第2版 序
心理職の国家資格である公認心理師は,2018(平成30)年に誕生しました.経過措置期間(5年以上の実務経験のうえ指定講習を受講した人が受験できる特別な期間)を終え,2023(令和5)年の6年目以降は大学院修了者2,000人程を対象にした試験となり,毎年,受験者の約7割が合格しています.2024年度時点では7万人を超える公認心理師登録者が誕生し,より一層その活躍が期待されています.
公認心理師試験研修センターから2024年3月に発行された「令和5年度公認心理師活動状況等調査 報告書」の公認心理師全員対象のアンケート調査結果によると,保健医療分野に従事する公認心理師は全体の30%で,構成割合は精神科などの医療機関が保健所や精神保健福祉センターなど保健分野より高く,病院では常勤職が多いと示されています.公認心理師の50%近くは病院での多職種カンファレンスに参加し活動しており,対象者個人に対する心理検査をはじめ,本人・家族への心理アセスメントや面接,心理教育を行っていることがわかりました.
2024年度の診療報酬改定においては,「児童思春期支援指導加算」「精神科療養支援体制加算」の新設などにより,公認心理師独自の活動が評価され,公認心理師がチーム医療・多職種連携における専門職の一員として明記・追加されるようになっています.新設項目の「通院・在宅精神療法における公認心理師による心理支援加算」では,「心的外傷に起因する症状を有する患者に対して適切な介入を推進する観点から,精神科を担当する医師の指示を受けた公認心理師が必要な支援を行った場合について評価を行う」として,外来診療における個別カウンセリングが保険点数化されました.
これらの背景からも,保健医療は公認心理師が担う5分野のなかでも特に重要な分野といえます.保健医療での心理実践業務は,生命にかかわる危険のある業務を含んでいることから,特に国家資格による技能の担保を必要とします.心理職として臨床現場の期待に応えるためにも,「健康・医療心理学」はしっかり学ぶことが求められています.
本書の改訂では,正確で安全な知識を技能に反映させるため,また新たな情報や知識を提供するために,内容を全面的に見直しました.さらに,臨床で遭遇する対象者をイメージしやすいように,各章で現場の症例を翻案(再構成)したCASEを追加しています.
実践心理学としての「健康・医療心理学」の重要性が増すなか,この教科書で学びを深め,保健医療分野で活躍する多くの公認心理師が誕生することを願ってやみません.
最後に,本書の第2版においても,熱のこもったご解説をいただいた執筆者の皆様,刊行に至るまで根気よく丁寧にご支援をいただいた医歯薬出版の編集ご担当に心よりお礼申し上げる次第です.
2024年7月20日
編者を代表して
宮脇 稔
第1版 序
公認心理師が担当する主な5分野である「保健医療」,「福祉」,「教育」,「司法・犯罪」,「産業」のなかでも,「保健医療」領域は特に重要な分野です.また公認心理師養成カリキュラムのなかでも,保健医療は外部実習における必修領域となっています.これは,保健医療における予防,支援(治療),リハビリテーションという心理実践業務が,他の医療行為と同様に,患者さんの生命に関わる業務を含んでいるためです.実践心理学としての「健康・医療心理学」は,正確な知識と安全な技能を身につけるために,実習前に学んでおくべき重要なカリキュラムの一つになると考えられています.
保健医療領域における心理職は,チーム医療の一員として,多職種とともに活動する役割ももちます.治療・支援が医師をはじめとする多職種連携によって行われ,チームのありようを変えながらも,今後ますます重要になることは明らかです.しかし,これまで,この領域における心理職は,患者の治療・支援に欠かせない職種であると認識されながらも,職種として孤立することが少なくありませんでした.その理由は,これまでの大学・大学院の養成カリキュラムにおいて,チーム医療や多職種協働の重要性が充分に説明されてこなかったことにあります.医師をリーダーとした多職種チーム医療では,それぞれの職種が専門性をいかしながら,医学知識に裏打ちされた知識と治療・支援を共有することが重要となります.個人を対象とする技能がいかに有能でも,それだけでは心理職として充分には認められません.チームとして患者に関わることや,基礎的な医学知識をもつことが,今後は不可欠となるのです.
本書は,公認心理師教育に役立つ教科書として,保健医療領域の理論と実際を具体的に紹介しています.精神・身体疾患や心理的課題の理解,アセスメント,心理支援などの理論から,臨床現場において問題意識をもって課題に臨めるよう,実践的内容も豊富にまとめられています.本書が公認心理師を目指す皆さんの学びを深め,保健医療チームの一員として活躍できる一助となれば,望外の幸せです.
最後になりましたが,健康心理学,保健医療心理学,災害心理学に関する現場での業務や職能の取り組みをご執筆いただきました臨床経験豊かな先生方に感謝申し上げます.加えて,本書の企画から刊行に至るまで,粘り強く丁寧にご支援いただいた医歯薬出版の塚本あさ子さんに厚くお礼申し上げる次第です.
2018年8月吉日
編者を代表して
宮脇 稔
心理職の国家資格である公認心理師は,2018(平成30)年に誕生しました.経過措置期間(5年以上の実務経験のうえ指定講習を受講した人が受験できる特別な期間)を終え,2023(令和5)年の6年目以降は大学院修了者2,000人程を対象にした試験となり,毎年,受験者の約7割が合格しています.2024年度時点では7万人を超える公認心理師登録者が誕生し,より一層その活躍が期待されています.
公認心理師試験研修センターから2024年3月に発行された「令和5年度公認心理師活動状況等調査 報告書」の公認心理師全員対象のアンケート調査結果によると,保健医療分野に従事する公認心理師は全体の30%で,構成割合は精神科などの医療機関が保健所や精神保健福祉センターなど保健分野より高く,病院では常勤職が多いと示されています.公認心理師の50%近くは病院での多職種カンファレンスに参加し活動しており,対象者個人に対する心理検査をはじめ,本人・家族への心理アセスメントや面接,心理教育を行っていることがわかりました.
2024年度の診療報酬改定においては,「児童思春期支援指導加算」「精神科療養支援体制加算」の新設などにより,公認心理師独自の活動が評価され,公認心理師がチーム医療・多職種連携における専門職の一員として明記・追加されるようになっています.新設項目の「通院・在宅精神療法における公認心理師による心理支援加算」では,「心的外傷に起因する症状を有する患者に対して適切な介入を推進する観点から,精神科を担当する医師の指示を受けた公認心理師が必要な支援を行った場合について評価を行う」として,外来診療における個別カウンセリングが保険点数化されました.
これらの背景からも,保健医療は公認心理師が担う5分野のなかでも特に重要な分野といえます.保健医療での心理実践業務は,生命にかかわる危険のある業務を含んでいることから,特に国家資格による技能の担保を必要とします.心理職として臨床現場の期待に応えるためにも,「健康・医療心理学」はしっかり学ぶことが求められています.
本書の改訂では,正確で安全な知識を技能に反映させるため,また新たな情報や知識を提供するために,内容を全面的に見直しました.さらに,臨床で遭遇する対象者をイメージしやすいように,各章で現場の症例を翻案(再構成)したCASEを追加しています.
実践心理学としての「健康・医療心理学」の重要性が増すなか,この教科書で学びを深め,保健医療分野で活躍する多くの公認心理師が誕生することを願ってやみません.
最後に,本書の第2版においても,熱のこもったご解説をいただいた執筆者の皆様,刊行に至るまで根気よく丁寧にご支援をいただいた医歯薬出版の編集ご担当に心よりお礼申し上げる次第です.
2024年7月20日
編者を代表して
宮脇 稔
第1版 序
公認心理師が担当する主な5分野である「保健医療」,「福祉」,「教育」,「司法・犯罪」,「産業」のなかでも,「保健医療」領域は特に重要な分野です.また公認心理師養成カリキュラムのなかでも,保健医療は外部実習における必修領域となっています.これは,保健医療における予防,支援(治療),リハビリテーションという心理実践業務が,他の医療行為と同様に,患者さんの生命に関わる業務を含んでいるためです.実践心理学としての「健康・医療心理学」は,正確な知識と安全な技能を身につけるために,実習前に学んでおくべき重要なカリキュラムの一つになると考えられています.
保健医療領域における心理職は,チーム医療の一員として,多職種とともに活動する役割ももちます.治療・支援が医師をはじめとする多職種連携によって行われ,チームのありようを変えながらも,今後ますます重要になることは明らかです.しかし,これまで,この領域における心理職は,患者の治療・支援に欠かせない職種であると認識されながらも,職種として孤立することが少なくありませんでした.その理由は,これまでの大学・大学院の養成カリキュラムにおいて,チーム医療や多職種協働の重要性が充分に説明されてこなかったことにあります.医師をリーダーとした多職種チーム医療では,それぞれの職種が専門性をいかしながら,医学知識に裏打ちされた知識と治療・支援を共有することが重要となります.個人を対象とする技能がいかに有能でも,それだけでは心理職として充分には認められません.チームとして患者に関わることや,基礎的な医学知識をもつことが,今後は不可欠となるのです.
本書は,公認心理師教育に役立つ教科書として,保健医療領域の理論と実際を具体的に紹介しています.精神・身体疾患や心理的課題の理解,アセスメント,心理支援などの理論から,臨床現場において問題意識をもって課題に臨めるよう,実践的内容も豊富にまとめられています.本書が公認心理師を目指す皆さんの学びを深め,保健医療チームの一員として活躍できる一助となれば,望外の幸せです.
最後になりましたが,健康心理学,保健医療心理学,災害心理学に関する現場での業務や職能の取り組みをご執筆いただきました臨床経験豊かな先生方に感謝申し上げます.加えて,本書の企画から刊行に至るまで,粘り強く丁寧にご支援いただいた医歯薬出版の塚本あさ子さんに厚くお礼申し上げる次第です.
2018年8月吉日
編者を代表して
宮脇 稔
第2版 序
第1版 序
本書について
1章 チーム医療と多職種協働
(宮脇 稔)
1.公認心理師とチーム医療
2.チームの一員としての多職種と患者の役割
3.チーム医療における多職種協働の構造
4.チームリーダーとキーパーソンの役割
5.縦から横の連携へ
6.患者中心の連携へ
7.ジェネラリストの役割も担うスペシャリストとしての公認心理師
8.チーム医療の実践と公認心理師への期待
9.おわりに
〈1章Q&A〉
2章 健康心理学
(山田冨美雄)
1.健康とは
2.健康心理学とは
3.健康と病気の変遷
4.健康心理学の対象者
〈2章Q&A〉
3章 健康心理学におけるアセスメントと支援
(堤 俊彦,大野太郎)
1.健康心理アセスメントの方法
2.健康行動のアセスメント
3.健康心理学における心理支援
〈3章Q&A〉
4章 ストレスマネジメント
(大野太郎)
1.ストレスとその種類
2.ストレスの発生プロセス
3.ストレスマネジメント
〈4章Q&A〉
5章 医療心理学
(藤本 豊)
1.医療心理学と臨床心理学の歴史
2.医療機関における公認心理師の役割
3.精神医療における診断
4.医療倫理
5.ライフステージからみた医療心理学
6.ライフステージ別の視点
〈5章Q&A〉
6章 医療心理学におけるアセスメントと支援
1.医療心理学におけるアセスメント(赤須知明)
2.医療心理学における心理的支援(高林健示)
〈6章Q&A〉
7章 医療心理学の実際(1) 精神科,児童精神科
1.精神科領域(佐藤秀実)
2.児童精神科領域(井口由子)
3.精神科コンサルテーション・リエゾン(赤須知明)
4.依存症(使用症)(野田哲朗)
〈7章Q&A〉
8章 医療心理学の実際(2) 独立型心理室
(古井由美子)
1.総合病院における独立型心理室の役割
2.独立型心理室の心理業務のシステムと役割
3.独立型心理室における心理業務の特徴
〈8章Q&A〉
9章 医療心理学の実際(3) 心療内科
(田副真美)
1.心療内科領域
2.心身症の理解
3.心療内科における心理支援の特徴とシステム
4.心療内科における心理支援
〈9章Q&A〉
10章 医療心理学の実際(4) 小児科(母子保健含む)
1.小児科領域(高橋桃子)
2.周産期領域(青木絢子)
〈10章Q&A〉
11章 医療心理学の実際(5) 緩和医療
(石風呂素子)
1.緩和医療の理解
2.緩和医療における心理支援
3.緩和医療における心理支援の特徴
〈11章Q&A〉
12章 医療心理学の実際(6) 産業保健
(山本晴義)
1.産業保健領域の理解
2.産業保健における心理支援の特徴とシステム
3.産業保健における心理支援
4.保健指導に役立つ知識と技能
〈12章Q&A〉
13章 保健活動
1.保健活動の現状と相談支援事業体系(岩田光宏)
2.保健活動における対象者の理解(岩田光宏)
3.保健センターのデイケア(栗原 毅)
4.通所事業所(島眞澄)
5.地域連携と多職種協働(齋藤 悟)
〈13章Q&A〉
14章 災害心理学
(藤本 豊)
1.災害心理学とは
2.災害時の心理的支援
3.心のケアの変化
4.公認心理師にできる支援
5.被災地に派遣された職員への支援
6.心のケアで大切なこと
〈14章Q&A〉
15章 保健医療分野で必要な法制度
(宮脇 稔)
1.精神保健福祉法(精神保健及び精神障害者福祉に関する法律)
2.障害者総合支援法(障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律)
3.医療観察法(心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律)
4.医療法
5.医療保険制度(健康保険法・国民健康保険法)
6.介護保険法
7.高齢者医療確保法(高齢者の医療の確保に関する法律)
8.地域保健法
9.母子保健法
10.健康増進法
11.自殺対策基本法
〈15章Q&A〉
コラム
心理相談室と医療の連携(霜山孝子)
健康リスクの求め方(山田冨美雄)
PTMF-公認心理師時代の臨床心理学のために(岩田光宏)
ナラティブ・メディスン(田代 順)
ヒアリング・ヴォイシズ(藤本 豊)
リフレクティングとオープンダイアローグ(田代 順)
東日本大震災の経験から(藤本 豊)
アクト活動(藤本 豊)
付録 推薦図書
付表 心理検査表
索引
第1版 序
本書について
1章 チーム医療と多職種協働
(宮脇 稔)
1.公認心理師とチーム医療
2.チームの一員としての多職種と患者の役割
3.チーム医療における多職種協働の構造
4.チームリーダーとキーパーソンの役割
5.縦から横の連携へ
6.患者中心の連携へ
7.ジェネラリストの役割も担うスペシャリストとしての公認心理師
8.チーム医療の実践と公認心理師への期待
9.おわりに
〈1章Q&A〉
2章 健康心理学
(山田冨美雄)
1.健康とは
2.健康心理学とは
3.健康と病気の変遷
4.健康心理学の対象者
〈2章Q&A〉
3章 健康心理学におけるアセスメントと支援
(堤 俊彦,大野太郎)
1.健康心理アセスメントの方法
2.健康行動のアセスメント
3.健康心理学における心理支援
〈3章Q&A〉
4章 ストレスマネジメント
(大野太郎)
1.ストレスとその種類
2.ストレスの発生プロセス
3.ストレスマネジメント
〈4章Q&A〉
5章 医療心理学
(藤本 豊)
1.医療心理学と臨床心理学の歴史
2.医療機関における公認心理師の役割
3.精神医療における診断
4.医療倫理
5.ライフステージからみた医療心理学
6.ライフステージ別の視点
〈5章Q&A〉
6章 医療心理学におけるアセスメントと支援
1.医療心理学におけるアセスメント(赤須知明)
2.医療心理学における心理的支援(高林健示)
〈6章Q&A〉
7章 医療心理学の実際(1) 精神科,児童精神科
1.精神科領域(佐藤秀実)
2.児童精神科領域(井口由子)
3.精神科コンサルテーション・リエゾン(赤須知明)
4.依存症(使用症)(野田哲朗)
〈7章Q&A〉
8章 医療心理学の実際(2) 独立型心理室
(古井由美子)
1.総合病院における独立型心理室の役割
2.独立型心理室の心理業務のシステムと役割
3.独立型心理室における心理業務の特徴
〈8章Q&A〉
9章 医療心理学の実際(3) 心療内科
(田副真美)
1.心療内科領域
2.心身症の理解
3.心療内科における心理支援の特徴とシステム
4.心療内科における心理支援
〈9章Q&A〉
10章 医療心理学の実際(4) 小児科(母子保健含む)
1.小児科領域(高橋桃子)
2.周産期領域(青木絢子)
〈10章Q&A〉
11章 医療心理学の実際(5) 緩和医療
(石風呂素子)
1.緩和医療の理解
2.緩和医療における心理支援
3.緩和医療における心理支援の特徴
〈11章Q&A〉
12章 医療心理学の実際(6) 産業保健
(山本晴義)
1.産業保健領域の理解
2.産業保健における心理支援の特徴とシステム
3.産業保健における心理支援
4.保健指導に役立つ知識と技能
〈12章Q&A〉
13章 保健活動
1.保健活動の現状と相談支援事業体系(岩田光宏)
2.保健活動における対象者の理解(岩田光宏)
3.保健センターのデイケア(栗原 毅)
4.通所事業所(島眞澄)
5.地域連携と多職種協働(齋藤 悟)
〈13章Q&A〉
14章 災害心理学
(藤本 豊)
1.災害心理学とは
2.災害時の心理的支援
3.心のケアの変化
4.公認心理師にできる支援
5.被災地に派遣された職員への支援
6.心のケアで大切なこと
〈14章Q&A〉
15章 保健医療分野で必要な法制度
(宮脇 稔)
1.精神保健福祉法(精神保健及び精神障害者福祉に関する法律)
2.障害者総合支援法(障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律)
3.医療観察法(心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律)
4.医療法
5.医療保険制度(健康保険法・国民健康保険法)
6.介護保険法
7.高齢者医療確保法(高齢者の医療の確保に関する法律)
8.地域保健法
9.母子保健法
10.健康増進法
11.自殺対策基本法
〈15章Q&A〉
コラム
心理相談室と医療の連携(霜山孝子)
健康リスクの求め方(山田冨美雄)
PTMF-公認心理師時代の臨床心理学のために(岩田光宏)
ナラティブ・メディスン(田代 順)
ヒアリング・ヴォイシズ(藤本 豊)
リフレクティングとオープンダイアローグ(田代 順)
東日本大震災の経験から(藤本 豊)
アクト活動(藤本 豊)
付録 推薦図書
付表 心理検査表
索引














