やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
 「医学のあゆみ」は1946年3月,戦後洋書が極めて入手困難であった時代に,米国の最新の医学情報を提供する雑誌として東大名誉教授・緒方富雄先生の発案により創刊された.その当時,世界の情報を渇望していた医学・医療関係者は,まさに貪るように本誌を読んだことであろう.それから68年,時代は変わって,インターネットにより巷に情報はあふれ,いつでもすぐに世界中の論文が自由に読める時代になった.このような現代において,「医学のあゆみ」の存在意義とは何であろうか,また今後どのように発展させていくべきであろうか,これは最近の編集委員会でよくでる話題である.しかしネットに情報があふれ,電子本が普及している現代においても,新聞や書籍と同様,医学雑誌にも存在意義があるはずである.
 医学・医療において,時には1日でも早く情報が必要となることもあるが,逆にじっくりと時間をかけて深く知りたいこともあろう.そのようななか,週刊という他にはあまり例のない形でタイムリーに情報を提供してきたのが,「医学のあゆみ」である.多くの医学雑誌が月刊であり,企画から出版まで1年以上を必要とすることも多いのに対し,本誌は比較的短い期間に出版できることから,その時話題になっているテーマについて,ホットなうちにまとまった情報を提供してきた.通常号では,ひとつのテーマの下,8本前後の論文を掲載し,タイムリーながらも,そのテーマを理解するのに必要かつ確実な情報を発信してきた.さらに大きなテーマについては,「第1土曜特集」「第5土曜特集」として,20〜50本ほどの論文を掲載し,網羅的に,かつ深く掘り下げたものを発刊してきた.本号は第1土曜特集にあたるが,通常号とあわせて,3,000号記念特集号である.医学雑誌として,70年近く,3,000号も続いているものは極めて稀であろう.キーワード特集の本号は,速報性と確実性を併せもつ,「医学のあゆみ」を象徴するような号となっており,医学・医療の現在を理解する格好の書といえよう.本号を手に,68年前,本誌が最初に刊行された時を思いつつ,将来の医学・医療について,考えるのもまた一興であろう.本号が,医学・医療の現在を認識し,将来を展望する一助にでもなれば,編集委員として望外の喜びである.今回,たいへん多くの編集・特集協力者,執筆者にご尽力いただいた.編集委員を代表して深謝申しあげたい.
 2014年4月*
 編集委員を代表して
 小室一成(東京大学大学院医学系研究科循環器内科学)

 *:本別冊は,週刊「医学のあゆみ」Vol.249 No.5(2014年5月3日発行)『創刊3000号記念医学・医療のいまがわかるキーワード2014』をもとに別冊として一部修正し再刊したものである.
 はじめに(小室一成)
生化学・分子生物学
 G蛋白質共役受容体(GPCR)(飯利太朗・槙田紀子)
 G蛋白質共役型受容体キナーゼ(GRK)(黒瀬 等)
 嗅覚受容体(松井 淳・東原和成)
 GSK-3β(笹栗俊之)
 サーチュイン(今井眞一郎)
 時計遺伝子(土居雅夫・岡村 均)
 ユビキチン(田中啓二)
 オートファジー(渋谷周作・吉森 保)
 小胞体ストレス(浦野文彦)
 バイオイメージング(松田道行)
 メタボローム(メタボロミクス)(平山明由・曽我朋義)
遺伝・ゲノム・DNA・RNA
 ゲノムワイド関連解析(GWAS)(鎌谷直之)
 次世代シークエンサー(鈴木絢子・鈴木 穣)
 エキソームシーケンス(深井綾子・松本直通)
 全ゲノムシークエンス(藤本明洋)
 1000人ゲノムプロジェクト(人見祐基・徳永勝士)
 ヒト常在菌叢のメタゲノム解析(服部正平)
 エピゲノム解析法(油谷浩幸)
 エピジェネティクス(牛島俊和)
 マイクロRNA(富永直臣・落谷孝広)
 RNA干渉(RNAi)(北條浩彦)
 遺伝子診断(検査)(福嶋義光)
免疫
 ヘルパーT細胞分画(Th/Th/Th/Th/pTreg/Tfh)(中山俊憲)
 制御性T細胞(三上統久・坂口志文)
 自然免疫(佐藤 荘・審良静男)
 セマフォリン(熊ノ郷 淳)
 粘膜免疫(畔上達彦・清野 宏)
 骨免疫学(高場啓之・高柳 広)
 ヒト化マウス(石川文彦)
薬理・創薬
 ファーマコゲノミクス(莚田泰誠)
 分子標的療法(直江知樹)
 生物学的製剤(田中良哉)
 ナノ医療(位啓史・片岡一則)
再生医学
 ES細胞(阿久津英憲・梅澤明弘)
 iPS細胞(吉田善紀・山中伸弥)
 間葉系幹細胞(梅澤明弘)
 心筋再生治療(澤 芳樹)
 動物利用ヒト臓器作成(山口智之・中内啓光)
 再生医療安全性新法(浅野武夫)
循環器内科
 NOAC(山下武志)
 薬剤溶出性ステント(岡山慶太・南都伸介)
 カテーテルアブレーション(町野 毅・青沼和隆)
 腎動脈内アブレーション(奥山裕司)
 睡眠呼吸障害(山田容子・百村伸一)
 肺高血圧症(中西宣文)
 成人先天性心疾患(丹羽公一郎)
呼吸器・感染症内科
 気腫合併肺線維症(CPFE)(海老名雅仁)
 新型インフルエンザ(菅谷憲夫)
消化器内科
 カプセル内視鏡,ダブルバルーン内視鏡(井野裕治・山本博徳)
 胃食道逆流症(GERD)(木下芳一)
 ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)(大谷友彦・他)
 プロバイオティクス/プレバイオティクス(辨野義己)
 NAFLD/NASH(竹井謙之)
 核酸アナログ耐性株(考藤達哉・溝上雅史)
 IL28B SNPとC型肝炎治療反応性(松浦健太郎・田中靖人)
 直接作用型抗ウイルス剤(DAAs)(林 紀夫)
腎臓内科
 FGF23(骨分泌性線維芽細胞増殖因子)(塩崎雄治・宮本賢一)
 バゾプレシン受容体拮抗薬(Vaptan系薬)(柏原直樹)
 急性腎障害(AKI)(土井研人)
 腎性貧血(正路久美・南学正臣)
 糖尿病性腎症(和田隆志)
 腎疾患ガイドラインの国際化(松尾清一・他)
神経内科
 MIBG心筋シンチグラフィ(織茂智之)
 フィンゴリモド(渡邉 充・吉良潤一)
 HDLS(他田正義・池内 健)
 脳小血管病(小野寺 理)
 抗アクアポリン4抗体陽性視神経脊髄炎(中島一郎)
 FUS/TLS(紀 嘉浩・貫名信行)
 TDP-43(長谷川成人)
内分泌・代謝・糖尿病
 アディポネクチン(山内敏正)
 脂質メディエーター(新井洋由)
 白色脂肪細胞/褐色脂肪細胞(佐伯久美子)
 インクレチン/インクレチン関連薬(稲垣暢也)
 メタボリックシンドローム(原充佳・下村伊一郎)
 KCNJ5遺伝子変異(西川哲男)
 抗RANKL抗体(竹田 秀)
 TKIによる甲状腺機能障害(槙田紀子・飯利太朗)
癌・腫瘍
 がん幹細胞(赤司浩一)
 末梢循環腫瘍細胞(畠 清彦)
 ALK(間野博行)
 KRAS/抗EGFR抗体(橋本裕輔・他)
 mTOR(猪木 健)
 抗VEGF療法(癌治療)(深堀 理・山田康秀)
 コンパニオン診断薬(登 勉)
 HPVワクチン(今野 良)
 がん免疫療法(河上 裕)
 重粒子線治療(小藤昌志・鎌田 正)
自己免疫疾患・膠原病・リウマチ
 IgG4関連疾患(梅原久範)
 Treat-to-target/Window of opportunity(宮坂信之)
神経精神医学
 DSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル)(大野 裕)
 新型うつ病(野村総一郎)
 統合失調症スペクトラム障害(越山太輔・笠井清登)
 発達障害/自閉症(岡澤 均)
 子ども虐待防止対策(奥山眞紀子)
成育(産科・小児科)・加齢
 無侵襲的出生前遺伝学的検査(NIPT)(左合治彦)
 オンコファーティリティー(杉下陽堂・鈴木 直)
 ライソゾーム病の酵素補充療法(衞藤義勝)
 サルコペニア(小川純人・秋下雅弘)
 ロコモティブシンドローム(原田 敦)
外科・移植
 ステントグラフト(宿澤孝太・他)
 GIST(消化管間質腫瘍)(西田俊朗)
 NOTES(経管腔的内視鏡手術)(白下英史・北野正剛)
 脳脊髄液減少症/低髄液圧症候群(佐藤慎哉・嘉山孝正)
 乳房オンコプラスティックサージャリー(園尾博司)
 ロボット支援手術“ダ・ヴィンチ”(井坂惠一)
 ブレイン・マシン・インターフェース(BMI)(平田雅之・吉峰俊樹)
 補助人工心臓(許 俊鋭)
 小児臓器移植(笠原群生)
皮膚・感覚器(眼科・耳鼻咽喉)
 薬剤性過敏症症候群(塩原哲夫)
 抗VEGF療法(眼科)(森 隆三郎)
 好酸球性副鼻腔炎(春名眞一)
 人工内耳(残存聴力活用型)(岩崎 聡・吉村豪兼)
救急・集中治療
 JRC(日本版)ガイドライン2010(坂本哲也)
 地域災害医療コーディネーター(石井 正)
 Surviving Sepsis Campaign guidelines(重症敗血症ガイドライン)(織田成人)
輸血・麻酔
 代用血漿剤(宮尾秀樹)
 患者中心の輸血医療(PBM)(紀野修一)
 骨髄由来ミクログリアと慢性疼痛(澤田敦史)
 脊髄刺激療法(新谷知久)
その他
 原子力災害の健康影響(長瀧重信)
 ロボットスーツ“HAL-HN01(医療用HAL)”(中島 孝)
 オートプシーイメージング(岩瀬博太郎・槇野陽介)
 性差医学(天野惠子)
 食品安全委員会(熊谷 進)
 生物統計学(大橋靖雄)
 医師主導型臨床試験(山本晴子)
 臨床研究と倫理(松井健志)
 バイオインフォマティクス(高木利久)

 索引