序文
筆者は,言語聴覚士養成校の教員として,これまで25年間ほど勤務してきた.そして,多くの教員がそうであるように,教育効果を高めるために様々な工夫を行ってきた.ディサースリアの教科に関して,これまでの経験で最も効果が高かったのは,2007年に医葉薬出版から『ディサースリア 臨床標準テキスト』として標準的なテキストを出版したことである.当時,筆者は非常勤を含めて5つの養成校でディサースリアの教科を担当していたが,同テキストを出版して以来,授業が非常にやりやすくなった.重要事項を体系的に,漏れなく,わかりやすく教育することができるようになった.同テキストは国家試験にも対応しているので,国家試験のディサースリア領域の正答率も飛躍的に向上した.
同テキストは国内の多数の言語聴覚士養成校で教科書として採用されてきた実績から,一定の評価を受けてきたものと受け止めている.そして,2022年に,同テキストは15年ぶりに改訂版が出版されることとなった.本ワークブック(以下,ワーク)は,この改訂版『ディサースリア 臨床標準テキスト 第2版』に完全対応して作成された.すべての章,節ともにテキストと整合性をもって作成され,文章もテキストに準じている.したがって,章,節ごとに,こまめにテキストで学びつつ,実力を確認するのに最適な一冊である.
先に述べたように,テキストの出版は教育効果を高める大きな基軸となったが,それだけで完結するほど甘くはない.テキストの効果を最大限に高めるにはどうすべきか,という問いに必然的に迫られる.こうした問いと向き合い,試行錯誤する中で,やがてテキストと整合性のある形でワークを用いるのがベストな選択であることを経験的に確信した.具体的には,90分の授業を行うさいに,最後の10分間程度でワークを用いて実力の確認をする,というのはその一案である.もちろん,授業の後でも構わない.あるいは,授業の最初の10分間程度で,ワークを用いて前回の授業内容の知識の確認を行うというのも一案である.ワークを小テストとして実施するのもよいであろう.
率直にいうと,授業の中で(あるいは後で)ワークを解かせるというのは,いかなる形式であれ,学生たちに主体的に学習させる効果が期待でき,学生たちに身についている箇所と身についていない箇所とを客観的に認識させる効果があるため,学力向上対策としては大変有用である.テキストを単に丸暗記するのはいささか退屈という学生でも,ワークを用いると記憶しやすくなるというのは,誰しもが経験的に理解していることである.そして,繰り返すが,本ワークはテキストと整合性があり同じ文章で出題されているため,テキストの復習として使用するのに馴染みやすく,学習効果が高まりやすいのである.また,自分専用のワークを所有し,少しずつ制覇していくというのは,達成感がある.
テキストとワークをセットで活用することを推奨する.その相乗的学習効果はテキスト単体での活用と比較してかなり大きいものと推察される.本ワークを活用することが,学生たちにとって,ディサースリアをよりよく学習するための一助となることを願ってやまない.なお,本ワークは,繰り返し学習することを可能にするため,あえて書き込みのできる解答欄を設けていない.後掲(viii頁)のURLまたはQRコードより答案用紙がダウンロード可能であるため,解答欄が必要な場合は適宜活用されたい.
2022年9月
西尾正輝
筆者は,言語聴覚士養成校の教員として,これまで25年間ほど勤務してきた.そして,多くの教員がそうであるように,教育効果を高めるために様々な工夫を行ってきた.ディサースリアの教科に関して,これまでの経験で最も効果が高かったのは,2007年に医葉薬出版から『ディサースリア 臨床標準テキスト』として標準的なテキストを出版したことである.当時,筆者は非常勤を含めて5つの養成校でディサースリアの教科を担当していたが,同テキストを出版して以来,授業が非常にやりやすくなった.重要事項を体系的に,漏れなく,わかりやすく教育することができるようになった.同テキストは国家試験にも対応しているので,国家試験のディサースリア領域の正答率も飛躍的に向上した.
同テキストは国内の多数の言語聴覚士養成校で教科書として採用されてきた実績から,一定の評価を受けてきたものと受け止めている.そして,2022年に,同テキストは15年ぶりに改訂版が出版されることとなった.本ワークブック(以下,ワーク)は,この改訂版『ディサースリア 臨床標準テキスト 第2版』に完全対応して作成された.すべての章,節ともにテキストと整合性をもって作成され,文章もテキストに準じている.したがって,章,節ごとに,こまめにテキストで学びつつ,実力を確認するのに最適な一冊である.
先に述べたように,テキストの出版は教育効果を高める大きな基軸となったが,それだけで完結するほど甘くはない.テキストの効果を最大限に高めるにはどうすべきか,という問いに必然的に迫られる.こうした問いと向き合い,試行錯誤する中で,やがてテキストと整合性のある形でワークを用いるのがベストな選択であることを経験的に確信した.具体的には,90分の授業を行うさいに,最後の10分間程度でワークを用いて実力の確認をする,というのはその一案である.もちろん,授業の後でも構わない.あるいは,授業の最初の10分間程度で,ワークを用いて前回の授業内容の知識の確認を行うというのも一案である.ワークを小テストとして実施するのもよいであろう.
率直にいうと,授業の中で(あるいは後で)ワークを解かせるというのは,いかなる形式であれ,学生たちに主体的に学習させる効果が期待でき,学生たちに身についている箇所と身についていない箇所とを客観的に認識させる効果があるため,学力向上対策としては大変有用である.テキストを単に丸暗記するのはいささか退屈という学生でも,ワークを用いると記憶しやすくなるというのは,誰しもが経験的に理解していることである.そして,繰り返すが,本ワークはテキストと整合性があり同じ文章で出題されているため,テキストの復習として使用するのに馴染みやすく,学習効果が高まりやすいのである.また,自分専用のワークを所有し,少しずつ制覇していくというのは,達成感がある.
テキストとワークをセットで活用することを推奨する.その相乗的学習効果はテキスト単体での活用と比較してかなり大きいものと推察される.本ワークを活用することが,学生たちにとって,ディサースリアをよりよく学習するための一助となることを願ってやまない.なお,本ワークは,繰り返し学習することを可能にするため,あえて書き込みのできる解答欄を設けていない.後掲(viii頁)のURLまたはQRコードより答案用紙がダウンロード可能であるため,解答欄が必要な場合は適宜活用されたい.
2022年9月
西尾正輝
序文
答案用紙のダウンロードについて
第1章 ディサースリアとは何か
1 コミュニケーション障害とディサースリア
2 ディサースリアの定義
3 ディサースリアの用語について
4 ディサースリアの障害構造
5 臨床的プロフィールの特徴
総合問題
第2章 ディサースリアの基礎理解
1 発症時の年齢
2 発現率と患者数
3 タイプ分類
4 原因疾患
5 運動系における障害される部位
6 発声発語器官の運動機能障害
7 聴覚的な発話特徴
8 臨床経過
9 社会復帰状況
総合問題
第3章 運動系の基礎理解
1 運動系の概要
2 錐体路系
3 錐体外路系
4 小脳系
5 下位運動ニューロン
6 筋(骨)系
総合問題
第4章 運動系の障害
1 錐体路系の障害
2 錐体外路系の障害
3 小脳系の障害
4 下位運動ニューロンの障害
5 筋の障害
6 脊髄損傷
総合問題
第5章 タイプごとの病態特徴と重症度
1 弛緩性ディサースリア
2 痙性ディサースリア
3 失調性ディサースリア
4 運動低下性ディサースリア
5 運動過多性ディサースリア
6 UUMNディサースリア
7 混合性ディサースリア
8 タイプ間の発話の重症度の比較
総合問題
第6章 ディサースリアの評価
1 臨床の流れ
2 ディサースリアにおける評価と検査
3 言語病理学的鑑別診断
4 ディサースリアの臨床で行う標準的検査の概要
5 標準ディサースリア検査結果の解釈の仕方
6 関連スタッフから得る情報
7 国際生活機能分類(ICF)に基づいたディサースリアの評価
8 検査結果のまとめ方
総合問題
第7章 ディサースリアの言語治療に必要な基礎知識
1 治療アプローチの分類
2 言語治療目標
3 運動療法的アプローチの基本
4 タイプごとの言語治療ガイドライン
5 ディサースリアの治療におけるMTPSSEの活用
6 脳卒中後の中枢神経系の再組織化とリハビリテーション
7 運動生理学的理論
8 誤った言語治療
総合問題
第8章 ディサースリアの言語治療テクニック
1 呼吸機能へのアプローチ
2 発声機能へのアプローチ
3 鼻咽腔閉鎖機能へのアプローチ
4 口腔構音機能へのアプローチ
5 発話速度の調節法
6 拡大・代替コミュニケーション・アプローチ
総合問題
答案用紙のダウンロードについて
第1章 ディサースリアとは何か
1 コミュニケーション障害とディサースリア
2 ディサースリアの定義
3 ディサースリアの用語について
4 ディサースリアの障害構造
5 臨床的プロフィールの特徴
総合問題
第2章 ディサースリアの基礎理解
1 発症時の年齢
2 発現率と患者数
3 タイプ分類
4 原因疾患
5 運動系における障害される部位
6 発声発語器官の運動機能障害
7 聴覚的な発話特徴
8 臨床経過
9 社会復帰状況
総合問題
第3章 運動系の基礎理解
1 運動系の概要
2 錐体路系
3 錐体外路系
4 小脳系
5 下位運動ニューロン
6 筋(骨)系
総合問題
第4章 運動系の障害
1 錐体路系の障害
2 錐体外路系の障害
3 小脳系の障害
4 下位運動ニューロンの障害
5 筋の障害
6 脊髄損傷
総合問題
第5章 タイプごとの病態特徴と重症度
1 弛緩性ディサースリア
2 痙性ディサースリア
3 失調性ディサースリア
4 運動低下性ディサースリア
5 運動過多性ディサースリア
6 UUMNディサースリア
7 混合性ディサースリア
8 タイプ間の発話の重症度の比較
総合問題
第6章 ディサースリアの評価
1 臨床の流れ
2 ディサースリアにおける評価と検査
3 言語病理学的鑑別診断
4 ディサースリアの臨床で行う標準的検査の概要
5 標準ディサースリア検査結果の解釈の仕方
6 関連スタッフから得る情報
7 国際生活機能分類(ICF)に基づいたディサースリアの評価
8 検査結果のまとめ方
総合問題
第7章 ディサースリアの言語治療に必要な基礎知識
1 治療アプローチの分類
2 言語治療目標
3 運動療法的アプローチの基本
4 タイプごとの言語治療ガイドライン
5 ディサースリアの治療におけるMTPSSEの活用
6 脳卒中後の中枢神経系の再組織化とリハビリテーション
7 運動生理学的理論
8 誤った言語治療
総合問題
第8章 ディサースリアの言語治療テクニック
1 呼吸機能へのアプローチ
2 発声機能へのアプローチ
3 鼻咽腔閉鎖機能へのアプローチ
4 口腔構音機能へのアプローチ
5 発話速度の調節法
6 拡大・代替コミュニケーション・アプローチ
総合問題














