▲はじめに―Wormy worldの克服をめざして
▲Introduction―Combat against the wormy world
▲多田 功(九州大学名誉教授)
▲Isao TADA
朝とはいえすでに熱帯らしく暑いナンディ空港(フィジー)から,私は小さなプロペラ機に乗り換えて首都スバへ向かった.島を南下する30分間はまるで60年前に軍用機で旅しているレトロ感覚であった.世界保健機構(WHO)が2000年から世界規模ではじめたリンパ系フィラリア症根絶計画の一環で南太平洋海域に展開しているプロジェクト(PacELF)の評価会議のためである.スバ空港から乗ったタクシーの運転手にフィラリア症根絶キャンペーンを知っているかと聞くとよく知っているという.「脚が肥大する病気で……」と話しはじめた.さらに,「地球温暖化のために最近天候が変わって……」とまくしたてた.この問題が南太平洋の島嶼国家群に深刻なおそれを抱かせていることを改めて実感した.現在南太平洋の広大な海域に散開している島嶼国家群のうち22カ国が毎年集団治療を行っている.WHOが世界的に推進しているこのプロジェクトは2000年の春,スペインのサンチアゴ・デ・コンポステーラで発足記念会が行われた.カトリック巡礼の聖地として知られる古都郊外にあるホテルでの式は,ブルントラント WHO総長とスペイン人である担当局長のあいさつ(ただし前者はビデオで),市長のあいさつと延々と続き盛大であった.このプロジェクトの思想として“貧困との戦い”が掲げられていたのが印象的だった(図 1).慢性疾患はしばしば貧困とともにある.会場には巨大な下肢象皮病の患者がひとり招待されていて彼女のプロジェクトへの期待発言は参加者に強い印象を与えた.
半世紀ほど以前,Stollがアメリカ寄生虫学会(1946)で会長講演をした.その題が長く膾炙するに至った“This wormy world“である.問題提起から半世紀の間 Worm感染率にはさほど変わりはなかった(表 1)が,最近国際機関を中心に寄生虫対策が積極的に進められはじめた.それは単に“病害対策”というだけでなく“貧困”の克服であるからだ.たとえば,回虫1個体は 218(小)カロリーを消費する.表に示したように14億人がかりに10個体の回虫を腸内にもっていれば,1 日当りに失われる総エネルギーは米に換算して約870トンである(Von Brandtの記載に基づき東京大学・北教授の試算).アフリカからインドにかけて分布していたメジナ虫防圧はもっとも成功した例であろう.乾燥地帯の池などを媒体にみられた感染は水の濾過あるいは煮沸と衛生教育でスーダンを除きほぼ根絶している.アフリカと中南米でのオンコセルカ症防圧(OCP,1974〜)も成果をあげている.それを記念して数年前に WHO本部の前庭に盲目の老人を子供が杖を引いて連れ立っている銅像が建立された(図 2).失明という致命的な疾患を駆追する事業はいまや住民主導型の展開をみている.土壌伝搬性寄生虫についてはとくに学童をメインのターゲットにして対策を展開しようとしている.
他方,原虫病に対してはなかなか対策が進んでいない.マラリアを巨大ターゲットにした“roll back malaria(1998)“(マラリア巻き返し作戦)は2010年までにマラリア罹患率を半分にという目標を掲げてきた.しかし,積極的な戦いはまだで,実用的なワクチンが待たれる.トリパノソーマ症はいぜんとして手ごわい.たしかにシャーガス病はブラジル,アルゼンチン,チリでは防圧効果をあげている.しかし他の諸国ではそうでない.都市での輸血や先天感染が大きな問題である.リーシュマニア症はラテンアメリカを覆い,中東から地中海に展開している.AIDSとの関連で大きな問題である.文明間戦争の狭間で,あるいは SARSなどあらたなウイルス性疾患の出現によって慢性に進行する寄生虫病対策はなおざりにされがちである.今回の連載“現代寄生虫病事情”では個々の寄生虫病についての現状をやさしくご紹介したい.
他方,寄生のメカニズムのユニークさが最近いろいろと解明されるに至っている.ある種の生物が他の種に接近,進入し,そのなかで生き続けることは簡単ではない.そこには宿主生物と寄生虫とのせめぎ合いや妥協などさまざまな形の関係が形成されている.そのような事例についてもいくつかをご紹介したい.
冒頭に半世紀前の Stollを引用したので,終りにこれも古い Chandler(1946)の言葉を引用したい.彼は第20回アメリカ寄生虫学会の会長講演“寄生虫学者をつくる“で寄生虫学者を“蘭”にたとえて励ましている.蘭は熱帯性の寄生植物で,他の植物から栄養を取りゆっくりと発育し,香ばしく美しい花を咲かせる.同様に寄生虫学者も他領域の技術を導入しながら発育していく.その進歩は遅い.しかし,ひとたび“蘭“のように花を咲かせることができれば,それはけっして他領域の成果に劣るものではない.蘭のような“香り”まではともかく,寄生虫学の進歩のために頑張ろうという趣旨であった.21 世紀初頭はその成果のみられる時期であろう.
寄生虫病の伝播は地球環境依存的であるという特徴がある.フィジーなど島嶼に住む人びとが心配する温暖化に象徴されるように森林伐採や,オゾン層の消失,化学物質の散布など恐ろしい環境変化に人類は直面している.そのような現代に,このシリーズを通して寄生虫の問題をもう一度考えていただきたい.
▲文献
▲1)Chandler,A. C.:The making of a parasitologist.J.Parasitol.,32:213-221,1946.
▲
2)Crompton,D. W. T.:How much human helminthiasis is there in the world? J.Parasitol.,85(3):397-403,1999.
▲
3)Epstein,P. R.:Is global warming harmful to health? Sci.Amer.,283(2):50-57,2000.
▲
4)WHO:Control and surveillance of African trypanosomidsis.Tech.Rep.Ser.No.881,1998.
▲5)WHO:Global fund to fight AIDS,tuberculosis and malaria.Fifty-fifth World Health Assembly.Provisional Agenda 13.4,2002.
▲
6)WHO:http://www.who.int/emc/diseases
▲図1 WHOのフィラリア症根絶計画の説明書の表紙
引用された平安時代女性患者の両下肢の象皮病が特徴的である.
▲表1 主な寄生虫の地球規模での感染率2,4-6)
▲寄生虫
▲土壌伝播寄生虫
▲フィラリア
▲住血吸虫
▲マラリア
▲トリパノソーマ
▲リーシュマニア
▲感染者数と状況
▲回虫:14 億 7,200 万人,鉤虫:12 億 9,800 万人
▲鞭虫:10 億 4,900 万人
▲リンパ系フィラリア:1 億 2,000 万人,オンコセルカ:1,800 万人
▲
2 億人
▲
3〜5 億人が毎年罹患(マラリア死の 90%はサハラ以南のアフリカ,
▲毎日 3,000 人の児童,とくに5歳以下が死亡)
▲睡眠病:毎年30万人の新患がサハラ以南に発症
▲シャーガス病:1,300 万人の感染者(中南米15カ国),毎年新患20万人発症
▲
1,200 万人(内蔵型は毎年50万人,皮膚型は毎年 100〜150 万人発症)
▲図2 WHO本部前のオンコセルカ盲目者の像
▲(OCPの成果を記念して)
▲Introduction―Combat against the wormy world
▲多田 功(九州大学名誉教授)
▲Isao TADA
朝とはいえすでに熱帯らしく暑いナンディ空港(フィジー)から,私は小さなプロペラ機に乗り換えて首都スバへ向かった.島を南下する30分間はまるで60年前に軍用機で旅しているレトロ感覚であった.世界保健機構(WHO)が2000年から世界規模ではじめたリンパ系フィラリア症根絶計画の一環で南太平洋海域に展開しているプロジェクト(PacELF)の評価会議のためである.スバ空港から乗ったタクシーの運転手にフィラリア症根絶キャンペーンを知っているかと聞くとよく知っているという.「脚が肥大する病気で……」と話しはじめた.さらに,「地球温暖化のために最近天候が変わって……」とまくしたてた.この問題が南太平洋の島嶼国家群に深刻なおそれを抱かせていることを改めて実感した.現在南太平洋の広大な海域に散開している島嶼国家群のうち22カ国が毎年集団治療を行っている.WHOが世界的に推進しているこのプロジェクトは2000年の春,スペインのサンチアゴ・デ・コンポステーラで発足記念会が行われた.カトリック巡礼の聖地として知られる古都郊外にあるホテルでの式は,ブルントラント WHO総長とスペイン人である担当局長のあいさつ(ただし前者はビデオで),市長のあいさつと延々と続き盛大であった.このプロジェクトの思想として“貧困との戦い”が掲げられていたのが印象的だった(図 1).慢性疾患はしばしば貧困とともにある.会場には巨大な下肢象皮病の患者がひとり招待されていて彼女のプロジェクトへの期待発言は参加者に強い印象を与えた.
半世紀ほど以前,Stollがアメリカ寄生虫学会(1946)で会長講演をした.その題が長く膾炙するに至った“This wormy world“である.問題提起から半世紀の間 Worm感染率にはさほど変わりはなかった(表 1)が,最近国際機関を中心に寄生虫対策が積極的に進められはじめた.それは単に“病害対策”というだけでなく“貧困”の克服であるからだ.たとえば,回虫1個体は 218(小)カロリーを消費する.表に示したように14億人がかりに10個体の回虫を腸内にもっていれば,1 日当りに失われる総エネルギーは米に換算して約870トンである(Von Brandtの記載に基づき東京大学・北教授の試算).アフリカからインドにかけて分布していたメジナ虫防圧はもっとも成功した例であろう.乾燥地帯の池などを媒体にみられた感染は水の濾過あるいは煮沸と衛生教育でスーダンを除きほぼ根絶している.アフリカと中南米でのオンコセルカ症防圧(OCP,1974〜)も成果をあげている.それを記念して数年前に WHO本部の前庭に盲目の老人を子供が杖を引いて連れ立っている銅像が建立された(図 2).失明という致命的な疾患を駆追する事業はいまや住民主導型の展開をみている.土壌伝搬性寄生虫についてはとくに学童をメインのターゲットにして対策を展開しようとしている.
他方,原虫病に対してはなかなか対策が進んでいない.マラリアを巨大ターゲットにした“roll back malaria(1998)“(マラリア巻き返し作戦)は2010年までにマラリア罹患率を半分にという目標を掲げてきた.しかし,積極的な戦いはまだで,実用的なワクチンが待たれる.トリパノソーマ症はいぜんとして手ごわい.たしかにシャーガス病はブラジル,アルゼンチン,チリでは防圧効果をあげている.しかし他の諸国ではそうでない.都市での輸血や先天感染が大きな問題である.リーシュマニア症はラテンアメリカを覆い,中東から地中海に展開している.AIDSとの関連で大きな問題である.文明間戦争の狭間で,あるいは SARSなどあらたなウイルス性疾患の出現によって慢性に進行する寄生虫病対策はなおざりにされがちである.今回の連載“現代寄生虫病事情”では個々の寄生虫病についての現状をやさしくご紹介したい.
他方,寄生のメカニズムのユニークさが最近いろいろと解明されるに至っている.ある種の生物が他の種に接近,進入し,そのなかで生き続けることは簡単ではない.そこには宿主生物と寄生虫とのせめぎ合いや妥協などさまざまな形の関係が形成されている.そのような事例についてもいくつかをご紹介したい.
冒頭に半世紀前の Stollを引用したので,終りにこれも古い Chandler(1946)の言葉を引用したい.彼は第20回アメリカ寄生虫学会の会長講演“寄生虫学者をつくる“で寄生虫学者を“蘭”にたとえて励ましている.蘭は熱帯性の寄生植物で,他の植物から栄養を取りゆっくりと発育し,香ばしく美しい花を咲かせる.同様に寄生虫学者も他領域の技術を導入しながら発育していく.その進歩は遅い.しかし,ひとたび“蘭“のように花を咲かせることができれば,それはけっして他領域の成果に劣るものではない.蘭のような“香り”まではともかく,寄生虫学の進歩のために頑張ろうという趣旨であった.21 世紀初頭はその成果のみられる時期であろう.
寄生虫病の伝播は地球環境依存的であるという特徴がある.フィジーなど島嶼に住む人びとが心配する温暖化に象徴されるように森林伐採や,オゾン層の消失,化学物質の散布など恐ろしい環境変化に人類は直面している.そのような現代に,このシリーズを通して寄生虫の問題をもう一度考えていただきたい.
▲文献
▲1)Chandler,A. C.:The making of a parasitologist.J.Parasitol.,32:213-221,1946.
▲
2)Crompton,D. W. T.:How much human helminthiasis is there in the world? J.Parasitol.,85(3):397-403,1999.
▲
3)Epstein,P. R.:Is global warming harmful to health? Sci.Amer.,283(2):50-57,2000.
▲
4)WHO:Control and surveillance of African trypanosomidsis.Tech.Rep.Ser.No.881,1998.
▲5)WHO:Global fund to fight AIDS,tuberculosis and malaria.Fifty-fifth World Health Assembly.Provisional Agenda 13.4,2002.
▲
6)WHO:http://www.who.int/emc/diseases
▲図1 WHOのフィラリア症根絶計画の説明書の表紙
引用された平安時代女性患者の両下肢の象皮病が特徴的である.
▲表1 主な寄生虫の地球規模での感染率2,4-6)
▲寄生虫
▲土壌伝播寄生虫
▲フィラリア
▲住血吸虫
▲マラリア
▲トリパノソーマ
▲リーシュマニア
▲感染者数と状況
▲回虫:14 億 7,200 万人,鉤虫:12 億 9,800 万人
▲鞭虫:10 億 4,900 万人
▲リンパ系フィラリア:1 億 2,000 万人,オンコセルカ:1,800 万人
▲
2 億人
▲
3〜5 億人が毎年罹患(マラリア死の 90%はサハラ以南のアフリカ,
▲毎日 3,000 人の児童,とくに5歳以下が死亡)
▲睡眠病:毎年30万人の新患がサハラ以南に発症
▲シャーガス病:1,300 万人の感染者(中南米15カ国),毎年新患20万人発症
▲
1,200 万人(内蔵型は毎年50万人,皮膚型は毎年 100〜150 万人発症)
▲図2 WHO本部前のオンコセルカ盲目者の像
▲(OCPの成果を記念して)
・はじめに―Wormy worldの克服をめざして――Introduction―Combat against the wormy world(多田 功)
●第1章 ミクロの脅威
1.シャーガス病―中南米の厄病神―Chagas disease―Neglected silent killer in Latin America(平山謙二)
●中南米の風土病
●巨大な心臓と消化管
●貧しい人たちの病気
●感染症は戦いながら学ぶもの
2.マラリア―熱帯の死神―Malaria―A killer disease in the tropic(石井 明)
●マラリアの歴史
●世界のマラリア
●日本のマラリア
●マラリアの課題と問題点
●マラリア研究
3.マラリア―怖い輸入病―Malaria―Dangerous imported disease from the tropics(大友弘士・他)
●マラリアの病原体
●マラリアの初発症状と臨床経過
●マラリア流行の疫学的概況
●最近の日本の輸入マラリア
●マラリアの診断と治療のポイント
4.リーシュマニア症―戦乱が拡げる黒熱病流行―Leishmaniasis―The skin disease and black fever spreading worldwide at wartime(橋口義久)
●キラーディジーズ―ある空の旅でのこと
●さてリーシュマニア症による皮膚病・黒熱病とは
●いまとくに注目すべき流行地域(国)と皮膚病・黒熱病
●ワクチン・免疫治療法の開発
5.赤痢アメーバ症―熱帯病かSTDか―Amebiasis―Tropical disease or STD(濱田篤郎)
●レスリー・チャンの下痢
●赤痢アメーバ症の病像
●歴史のなかの赤痢アメーバ症
●病原体発見への道
●先進国で増加する熱帯病
●人間社会とともに進化を遂げる病原体
6.アフリカ睡眠病―新たな制圧法を求めて―African sleeping sickness―For innovated control measures(江下優樹・他)
●宿主と原虫のせめぎあい
●制御のための第一歩
●副作用の少ない安価な治療薬開発
●ワクチン開発の可能性
●既存のプライマリ・ヘルスケア(PHC)への組込みは可能か
7.蚊―疾病流行をモニターする―Measuring disease transmission in vector mosquitoes(栗原 毅)
●大流行
●流行の3要因
●蚊の密度の変化
●感染蚊の密度
●生存率
●ヒト嗜好の率
●媒介能調査
●流行の監視
●第2章 地球規模で拡がる寄生虫
1.住血吸虫症―揚子江流域の流行になにが起こりつつあるのか―Schistosomiasis―What is happening along the Yangtze River(太田伸生)
●揚子江の歴史と日本住血吸虫症
●困難を極める日本住血吸虫症の制圧
●三峡ダムの予想される功罪
●世界銀行融資と揚子江流域流行地の住血吸虫症対策
●揚子江流域から住血吸虫症をなくすために
2.アジア・太平洋地域におけるテニア症と嚢虫症―Taeniasis and cysticercosis in Asia and the Pacific(伊藤 亮)
●脳嚢虫症の世界における流行の現状
●“家”とはなにか?
●“イヌ”の役割
●アジアにおける問題
●有鉤条虫による人体嚢虫症
●アジア条虫による人体嚢虫症の可能性と独立種としての問題点
●有鉤条虫の遺伝子多型と進化―有鉤条虫はヒト固有の寄生虫
3.エキノコックス症(多包虫症)―キツネが運んだ疾病―Alveolar echinococcosis―The disease spread by foxes(金澤 保)
●エキノコックス(多包条虫)とはどのような寄生虫か
●エキノコックス症(多包虫症)とはどのような病気か
●エキノコックス症の礼文島における流行
●根室地区における患者の発生および流行の拡大
●対策
●残された課題
4.サナダムシ物語―日本海裂頭条虫からの人類へのメッセージ―The tale of tapeworm―A message from Diphyllobothrium nihonkaiense to human being(山根洋右)
●グルメ志向と飽食の時代
●寄生虫の人類への警告
●サナダムシと人類のつきあい
●世界に分布するサナダムシ
●ゲテモノ志向とサナダムシ
●住民参加行動研究の重要性
5.顎口虫症―中南米の奇病として―Gnathostomiasis―A unique skin disease in Latin America(赤羽啓栄・岩田久寿郎)
●メキシコで発生した奇病
●顎口虫症とは
●顎口虫の生活史
●顎口虫症の病原体
●メキシコの顎口虫症
●日本の顎口虫症
●アジアの顎口虫症
6.広東住血線虫症―脳を侵す寄生虫病―Angiostrongyliasis cantonensis―A parasitic infection of the nervous system(西村謙一)
●南太平洋地域の奇病
●病原体の発見
●Acの形態,生活史,分布
●広東住血線虫症
●わが国の Acおよび広東住血線虫症
7.オンコセルカ症―いま,世界と日本で―Onchocerciasis―Its status quo in the world and Japan(高岡宏行)
●ヒトオンコセルカ症と世紀の大防圧計画APOC
●人獣共通オンコセルカ症―身近なニューフェース
8.AIDSではびこる寄生虫病―Expanding parasitic disease in AIDS in high technology medicine(矢野明彦・青才文江)
●AIDS指定疾患としての寄生虫病
●日和見寄生虫症と免疫抑制―免疫抑制の定義と寄生虫学的意義
●AIDS患者における次世代に向けた寄生虫病(先天性寄生虫症)対策
●AIDSにおける代表的寄生虫症の臨床症状・診断・治療
●第3章 寄生虫vs.宿主
1.赤痢アメーバ原虫―特異な含硫アミノ酸代謝を創薬につなげる―Entamoeba histolytica―Drug development exploiting its unique sulfur-containing amino acid metabolism(野崎智義)
●赤痢アメーバ症のインパクト
●赤痢アメーバ症とは?
●赤痢アメーバ症治療の問題点
●寄生における代謝の単純化と特殊化
●含硫アミノ酸の生理的重要性
●赤痢アメーバ原虫における含硫アミノ酸の重要性
●赤痢アメーバ原虫におけるシステイン生合成経路の特殊性
●原虫におけるシステイン生合成の普遍性と生理的役割
●システイン合成酵素を標的とした創薬
●含硫アミノ酸の分解経路
●メチオニンγ-リアーゼを標的とした新規抗赤痢アメーバ薬剤
2.寄生虫を迎え撃つ好酸球―旋毛虫感染モデルにおける動態―Eosinophils and host's defense mechanisms against Trichinella spiralis-infection(是永正敬)
●旋毛虫とは
●好酸球の分化・増殖
●好酸球の炎症部位への浸潤
●好酸球のアポトーシス
●好酸球の脱顆粒と組織傷害
●好酸球と感染防御
3.腸管粘膜バリアと寄生虫とのせめぎあい―腸管上皮層細胞群のバリア構築における意義―Intestinal epithelial barrier in the host defense against parasitic infection(稲垣匡子・名和行文)
●腸管上皮細胞の種類と役割
●肥満細胞の粘膜面への出現とその役割
●排虫と粘液の糖鎖構造
●腸管上皮バリア強化細胞としてのIELの役割
4.回虫の知恵―代謝の変換―Adaptation strategy of Ascaris suum―Metabolic change during their life cycle(北 潔)
●寄生虫のミトコンドリア
●回虫Ascaris suumの生活環とエネルギー代謝
●回虫成虫のロドキノール-フマル酸還元酵素
●ミトコンドリア型フマル酸還元酵素の進化
5.マラリアとヘモグロビン異常―ネパールにおけるフィールド調査から―Malaria and hemoglobin disorders―From a field study in Nepal(濱野真二郎・小林 茂)
●ネパールと熱帯感染症
●ネパールにおける遺伝性貧血とマラリアに関する研究
●マラリアに対する文化的適応と生物学的適応
●αサラセミアとマラリア
●さらなる疫学研究の必要性
●第4章 寄生虫病制圧の途
1.日本の国際寄生虫制圧戦略―Global Parasite Control Initiative of Japan(小島莊明)
●“橋本イニシアティブ”あるいはGPCI
●ACIPACの活動
2.土壌伝播寄生虫対策―世界に貢献する日本のノウ・ハウ―Control of soil-transmitted parasites―Contribution of Japanese know-how in the global scale(影井 昇)
●第二次世界大戦以前のわが国におけるSTHに対する対応
●第二次世界大戦終了直後ならびにその後のSTHの流行状況とそれに対する対応
●アジア寄生虫予防機構の設立と海外への技術協力
●国際寄生虫予防指導者セミナー
●橋本イニシアチブ(国際寄生虫対策ワークショップ)
●中南米地域寄生虫対策ワークショップ
3.住血吸虫症の制圧をめざして――Reconsideration of schistosomiasis control(青木克己)
●住血吸虫症の基礎知識
●開発途上国における住血吸虫症の流行の現状
●開発途上国における住血吸虫症の対策の現状と問題点
●開発途上国における住血吸虫症制御への世界の努力
4.フィラリア症撲滅宣言,その後―スリランカからの報告――Progress of the global programme to eliminate lymphatic filariasis―An example in Sri Lanka(木村英作)
●撲滅計画実施のキーワード
●治療すべき流行地の確認と線引き
●高い治療率の達成
●集団治療の副作用
●治療効果のモニタリング
●今後の問題
5.貧乏神としての寄生虫―DALY分析―Parasites as a cause of poverty―Measured by DALY(嶋田雅曉)
●貧乏神と寄生虫
●貧乏とはどういうことか?
●寄生虫は人類にとってどのような負担になっているか?
●寄生虫と貧乏神との関係
●貧乏神を追いやるのが先か?寄生虫病の撲滅が先か?
6.文化と疾病の狭間―ケニアで風土病を学ぶ―Studying endemiology in Kenya(門司和彦)
●ムワチンガ村
●対策,およびそれを困難にする生活要因
●伝統的な“やまいillness”の概念
●治療の可能性―WHOの戦略の変遷
●対策を成功させるために
7.国際保健協力という愛―中南米を想う―Love through international health programs with special reference to Latin America(多田 功)
●ラテンアメリカの野口英世像
●中央アメリカでジョン・ダンを想う
●技術ナショナリズムが実を結ぶ日
●サイドメモ目次
・慢性シャーガス病
・Leishmanization:寄生虫の生ワクチン
・抗原変異
・原虫表面抗原のできる過程
・プライマリ・ヘルスケア
・蚊媒介病
・住血吸虫ワクチン
・種と分布
・単包条虫と単包虫症
・制御性T細胞としてのγδT細胞
・αサラセミア
・土壤伝播寄生虫病とは
・KAP研究
・人口転換/疫学転換/健康転換
・人間貧困指数(HPI)
・DALY:Disability Adjusted Life Year(障害を調整した生命年数)
・ロブレス病
●第1章 ミクロの脅威
1.シャーガス病―中南米の厄病神―Chagas disease―Neglected silent killer in Latin America(平山謙二)
●中南米の風土病
●巨大な心臓と消化管
●貧しい人たちの病気
●感染症は戦いながら学ぶもの
2.マラリア―熱帯の死神―Malaria―A killer disease in the tropic(石井 明)
●マラリアの歴史
●世界のマラリア
●日本のマラリア
●マラリアの課題と問題点
●マラリア研究
3.マラリア―怖い輸入病―Malaria―Dangerous imported disease from the tropics(大友弘士・他)
●マラリアの病原体
●マラリアの初発症状と臨床経過
●マラリア流行の疫学的概況
●最近の日本の輸入マラリア
●マラリアの診断と治療のポイント
4.リーシュマニア症―戦乱が拡げる黒熱病流行―Leishmaniasis―The skin disease and black fever spreading worldwide at wartime(橋口義久)
●キラーディジーズ―ある空の旅でのこと
●さてリーシュマニア症による皮膚病・黒熱病とは
●いまとくに注目すべき流行地域(国)と皮膚病・黒熱病
●ワクチン・免疫治療法の開発
5.赤痢アメーバ症―熱帯病かSTDか―Amebiasis―Tropical disease or STD(濱田篤郎)
●レスリー・チャンの下痢
●赤痢アメーバ症の病像
●歴史のなかの赤痢アメーバ症
●病原体発見への道
●先進国で増加する熱帯病
●人間社会とともに進化を遂げる病原体
6.アフリカ睡眠病―新たな制圧法を求めて―African sleeping sickness―For innovated control measures(江下優樹・他)
●宿主と原虫のせめぎあい
●制御のための第一歩
●副作用の少ない安価な治療薬開発
●ワクチン開発の可能性
●既存のプライマリ・ヘルスケア(PHC)への組込みは可能か
7.蚊―疾病流行をモニターする―Measuring disease transmission in vector mosquitoes(栗原 毅)
●大流行
●流行の3要因
●蚊の密度の変化
●感染蚊の密度
●生存率
●ヒト嗜好の率
●媒介能調査
●流行の監視
●第2章 地球規模で拡がる寄生虫
1.住血吸虫症―揚子江流域の流行になにが起こりつつあるのか―Schistosomiasis―What is happening along the Yangtze River(太田伸生)
●揚子江の歴史と日本住血吸虫症
●困難を極める日本住血吸虫症の制圧
●三峡ダムの予想される功罪
●世界銀行融資と揚子江流域流行地の住血吸虫症対策
●揚子江流域から住血吸虫症をなくすために
2.アジア・太平洋地域におけるテニア症と嚢虫症―Taeniasis and cysticercosis in Asia and the Pacific(伊藤 亮)
●脳嚢虫症の世界における流行の現状
●“家”とはなにか?
●“イヌ”の役割
●アジアにおける問題
●有鉤条虫による人体嚢虫症
●アジア条虫による人体嚢虫症の可能性と独立種としての問題点
●有鉤条虫の遺伝子多型と進化―有鉤条虫はヒト固有の寄生虫
3.エキノコックス症(多包虫症)―キツネが運んだ疾病―Alveolar echinococcosis―The disease spread by foxes(金澤 保)
●エキノコックス(多包条虫)とはどのような寄生虫か
●エキノコックス症(多包虫症)とはどのような病気か
●エキノコックス症の礼文島における流行
●根室地区における患者の発生および流行の拡大
●対策
●残された課題
4.サナダムシ物語―日本海裂頭条虫からの人類へのメッセージ―The tale of tapeworm―A message from Diphyllobothrium nihonkaiense to human being(山根洋右)
●グルメ志向と飽食の時代
●寄生虫の人類への警告
●サナダムシと人類のつきあい
●世界に分布するサナダムシ
●ゲテモノ志向とサナダムシ
●住民参加行動研究の重要性
5.顎口虫症―中南米の奇病として―Gnathostomiasis―A unique skin disease in Latin America(赤羽啓栄・岩田久寿郎)
●メキシコで発生した奇病
●顎口虫症とは
●顎口虫の生活史
●顎口虫症の病原体
●メキシコの顎口虫症
●日本の顎口虫症
●アジアの顎口虫症
6.広東住血線虫症―脳を侵す寄生虫病―Angiostrongyliasis cantonensis―A parasitic infection of the nervous system(西村謙一)
●南太平洋地域の奇病
●病原体の発見
●Acの形態,生活史,分布
●広東住血線虫症
●わが国の Acおよび広東住血線虫症
7.オンコセルカ症―いま,世界と日本で―Onchocerciasis―Its status quo in the world and Japan(高岡宏行)
●ヒトオンコセルカ症と世紀の大防圧計画APOC
●人獣共通オンコセルカ症―身近なニューフェース
8.AIDSではびこる寄生虫病―Expanding parasitic disease in AIDS in high technology medicine(矢野明彦・青才文江)
●AIDS指定疾患としての寄生虫病
●日和見寄生虫症と免疫抑制―免疫抑制の定義と寄生虫学的意義
●AIDS患者における次世代に向けた寄生虫病(先天性寄生虫症)対策
●AIDSにおける代表的寄生虫症の臨床症状・診断・治療
●第3章 寄生虫vs.宿主
1.赤痢アメーバ原虫―特異な含硫アミノ酸代謝を創薬につなげる―Entamoeba histolytica―Drug development exploiting its unique sulfur-containing amino acid metabolism(野崎智義)
●赤痢アメーバ症のインパクト
●赤痢アメーバ症とは?
●赤痢アメーバ症治療の問題点
●寄生における代謝の単純化と特殊化
●含硫アミノ酸の生理的重要性
●赤痢アメーバ原虫における含硫アミノ酸の重要性
●赤痢アメーバ原虫におけるシステイン生合成経路の特殊性
●原虫におけるシステイン生合成の普遍性と生理的役割
●システイン合成酵素を標的とした創薬
●含硫アミノ酸の分解経路
●メチオニンγ-リアーゼを標的とした新規抗赤痢アメーバ薬剤
2.寄生虫を迎え撃つ好酸球―旋毛虫感染モデルにおける動態―Eosinophils and host's defense mechanisms against Trichinella spiralis-infection(是永正敬)
●旋毛虫とは
●好酸球の分化・増殖
●好酸球の炎症部位への浸潤
●好酸球のアポトーシス
●好酸球の脱顆粒と組織傷害
●好酸球と感染防御
3.腸管粘膜バリアと寄生虫とのせめぎあい―腸管上皮層細胞群のバリア構築における意義―Intestinal epithelial barrier in the host defense against parasitic infection(稲垣匡子・名和行文)
●腸管上皮細胞の種類と役割
●肥満細胞の粘膜面への出現とその役割
●排虫と粘液の糖鎖構造
●腸管上皮バリア強化細胞としてのIELの役割
4.回虫の知恵―代謝の変換―Adaptation strategy of Ascaris suum―Metabolic change during their life cycle(北 潔)
●寄生虫のミトコンドリア
●回虫Ascaris suumの生活環とエネルギー代謝
●回虫成虫のロドキノール-フマル酸還元酵素
●ミトコンドリア型フマル酸還元酵素の進化
5.マラリアとヘモグロビン異常―ネパールにおけるフィールド調査から―Malaria and hemoglobin disorders―From a field study in Nepal(濱野真二郎・小林 茂)
●ネパールと熱帯感染症
●ネパールにおける遺伝性貧血とマラリアに関する研究
●マラリアに対する文化的適応と生物学的適応
●αサラセミアとマラリア
●さらなる疫学研究の必要性
●第4章 寄生虫病制圧の途
1.日本の国際寄生虫制圧戦略―Global Parasite Control Initiative of Japan(小島莊明)
●“橋本イニシアティブ”あるいはGPCI
●ACIPACの活動
2.土壌伝播寄生虫対策―世界に貢献する日本のノウ・ハウ―Control of soil-transmitted parasites―Contribution of Japanese know-how in the global scale(影井 昇)
●第二次世界大戦以前のわが国におけるSTHに対する対応
●第二次世界大戦終了直後ならびにその後のSTHの流行状況とそれに対する対応
●アジア寄生虫予防機構の設立と海外への技術協力
●国際寄生虫予防指導者セミナー
●橋本イニシアチブ(国際寄生虫対策ワークショップ)
●中南米地域寄生虫対策ワークショップ
3.住血吸虫症の制圧をめざして――Reconsideration of schistosomiasis control(青木克己)
●住血吸虫症の基礎知識
●開発途上国における住血吸虫症の流行の現状
●開発途上国における住血吸虫症の対策の現状と問題点
●開発途上国における住血吸虫症制御への世界の努力
4.フィラリア症撲滅宣言,その後―スリランカからの報告――Progress of the global programme to eliminate lymphatic filariasis―An example in Sri Lanka(木村英作)
●撲滅計画実施のキーワード
●治療すべき流行地の確認と線引き
●高い治療率の達成
●集団治療の副作用
●治療効果のモニタリング
●今後の問題
5.貧乏神としての寄生虫―DALY分析―Parasites as a cause of poverty―Measured by DALY(嶋田雅曉)
●貧乏神と寄生虫
●貧乏とはどういうことか?
●寄生虫は人類にとってどのような負担になっているか?
●寄生虫と貧乏神との関係
●貧乏神を追いやるのが先か?寄生虫病の撲滅が先か?
6.文化と疾病の狭間―ケニアで風土病を学ぶ―Studying endemiology in Kenya(門司和彦)
●ムワチンガ村
●対策,およびそれを困難にする生活要因
●伝統的な“やまいillness”の概念
●治療の可能性―WHOの戦略の変遷
●対策を成功させるために
7.国際保健協力という愛―中南米を想う―Love through international health programs with special reference to Latin America(多田 功)
●ラテンアメリカの野口英世像
●中央アメリカでジョン・ダンを想う
●技術ナショナリズムが実を結ぶ日
●サイドメモ目次
・慢性シャーガス病
・Leishmanization:寄生虫の生ワクチン
・抗原変異
・原虫表面抗原のできる過程
・プライマリ・ヘルスケア
・蚊媒介病
・住血吸虫ワクチン
・種と分布
・単包条虫と単包虫症
・制御性T細胞としてのγδT細胞
・αサラセミア
・土壤伝播寄生虫病とは
・KAP研究
・人口転換/疫学転換/健康転換
・人間貧困指数(HPI)
・DALY:Disability Adjusted Life Year(障害を調整した生命年数)
・ロブレス病