はじめに
岡本美孝
千葉大学大学院医学研究院耳鼻咽喉科・頭頸部腫瘍学
アレルギー性鼻炎,なかでもわが国特有の国民病ともいえるスギ花粉症患者の増加が大きな問題となっている.しかも若い成人の疾患と考えられていたが,現在では小児から中・高年層まで広く発症者の増加がみられている.アレルギー性鼻炎は死に至る疾患ではないが,患者数の著しい増加,QOL障害が強いこと,社会的・経済的負担の大きさなど問題は多い.
2005年2月に内閣府の主催で文部科学省,厚生労働省,環境省,農林水産省,林野庁,気象庁の関連省庁の局長や担当者が集まって花粉症対策検討会が開かれ,花粉ワクチンの開発,免疫療法の改善と普及,花粉飛散情報・予報の構築,花粉米の開発,無花粉スギの普及など,各省庁の取組みの報告と省庁間の連携が確認された.また,厚生労働省は増加するアレルギー疾患に対応して今後のアレルギー対策指針の検討を進め,先日発表した.このなかでは自己管理可能な疾患となることをめざし,国と地方公共団体との役割分担と連携を促進することを基本に,具体的なアレルギー対策の重点目標を示している.
花粉症についてはとくに,舌下免疫療法(減感作療法)など根本治療の開発促進が重点項目としてあげられている.これまでアレルギー研究に関してはともすると,基礎研究は世界的レベルで行われているが臨床研究は遅れているといった指摘がされている.アレルギー性鼻炎においても疫学,治療のEBM評価など,患者と正面から向きあう検討の促進,さらにトランスレーショナル研究の発展が急がれよう.
本特集号では,アレルギー性鼻炎を中心とした上気道のアレルギー疾患の現在の先端研究のなかで,とくに臨床を見すえた基礎研究,また臨床研究のup-to-dateに各分野で研鑽を積む先生方に解説していただいた.本特集号が上気道アレルギー疾患の研究の向上と臨床への還元にすこしでもつながる可能性を信じたい.
岡本美孝
千葉大学大学院医学研究院耳鼻咽喉科・頭頸部腫瘍学
アレルギー性鼻炎,なかでもわが国特有の国民病ともいえるスギ花粉症患者の増加が大きな問題となっている.しかも若い成人の疾患と考えられていたが,現在では小児から中・高年層まで広く発症者の増加がみられている.アレルギー性鼻炎は死に至る疾患ではないが,患者数の著しい増加,QOL障害が強いこと,社会的・経済的負担の大きさなど問題は多い.
2005年2月に内閣府の主催で文部科学省,厚生労働省,環境省,農林水産省,林野庁,気象庁の関連省庁の局長や担当者が集まって花粉症対策検討会が開かれ,花粉ワクチンの開発,免疫療法の改善と普及,花粉飛散情報・予報の構築,花粉米の開発,無花粉スギの普及など,各省庁の取組みの報告と省庁間の連携が確認された.また,厚生労働省は増加するアレルギー疾患に対応して今後のアレルギー対策指針の検討を進め,先日発表した.このなかでは自己管理可能な疾患となることをめざし,国と地方公共団体との役割分担と連携を促進することを基本に,具体的なアレルギー対策の重点目標を示している.
花粉症についてはとくに,舌下免疫療法(減感作療法)など根本治療の開発促進が重点項目としてあげられている.これまでアレルギー研究に関してはともすると,基礎研究は世界的レベルで行われているが臨床研究は遅れているといった指摘がされている.アレルギー性鼻炎においても疫学,治療のEBM評価など,患者と正面から向きあう検討の促進,さらにトランスレーショナル研究の発展が急がれよう.
本特集号では,アレルギー性鼻炎を中心とした上気道のアレルギー疾患の現在の先端研究のなかで,とくに臨床を見すえた基礎研究,また臨床研究のup-to-dateに各分野で研鑽を積む先生方に解説していただいた.本特集号が上気道アレルギー疾患の研究の向上と臨床への還元にすこしでもつながる可能性を信じたい.
はじめに(岡本美孝)
第1章 疫学・基礎研究up-to-date
1.アレルギー性鼻炎の疫学―2005年の調査から(岡本美孝)
・アレルギー性鼻炎の疫学調査の注意点・問題点
・小児の調査から
・成人での調査から
・スギ花粉飛散数の影響
・おわりに
2.メモリーTh2細胞のTh2サイトカイン産生維持メカニズム―Th2サイトカイン遺伝子座における転写記憶(山下政克・中山俊憲)
・Th2サイトカイン遺伝子座のクロマチンリモデリングの誘導
・Th2細胞分化とヒストンアセチル化
・RNAポリメラーゼ・ヒストンメチル化を介したTh2サイトカイン産生能の維持機構
・おわりに
3.アレルギー性鼻炎と遺伝(松下 祥)
・アレルギーの遺伝学
・スギ花粉症の遺伝様式
・HLAは免疫応答の“質”を支配できるか?―HLAの機能的多様性
・“素因”の複雑さ
・多因子疾患における責任遺伝子同定のための戦略
4.アレルギー炎症と好酸球up-to-date(本田耕平)
・好酸球のアレルギー反応での役割
・好酸球とサイトカインおよびケモカインレセプター
・好酸球と脂質メディエーター
・自然免疫と好酸球
・おわりに
5.アレルギー炎症のコンダクターとしてのマスト細胞(肥満細胞)(羅 智靖)
・IgE-FcεRIマスト細胞パラダイム
・アレルギー反応の鍵を握る高親和性レセプター(FcεRI)の構造と機能
・マスト細胞感受性のfine tuning―FcεRIβ鎖はシグナルレギュレーターとしてdual functional(双方向性)に働く
・マスト細胞の多彩な役割
・おわりに
6.アレルギー性鼻炎とT細胞up-to-date(堀口茂俊)
・鼻アレルギー炎症のエフェクター細胞としてのT細胞
・鼻アレルギー炎症の特異的T細胞
・メモリーT細胞による免疫記憶
・抗原特異的減感作治療による免疫記憶の修飾
・おわりに
7.線維芽細胞up-to-date―どのようにアレルギーと関連するのか(藤枝重治)
・ケモカイン・サイトカインを産生する線維芽細胞
・その他の因子と線維芽細胞
・末梢単核球と線維芽細胞
・肥満細胞と線維芽細胞の関係
・細胞外マトリックス(ECM)と線維芽細胞
・鼻粘膜における線維芽細胞の種類
・脂質メディエーターと線維芽細胞
・線維芽細胞の細胞内シグナル伝達
・おわりに
第2章 治療up-to-date
8.抗IgE抗体療法―基礎から臨床まで(大久保公裕)
・抗IgE抗体療法の機序
・抗IgE抗体療法の効果
9.免疫制御リポソームによる根本的治療(石井保之)
・背景
・免疫制御リポソームの作製
・免疫制御リポソームのin vitro活性
・免疫制御リポソームのin vivo作用
・おわりに
10.スギ花粉症におけるDNA免疫療法(阪口雅弘)
・DNA免疫療法
・スギ花粉症のための遺伝子免疫療法
・T細胞エピトープ遺伝子を組み込んだ遺伝子免疫療法
・CpGを用いたアジュバント免疫療法
・おわりに
11.免疫療法―新しい知見(岡野光博)
・WHO見解書
・作用機序
・QOLへの効果
・自然経過(natural course)に対する修飾作用
・安全性
・将来の免疫療法
・おわりに
第3章 関連疾患up-to-date
12.上気道感染とアレルギー性鼻炎(國井直樹・留守卓也)
・感染と気道アレルギーの感作,発症
・アレルギー性鼻炎発症後の影響
・扁桃摘出のアレルギー性鼻炎への影響
・おわりに
13.口腔アレルギー症候群up-to-date(桐野実緒・猪又直子・池澤善郎)
・OASとは
・クラス1・2食物アレルギー
・OASと花粉症との関連
・花粉症に関連したpollen-food allergy syndromeにおいて交差反応性を示すアレルゲン
・Latex-fruit syndrome
・OASの診断・治療
・おわりに
14.好酸球性中耳炎(寺田修久・笹村佳美)
・好酸球性中耳炎の病態
・治療
・おわりに
15.好酸球性副鼻腔炎(石戸谷淳一)
・慢性副鼻腔炎の多様性と分類
・好酸球性副鼻腔炎の臨床的特徴と診断
・好酸球性副鼻腔炎の治療
・好酸球性副鼻腔炎の炎症病態
・好酸球性副鼻腔炎の病因
・おわりに
16.One airway one disease(下条直樹)
・気管支喘息と鼻炎の関連に関する因子
・アトピー型・非アトピー型喘息と鼻炎との関係
・アレルゲン感作とアレルギー性鼻炎・喘息の関連
・アレルギー性鼻炎と喘息増悪の関連
・アレルギー性鼻炎患者を対象とする喘息発症の予防
・おわりに
17.上気道アレルギーと咳―喉頭アレルギー/アレルギー性鼻副鼻腔炎(内藤健晴)
・喉頭アレルギーの咳嗽
・後鼻漏による咳嗽
第4章 その他・TOPICS
18.花粉情報サービス(古保静男)
・花粉情報サービスとは?
・花粉センサ
・花粉飛散シミュレーション
・まとめ
・サイドメモ目次
Intergenic転写
ヒトFcεRIβ鎖遺伝子発現制御機構
アレルギー性鼻炎において健常人とはなにか
免疫療法(減感作療法)
免疫寛容誘導性樹状細胞
遺伝子免疫療法(DNAワクチン)
アレルゲンの命名法
動物におけるスギ花粉症
インバリアント(Ii)鎖の利用
制御性T細胞
IL-10
慢性副鼻腔炎
喉頭アレルギー多施設共同研究班
アレルギー性副鼻腔炎
第1章 疫学・基礎研究up-to-date
1.アレルギー性鼻炎の疫学―2005年の調査から(岡本美孝)
・アレルギー性鼻炎の疫学調査の注意点・問題点
・小児の調査から
・成人での調査から
・スギ花粉飛散数の影響
・おわりに
2.メモリーTh2細胞のTh2サイトカイン産生維持メカニズム―Th2サイトカイン遺伝子座における転写記憶(山下政克・中山俊憲)
・Th2サイトカイン遺伝子座のクロマチンリモデリングの誘導
・Th2細胞分化とヒストンアセチル化
・RNAポリメラーゼ・ヒストンメチル化を介したTh2サイトカイン産生能の維持機構
・おわりに
3.アレルギー性鼻炎と遺伝(松下 祥)
・アレルギーの遺伝学
・スギ花粉症の遺伝様式
・HLAは免疫応答の“質”を支配できるか?―HLAの機能的多様性
・“素因”の複雑さ
・多因子疾患における責任遺伝子同定のための戦略
4.アレルギー炎症と好酸球up-to-date(本田耕平)
・好酸球のアレルギー反応での役割
・好酸球とサイトカインおよびケモカインレセプター
・好酸球と脂質メディエーター
・自然免疫と好酸球
・おわりに
5.アレルギー炎症のコンダクターとしてのマスト細胞(肥満細胞)(羅 智靖)
・IgE-FcεRIマスト細胞パラダイム
・アレルギー反応の鍵を握る高親和性レセプター(FcεRI)の構造と機能
・マスト細胞感受性のfine tuning―FcεRIβ鎖はシグナルレギュレーターとしてdual functional(双方向性)に働く
・マスト細胞の多彩な役割
・おわりに
6.アレルギー性鼻炎とT細胞up-to-date(堀口茂俊)
・鼻アレルギー炎症のエフェクター細胞としてのT細胞
・鼻アレルギー炎症の特異的T細胞
・メモリーT細胞による免疫記憶
・抗原特異的減感作治療による免疫記憶の修飾
・おわりに
7.線維芽細胞up-to-date―どのようにアレルギーと関連するのか(藤枝重治)
・ケモカイン・サイトカインを産生する線維芽細胞
・その他の因子と線維芽細胞
・末梢単核球と線維芽細胞
・肥満細胞と線維芽細胞の関係
・細胞外マトリックス(ECM)と線維芽細胞
・鼻粘膜における線維芽細胞の種類
・脂質メディエーターと線維芽細胞
・線維芽細胞の細胞内シグナル伝達
・おわりに
第2章 治療up-to-date
8.抗IgE抗体療法―基礎から臨床まで(大久保公裕)
・抗IgE抗体療法の機序
・抗IgE抗体療法の効果
9.免疫制御リポソームによる根本的治療(石井保之)
・背景
・免疫制御リポソームの作製
・免疫制御リポソームのin vitro活性
・免疫制御リポソームのin vivo作用
・おわりに
10.スギ花粉症におけるDNA免疫療法(阪口雅弘)
・DNA免疫療法
・スギ花粉症のための遺伝子免疫療法
・T細胞エピトープ遺伝子を組み込んだ遺伝子免疫療法
・CpGを用いたアジュバント免疫療法
・おわりに
11.免疫療法―新しい知見(岡野光博)
・WHO見解書
・作用機序
・QOLへの効果
・自然経過(natural course)に対する修飾作用
・安全性
・将来の免疫療法
・おわりに
第3章 関連疾患up-to-date
12.上気道感染とアレルギー性鼻炎(國井直樹・留守卓也)
・感染と気道アレルギーの感作,発症
・アレルギー性鼻炎発症後の影響
・扁桃摘出のアレルギー性鼻炎への影響
・おわりに
13.口腔アレルギー症候群up-to-date(桐野実緒・猪又直子・池澤善郎)
・OASとは
・クラス1・2食物アレルギー
・OASと花粉症との関連
・花粉症に関連したpollen-food allergy syndromeにおいて交差反応性を示すアレルゲン
・Latex-fruit syndrome
・OASの診断・治療
・おわりに
14.好酸球性中耳炎(寺田修久・笹村佳美)
・好酸球性中耳炎の病態
・治療
・おわりに
15.好酸球性副鼻腔炎(石戸谷淳一)
・慢性副鼻腔炎の多様性と分類
・好酸球性副鼻腔炎の臨床的特徴と診断
・好酸球性副鼻腔炎の治療
・好酸球性副鼻腔炎の炎症病態
・好酸球性副鼻腔炎の病因
・おわりに
16.One airway one disease(下条直樹)
・気管支喘息と鼻炎の関連に関する因子
・アトピー型・非アトピー型喘息と鼻炎との関係
・アレルゲン感作とアレルギー性鼻炎・喘息の関連
・アレルギー性鼻炎と喘息増悪の関連
・アレルギー性鼻炎患者を対象とする喘息発症の予防
・おわりに
17.上気道アレルギーと咳―喉頭アレルギー/アレルギー性鼻副鼻腔炎(内藤健晴)
・喉頭アレルギーの咳嗽
・後鼻漏による咳嗽
第4章 その他・TOPICS
18.花粉情報サービス(古保静男)
・花粉情報サービスとは?
・花粉センサ
・花粉飛散シミュレーション
・まとめ
・サイドメモ目次
Intergenic転写
ヒトFcεRIβ鎖遺伝子発現制御機構
アレルギー性鼻炎において健常人とはなにか
免疫療法(減感作療法)
免疫寛容誘導性樹状細胞
遺伝子免疫療法(DNAワクチン)
アレルゲンの命名法
動物におけるスギ花粉症
インバリアント(Ii)鎖の利用
制御性T細胞
IL-10
慢性副鼻腔炎
喉頭アレルギー多施設共同研究班
アレルギー性副鼻腔炎








