宙飛行士,閉鎖環境,長期滞在,ストレスマネジメント
17.リキッドバイオプシー解析を介したモデル生物研究成果のヒトへの投射(村谷匡史)
KeyWord 細胞外小胞(EV),エクソソーム,細胞外DNA・RNA,ヒトゲノム解析
18.宇宙医学と地上医療のリンク─遠隔医療,ロボット支援腹腔鏡下手術,遠心人工重力(岩ア賢一)
KeyWord Spaceflight-associated neuro-ocular syndrome(SANS),遠隔医療,ロボット支援手術,高二酸化炭素,遠心人工重力
19.国際宇宙ステーションにおける日本人宇宙飛行士の健康管理と今後の課題(三丸敦洋)
KeyWord 国際宇宙ステーション(ISS),日本人宇宙飛行士,健康管理,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)
20.日本の有人宇宙開発と宇宙生物科学研究(二川 健)
KeyWord 国際宇宙ステーション計画(ISS計画),月軌道プラットフォームゲートウェイ,アルテミス計画
サイドメモ
国際宇宙ステーション(ISS)での長期滞在生活
微小重力
地上で重力を変える方法
国際宇宙ステーション(ISS)
微小重力
筋線維のタイプ
Gene ontology(GO)エンリッチメント解析
One World,One Health
リン酸化ヒストンH2AX(γ-H2AX)
乾眠(anhydrobiosis)
オミックス解析
生命科学の“共通言語”としての遺伝子名とオントロジー
リキッドバイオプシー解析
細胞外小胞(EV),エクソソーム
宇宙飛行士のSNSの活用
名称の表記方法
通信遅延時間
宇宙空間の特性
アームストロング・ライン(Armstrong Line)