序
公認心理師が担当する主な5 分野である「保健医療」,「福祉」,「教育」,「司法・犯罪」,「産業」のなかでも,「保健医療」領域は特に重要な分野です.また公認心理師養成カリキュラムのなかでも,保健医療は外部実習における必修領域となっています.これは,保健医療における予防,支援(治療),リハビリテーションという心理実践業務が,他の医療行為と同様に,患者さんの生命に関わる業務を含んでいるためです.実践心理学としての「健康・医療心理学」は,正確な知識と安全な技能を身につけるために,実習前に学んでおくべき重要なカリキュラムの一つになると考えられています.
保健医療領域における心理職は,チーム医療の一員として,多職種とともに活動する役割ももちます.治療・支援が医師をはじめとする多職種連携によって行われ,チームのありようを変えながらも,今後ますます重要になることは明らかです.しかし,これまで,この領域における心理職は,患者の治療・支援に欠かせない職種であると認識されながらも,職種として孤立することが少なくありませんでした.その理由は,これまでの大学・大学院の養成カリキュラムにおいて,チーム医療や多職種協働の重要性が充分に説明されてこなかったことにあります.医師をリーダーとした多職種チーム医療では,それぞれの職種が専門性をいかしながら,医学知識に裏打ちされた知識と治療・支援を共有することが重要となります.個人を対象とする技能がいかに有能でも,それだけでは心理職として充分には認められません.チームとして患者に関わることや,基礎的な医学知識をもつことが,今後は不可欠となるのです.
本書は,公認心理師教育に役立つ教科書として,保健医療領域の理論と実際を具体的に紹介しています.精神・身体疾患や心理的課題の理解,アセスメント,心理支援などの理論から,臨床現場において問題意識をもって課題に臨めるよう,実践的内容も豊富にまとめられています.本書が公認心理師を目指す皆さんの学びを深め,保健医療チームの一員として活躍できる一助となれば,望外の幸せです.
最後になりましたが,健康心理学,保健医療心理学,災害心理学に関する現場での業務や職能の取り組みをご執筆いただきました臨床経験豊かな先生方に感謝申し上げます.加えて,本書の企画から刊行に至るまで,粘り強く丁寧にご支援いただいた医歯薬出版の塚本あさ子さんに厚くお礼申し上げる次第です.
2018 年8 月吉日
編者を代表して
宮脇 稔
公認心理師が担当する主な5 分野である「保健医療」,「福祉」,「教育」,「司法・犯罪」,「産業」のなかでも,「保健医療」領域は特に重要な分野です.また公認心理師養成カリキュラムのなかでも,保健医療は外部実習における必修領域となっています.これは,保健医療における予防,支援(治療),リハビリテーションという心理実践業務が,他の医療行為と同様に,患者さんの生命に関わる業務を含んでいるためです.実践心理学としての「健康・医療心理学」は,正確な知識と安全な技能を身につけるために,実習前に学んでおくべき重要なカリキュラムの一つになると考えられています.
保健医療領域における心理職は,チーム医療の一員として,多職種とともに活動する役割ももちます.治療・支援が医師をはじめとする多職種連携によって行われ,チームのありようを変えながらも,今後ますます重要になることは明らかです.しかし,これまで,この領域における心理職は,患者の治療・支援に欠かせない職種であると認識されながらも,職種として孤立することが少なくありませんでした.その理由は,これまでの大学・大学院の養成カリキュラムにおいて,チーム医療や多職種協働の重要性が充分に説明されてこなかったことにあります.医師をリーダーとした多職種チーム医療では,それぞれの職種が専門性をいかしながら,医学知識に裏打ちされた知識と治療・支援を共有することが重要となります.個人を対象とする技能がいかに有能でも,それだけでは心理職として充分には認められません.チームとして患者に関わることや,基礎的な医学知識をもつことが,今後は不可欠となるのです.
本書は,公認心理師教育に役立つ教科書として,保健医療領域の理論と実際を具体的に紹介しています.精神・身体疾患や心理的課題の理解,アセスメント,心理支援などの理論から,臨床現場において問題意識をもって課題に臨めるよう,実践的内容も豊富にまとめられています.本書が公認心理師を目指す皆さんの学びを深め,保健医療チームの一員として活躍できる一助となれば,望外の幸せです.
最後になりましたが,健康心理学,保健医療心理学,災害心理学に関する現場での業務や職能の取り組みをご執筆いただきました臨床経験豊かな先生方に感謝申し上げます.加えて,本書の企画から刊行に至るまで,粘り強く丁寧にご支援いただいた医歯薬出版の塚本あさ子さんに厚くお礼申し上げる次第です.
2018 年8 月吉日
編者を代表して
宮脇 稔
序文
序章 「健康・医療心理学」を学ぶ(宮脇 稔)
健康心理学
1章 健康心理学(山田冨美雄)
1.健康とは
2.健康心理学とは
3.健康と病気の変遷
4.健康心理学の対象者
〈1章Q&A〉
2章 健康心理学におけるアセスメントと支援(堤 俊彦)
1.健康心理アセスメントの方法
2.健康行動のアセスメント
3.健康心理学における心理的支援・心理療法
〈2章Q&A〉
3章 健康心理学の実際(1) ストレスマネジメント(大野太郎)
1.ストレスとその種類
2.ストレスの発生プロセス
3.ストレスマネジメント
〈3章Q&A〉
4章 健康心理学の実際(2) 各種の心理支援法(大野太郎)
1.健康心理学における心理支援
2.心理支援法の実際
〈4章Q&A〉
医療心理学
5章 医療心理学(藤本 豊)
1.医療心理学と臨床心理学の歴史
2.医療機関における心理職の役割
3.精神医療における診断
4.ライフステージからみた医療心理学
5.ライフステージ別の視点
〈5章Q&A〉
6章 医療心理学におけるアセスメントと支援
1.医療心理学におけるアセスメント(赤須知明)
2.医療心理学における心理的支援(高林健示)
〈6章Q&A〉
7章 医療心理学の実際(1) 精神科,児童精神科
1.精神科領域(佐藤秀実)
2.児童精神科領域(井口由子)
3.精神科コンサルテーション・リエゾン(赤須知明)
〈7章Q&A〉
8章 医療心理学の実際(2) 院内独立型心理室(古井由美子)
1.総合病院における独立型心理室の役割
2.独立型心理室における心理支援の特徴とシステム
3.独立型心理室における心理支援
〈8章Q&A〉
9章 医療心理学の実際(3) 心療内科(田副真美)
1.心療内科領域
2.心身症の理解
3.心療内科における心理支援の特徴とシステム
4.心療内科における心理支援
〈9章Q&A〉
10章 医療心理学の実際(4) 小児科(母子保健含む)
1.小児期領域(高橋桃子)
2.周産期領域(青木絢子)
〈10章Q&A〉
11章 医療心理学の実際(5) 緩和医療(石風呂素子)
1.緩和医療の理解
2.緩和医療における心理支援の特徴とシステム
3.緩和医療における心理支援
〈11章Q&A〉
12章 医療心理学の実際(6) 産業保健(山本晴義)
1.産業保健領域
2.産業保健における心理支援の特徴とシステム
3.産業保健における心理支援
4.保健指導に役立つ知識と技能
〈12章Q&A〉
地域保健活動
13章 地域保健活動の実際
1.地域保健活動の現状と相談支援事業体系(岩田光宏)
2.地域保健活動における対象者の理解(岩田光宏)
3.保健センター・デイケアでの心理職の役割と実際(栗原 毅)
4.通所事業所での心理職の役割と実際(島眞澄)
5.地域連携と多職種協働(齋藤 悟)
〈13章Q&A〉
災害心理学
14章 災害心理学(山田冨美雄)
1.災害下の支援
2.災害時に必要な心理的ケア
3.災害時に支援が求められる子ども達への対応
4.被災者の心のケア
〈14章Q&A〉
多職種協働と医療連携
15章 多職種協働と医療連携(宮脇 稔)
1.臨床チームワーク・チーム医療と多職種協働
2.臨床チームワークの経緯
3.医療チームからチーム医療へ
4.チーム医療の重要性
5.チーム医療の構造
6.チーム医療から多職種協働に向けて
7.多職種協働における公認心理師の役割と課題
〈15章Q&A〉
付録
保健医療で必要な法制度(宮脇 稔)
精神保健福祉法(精神保健及び精神障害者福祉に関する法律)
障害者総合支援法(障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律)
医療観察法(心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律)
地域保健法
健康増進法
発達障害者支援法
医療法
医療保険制度(健康保険法・国民健康保険法)
介護保険法
自殺対策基本法
コラム
健康リスクの求め方(山田冨美雄)
リフレクティング(田代 順)
オープンダイアローグ(田代 順)
ヒアリング・ヴォイシズ(藤本 豊)
ナラティブ・メディスン(田代 順)
心理相談室の開業(霜山孝子)
アクト活動(藤本 豊)
東日本大震災の経験から(藤本 豊)
索引
序章 「健康・医療心理学」を学ぶ(宮脇 稔)
健康心理学
1章 健康心理学(山田冨美雄)
1.健康とは
2.健康心理学とは
3.健康と病気の変遷
4.健康心理学の対象者
〈1章Q&A〉
2章 健康心理学におけるアセスメントと支援(堤 俊彦)
1.健康心理アセスメントの方法
2.健康行動のアセスメント
3.健康心理学における心理的支援・心理療法
〈2章Q&A〉
3章 健康心理学の実際(1) ストレスマネジメント(大野太郎)
1.ストレスとその種類
2.ストレスの発生プロセス
3.ストレスマネジメント
〈3章Q&A〉
4章 健康心理学の実際(2) 各種の心理支援法(大野太郎)
1.健康心理学における心理支援
2.心理支援法の実際
〈4章Q&A〉
医療心理学
5章 医療心理学(藤本 豊)
1.医療心理学と臨床心理学の歴史
2.医療機関における心理職の役割
3.精神医療における診断
4.ライフステージからみた医療心理学
5.ライフステージ別の視点
〈5章Q&A〉
6章 医療心理学におけるアセスメントと支援
1.医療心理学におけるアセスメント(赤須知明)
2.医療心理学における心理的支援(高林健示)
〈6章Q&A〉
7章 医療心理学の実際(1) 精神科,児童精神科
1.精神科領域(佐藤秀実)
2.児童精神科領域(井口由子)
3.精神科コンサルテーション・リエゾン(赤須知明)
〈7章Q&A〉
8章 医療心理学の実際(2) 院内独立型心理室(古井由美子)
1.総合病院における独立型心理室の役割
2.独立型心理室における心理支援の特徴とシステム
3.独立型心理室における心理支援
〈8章Q&A〉
9章 医療心理学の実際(3) 心療内科(田副真美)
1.心療内科領域
2.心身症の理解
3.心療内科における心理支援の特徴とシステム
4.心療内科における心理支援
〈9章Q&A〉
10章 医療心理学の実際(4) 小児科(母子保健含む)
1.小児期領域(高橋桃子)
2.周産期領域(青木絢子)
〈10章Q&A〉
11章 医療心理学の実際(5) 緩和医療(石風呂素子)
1.緩和医療の理解
2.緩和医療における心理支援の特徴とシステム
3.緩和医療における心理支援
〈11章Q&A〉
12章 医療心理学の実際(6) 産業保健(山本晴義)
1.産業保健領域
2.産業保健における心理支援の特徴とシステム
3.産業保健における心理支援
4.保健指導に役立つ知識と技能
〈12章Q&A〉
地域保健活動
13章 地域保健活動の実際
1.地域保健活動の現状と相談支援事業体系(岩田光宏)
2.地域保健活動における対象者の理解(岩田光宏)
3.保健センター・デイケアでの心理職の役割と実際(栗原 毅)
4.通所事業所での心理職の役割と実際(島眞澄)
5.地域連携と多職種協働(齋藤 悟)
〈13章Q&A〉
災害心理学
14章 災害心理学(山田冨美雄)
1.災害下の支援
2.災害時に必要な心理的ケア
3.災害時に支援が求められる子ども達への対応
4.被災者の心のケア
〈14章Q&A〉
多職種協働と医療連携
15章 多職種協働と医療連携(宮脇 稔)
1.臨床チームワーク・チーム医療と多職種協働
2.臨床チームワークの経緯
3.医療チームからチーム医療へ
4.チーム医療の重要性
5.チーム医療の構造
6.チーム医療から多職種協働に向けて
7.多職種協働における公認心理師の役割と課題
〈15章Q&A〉
付録
保健医療で必要な法制度(宮脇 稔)
精神保健福祉法(精神保健及び精神障害者福祉に関する法律)
障害者総合支援法(障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律)
医療観察法(心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律)
地域保健法
健康増進法
発達障害者支援法
医療法
医療保険制度(健康保険法・国民健康保険法)
介護保険法
自殺対策基本法
コラム
健康リスクの求め方(山田冨美雄)
リフレクティング(田代 順)
オープンダイアローグ(田代 順)
ヒアリング・ヴォイシズ(藤本 豊)
ナラティブ・メディスン(田代 順)
心理相談室の開業(霜山孝子)
アクト活動(藤本 豊)
東日本大震災の経験から(藤本 豊)
索引