巻頭言
九州大学名誉教授 多田 功
コッホによる結核菌の発見から痘瘡の撲滅に至る約100年間の感染症治療や防圧のサクセスストーリーは,最近やや輝きを失った感がある.新しい病原体の出現や,かつて征服したと思われた疾病がふたたび猛威をふるいはじめたからである.新興・再興感染症の時代ともよばれている.その背景には人口の都市集中,難民の増加,温度上昇,自然の乱開発,抗菌薬の乱用などがある.寄生虫病もその例外ではない.さらに,寄生虫病はその地域の風土や文化と密接に結びついていることが多いので,防圧が困難な場合も多い.表1は新興・再興感染症の背景因子をまとめたものである.<NP>
寄生虫病のなかで新興感染として現れたのは,クリプトスポリジウムやサイクロスポーラなどの原虫である.流通機構の発達は遠隔地の病原体をすばやく移送し,新しい流行地をつくりだし,脅威を与えている.<NP>
他方,マラリアは再興寄生虫症の代表である.かつてはクロロキンと殺虫剤でこれを撲滅できると信じられた時代があった.しかし,原虫はクロロキン抵抗性を急速につけ,蚊は殺虫剤抵抗性をつけた.いま,さらにおそれられる事態は二酸化炭素の濃度上昇であり,各地の温度が上昇すれば媒介蚊の生息範囲が広がり,原虫の伝播サイクルも速まることである.熱帯雨林の乱開発も問題である.アマゾン流域で鉱夫たちが広く進出し,熱帯雨林の土を水で洗い流し,金の採掘を行っている.このため露出した地面にはおびただしい水たまりが形づくられ,そこに多数のハマダラカが繁殖し,マラリアのあらたな流行地を広げる.各地の天候不順も流行を促進しているとWHOは懸念している.環境の乱開発とか人類の生態が寄生虫病の流行に深くかかわっているのである.
最近では,人間活動が各種の病害や事故などによってこうむる損害の度合いを,DALY損失(disability adjusted life year)という指標を使って表現することがよく行われている.これは,病害の程度を相互に比較するうえで便利な指標である.Chan1)によれば,結核46.5(単位は百万),糖尿病8.0に対し,腸管寄生虫症39.0,マラリア35.7,住血吸虫症4.5などとなっている.多くの寄生虫で混合感染がみられることを勘案すれば,寄生虫の病害は数値のうえでも十分に大きいことがわかる.実に寄生虫は人類の重荷であり,その防圧は急務である.
1998年5月,当時の橋本首相はバーミンガムで開かれた主要国首脳会議(G8)で国際寄生虫病対策を提唱した.これは,過去の日本での寄生虫防圧の経験を生かし,寄生虫病対策で世界に貢献しようという高い理念である.この提案,いわゆる橋本イニシアチブは主要国首脳会議でも歓迎され,世界保健機構(WHO)は大きな期待をこれに寄せている.そこには,人類の重荷である寄生虫病を早く防圧しようという人類の悲願が込められている.その前年に,この戦略構想を準備するため厚生省を主体とし寄生虫学者が協力してワーキンググループが結成された.そして,欧米主要国の関係者と班員が会って討論を重ねた.このモチベーションは各国で高い評価を受け,支持を取り付けることができた.その結果はまとめられ報告書として出版された.すでにこのプロジェクトはタイで開始され,WHOに対する援助も開始されている.
さらに,同年8月に日本で開催した第9回国際寄生虫学会議では現代の寄生虫学を総括し,21世紀への寄生虫学のあり方を探ろうとする試みがなされた.そこでは,寄生虫病の防圧のために,既存の防圧技術から将来型の技術までさまざまな技術的な可能性が検討された.現時点で,WHOが中心になり国際的なNGOと組んだメジナ虫症防圧やオンコセルカ症防圧について,よい成績を上げている分野もある.1999年からリンパ系フィラリア症の撲滅が始まった.人類の重荷である寄生虫に対する戦いは徐々に進展している.本別冊の意図は,この事態を踏まえ,いわゆるTDR(WHO Special Programme for Research & Training in Tropical Diseases)の主要寄生虫病を中心に,それらの防圧の現状を紹介し,今後の世界的な対寄生虫戦略に必要な技術を概観しようとするものである.
1)Chan,M-S.:The global burden of intestinal nematode infections-fifty years on.Parasitol.Today,13,:438-443,1997.
九州大学名誉教授 多田 功
コッホによる結核菌の発見から痘瘡の撲滅に至る約100年間の感染症治療や防圧のサクセスストーリーは,最近やや輝きを失った感がある.新しい病原体の出現や,かつて征服したと思われた疾病がふたたび猛威をふるいはじめたからである.新興・再興感染症の時代ともよばれている.その背景には人口の都市集中,難民の増加,温度上昇,自然の乱開発,抗菌薬の乱用などがある.寄生虫病もその例外ではない.さらに,寄生虫病はその地域の風土や文化と密接に結びついていることが多いので,防圧が困難な場合も多い.表1は新興・再興感染症の背景因子をまとめたものである.<NP>
寄生虫病のなかで新興感染として現れたのは,クリプトスポリジウムやサイクロスポーラなどの原虫である.流通機構の発達は遠隔地の病原体をすばやく移送し,新しい流行地をつくりだし,脅威を与えている.<NP>
他方,マラリアは再興寄生虫症の代表である.かつてはクロロキンと殺虫剤でこれを撲滅できると信じられた時代があった.しかし,原虫はクロロキン抵抗性を急速につけ,蚊は殺虫剤抵抗性をつけた.いま,さらにおそれられる事態は二酸化炭素の濃度上昇であり,各地の温度が上昇すれば媒介蚊の生息範囲が広がり,原虫の伝播サイクルも速まることである.熱帯雨林の乱開発も問題である.アマゾン流域で鉱夫たちが広く進出し,熱帯雨林の土を水で洗い流し,金の採掘を行っている.このため露出した地面にはおびただしい水たまりが形づくられ,そこに多数のハマダラカが繁殖し,マラリアのあらたな流行地を広げる.各地の天候不順も流行を促進しているとWHOは懸念している.環境の乱開発とか人類の生態が寄生虫病の流行に深くかかわっているのである.
最近では,人間活動が各種の病害や事故などによってこうむる損害の度合いを,DALY損失(disability adjusted life year)という指標を使って表現することがよく行われている.これは,病害の程度を相互に比較するうえで便利な指標である.Chan1)によれば,結核46.5(単位は百万),糖尿病8.0に対し,腸管寄生虫症39.0,マラリア35.7,住血吸虫症4.5などとなっている.多くの寄生虫で混合感染がみられることを勘案すれば,寄生虫の病害は数値のうえでも十分に大きいことがわかる.実に寄生虫は人類の重荷であり,その防圧は急務である.
1998年5月,当時の橋本首相はバーミンガムで開かれた主要国首脳会議(G8)で国際寄生虫病対策を提唱した.これは,過去の日本での寄生虫防圧の経験を生かし,寄生虫病対策で世界に貢献しようという高い理念である.この提案,いわゆる橋本イニシアチブは主要国首脳会議でも歓迎され,世界保健機構(WHO)は大きな期待をこれに寄せている.そこには,人類の重荷である寄生虫病を早く防圧しようという人類の悲願が込められている.その前年に,この戦略構想を準備するため厚生省を主体とし寄生虫学者が協力してワーキンググループが結成された.そして,欧米主要国の関係者と班員が会って討論を重ねた.このモチベーションは各国で高い評価を受け,支持を取り付けることができた.その結果はまとめられ報告書として出版された.すでにこのプロジェクトはタイで開始され,WHOに対する援助も開始されている.
さらに,同年8月に日本で開催した第9回国際寄生虫学会議では現代の寄生虫学を総括し,21世紀への寄生虫学のあり方を探ろうとする試みがなされた.そこでは,寄生虫病の防圧のために,既存の防圧技術から将来型の技術までさまざまな技術的な可能性が検討された.現時点で,WHOが中心になり国際的なNGOと組んだメジナ虫症防圧やオンコセルカ症防圧について,よい成績を上げている分野もある.1999年からリンパ系フィラリア症の撲滅が始まった.人類の重荷である寄生虫に対する戦いは徐々に進展している.本別冊の意図は,この事態を踏まえ,いわゆるTDR(WHO Special Programme for Research & Training in Tropical Diseases)の主要寄生虫病を中心に,それらの防圧の現状を紹介し,今後の世界的な対寄生虫戦略に必要な技術を概観しようとするものである.
1)Chan,M-S.:The global burden of intestinal nematode infections-fifty years on.Parasitol.Today,13,:438-443,1997.
巻頭言 多田 功
■総論
1.世界保健機構(WHO)の新しい国際寄生虫病対策戦略 石井 明
New strategy for global parasitic disease control of the World Health Organization
○世界保健機関の新しい戦略
○マラリア巻き返し作戦“Roll Back Malaria(RBM)”
○フィラリア症撲滅(elimination of lymphatic filariasis)
2.橋本イニシアチブ―日本の課題 葛西 健・大久保一郎
Hashimoto initiative-The challenge of Japanese parasitology
○経緯
○4つの戦略と橋本イニシアチブの全体像
○現在までの進捗状況
○これからの課題
3.21世紀の日本の寄生虫学―分子生物学の対極領域 鈴木 守
Parasitology in Japan in the 21th century
○近代医学の黎明期における日本の医学者による寄生虫学への貢献
○Hashimoto initiativeと第9回国際寄生虫学会
○日本の寄生虫学者による寄生虫対策の実績
○これからの寄生虫学の発展領域
○21世紀におけるマラリアの研究
○寄生虫病対策の学的基礎としての生態学的視野の生物学
■おもな寄生虫病とその対策
4.マラリア流行対策の標石 狩野繁之・大友弘士
Milestones in malaria control
○マラリア撲滅から制圧へ
○マラリア流行の世界的再興
○マラリアによる経済的損失
○マラリア対策手法
○マラリアサミット
○ロールバックマラリア
○日本の役割
5.Chagas病のコントロール対策―現況と問題点 竹内 勤
Control of Chagas'disease-Current situations and constraints
○Chagas病の現状
○Chagas病の問題点
○対策に必要な新しい知見,手法
6.リーシュマニア症対策の現状と将来 橋口義久
The present and future control of leishmaniasis
○リーシュマニア症の流行地拡大のおもな要因
○リーシュマニア原虫とHIVの同時感染
○予防・防圧対策の現状
○治療薬としての簡便で有効な経口薬はみつかるか
○リーシュマニア症に有効なワクチンはありうるか
7.Eradicable diseaseとしてのリンパ系フィラリア症―開始された世界規模の対策とその背景 木村英作
Lymphatic filariasis as an eradicable disease-the initiation of global elimination programme
○撲滅可能な感染症とはなにか
○WHOのタイムテーブルと基本戦略
○地球規模のプロジェクトをどう実施するか
8.オンコセルカ症 多田 功
Onchocerciasis
○疫学
○病像と症状
○診断・検査法
○治療法
○防圧対策
9.日和見感染性寄生虫病 矢野明彦
Opportunistic parasite diseases
○日和見感染性寄生虫病とは―寄生虫感染症の特徴
10.住血吸虫症 青木克己
Schistosomiasis
○住血吸虫症の種類と分布
○住血吸虫症の流行像とその特徴
○住血吸虫症の問題点
○住血吸虫症対策の現状と問題点
○開発途上国における住血吸虫症対策の成果をあげるための研究の必要性
11.集団寄生虫予防活動―日本から世界への発信 原 隆昭
Mass control of intestinal helminthosis-Massage from Japan to the world
○対策と問題点
○日本の経験
○国際協力への発展
○人材育成
■対寄生虫病戦略の展開
12.抗寄生虫薬のドラッグデザイン 北 潔
Drug design for parasitic diseases
○これまでの抗寄生虫薬の開発
○現在の抗寄生虫薬の開発
○これからの抗寄生虫薬の開発
13.マラリアのDNA診断 綿矢有佑・木村幹夫
DNA diagnosis of Malaria
○従来のマラリア診断法
○マラリアのDNA診断法
○マイクロタイタープレートhybridization法
14.フィールドで使用できるChagas病診断キット開発とその応用 仙道富士郎
Development of Chagas'disease diagnostic kits aplicable for field study
○簡便で正確な診断法樹立の必要性
○JICA Chagas病プロジェクトにおける経験
○ゼラチン粒子凝集反応を利用したChagas病診断キットの開発
15.寄生虫病対策における適正技術としての超音波診断 大前比呂思
Ultrasound-Appropriate technology for parasite control in developing countries
○住血吸虫症
○肝吸虫症
○包虫症
○マラリア
16.住血吸虫症ワクチン 小島莊明
Vaccine for Schistosomiasis
○血吸虫症になぜワクチンが必要か
○住血吸虫症に対する防御免疫機構
○住血吸虫症ワクチン候補分子
17.マラリアワクチン開発の現況 辻 守哉
Current status of malaria vaccine development
○赤外型原虫
○赤内型原虫
○伝搬阻止ワクチン
○その他
○問題点
18.寄生虫病対策と地域住民参加 門司和彦・吉見逸郎
Community participation in parasitic disease control
○住血吸虫症と人間行動
○集団治療(mass-chemotherapy)と住民参加
○便所使用と住民参加
○中間宿主貝対策と住民参加
○安全水の供給,水接触行動の変容と住民参加
○開発による住血吸虫症の流行と住民参加
○マラリア予防と薬剤浸漬蚊帳の使用
19.伝搬昆虫の制御―遺伝子工学を用いた病原体耐性蚊の開発 江下優樹・松本 顕
Control of insect vectors-Development of genetically engineering pathogen-resistant mosquitoes
○古くて新しい媒介蚊対策
○組換え蚊作製の戦略
20.地理情報システム(GIS)―対寄生虫世界戦略の鍵 嶋田雅暁
GIS-A key tool for the global strategy in the control of parasitic diseases
○地理情報システム(GIS)とは?
○RSとGIS
○GISの政策決定における必要性
○GISの核心―データベースと空間分析(spatial analysis)
○寄生虫対策におけるGISの応用例
21.抗マラリア薬 大友弘士・狩野繁之
Development of antimalarias
○抗マラリア薬開発の流れ
○現在使用されている抗マラリア薬の概要
○重症マラリアに対する支持療法
○稀用薬の入手
22.マラリア原虫の薬剤耐性 堀井俊宏
Drug resistance in malaria parasite
○抗マラリア剤と薬剤耐性
○薬剤耐性の分子機構
○薬剤耐性の克服
23.細胞内寄生性原虫の免疫回避機構 大日輝記・姫野國祐
Evasion mechamisms of intracellular parasites by exploiting host immune system
○補体系の回避と利用
○宿主細胞への侵入
○活性酸素の放出抑制
○宿主細胞に対するアポトーシスの調節
○サイトカイン産生の調節
○抗原のプロセッシング・提示の阻害とT細胞活性化の抑制
○獲得免疫の方向づけ
24.寄生虫感染の重症化に関与する遺伝子 平山謙二
Genetic epidemiological approach to analyze human immunity in parasitic disease
○熱帯熱マラリア感染による脳マラリア症
○クルーズトリパノソーマ(Trypanosoma cruzi)感染による心不全―心臓Chagas病
○住血吸虫感染による慢性肝線維症および肝硬変
■サイドメモ
日本の寄生虫対策の成果
Community-based PHC
国際寄生虫対策とHashimoto Initiative
リーシュマニア症
ICT card test
ロブレス病の起源
住血吸虫症対策の目標
APCOとIP
Structure-based drug design(SBDD)
筋蛋白パラミオシンがなぜワクチン候補となりうるか
マラリアの発育環
KAPBスタディ
トランスポゾン
GISが扱う空間的データは2種類
オーファンドラッグとしての抗マラリア薬
特定領域研究(A)“マラリア制圧の分子論的展開”
遺伝子欠損寄生虫
ヒト主要組織適合抗原複合体遺伝子領域(MHC region)
■総論
1.世界保健機構(WHO)の新しい国際寄生虫病対策戦略 石井 明
New strategy for global parasitic disease control of the World Health Organization
○世界保健機関の新しい戦略
○マラリア巻き返し作戦“Roll Back Malaria(RBM)”
○フィラリア症撲滅(elimination of lymphatic filariasis)
2.橋本イニシアチブ―日本の課題 葛西 健・大久保一郎
Hashimoto initiative-The challenge of Japanese parasitology
○経緯
○4つの戦略と橋本イニシアチブの全体像
○現在までの進捗状況
○これからの課題
3.21世紀の日本の寄生虫学―分子生物学の対極領域 鈴木 守
Parasitology in Japan in the 21th century
○近代医学の黎明期における日本の医学者による寄生虫学への貢献
○Hashimoto initiativeと第9回国際寄生虫学会
○日本の寄生虫学者による寄生虫対策の実績
○これからの寄生虫学の発展領域
○21世紀におけるマラリアの研究
○寄生虫病対策の学的基礎としての生態学的視野の生物学
■おもな寄生虫病とその対策
4.マラリア流行対策の標石 狩野繁之・大友弘士
Milestones in malaria control
○マラリア撲滅から制圧へ
○マラリア流行の世界的再興
○マラリアによる経済的損失
○マラリア対策手法
○マラリアサミット
○ロールバックマラリア
○日本の役割
5.Chagas病のコントロール対策―現況と問題点 竹内 勤
Control of Chagas'disease-Current situations and constraints
○Chagas病の現状
○Chagas病の問題点
○対策に必要な新しい知見,手法
6.リーシュマニア症対策の現状と将来 橋口義久
The present and future control of leishmaniasis
○リーシュマニア症の流行地拡大のおもな要因
○リーシュマニア原虫とHIVの同時感染
○予防・防圧対策の現状
○治療薬としての簡便で有効な経口薬はみつかるか
○リーシュマニア症に有効なワクチンはありうるか
7.Eradicable diseaseとしてのリンパ系フィラリア症―開始された世界規模の対策とその背景 木村英作
Lymphatic filariasis as an eradicable disease-the initiation of global elimination programme
○撲滅可能な感染症とはなにか
○WHOのタイムテーブルと基本戦略
○地球規模のプロジェクトをどう実施するか
8.オンコセルカ症 多田 功
Onchocerciasis
○疫学
○病像と症状
○診断・検査法
○治療法
○防圧対策
9.日和見感染性寄生虫病 矢野明彦
Opportunistic parasite diseases
○日和見感染性寄生虫病とは―寄生虫感染症の特徴
10.住血吸虫症 青木克己
Schistosomiasis
○住血吸虫症の種類と分布
○住血吸虫症の流行像とその特徴
○住血吸虫症の問題点
○住血吸虫症対策の現状と問題点
○開発途上国における住血吸虫症対策の成果をあげるための研究の必要性
11.集団寄生虫予防活動―日本から世界への発信 原 隆昭
Mass control of intestinal helminthosis-Massage from Japan to the world
○対策と問題点
○日本の経験
○国際協力への発展
○人材育成
■対寄生虫病戦略の展開
12.抗寄生虫薬のドラッグデザイン 北 潔
Drug design for parasitic diseases
○これまでの抗寄生虫薬の開発
○現在の抗寄生虫薬の開発
○これからの抗寄生虫薬の開発
13.マラリアのDNA診断 綿矢有佑・木村幹夫
DNA diagnosis of Malaria
○従来のマラリア診断法
○マラリアのDNA診断法
○マイクロタイタープレートhybridization法
14.フィールドで使用できるChagas病診断キット開発とその応用 仙道富士郎
Development of Chagas'disease diagnostic kits aplicable for field study
○簡便で正確な診断法樹立の必要性
○JICA Chagas病プロジェクトにおける経験
○ゼラチン粒子凝集反応を利用したChagas病診断キットの開発
15.寄生虫病対策における適正技術としての超音波診断 大前比呂思
Ultrasound-Appropriate technology for parasite control in developing countries
○住血吸虫症
○肝吸虫症
○包虫症
○マラリア
16.住血吸虫症ワクチン 小島莊明
Vaccine for Schistosomiasis
○血吸虫症になぜワクチンが必要か
○住血吸虫症に対する防御免疫機構
○住血吸虫症ワクチン候補分子
17.マラリアワクチン開発の現況 辻 守哉
Current status of malaria vaccine development
○赤外型原虫
○赤内型原虫
○伝搬阻止ワクチン
○その他
○問題点
18.寄生虫病対策と地域住民参加 門司和彦・吉見逸郎
Community participation in parasitic disease control
○住血吸虫症と人間行動
○集団治療(mass-chemotherapy)と住民参加
○便所使用と住民参加
○中間宿主貝対策と住民参加
○安全水の供給,水接触行動の変容と住民参加
○開発による住血吸虫症の流行と住民参加
○マラリア予防と薬剤浸漬蚊帳の使用
19.伝搬昆虫の制御―遺伝子工学を用いた病原体耐性蚊の開発 江下優樹・松本 顕
Control of insect vectors-Development of genetically engineering pathogen-resistant mosquitoes
○古くて新しい媒介蚊対策
○組換え蚊作製の戦略
20.地理情報システム(GIS)―対寄生虫世界戦略の鍵 嶋田雅暁
GIS-A key tool for the global strategy in the control of parasitic diseases
○地理情報システム(GIS)とは?
○RSとGIS
○GISの政策決定における必要性
○GISの核心―データベースと空間分析(spatial analysis)
○寄生虫対策におけるGISの応用例
21.抗マラリア薬 大友弘士・狩野繁之
Development of antimalarias
○抗マラリア薬開発の流れ
○現在使用されている抗マラリア薬の概要
○重症マラリアに対する支持療法
○稀用薬の入手
22.マラリア原虫の薬剤耐性 堀井俊宏
Drug resistance in malaria parasite
○抗マラリア剤と薬剤耐性
○薬剤耐性の分子機構
○薬剤耐性の克服
23.細胞内寄生性原虫の免疫回避機構 大日輝記・姫野國祐
Evasion mechamisms of intracellular parasites by exploiting host immune system
○補体系の回避と利用
○宿主細胞への侵入
○活性酸素の放出抑制
○宿主細胞に対するアポトーシスの調節
○サイトカイン産生の調節
○抗原のプロセッシング・提示の阻害とT細胞活性化の抑制
○獲得免疫の方向づけ
24.寄生虫感染の重症化に関与する遺伝子 平山謙二
Genetic epidemiological approach to analyze human immunity in parasitic disease
○熱帯熱マラリア感染による脳マラリア症
○クルーズトリパノソーマ(Trypanosoma cruzi)感染による心不全―心臓Chagas病
○住血吸虫感染による慢性肝線維症および肝硬変
■サイドメモ
日本の寄生虫対策の成果
Community-based PHC
国際寄生虫対策とHashimoto Initiative
リーシュマニア症
ICT card test
ロブレス病の起源
住血吸虫症対策の目標
APCOとIP
Structure-based drug design(SBDD)
筋蛋白パラミオシンがなぜワクチン候補となりうるか
マラリアの発育環
KAPBスタディ
トランスポゾン
GISが扱う空間的データは2種類
オーファンドラッグとしての抗マラリア薬
特定領域研究(A)“マラリア制圧の分子論的展開”
遺伝子欠損寄生虫
ヒト主要組織適合抗原複合体遺伝子領域(MHC region)