はじめに
武部貴則
東京医科歯科大学統合研究機構先端医歯工学創成研究部門,横浜市立大学先端医科学研究センターコミュニケーション・デザイン・センター,シンシナティ小児病院消化器部門・発生生物学部門・幹細胞オルガノイド医学研究センター,シンシナティ大学小児科,T-CiRA共同プログラム
近代医療の発達により多くの疾患が克服されたいま,超高齢化によって医療が扱うべき病のコンテキストは複雑化した.また提供されるヘルスケア手法も,一般消費財から高度医療に至るまで多様化を遂げており,ますます方法選択に対する困難と負荷が表面化している.
一方,ヒューマン・オルガノイド技術の勃興により,人間の代替システム(アバター)としてのミニ臓器を得ることが可能となりつつある.さらに,多層オミクス,ゲノム編集,イメージング,1細胞解析,人工知能(AI)などの革新技術を組み合わせることにより,正常から疾患に至るまでの工程,いわば,人間のライフコースをきわめて高い精度で,かつ連続的に追跡・操作・解析することが可能となった.
本特集では,これらの技術革新によってもたらされるであろう新たな医療の兆しを,“My Medicine”と仮に定義し,さまざまなオルガノイド技術を中心としたその利活用事例を議論したいと考え本特集を企画した.
My Medicine(マイ・メディシン)
個人ごとの素因に最適化された“系統的医療”を提供すること.
疾患に対する投薬最適化をスコープとする精密医療や個別化医療よりも広範な概念を指す.個人に固有の要因をもとにして,以下のような実装例があげられる.
1.Prevention/Diagnostics:精度の高い予測や診断情報を得ること
2.Therapeutics:安全・有効な介入手法を選抜すること
3.Regeneration:失われた自己機能を回復すること
進歩の著しいヒューマン・オルガノイド技術を核として,さまざまな疾患分野における個人レベルの理解が深まっていけば,患者のみならず,一般生活者にも恩恵をもたらす技術へと発展していくであろう.すなわち,生活者自身およびそれらを支える産業群から,製薬会社・医療従事者,ひいては再生医療への利活用など,さまざまな主体者にとっての新たな価値を生むものと予想できる.
これこそが,My Medicine(マイ・メディシン)の拓く未来である.
武部貴則
東京医科歯科大学統合研究機構先端医歯工学創成研究部門,横浜市立大学先端医科学研究センターコミュニケーション・デザイン・センター,シンシナティ小児病院消化器部門・発生生物学部門・幹細胞オルガノイド医学研究センター,シンシナティ大学小児科,T-CiRA共同プログラム
近代医療の発達により多くの疾患が克服されたいま,超高齢化によって医療が扱うべき病のコンテキストは複雑化した.また提供されるヘルスケア手法も,一般消費財から高度医療に至るまで多様化を遂げており,ますます方法選択に対する困難と負荷が表面化している.
一方,ヒューマン・オルガノイド技術の勃興により,人間の代替システム(アバター)としてのミニ臓器を得ることが可能となりつつある.さらに,多層オミクス,ゲノム編集,イメージング,1細胞解析,人工知能(AI)などの革新技術を組み合わせることにより,正常から疾患に至るまでの工程,いわば,人間のライフコースをきわめて高い精度で,かつ連続的に追跡・操作・解析することが可能となった.
本特集では,これらの技術革新によってもたらされるであろう新たな医療の兆しを,“My Medicine”と仮に定義し,さまざまなオルガノイド技術を中心としたその利活用事例を議論したいと考え本特集を企画した.
My Medicine(マイ・メディシン)
個人ごとの素因に最適化された“系統的医療”を提供すること.
疾患に対する投薬最適化をスコープとする精密医療や個別化医療よりも広範な概念を指す.個人に固有の要因をもとにして,以下のような実装例があげられる.
1.Prevention/Diagnostics:精度の高い予測や診断情報を得ること
2.Therapeutics:安全・有効な介入手法を選抜すること
3.Regeneration:失われた自己機能を回復すること
進歩の著しいヒューマン・オルガノイド技術を核として,さまざまな疾患分野における個人レベルの理解が深まっていけば,患者のみならず,一般生活者にも恩恵をもたらす技術へと発展していくであろう.すなわち,生活者自身およびそれらを支える産業群から,製薬会社・医療従事者,ひいては再生医療への利活用など,さまざまな主体者にとっての新たな価値を生むものと予想できる.
これこそが,My Medicine(マイ・メディシン)の拓く未来である.
はじめに(武部貴則)
基礎研究の観点から
1.マイ・メディシン実現に向けた中胚葉オルガノイド研究の最新動向(田中悦子・他)
KeyWord オルガノイド,中胚葉,発生,多能性幹細胞,分化誘導
2.ヒト内胚葉オルガノイド研究の最新動向(米山鷹介)
KeyWord ヒト多能性幹細胞,パターニング,多細胞,多臓器
感染症研究の観点から
3.ヒト腸管オルガノイドを用いた抗ウイルス創薬(片山和彦)
KeyWord ノロウイルス,腸管オルガノイド,複製増殖機構,抗ウイルス薬,消毒薬
4.胃オルガノイドによるマイ・メディシン(栗崎 晃・高田仁実)
KeyWord 胃,幹細胞,分化,ES細胞,メネトリエ病
5.気道・肺胞オルガノイドの開発と呼吸器感染症への応用(高山和雄)
KeyWord 気道オルガノイド,肺胞オルガノイド,新型コロナウイルス感染症(COVID-19),新型コロナウイルス(SARS-CoV-2),呼吸器感染症
癌研究の観点から
6.消化器オルガノイドによるマイ・メディシン(川ア健太・佐藤俊朗)
KeyWord オルガノイド,消化器幹細胞,希少癌,遺伝子編集,染色体編集
7.膵癌オルガノイドによる個別化医療の可能性と問題点(清野隆史)
KeyWord 膵癌オルガノイド,膵癌エコシステム,間質細胞,個別化医療
8.乳腺のオルガノイドによるマイ・メディシン─がん幹細胞研究の立場から(後藤典子)
KeyWord がん幹細胞,ニッチ,patient-derived xenograft(PDX),ニューロピリン(NP)1,インスリン様受容体1(IGF1R),MCM10
9.大腸オルガノイドをはじめとするオルガノイド培養系の抗がん剤スクリーニング系への応用(新家一男・加賀谷紀貴)
KeyWord 表現型スクリーニング,スフェロイド培養,がん幹細胞,間質反応,がん微小環境
10.肺癌オルガノイド研究の現状とこれからの展望(小川裕行・他)
KeyWord 肺癌オルガノイド,抗癌剤感受性予測,肺癌幹細胞,癌周囲微小環境
創薬研究の観点から
11.腸管オルガノイドによるマイ・メディシン(阿久津英憲)
KeyWord 腸管オルガノイド,多能性幹細胞,トランスポーター,CYP3A
12.脳オルガノイドによるマイ・メディシン(松島早希・他)
KeyWord 脳オルガノイド,神経変性疾患,自閉症,疾患モデル
13.ミニ肝臓技術を用いた薬剤性肝障害におけるマイ・メディシン(川上絵理・武部貴則)
KeyWord ミニ肝臓,iPS細胞,薬剤性肝障害(DILI),ポリジェニックリスクスコア(PRS)
14.創薬プラットフォームとしての腎臓オルガノイド研究の最新情報(能登理央・里 実)
KeyWord 腎臓オルガノイド,腎臓チューブロイド,薬剤性腎障害,常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)
移植再生研究の観点から
15.下垂体オルガノイドによるマイ・メディシン(須賀英隆・有馬 寛)
KeyWord 下垂体,視床下部,オルガノイド,再生医療,難病研究
16.腸オルガノイドによるマイ・メディシン─炎症性腸疾患に対する腸上皮幹細胞再生医療(水谷知裕・岡本隆一)
KeyWord 炎症性腸疾患(IBD),粘膜治癒,腸上皮幹細胞,オルガノイド,自家腸上皮オルガノイド移植
倫理上の課題
17.ヒトオルガノイド研究と社会との協働(八代嘉美)
KeyWord 道徳的地位,責任ある研究・イノベーション(RRI),患者市民参画(PPI)
サイドメモ
成長因子
胚葉体形成
内胚葉オルガノイドを創出するための幹細胞ソース
ヒトノロウイルス(HuNoV)と代替ウイルス
膵癌オルガノイドとニッチ因子
がん幹細胞ニッチ
表現型スクリーニング
癌オルガノイドの免疫不全マウス同所移植モデル
腸管オルガノイド
エピジェネティックなランドスケープ
ミニ肝臓とは
腎臓オルガノイドの作製方法と課題
チューブロイド(tubuloids)の作製方法と課題
SFEBq法
基礎研究の観点から
1.マイ・メディシン実現に向けた中胚葉オルガノイド研究の最新動向(田中悦子・他)
KeyWord オルガノイド,中胚葉,発生,多能性幹細胞,分化誘導
2.ヒト内胚葉オルガノイド研究の最新動向(米山鷹介)
KeyWord ヒト多能性幹細胞,パターニング,多細胞,多臓器
感染症研究の観点から
3.ヒト腸管オルガノイドを用いた抗ウイルス創薬(片山和彦)
KeyWord ノロウイルス,腸管オルガノイド,複製増殖機構,抗ウイルス薬,消毒薬
4.胃オルガノイドによるマイ・メディシン(栗崎 晃・高田仁実)
KeyWord 胃,幹細胞,分化,ES細胞,メネトリエ病
5.気道・肺胞オルガノイドの開発と呼吸器感染症への応用(高山和雄)
KeyWord 気道オルガノイド,肺胞オルガノイド,新型コロナウイルス感染症(COVID-19),新型コロナウイルス(SARS-CoV-2),呼吸器感染症
癌研究の観点から
6.消化器オルガノイドによるマイ・メディシン(川ア健太・佐藤俊朗)
KeyWord オルガノイド,消化器幹細胞,希少癌,遺伝子編集,染色体編集
7.膵癌オルガノイドによる個別化医療の可能性と問題点(清野隆史)
KeyWord 膵癌オルガノイド,膵癌エコシステム,間質細胞,個別化医療
8.乳腺のオルガノイドによるマイ・メディシン─がん幹細胞研究の立場から(後藤典子)
KeyWord がん幹細胞,ニッチ,patient-derived xenograft(PDX),ニューロピリン(NP)1,インスリン様受容体1(IGF1R),MCM10
9.大腸オルガノイドをはじめとするオルガノイド培養系の抗がん剤スクリーニング系への応用(新家一男・加賀谷紀貴)
KeyWord 表現型スクリーニング,スフェロイド培養,がん幹細胞,間質反応,がん微小環境
10.肺癌オルガノイド研究の現状とこれからの展望(小川裕行・他)
KeyWord 肺癌オルガノイド,抗癌剤感受性予測,肺癌幹細胞,癌周囲微小環境
創薬研究の観点から
11.腸管オルガノイドによるマイ・メディシン(阿久津英憲)
KeyWord 腸管オルガノイド,多能性幹細胞,トランスポーター,CYP3A
12.脳オルガノイドによるマイ・メディシン(松島早希・他)
KeyWord 脳オルガノイド,神経変性疾患,自閉症,疾患モデル
13.ミニ肝臓技術を用いた薬剤性肝障害におけるマイ・メディシン(川上絵理・武部貴則)
KeyWord ミニ肝臓,iPS細胞,薬剤性肝障害(DILI),ポリジェニックリスクスコア(PRS)
14.創薬プラットフォームとしての腎臓オルガノイド研究の最新情報(能登理央・里 実)
KeyWord 腎臓オルガノイド,腎臓チューブロイド,薬剤性腎障害,常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)
移植再生研究の観点から
15.下垂体オルガノイドによるマイ・メディシン(須賀英隆・有馬 寛)
KeyWord 下垂体,視床下部,オルガノイド,再生医療,難病研究
16.腸オルガノイドによるマイ・メディシン─炎症性腸疾患に対する腸上皮幹細胞再生医療(水谷知裕・岡本隆一)
KeyWord 炎症性腸疾患(IBD),粘膜治癒,腸上皮幹細胞,オルガノイド,自家腸上皮オルガノイド移植
倫理上の課題
17.ヒトオルガノイド研究と社会との協働(八代嘉美)
KeyWord 道徳的地位,責任ある研究・イノベーション(RRI),患者市民参画(PPI)
サイドメモ
成長因子
胚葉体形成
内胚葉オルガノイドを創出するための幹細胞ソース
ヒトノロウイルス(HuNoV)と代替ウイルス
膵癌オルガノイドとニッチ因子
がん幹細胞ニッチ
表現型スクリーニング
癌オルガノイドの免疫不全マウス同所移植モデル
腸管オルガノイド
エピジェネティックなランドスケープ
ミニ肝臓とは
腎臓オルガノイドの作製方法と課題
チューブロイド(tubuloids)の作製方法と課題
SFEBq法














