やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

出版に寄せて
 2020年,日本義肢装具学会に特設委員会として置かれた「義手適合判定検討委員会」においては,義手の発展と普及に資する目的のもと,特定のトピックに特化した議論と作業が重ねられてきたところです.そしてここに,一つの成果物として「日本版 能動義手適合検査表」が完成したことに対しまして,これまでこの委員会を主導されてこられた浅見豊子委員長,様々な作業を積み重ねてこられた委員の方々(大西謙吾委員,大庭潤平委員,須田裕紀委員,妹尾勝利委員,高橋功次委員,戸田光紀委員,中村喜彦委員,増田章人委員),アドバイザーとして加わってくださった浦田一彦先生,東原孝典先生,前野昭博先生,作業に加え担当理事として理事会との橋渡しを下さった柴田八衣子理事,中村隆理事に感謝の意を表します.これらのメンバーは,まさに義手の供給を担う多職種で構成されているところに大きな意義があり,また,義肢装具を専門とする学術団体における委員会として,専門分野で未解決であった部分の検証や,整理が及んでいない情報を精査いただいたところにもう一つの貢献を見出すことができます.
 今後本書が,能動義手適合検査の新たなスタンダードとして臨床と専門教育で大いに活用されることを願い,また,これが本邦だけに留まらず,世界の基準として普及することを望んでおります.
 末筆ながら,本書の発刊にあたりご理解ご協力くださった,公益社団法人日本整形外科学会,公益社団法人日本リハビリテーション医学会,一般社団法人日本作業療法士協会,一般社団法人日本義肢協会,公益社団法人日本義肢装具士協会の皆様へ,日本義肢装具学会を代表し御礼申し上げます.
 2024年11月
 日本義肢装具学会
 理事長 坂井一浩



 一般社団法人日本義肢装具学会に設置された特設委員会である「義手適合判定検討委員会」は,従来の能動義手適合検査に関する問題点の整理と検査基準値の検証を行い,新しい適合検査表である「能動義手適合検査表 日本版」を完成させました.この検査表は,義手の処方から完成までの行程に合わせて4段階の検査表9枚で構成されています.
 義手仮合わせ時までの検査
  (1) 切断者の身体機能検査表(前腕義手用,上腕義手用):処方および部品選択を目的とするもの;計2枚
  (2) 義手検査表(前腕義手,上腕義手共用):完成した義手の基本機能の確認と安全使用の保証を目的とするもの;計3枚
 義手完成時の検査
  (3) 義手装着適合検査表(前腕義手用,上腕義手用):ハーネスおよびケーブルシステムの装着時適合確認を目的とするもの;計2枚
  (4) 義手操作適合検査表(前腕義手用,上腕義手用):切断者の操作能力確認と義手適合性の確認を目的とするもの;計2枚
 これらの検査表は臨床の場において利用しやすいものとなっておりますが,その実施方法をさらにわかりやすくするためのマニュアル本がここに完成の運びとなりました.
 2016年頃の高橋功次義肢装具士による従来の義手適合検査への問題提起をもって,柴田八衣子作業療法士,大庭潤平作業療法士,浅見での議論が始まり,問題解決に向けた委員会として2020年に設置されましたのが「義手適合判定検討委員会」でした.前記メンバーの他に,理事,委員,アドバイザーとして「義手適合判定検討委員会」に加わってくださったのが,中村隆義肢装具士,大西謙吾エンジニア,須田裕紀エンジニア,妹尾勝利作業療法士,高橋功次義肢装具士,戸田光紀医師,中村喜彦義肢装具士,増田章人義肢装具士,浦田一彦義肢装具士,東原孝典義肢装具士,前野昭博エンジニアという,義手について常に熱く語れる皆様でした.委員会設置後はコロナ禍も挟みましたが,WEB会議や時には2日間かけての対面作業などを通して,全委員による多くの熱心な議論が重ねられ,4年もの歳月を経てこうして産声をあげました本書に,関係者の一人として大きな喜びを感じております.
 また,芳賀信彦医師や田中洋平医師をはじめとしました公益社団法人日本整形外科学会や公益社団法人日本リハビリテーション医学会,一般社団法人日本作業療法士協会,公益社団法人日本義肢装具士協会,一般社団法人日本義肢協会の5団体の皆様にも多大なるご協力をいただきましたことに,あらためて心よりお礼申し上げます.
 これから本書が,学校や病院,義肢製作所,関係施設などに常備され,義手に関わる全ての皆様にとって身近でお役に立てる1冊となりますことを心より願っております.
 2024年12月
 日本義肢装具学会「義手適合判定検討委員会」
 委員長 浅見豊子
 出版に寄せて
 序
 目次
 本書に付属する動画の利用について
第1章 はじめに
  1 義手とは
  2 日本版 義手適合検査 検討に至る背景とコンセプト
  3 本マニュアルの項目(使い方)
第2章 前腕義手の適合検査
 1 前腕義手適合検査のための身体機能検査
  前腕義手適合検査のための身体機能検査とは
  1 断端部の状態
   1-1 断端創の状態
   1-2 断端部感染兆候
   1-3 その他(参考事項)
  2 上肢長の測定
  3 関節可動域の測定
 2 前腕義手検査
  前腕義手検査とは
  前腕能動義手の構成と名称
  1 仕様
  2 仕上げ
  3 手先具
  4 手継手
  5 コントロールケーブルシステム
   5-1 ケーブルの取り付け(ボールターミナルとハンガーの取り付け)
   5-2A ケーブルハウジングの長さと位置:近位部
   5-2B ケーブルハウジングの長さと位置:遠位部
   5-3 ベースプレートの固定性
   5-4 クロスバーカバーの可動性
  6 ハーネスの腋窩パッド
  7 義手の長さ
  8 義手の重さ
 3 前腕義手の装着適合検査
  前腕義手の装着適合検査とは
  前腕能動義手の構成と名称
  1 断端の収納状況
  2 ソケットの適合
  3 たわみ継手の取り付け位置
  4 上腕半カフの位置
  5 ハーネス
   5-1 ハーネスクロスの位置
   5-2 コントロールアタッチメントストラップの走路
   5-3 Yストラップの懸垂状況
   5-4 ハーネスのゆとり
  6 義手の長さ
  7 コントロールケーブルシステム
   7-1 ベースプレートの位置
   7-2 クロスバーの位置
   7-3A ケーブルハウジングの長さ:たるみ
   7-3B ケーブルハウジングの長さ:遠位部
   7-3C ケーブルハウジングの長さ:近位部
   7-4 ハンガーの位置
   7-5 コントロールケーブルシステムの走路
 4 前腕義手の操作適合検査
  前腕義手の操作適合検査とは
  前腕能動義手の構成と名称
  1 可動域の測定
  2 伝達効率(コントロールケーブルシステム)
  3 操作効率
  4 手先具の固定性と可動性
  5 懸垂力に対する安定性
第3章 上腕義手の適合検査
 1 上腕義手適合検査のための身体機能検査
  上腕義手適合検査のための身体機能検査とは
  1 断端部の状態
   1-1 断端創の状態
   1-2 断端部感染兆候
   1-3 その他(参考事項)
  2 上肢長の測定
  3 関節可動域の測定
 2 上腕義手検査
  上腕義手検査とは
  上腕能動義手の構成と名称
  1 仕様
  2 仕上げ
  3 手先具
  4 手継手
  5 コントロールケーブルシステム
   5-1 ケーブルの取り付け(ボールターミナルとハンガーの取り付け)
   5-2A ケーブルハウジングの長さと位置:上腕近位部
   5-2B ケーブルハウジングの長さと位置:前腕遠位部
   5-2C ケーブルハウジングの長さと位置:肘継手部
   5-3 ベースプレートの固定性
   5-4A リフトレバー:位置
   5-4B リフトレバー:可動性
  6 肘継手の屈曲可動域
  7 肘屈曲に必要な力
  8 肘継手の動作確認(ロック・アンロック)
  9 ターンテーブル
  10 ハーネスの腋窩パッド
  11 義手の長さ
  12 義手の重さ
 3 上腕義手の装着適合検査
  上腕義手の装着適合検査とは
  上腕能動義手の構成と名称
  1 断端の収納状況
  2 ソケットの適合
  3 ハーネス
   3-1 ハーネスクロスの位置
   3-2 コントロールアタッチメントストラップの走路
   3-3 外側懸垂バンドの懸垂状況
   3-4 肘ロックコントロールストラップの長さ
   3-5 ハーネスのゆとり
  4 義手の長さ
  5 コントロールケーブルシステム
   5-1 ベースプレートの位置
   5-2A ケーブルハウジングの長さ 前腕ケーブルハウジング:遠位端
   5-2B ケーブルハウジングの長さ 上腕ケーブルハウジング:近位端
   5-3 ハンガーの位置
   5-4 コントロールケーブルシステムの走路
 4 上腕義手の操作適合検査
  上腕義手の操作適合検査とは
  上腕能動義手の構成と名称
  1 可動域の測定
  2 伝達効率(コントロールケーブルシステム)
  3 操作効率
  4 手先具の固定性と可動性
  5 ターンテーブルの固定性と可動性
  6 懸垂力に対する安定性
  7 肘ロックコントロールストラップの適合
第4章 能動義手の適合検査におけるエビデンス
  はじめに
  1 手先具力源ゴムの枚数とケーブル牽引力,フックの把持力
  2 上腕義手におけるリフトレバーの取り付け位置
  3 ケーブル・ハウジングの種類と組み合わせによる摩擦の特性
  参考文献一覧
付録 各検査表用紙